AMD Radeon PRO W6800 ベンチマークまとめ

AMD Radeon Pro GPU・グラフィックボード

全体概要

AMD Radeon PRO W6800は、AMDのRDNA2アーキテクチャを基盤とするハイエンドなワークステーション向けグラフィックカードとして位置づけられています 1。このGPUは、主にプロフェッショナルなアプリケーション、例えばCAD(コンピュータ支援設計)、レンダリング、シミュレーションなどの用途を想定して設計されており 5、特に大規模なビジュアライゼーションデータセットや、高いメモリ容量を必要とするワークロードに適しています 2。また、ECC(Error Correcting Code)メモリによる高い安定性と信頼性、そして主要なプロフェッショナルアプリケーションに対する認証ドライバの提供も、このカードの重要な特徴です 1

Radeon PRO W6800の主要な仕様としては、32GBのGDDR6 ECCメモリが挙げられます 2。これは、前世代のRadeon Pro W5700が搭載していた8GBから大幅に増強された容量であり 2、競合製品であるNVIDIA RTX A4000(16GB)やRTX A5000(24GB)と比較しても優位性があります 3。特に、メモリ容量が性能のボトルネックとなるようなワークロードにおいて、その恩恵を受けることができます 3。さらに、RDNA2アーキテクチャによる全体的な性能向上に加え、ハードウェアレイ トレーシング、Resizable BAR(ベースアドレスレジスタのサイズ変更)、Variable Rate Shading(可変レートシェーディング)といった最新機能もサポートしています 1。ディスプレイ出力としては、6つのMini DisplayPort 1.4a端子を備えており、最大で6台の5K解像度ディスプレイ、または2台の8K解像度ディスプレイを駆動することが可能です 2。システムとの接続にはPCIe 4.0 x16インターフェースが用いられ 2、最大消費電力は250Wとされています 3

各種ベンチマークの結果からは、レンダリング性能、CAD性能、そしてゲーミング性能のいずれにおいても、前世代の製品から大きな向上が見られます 1。特定のプロフェッショナルアプリケーションにおいては、競合製品と比較しても遜色ない、あるいはそれ以上の性能を発揮する場面も見られます 1。特に、その大容量メモリを活かせるワークロードにおいては、顕著な強みを発揮すると言えるでしょう 3。また、ゲーミング性能については、コンシューマー向けの同等チップであるRadeon RX 6800 XTに近い性能を持つことが示されています 5

項目 (Item)AMD Radeon PRO W6800
GPU名 (GPU Name)Navi 21
アーキテクチャ (Architecture)RDNA2
コア数 (Cores)3840
ブーストクロック (Boost Clock)2320 MHz
メモリ容量 (Memory Size)32 GB
メモリタイプ (Memory Type)GDDR6
メモリバス幅 (Memory Bus Width)256 bit
メモリ帯域幅 (Memory Bandwidth)512.0 GB/s
最大消費電力 (Max Power Consumption)250 W
出力端子 (Display Outputs)6x Mini DisplayPort 1.4a

レンダリング性能

Radeon PRO W6800のレンダリング性能を評価するために、複数のベンチマークソフトウェアを用いた結果が報告されています。

Realbench

Realbenchを用いたテストでは、Radeon PRO W6800は258,569という最終スコアを記録しました 1。このスコアは、前世代のRadeon Pro W5700と比較して37%高い数値であり、W6800が大幅な性能向上を遂げていることを示しています。特に、Realbenchに含まれるLuxRenderに基づくレンダリング性能においては、W5700よりも78%高速であるという結果が出ており 1、物理ベースのレンダリング処理においてW6800が強みを発揮する可能性が示唆されます。Realbenchは、実際のアプリケーションの動作をシミュレートするベンチマークであるため、この結果は実用的なレンダリング作業においてもW6800が高いパフォーマンスを発揮することを示唆していると考えられます。

Blender

Blenderのベンチマークシーンを完了するのに、Radeon PRO W6800は13分を要しました 1。この結果は、同じシーンを実行した他のベンチマーク結果の上位16%にランクインしており、W6800が幅広いレンダリングタスクにおいて優れた性能を発揮することを示唆しています。Blenderはオープンソースの3D作成スイートとして広く利用されており、このベンチマークでの高いランキングは、プロフェッショナルな利用においてもW6800が十分な性能を持つことを裏付けています。

SPECviewperf (3ds Max)

SPECviewperf 13に含まれる3ds Maxのテストでは、Radeon PRO W6800はRadeon Pro W5700のほぼ2倍の性能を発揮しました 1。さらに、他のほとんどのテストにおいても40%以上の性能向上が見られており 1、特にAutodesk 3ds Maxのようなプロフェッショナルなレンダリングソフトウェアにおいて、W6800が前世代から飛躍的な性能向上を遂げていることが明確に示されています。SPECviewperfは、プロフェッショナルなアプリケーションの実際のワークロードに基づいてグラフィック性能を測定する業界標準のベンチマークであるため、この結果は3ds MaxユーザーにとってW6800が非常に魅力的な選択肢となることを示唆しています。

全体的に、Radeon PRO W6800は前世代のAMD製グラフィックカードと比較して大幅な性能向上を実現しており 1、特にその大容量メモリ、ハードウェアレイ トレーシング機能、そしてResizable BARなどの新機能が性能向上に大きく貢献していると考えられます 4

競合製品との比較においては、NVIDIA RTX A5000と比較した場合、Lumionの小規模なシーンでは性能面でやや遅れを取るものの、28GBものメモリを必要とする大規模なシーンでは、RTX A5000がデータをロードすることさえ困難であったのに対し、W6800はトップの性能を発揮しました 2。この結果は、メモリ容量が重要となる大規模なレンダリングシーンにおいては、W6800が競合製品よりも有利になる可能性を示唆しています。一方、Solidworks Visualizeのテストでは、ノイズ除去機能の有効/無効によってRTX A5000との性能差が変動することが報告されており 3、ソフトウェアの特定機能の使用状況によって、W6800と競合製品の相対的な性能が変わる可能性があることが示唆されます。

ベンチマークソフト (Benchmark Software)Radeon PRO W6800 スコア/時間 (Radeon PRO W6800 Score/Time)Radeon Pro W5700 スコア/時間 (Radeon Pro W5700 Score/Time)性能向上率 (Performance Improvement Rate)
Realbench258,56937% (vs W5700)
Blender13分 (13 minutes)上位16% (Top 16%)
SPECviewperf (3ds Max)約2倍 (Approximately 2x)

CAD性能

Radeon PRO W6800は、CAD(コンピュータ支援設計)の分野においても優れた性能を発揮することが期待されています。

SPECviewperf (Creo, NX)

SPECviewperf 13に含まれるCreoやNXといったCADアプリケーションのワークロードを用いたテストでは、Radeon PRO W6800は前世代のRadeon Pro W5700と比較して、ほとんどのテストで40%以上の性能向上を示しました 1。これは、主要なCADアプリケーションにおいてもW6800が大幅な性能向上を実現しており、プロフェッショナルなCADワークフローの効率化に大きく貢献する可能性が高いことを示唆しています。

Solidworks Visualize

Solidworks Visualize 2021 SP3を用いたテストでは、ノイズ除去が無効の場合、NVIDIA RTX A5000がRadeon PRO W6800を大きくリードしました。しかし、ノイズ除去が有効な状態では、W6800とNVIDIA Ampere世代のGPU(RTX A4000、RTX A5000)との性能差はほとんどなくなるという結果が得られています 3。この結果は、Solidworks Visualizeのような特定のCAD関連ソフトウェアにおいては、W6800の性能が競合製品と比較して、ソフトウェアの設定や使用する機能に大きく左右される可能性があることを示唆しています。

大規模なアセンブリや複雑なモデルを扱う際の性能分析においては、Radeon PRO W6800の32GBという大容量メモリが大きなアドバンテージとなります。NVIDIA RTX A4000(16GB)やRTX A5000(24GB)では処理が困難な、非常に大規模で複雑なビジュアライゼーションデータセットも、W6800であれば十分に扱うことが可能です 3。実際に、Lumionの28GBものメモリを必要とするモデルを用いたテストでは、W6800が唯一データを完全にロードすることができ、トップの性能を発揮しました 3。これは、大規模なCADアセンブリや複雑なBIM(Building Information Modeling)モデルを扱うユーザーにとって、W6800の32GBメモリがパフォーマンスのボトルネックを解消する上で非常に有効であることを示しています。

競合製品との比較では、NVIDIA RTX A4000と比較して、DirectX 12のラスタライズ性能においてはW6800が優位性を示す場合があるものの、リアルタイムレイトレーシングの性能においては遅れを取ることが報告されています 3。これは、W6800が従来のラスタライズ処理においてはRTX A4000と同等かそれ以上の性能を発揮する可能性がある一方で、レイトレーシングを活用するワークフローにおいてはRTX A4000に劣る可能性があることを示唆しています。

ベンチマークソフト (Benchmark Software)Radeon PRO W6800 スコア/結果 (Radeon PRO W6800 Score/Result)Radeon Pro W5700 スコア/結果 (Radeon Pro W5700 Score/Result)NVIDIA RTX A4000 スコア/結果 (NVIDIA RTX A4000 Score/Result)NVIDIA RTX A5000 スコア/結果 (NVIDIA RTX A5000 Score/Result)
SPECviewperf (Creo, NX)40%以上の性能向上 (Over 40% performance improvement)
Solidworks Visualize (ノイズ除去無効)RTX A5000が大きくリード (RTX A5000 leads significantly)
Solidworks Visualize (ノイズ除去有効)ほぼ同等 (Nearly the same)ほぼ同等 (Nearly the same)ほぼ同等 (Nearly the same)

ゲーミング性能

Radeon PRO W6800はプロフェッショナルなワークステーション向けGPUですが、そのゲーミング性能についても注目が集まっています。

3DMark

3DMarkのような一般的なゲーミングベンチマークを用いたテストでは、全体的にNVIDIA GeForce RTX 4080がRadeon PRO W6800を大幅に上回るスコアを記録しています 5。例えば、Time Spy ScoreではRTX 4080が約25341ポイント(69%)であるのに対し、W6800は約11941ポイント(32%)であり、Fire Strike Standard ScoreではRTX 4080が約45551ポイント(68%)であるのに対し、W6800は約24576ポイント(37%)となっています。これらの結果から、3DMarkのようなゲーミングに特化したベンチマークにおいては、W6800はハイエンドのコンシューマー向けグラフィックカードと比較して性能が劣ることがわかります。これは、W6800が主にプロフェッショナルなワークロードに最適化されているためと考えられます。

VRMark

VRMarkを用いたテストでは、Radeon PRO W6800はCyan Roomテスト(DirectX 12)で350 FPS以上、Blue Roomテスト(DirectX 11、最も要求の厳しいテスト)でほぼ100 FPSを記録しました 2。これは前世代のGPUと比較して2倍のFPSであり 2、VRMarkのワークロード下では約2.1GHzで動作し、GPU温度は最大約81℃に達しました 11。VRMark Orange Roomベンチマークでは、HTC ViveやOculus Riftの推奨要件に対して良好な性能を発揮し 1、Ryzen 2nd Gen Threadripper 2990WXとRadeon Pro W5700のシステムと比較して43%高速で、全結果の97%を上回る性能を示しました 1。最も要求の厳しい5K解像度(5120×2880)のVRMark Blue Roomにおいても、全結果の82%を上回る性能を記録しており 1、VRコンテンツの制作や体験においてもW6800が十分な性能を持つことが示唆されます。

特定のゲームタイトルにおける性能

特定のゲームタイトルにおける性能として、Shadow of the Tomb Raider(1440p、最高設定、ウルトラレイトレーシングシャドウ品質)では平均69 fps、Dirt 5(1440p、同様の設定)では100 fpsという結果が得られています 1。これらの結果は、W6800が最新のゲームタイトルにおいても、高解像度かつ高画質設定で快適にプレイできるだけの性能を持っていることを示唆しています。

AMD FidelityFX Super Resolution (FSR) の影響

AMDのアップスケーリング技術であるFidelityFX Super Resolution(FSR)をGodfallとTerminator Resistance(1440p、最高設定)でウルトラ品質で使用した場合、画質に目立った差は見られず、フレームレートが20%向上しました 1。これは、FSRのような技術を活用することで、W6800はより高いフレームレートを実現し、ゲーミング体験を向上させることが可能であることを示しています。この技術は、プロフェッショナルな可視化ワークフローにおいても、パフォーマンス向上のために応用できる可能性があります。

コンシューマー向けグラフィックカードとの比較

Radeon PRO W6800のゲーミング性能は、コンシューマー向けのRadeon RX 6800 XTと同程度であるとされています 5。しかし、NVIDIA GeForce RTX 4080のようなハイエンドコンシューマー向けカードと比較すると、性能は劣ります 5。一部のユーザーレビューでは、Radeon RX 7700XT/7800XTの方が特定のワークロードにおいてはより高速である可能性も示唆されています 12。ただし、プロフェッショナルな用途においては、ゲーミング性能だけでなく、ドライバの安定性やサポート体制がコンシューマー向けカードよりも重視される傾向にあります 1

ベンチマークソフト (Benchmark Software)Radeon PRO W6800 スコア/FPS (Radeon PRO W6800 Score/FPS)NVIDIA GeForce RTX 4080 スコア/FPS (NVIDIA GeForce RTX 4080 Score/FPS)
3DMark Time Spy11941 ポイント (Points)約 25341 ポイント (Approximately 25341 Points)
3DMark Fire Strike24576 ポイント (Points)約 45551 ポイント (Approximately 45551 Points)
VRMark Blue Room約 100 FPS (Approximately 100 FPS)

CPUとの組み合わせによる性能差

Radeon PRO W6800の性能は、組み合わせるCPUによっても影響を受ける可能性があります。

Ryzen 5000シリーズのシステムを用いたテストでは 2、特にRyzen 5950X CPU(16コア)との組み合わせでLumion 11.5のベンチマークが実施されました 3。その結果、小規模なシーンではNvidia RTX A5000がリードしましたが、28GBものメモリを必要とする大規模なシーンでは、W6800がメモリ容量の優位性によりトップの性能を発揮しました。また、Threadripper Pro 3975WXとの組み合わせでのテスト結果も一部参照されており 13、Ryzen Threadripper 3990Xとの組み合わせでSolidworksのテストを実施した例では 14、大規模アセンブリのロードやレンダリングにおいて良好な性能を発揮し、Solidworks Visualizeでのレンダリングも高速に行われました。これらの結果から、Radeon PRO W6800はAMD Ryzenプロセッサとの組み合わせで良好な性能を発揮する可能性が高いと考えられます。特に、多くのコアを持つRyzen Threadripperシリーズとの組み合わせは、レンダリングなどの並列処理を多用するワークロードにおいて高いパフォーマンスを発揮する可能性があります。

AMD Smart Access Memory(SAM)は、CPUがGPUのオンボードメモリに直接アクセスできるようにする技術であり 3、一部のプロフェッショナルワークロードでパフォーマンス向上が期待されていますが、現時点では詳細な情報は公開されていません 3。SAMは、CPUとGPU間で頻繁にデータ転送が発生するようなタスクにおいて、W6800の性能をさらに引き出す可能性があると考えられます。

競合製品との比較

Radeon PRO W6800は、NVIDIAのRTX A4000およびRTX A5000といった競合製品としばしば比較されます 3。特に、価格帯が近いRTX A5000と比較されることが多いようです。Lumionの小規模なシーンやSolidworks Visualizeなど、一部のアプリケーションではRTX A5000が性能でリードするものの 3、メモリ容量が重要な大規模なシーンではW6800が優位性を示します 3。DirectX 12のラスタライズ性能においては、W6800がRTX A4000と同等かそれ以上の性能を示す場合もありますが、リアルタイムレイトレーシングの性能では遅れを取る傾向があります 3。Enscape 3.0のテストでは、W6800はRTX A4000を上回るものの、RTX A5000にはわずかに劣るという結果が出ています 3。Autodesk VRED Professional 2022のテストでは、アンチエイリアシングの設定によって性能差が大きく変動し、オフの場合は比較的良好な性能を示すものの、オンにするとRTX A5000に大きく遅れを取ることが報告されています 3。これらの比較から、W6800とNVIDIAの競合製品との性能差は、アプリケーションやワークロードによって異なることがわかります。W6800はその大容量メモリを活かせるタスクで強みを発揮し、RTX A5000はより幅広いワークロードで安定した高い性能を示す可能性がある一方、RTX A4000はより低い価格で購入できるという利点があります。

NVIDIA GeForce RTX 4080などのハイエンドコンシューマー向けカードと比較すると、3DMarkのようなゲーミングベンチマークではRTX 4080が大幅に性能を上回ります 5。ただし、プロフェッショナルなワークロードにおける性能差は、使用するアプリケーションによって異なる可能性があります 12。また、RTX 4080 Superの方がRadeon PRO W6800よりも価格が安い場合もあるという指摘もあります 12。コンシューマー向けのハイエンドカードは、価格性能比が高い場合があるものの、プロフェッショナルな利用においてはドライバの安定性や認証、ECCメモリの有無などが重要な要素となるため、単純な性能比較だけでは判断できない側面があります。

Radeon Pro W6800の価格は$2,249であり 3、NVIDIA RTX A4000は$1,000、RTX A5000は$2,250で販売されています 3。RTX A4000は半分の価格で一定の性能を発揮するため、コストパフォーマンスが高いと評価される可能性があります 3。しかし、W6800の持つ32GBのメモリは、メモリ容量がボトルネックとなるワークロードにおいては、その価格に見合うだけの価値を提供すると考えられます 3。したがって、コストパフォーマンスの評価は、ユーザーが求めるメモリ容量と性能によって大きく左右されると言えるでしょう。

特定のソフトウェアにおける性能

Radeon PRO W6800は、特定のソフトウェアにおいてどのような性能を発揮するのでしょうか。

Lumionでは、大規模なモデルを用いたテストでW6800がトップの性能を示しました。一方、比較的メモリ使用量の少ない小規模なモデルでは、RTX A5000がリードしました 3。また、Radeon Pro Viewport Boost機能を利用することで、最大39%の性能向上が見込めることが報告されています 7

Enscapeを用いたテストでは、Radeon PRO W6800はスムーズな体験を提供し、RTX A4000を上回る性能を示しましたが、RTX A5000にはわずかに劣るという結果でした 3

Autodesk VRED Professionalのテストでは、アンチエイリアシングの設定によって性能が大きく変動しました。アンチエイリアシングが無効の場合は比較的良好な性能を示しましたが、有効にするとRTX A5000に大きく遅れを取るという結果になりました 3

Solidworksでは、大規模なアセンブリのロードや操作、レンダリングにおいて良好な性能を発揮することが報告されています 14

Twinmotionでは、Radeon Pro Viewport Boost機能によって性能向上が期待できるとされています 7

Unreal Engineは非常に高いGPU処理能力を必要とするソフトウェアですが 7、リアルタイムレイトレーシングにおいてはNVIDIA GPUに遅れを取る傾向があることが示唆されています 3

これらの結果から、Radeon PRO W6800の性能は、使用する特定のソフトウェアによって大きく異なることがわかります。メモリ容量を多く必要とするアプリケーションでは強みを発揮する一方で、レイトレーシングを多用するアプリケーションでは競合製品に劣る可能性があるため、使用するソフトウェアに合わせてGPUを選択することが重要です。

消費電力と動作温度

Radeon PRO W6800の公称TDP(熱設計電力)は250Wです 3。実際の負荷時の消費電力については、あるストレステスト中に約212Wが観測された例があります 13。また、3DMark Fire Strike Ultraストレステストにおいては、同等のゲーミングカードであるRX 6800と同程度の消費電力であったと報告されています 2。アイドル時の消費電力については、測定環境によってばらつきが見られるようです 11。これらの情報から、W6800の実際の消費電力は公称TDPを下回る場合があり、比較的電力効率が高いと考えられます。特に、同等のメモリ容量を持つ競合製品と比較して、電力効率が良い可能性があります。

サーマル性能については、VRMarkのワークロード下ではGPU温度は最大約81℃に達し 11、1時間のストレステストでも88℃を超えなかった例があります(ただし、オープンエアテストベンチでの結果です) 13。ワークステーションGPUは、一般的なGPUよりも高い温度耐性を持つように設計されているため、これらの温度は許容範囲内であると考えられます。冷却ソリューションとしては、ブロワーファンによる冷却方式が採用されており 3、これは特に複数のGPUを搭載する環境での利用に適しています。ブロワーファンは、カードの前面から吸気し、背面へ排気する設計になっているため、システム内のエアフローを効率的に管理するのに役立ちます。

項目 (Item)Radeon PRO W6800
TDP250 W
負荷時消費電力 (Load Power Consumption)約 212 W
アイドル時消費電力 (Idle Power Consumption)ばらつきあり (Varies)
最大GPU温度 (Max GPU Temperature)約 81-88 ℃

性能とのバランス評価

AMD Radeon PRO W6800は、レンダリング、CAD、VRコンテンツ制作など、幅広いプロフェッショナルワークロードに対応可能な高い性能を持つグラフィックカードです 1。特に、その32GBという大容量のメモリは、大規模なデータセットを扱うワークロードにおいて大きな強みを発揮します 3。一方で、レイトレーシング性能は競合製品と比較してやや見劣りする可能性があり 3、ゲーミング性能はコンシューマー向けの同等チップに近いものの、ハイエンドゲーミングカードには及びません 5

消費電力は比較的低く、動作温度も安定しており 2、電力効率と冷却性能のバランスが取れていると言えるでしょう 2

様々なプロフェッショナルなユースケースへの適合性としては、3Dアニメーション、大規模なビジュアライゼーションプロジェクト、8Kエンコーディングなど、高いメモリ容量を必要とする用途に最適です 2。CADや3Dデザインなどのワークロードにも適していますが、レイトレーシングを多用する場合は競合製品も検討する必要があるかもしれません 3。VRコンテンツ制作においても良好な性能を発揮することが期待できます 1。ただし、科学技術計算などのFP64性能を重視する用途には、より適したモデルが存在します 4

総合的に見ると、Radeon PRO W6800は、特に大容量メモリを必要とするプロフェッショナルなユースケースにおいて、強力なパフォーマンスと優れた電力効率を提供するバランスの取れたグラフィックカードであると評価できます。しかし、レイトレーシング性能や特定のソフトウェアにおける最適化においては、競合製品との比較検討が重要となるでしょう。

まとめ

AMD Radeon PRO W6800は、32GBのECC GDDR6メモリとRDNA2アーキテクチャを特徴とするハイエンドワークステーション向けグラフィックカードであり、レンダリング、CAD、VRコンテンツ制作など、幅広いプロフェッショナルワークロードにおいて、前世代から大幅な性能向上を実現しています。特に、大規模なビジュアライゼーションデータセットやメモリ容量を必要とするワークロードで優れた性能を発揮します。競合製品と比較して、メモリ容量では優位性を持つ一方、レイトレーシング性能や特定のソフトウェアにおける最適化では劣る場合があること、ゲーミング性能はコンシューマー向けの同等チップに近いものの、ハイエンドゲーミングカードには及ばないことがわかりました。消費電力は比較的低く、サーマル性能も良好であり、電力効率と冷却性能のバランスが取れています。

これらのベンチマーク分析に基づくと、大規模な3Dモデルや高解像度テクスチャを扱う建築家、エンジニア、3Dアーティストにとって、Radeon PRO W6800は非常に魅力的な選択肢となります。特に、Lumionのようなメモリ容量を重視するアプリケーションを使用するユーザーには強く推奨できます。一方で、レイトレーシングを多用するワークフローが中心の場合は、NVIDIA RTXシリーズのグラフィックカードも比較検討することを推奨します。予算が限られている場合は、NVIDIA RTX A4000のようなコストパフォーマンスの高い選択肢も考慮に入れるべきでしょう。最終的な選択は、個々のワークロードの要件、予算、そして使用する主要なソフトウェアによって決定されるべきです。

引用文献

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  13. A GPU you’ve never heard of – AMD Radeon Pro W6800 – YouTube, 3月 22, 2025にアクセス、 https://m.youtube.com/watch?v=NaK4tlwzv3Y&pp=ygUGI3c2ODAw
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