AMD Ryzen 3 7335U ベンチマークまとめ

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はじめに

本レポートは、AMD Ryzen 3 7335Uモバイルプロセッサについて、主に日本語のウェブサイトから収集した情報を基に、その技術仕様、性能ベンチマーク、競合製品との比較、そして実際の使用環境における評価を包括的に分析し、まとめたものです。

Ryzen 3 7335Uは、AMDのRyzen 7000シリーズモバイルプロセッサ・ラインナップにおいて、エントリークラスからミドルレンジの薄型軽量ノートPC市場を主なターゲットとしています。このプロセッサは、比較的新しい「Zen 3+」CPUアーキテクチャと、統合グラフィックスとして「RDNA 2」アーキテクチャを採用しており、前世代からの性能向上と機能追加が図られています 1

本レポートでは、まずプロセッサの基本的な仕様を解説し、次に主要なベンチマークソフトウェアを用いた性能測定結果を示します。続いて、それらのスコアに基づいた性能分析、主要な競合CPUとの比較検討、そしてRyzen 3 7335Uを搭載したノートPCの実機レビューから得られる使用感に関する情報を集約し、最後に総合的な評価を提示します。

1. AMD Ryzen 3 7335U プロセッサの基本仕様

AMD Ryzen 3 7335Uは、最新のモバイルコンピューティング環境に対応するための様々な技術的特徴を備えています。

  • CPUコアとスレッド: 4つのCPUコアと、SMT (Simultaneous Multithreading) 技術による8スレッド処理に対応しています 1。これは、前世代のRyzen 3 5300U (同じく4コア/8スレッド 7) と物理的なコア/スレッド数は同じですが、内部のアーキテクチャが進化しています。複数のアプリケーションを同時に実行するマルチタスク処理において、4コア/4スレッド構成のCPUと比較して有利な性能を発揮します。
  • クロック速度: ベースクロック(定格周波数)は3.0 GHzに設定されています 1。負荷がかかった際には、最大ブーストクロックとして最大4.3 GHzまで周波数が上昇します 1。ただし、この最大ブーストクロックは主に単一のコアが短時間で到達できる理論上の最高値であり、実際の動作周波数は実行中のタスクの負荷、ノートPCの冷却能力、そして製造メーカーによって設定されるTDP(熱設計電力)によって変動します。
  • キャッシュ容量: CPU内部の高速メモリであるキャッシュは以下の構成です。
  • L1キャッシュ: 合計256KB。各コアに64KBが割り当てられ、その内訳は命令キャッシュ32KBとデータキャッシュ32KBです 5。一部情報源 4 では L1 Instruction/Data Cache が 8 x 32KB と記載されていますが、4コア構成であるため、4 x 32KB (Instruction) + 4 x 32KB (Data) = 256KB が正確な値と考えられます。AMD公式情報 1 の512KBという記載は、L1キャッシュ全体 (命令+データ x4) を指している可能性があります。
  • L2キャッシュ: 合計2MB。各コアに512KBが割り当てられています 1
  • L3キャッシュ: 合計8MB。全コアで共有されるキャッシュです 1。これは旧世代のRyzen 3 5300Uが搭載していた4MB 7 から倍増しており、データアクセスの高速化を通じてCPU性能全体の向上に寄与する重要な改善点です。
  • TDP (Thermal Design Power): プロセッサの消費電力と発熱量の目安となるTDPは、標準で28Wに設定されています 1。これは、従来のRyzen Uシリーズで一般的だった15Wよりも高い値であり、より高い持続性能を発揮させることを意図した設計と言えます。さらに、Configurable TDP (cTDP) として、ノートPCメーカーは15Wから30Wの範囲でTDPを調整することが可能です 1
  • このTDP設定の柔軟性は、搭載されるノートPCの性格を左右する重要な要素です。TDPはCPUが安定して動作できる電力と発熱の上限を規定し、特に複数のコアを長時間使用する際の持続的なクロック速度、すなわちマルチコア性能に直接的な影響を与えます。15Wに設定された場合、従来の15WクラスのCPU(例: Ryzen 3 5300U 7, Intel Core i3-1315U 9)と同様の薄型・軽量設計が可能になりますが、CPUの最大性能は抑制されます。一方、標準の28Wや上限の30W設定を採用する場合、より高い演算性能を引き出すことができますが、それに伴う発熱を適切に処理するための、より強力な冷却システムを備えたノートPCが必要となります。したがって、同じRyzen 3 7335Uを搭載していても、製品のターゲット(携帯性重視か、性能重視か)に応じてメーカーがTDPを調整するため、実際の性能やバッテリー持続時間には差が生じる可能性があります。ベンチマーク結果などを比較検討する際には、テストされたPCのTDP設定や、選択されているパフォーマンスモード 10 を考慮に入れることが不可欠です。
  • 製造プロセスとアーキテクチャ:
  • 製造プロセスにはTSMCの6nm FinFET技術が採用されています 1。これは、Ryzen 5000シリーズの一部(Lucienne世代、Zen 2アーキテクチャ)で用いられていた7nmプロセス 7 から微細化が進んでいます。
  • CPUアーキテクチャは「Zen 3+」(開発コードネーム: Rembrandt-R)です 1。これは、Ryzen 5000シリーズの一部(Cezanne世代)で採用された「Zen 3」アーキテクチャ 11 をベースに改良を加えたもので、特に電力効率の改善や内蔵GPUの強化が図られています 10
  • メモリサポート: 最新のメモリ規格に対応しています。
  • サポートするメモリタイプはDDR5-4800およびLPDDR5-6400です 1。旧世代のRyzen 3 5300Uが対応していたDDR4 7 と比較してメモリ帯域幅が大幅に向上しており、これはCPU性能だけでなく、特にシステムメモリをビデオメモリとして利用する内蔵GPUの性能に大きな影響を与えます。
  • 搭載可能な最大メモリ容量は64GBです 1
  • メモリチャンネルは2チャンネル構成に対応しています 1
  • PCI Express: 高速なデータ転送規格であるPCI Express 4.0に対応しています 1。旧世代のRyzen 3 5300Uが対応していたPCIe 3.0 7 から帯域幅が倍増しており、最新のNVMe SSDなどの性能を最大限に引き出すことが可能です。CPUからは合計20レーンが提供され、そのうち16レーンがグラフィックスカードやNVMe SSDなどの接続に利用可能です 1
  • 内蔵GPU (iGPU): プロセッサに統合されたグラフィックス機能は以下の通りです。
  • モデル名は「AMD Radeon 660M」です 1
  • アーキテクチャには「RDNA 2」が採用されています 10。これは、Ryzen 5300Uなどが搭載していた旧世代の「Vega」アーキテクチャ 7 から大きく進化しており、描画性能の向上に加え、ハードウェアレイトレーシングへの対応など機能面でも強化されています 10
  • 内部の演算ユニット(Compute Units, CU)の数は4基です 1
  • GPUの動作周波数は最大1800 MHz (1.8 GHz) です 1。これはRyzen 3 5300Uに内蔵されていたRadeon Vega 6の最大1500 MHz 7 よりも高速化されています。
  • ソケット: CPUがマザーボードに接続されるソケットタイプはFP7 1 またはFP7r2 4 とされています。これらは物理的に互換性のあるパッケージングと考えられ、旧世代のFP6ソケット 7 とは異なります。
  • その他: SMT (Simultaneous Multithreading) に対応し、1コアあたり2スレッドの同時処理が可能です 1。また、最大40Gbpsの転送速度を持つUSB4規格 3 や、最新の無線LAN規格であるWi-Fi 6E 10 など、最新の接続規格をサポートしており、周辺機器との高速なデータ通信が可能です。

表1: AMD Ryzen 3 7335U 基本仕様

仕様項目詳細出典例
CPUコア / スレッド4コア / 8スレッド1
ベースクロック3.0 GHz1
最大ブーストクロック最大 4.3 GHz1
L1キャッシュ256 KB (64KB/コア)1
L2キャッシュ2 MB (512KB/コア)1
L3キャッシュ (共有)8 MB1
標準TDP28 W1
Configurable TDP (cTDP)15 W – 30 W1
CPUアーキテクチャZen 3+ (Rembrandt-R)1
製造プロセスTSMC 6nm FinFET1
対応メモリDDR5-4800, LPDDR5-6400 (2チャンネル)1
PCI Express バージョンPCIe 4.01
内蔵GPUモデルAMD Radeon 660M1
GPUアーキテクチャRDNA 210
GPUコア数 (CU)41
GPU最大周波数1800 MHz1
CPUソケットFP7 / FP7r24

この表は、Ryzen 3 7335Uの基本的な技術特性をまとめたものです。これにより、プロセッサの核心的な能力を一目で把握でき、後続の性能評価セクションで議論される内容の基礎情報となります。

2. 各種ベンチマークスコア

ここでは、日本語のPCレビューサイトや主要なベンチマークデータベースから収集したAMD Ryzen 3 7335Uの性能測定結果(ベンチマークスコア)を、テストの種類ごとに示します。これらのスコアは、プロセッサの演算能力やグラフィックス性能を客観的に評価するための指標となります。ただし、特に断りのない限り、これらの数値は特定のテスト環境下での参考値であり、使用されるノートPCのメモリ容量、メモリ速度、チャンネル構成(シングルかデュアルか)、メーカーによるTDP設定、OSのバージョン、グラフィックスドライバのバージョンなど、様々な要因によって変動する可能性がある点にご留意ください。

  • Cinebench R23 (CPUの3Dレンダリング性能測定):
  • マルチコア性能: CPUの全コアを使用した際のレンダリング性能を示します。
  • for-real.jp 10 が実施したテストでは、搭載メモリ容量と電源モード(バランスモード、パフォーマンスモード)の設定によってスコアに幅が見られ、メモリ8GB/バランスモードで5454点、メモリ24GB/バランスモードで5658点、メモリ24GB/パフォーマンスモードでは6073点という結果でした。
  • 一方、LaptopMedia 12 がLenovo Yoga 7 16という機種で測定した際には、9676点という非常に高いスコアが記録されています。
  • これらの結果に見られるCinebenchスコアの大きなばらつきは、Ryzen 3 7335Uの性能特性を理解する上で重要です。同じCPUでありながら、約6000点 10 から約9700点 12 まで大きな差が生じている原因として、主にTDP設定と冷却性能の違いが考えられます。12 の9000点台後半というスコアは、おそらくTDPが上限の30W近くに設定され、かつ強力な冷却システムを持つノートPC(例: Yoga 7 16 12)で達成された、理想的な条件下でのポテンシャルを示すものと推測されます。対照的に、10 の5000点台から6000点台前半のスコアは、より一般的なTDP設定(例えば15Wから25Wの範囲)や、薄型筐体などによる熱的な制約(サーマルスロットリング)が存在する環境下での性能を表している可能性があります。また、10 のテスト内でもメモリ構成や電源モードによってスコアが変動している(5454点から6073点へ)ことからも、テスト環境の影響が大きいことがわかります。したがって、Cinebench R23のマルチコアスコアは、TDP設定と冷却能力に極めて敏感であり、単一のスコアだけを見て性能を判断するのは適切ではなく、複数の情報源やレビュー対象の具体的な機種情報を参照することが推奨されます。
  • シングルコア性能: CPUの単一コアあたりの性能を示します。
  • for-real.jp 10 のテストでは、メモリ8GB/バランスモードで1314点、メモリ24GB/パフォーマンスモードで1395点と、マルチコアほどの大きな変動は見られませんでした。
  • notebookcheck.net 14 の比較記事では、上位モデルであるRyzen 5 7535HSの平均スコアが1467点とされており、Ryzen 3 7335Uのシングルコア性能はこれよりもやや低い水準にあると推測されます。
  • Geekbench 6 (CPUの汎用演算性能測定):
  • マルチコア性能:
  • for-real.jp 10 のテストでは、メモリ8GB/バランスモードで5391点、メモリ24GB/パフォーマンスモードで6027点という結果でした。Cinebench R23と同様に、設定によるスコア変動が見られます。
  • シングルコア性能:
  • for-real.jp 10 のテストでは、メモリ8GB/バランスモードで1799点、メモリ24GB/パフォーマンスモードで1847点でした。
  • rankbench.com 15 のランキングデータベースには、Ryzen 3 7335Uのスコアとして1842点がリストされており、これは10のパフォーマンスモード時のスコアとほぼ一致します。
  • 公的なベンチマークブラウザ 16 のリストにはRyzen 3 7335Uの直接的な記載はありませんが、同じZen 3世代でTDP 15WのRyzen 3 7330Uが1593点であることを考慮すると、Zen 3+アーキテクチャでTDP 28WのRyzen 3 7335Uが1800点台後半のスコアを記録するのは、妥当な性能向上と言えます。
  • PassMark CPU Mark (CPUの総合的な処理能力評価):
  • cpubenchmark.net のデータベースによると、Ryzen 3 7335Uの平均スコアは約12,558点です(サンプル数77、エラーマージン低)6。ビジネス向けのPROモデル (Ryzen 3 PRO 7335U) もほぼ同等の約12,463点を記録しています 4
  • for-real.jp 10 のテストでは、メモリ24GB/バランスモードで11648点、メモリ24GB/パフォーマンスモードで13300点という結果が得られており、cpubenchmark.net の平均値はこの範囲内に収まっています。
  • cpubenchmark.net のラップトップCPUランキング 17 では、Intel Core i5-1334U (13377点) やIntel Core 5 220U (13320点) といったプロセッサに近いスコア帯に位置付けられています。
  • PassMark Single Thread Rating (単一スレッド性能評価):
  • cpubenchmark.net のデータベースにおける平均スコアは約3,041点です 6。PROモデルでは約3,103点となっています 4
  • PCMark 10 (実際のアプリケーション使用を想定した総合PC性能測定):
  • for-real.jp 10 が実施したテスト結果は以下の通りです。
  • Overall (総合スコア): メモリ8GB/バランスモードで4820点、メモリ24GB/パフォーマンスモードで5317点。
  • Essentials (Webブラウジング、アプリ起動など基本操作): 8318点から9425点。
  • Productivity (文書作成、表計算などオフィス作業): 7499点から8294点。
  • Digital Content Creation (写真・動画編集などコンテンツ作成): 4584点から5218点。
  • これらのPCMark 10の結果は、Ryzen 3 7335Uの実用性能を考える上で示唆に富んでいます。特にEssentials(基本操作)やProductivity(オフィス作業)のスコアは比較的高く、EssentialsではCore i5-1235U搭載機と同等のスコアも記録されています 10。これは、CPUの純粋な演算能力を測るCinebenchやGeekbenchでは競合製品や上位モデルに劣る場面が見られる 10 のとは対照的です。PCMark 10は、ファイル操作、ウェブブラウジング、アプリケーションの起動、オフィスソフトウェアの操作など、より実際のPC利用に近いシナリオをシミュレートします。これらのタスクは、必ずしもCPUの最大演算性能だけに依存するわけではなく、ストレージの速度やシステム全体の応答性なども影響します。このことから、Ryzen 3 7335Uは、CPUやGPUへの負荷が極端に高くない日常的な作業(Web閲覧、Officeソフト利用など)においては、CPUベンチマークのスコアが示す印象よりも快適に動作する可能性があることを示唆しています。ただし、Digital Content Creation(コンテンツ作成)のスコアは他の項目に比べて伸び悩んでおり、特にメモリが8GBの構成では低い値にとどまっている 10 ことから、写真編集や動画編集といった負荷の高いタスクでは、CPUおよびGPU性能の限界が見えやすく、メモリ構成(容量や速度)もパフォーマンスに影響を与えると考えられます。
  • 3DMark (GPUの3Dグラフィックス性能測定):
  • Time Spy Graphics: DirectX 12ベースのテストで、主にゲーム性能の指標となります。
  • for-real.jp 10 のテストでは、メモリ8GB/バランスモードで2025点、メモリ24GB/パフォーマンスモードで2690点と、設定による大きなスコア差が見られました。
  • ベンチマーク提供元であるUL Benchmarksのサイト 18 では、Radeon 660Mのレビューが一時的に利用不可となっており、公式な平均スコア等は確認できませんでした。
  • Radeon 660Mの性能を評価する上で、メモリ構成の重要性が浮き彫りになります。3DMark Time Spy Graphicsのスコアが、メモリ構成(8GB vs 24GB)と電源モードによって2025点から2690点へと大きく変動している 10 ことは、この点を明確に示しています。内蔵GPUは、システムメモリの一部をビデオメモリ(VRAM)として共有して動作します。そのため、メモリの帯域幅、すなわちメモリの速度(例: DDR5-4800)とチャンネル数(シングルチャンネルかデュアルチャンネルか)が、グラフィックス性能に直接的な影響を与えます。一般的に、メモリ8GBの構成はシングルチャンネルで動作している可能性が高く、帯域幅が制限されます。一方、24GB構成(例えば8GB+16GBなど)は非対称ながらもデュアルチャンネル(Flexモード)として動作し、より広い帯域幅を利用できる可能性が高いです。RDNA 2アーキテクチャ 10 は、旧世代のVegaアーキテクチャ 7 よりも高い描画能力を持ちますが、その性能を十分に引き出すためには、十分なメモリ帯域幅の確保が不可欠です。したがって、Radeon 660Mのグラフィック性能を期待してRyzen 3 7335U搭載PCを選ぶ際には、メモリがデュアルチャンネル構成(例: 8GBモジュールx2枚で合計16GBなど)となっているかを確認することが強く推奨されます。シングルチャンネル構成の場合、GPU性能が大幅に低下し、エントリークラスの内蔵GPUと同程度の性能にとどまる可能性があります。また、パフォーマンスモードを選択することも、GPU性能の向上に寄与します。
  • FFXIVベンチマーク (実際のゲーム性能指標):
  • 人気MMORPG「ファイナルファンタジーXIV」の公式ベンチマークソフトを用いたテスト結果です。
  • for-real.jp 10 のテスト結果 (解像度1920×1080、標準品質設定):
  • メモリ8GB/バランスモード: 2051点(評価: 動作困難)
  • メモリ24GB/パフォーマンスモード: 3104点(評価: 設定変更が必要)
  • これらのスコアは、比較的要求スペックの高い最新の3Dゲームを高画質設定で快適にプレイするには性能が不十分であることを示唆しています。ターゲットとなるのは、より要求スペックの低いカジュアルゲーム、数世代前のゲーム、あるいは画質設定を大幅に下げることを前提としたプレイになるでしょう。

表2: AMD Ryzen 3 7335U ベンチマークスコア概要

ベンチマークテスト指標スコア例 (出典: )備考
Cinebench R23マルチコア5454 – 6073 (10, 環境依存) <br> 9676 (12, 高TDP環境)3Dレンダリング性能 (全コア)。TDPと冷却に大きく依存。
シングルコア1314 – 1395 (10)3Dレンダリング性能 (単一コア)。
Geekbench 6マルチコア5391 – 6027 (10)汎用演算性能 (全コア)。
シングルコア1799 – 1847 (10) <br> 1842 (15)汎用演算性能 (単一コア)。応答性に影響。
PassMark CPU Mark総合スコア平均: 12558 (6) <br> 11648 – 13300 (10, 環境依存)CPU総合性能。
PassMark Single Threadシングルスレッド平均: 3041 (6)単一スレッド性能。
PCMark 10Overall4820 – 5317 (10)実アプリケーション想定の総合性能。
Essentials8318 – 9425 (10)基本操作 (Web閲覧、アプリ起動等)。
Productivity7499 – 8294 (10)オフィス作業 (文書作成、表計算等)。
Digital Content4584 – 5218 (10)コンテンツ作成 (写真・動画編集等)。
3DMark Time SpyGraphics Score2025 – 2690 (10, 環境依存)DirectX 12ベースのGPU性能。メモリ構成に大きく依存。
FFXIV Benchmark標準品質 (FHD)2051 (動作困難) – 3104 (設定変更必要) (10)実ゲーム性能の一指標。メモリ構成に依存。

この表は、収集したベンチマークデータを集約し、Ryzen 3 7335Uの性能プロファイルを多角的に示すものです。特に、スコアが環境(メモリ構成、電源モード、TDP設定)によって変動する可能性を考慮に入れることが重要です。

3. パフォーマンス評価

前セクションで収集したベンチマークスコアに基づき、AMD Ryzen 3 7335UのCPU性能および内蔵GPU性能を評価します。

  • シングルコア性能:
  • Geekbench 6のシングルコアスコア(約1800点台半ば 10)やPassMark Single Thread Rating(約3041点 6)は、ウェブブラウジング、オフィスソフトの操作、OSの基本的な応答性といった日常的なコンピューティング体験において、まずまずのレベルにあることを示しています。
  • ただし、後述する競合製品との比較(セクション4)で詳しく触れますが、同世代のIntel Core i3プロセッサ(例: Core i3-1315U)と比較した場合、シングルコアのピーク性能ではやや見劣りする可能性があります 9
  • 採用されているZen 3+アーキテクチャ 1 は、前世代のZen 3 11 からの改良版であり、クロックあたりの命令実行数(IPC)の向上は比較的小規模かもしれませんが、最大4.3 GHzという比較的高めの最大ブーストクロック 1 が、シングルコア性能を下支えしています。
  • マルチコア性能:
  • 4コア8スレッド構成 1 は、複数のアプリケーションを同時に起動したり、バックグラウンドで処理を実行したりするようなマルチタスク環境において、コア数の少ないCPU(例: 2コア4スレッド)よりも明確に有利です。
  • Cinebench R23のマルチコアスコアに見られるように、その性能は搭載されるノートPCのTDP設定と冷却能力に大きく左右されます。理想的な冷却と高いTDP設定(例: 30W)が可能な環境では9000点台後半 12 という高いスコアを達成するポテンシャルを秘めていますが、より一般的な薄型ノートPCに搭載された場合、熱や電力の制約から5000点台後半から6000点台前半 10 のスコアになる可能性も考慮すべきです。
  • PassMark CPU Markの平均スコアが約12500点 6 であることは、一般的なビジネス用途(Officeソフト、Web会議、複数の業務アプリの併用など)や家庭での様々な用途(Web閲覧、動画視聴、簡単な写真管理など)において、多くの場合ストレスなく利用できる十分な性能レベルにあることを示唆しています(for-real.jp 10 が示す目安の10000点をクリア)。
  • 旧世代のエントリーモデルであるRyzen 3 5300U(Cinebench R23 マルチコア平均約5200点 7)と比較すると、Ryzen 3 7335Uは着実な性能向上を果たしています。これは、CPUアーキテクチャの改善(Zen 2からZen 3+へ 7)、共有L3キャッシュ容量の倍増(4MBから8MBへ 7)、そしてより高い標準TDP設定(15Wから28Wへ 7)といった複数の要因が複合的に寄与した結果と考えられます。
  • 内蔵GPU (Radeon 660M) のグラフィック性能:
  • 最新のRDNA 2アーキテクチャ 10 を採用したRadeon 660Mは、旧世代のRyzenプロセッサに搭載されていたVegaアーキテクチャベースの内蔵グラフィックス 7 から大幅な性能向上が期待できます。3DMark Time Spy Graphicsのスコア(最大約2700点 10)は、Intelの同世代Core i3に統合されているUHD Graphicsや、旧世代のRadeon Vega 6 7 よりも優れた3D描画能力を持つ可能性が高いことを示唆しています。
  • しかしながら、その性能ポテンシャルを十分に引き出すためには、システムメモリの構成が極めて重要です。特に、メモリがデュアルチャンネル構成で動作しているかどうかが性能を大きく左右します。メモリが8GBのシングルチャンネル構成の場合、性能が大幅に低下する可能性があり 10、パフォーマンスモードの選択も性能に影響を与えます。
  • FFXIVベンチマークの結果 10 が示す通り、最新のAAA(大作級)3Dゲームを高画質設定で快適にプレイすることは困難です。Radeon 660Mがターゲットとするのは、比較的負荷の軽いeスポーツタイトル(例: Valorant、Counter-Strike 2 13 など)を低~中設定でプレイすること、カジュアルゲーム、数世代前のゲーム、あるいは高解像度動画の再生支援(4Kストリーミングなど)といった用途になります。
  • コンテンツ作成における支援機能(例: 動画エンコード/デコードのハードウェアアクセラレーション)については、RDNA 2世代として基本的な機能は備わっていると考えられますが、その処理能力は専用のディスクリートGPU(dGPU)には遠く及びません。PCMark 10のDigital Content Creationスコアが他の項目に比べて伸び悩んでいる 10 ことからも、本格的な動画編集や3Dモデリングといったクリエイティブ作業には不向きと言えるでしょう。

4. 競合CPUとの性能比較

AMD Ryzen 3 7335Uの市場における立ち位置を明確にするため、主要な競合製品との性能比較を行います。

  • vs Intel Core i3-1315U (同世代・同クラス競合):
  • 基本仕様の比較: Intel Core i3-1315Uは、高性能コア(P-core)2基と高効率コア(E-core)4基を組み合わせた合計6コア / 8スレッド構成を採用しています。標準TDPは15Wですが、最大ターボパワーとして55Wまで許容されます 9。一方、Ryzen 3 7335Uは均質な4コア / 8スレッド構成で、標準TDPは28W(cTDPで15W~30Wに調整可能)です 1。このように、コアの構成(ハイブリッド vs 均質)と標準TDP設定が両者の大きな違いです。
  • マルチコア性能の比較:
  • PassMark CPU Markの平均スコアでは、Ryzen 3 7335U(約12558点 6、最大13300点 10)がCore i3-1315U(約11633点 9)を上回る傾向が見られます。これは、Ryzen 3 7335Uの標準TDPが28Wと、Core i3-1315Uの15Wよりも高く設定されていることが、持続的なマルチコア負荷時の性能に有利に働いているためと考えられます。
  • Cinebench R23のマルチコアテストにおいても、Ryzen 3 7335Uは高いTDP設定が可能な環境下で最大9676点 12 を記録しており、Core i3-1315Uの6577点 19 を大きく上回るポテンシャルを示しています。ただし、前述の通りRyzen 3 7335UのスコアはTDP設定と冷却能力への依存度が高いため、搭載されるノートPCによってはこの差が縮まる可能性もあります。
  • 一方で、Geekbench 6のマルチコアテストでは、Core i3-1315U(7430点 19)がRyzen 3 7335U(最大6027点 10)を上回る結果も報告されており、テストの種類や内容(短時間のバースト性能を重視するか、長時間の持続性能を重視するかなど)によって優劣が入れ替わる可能性があることを示唆しています。
  • シングルコア性能の比較:
  • Geekbench 6のシングルコアテストでは、Core i3-1315U(2293点 19)がRyzen 3 7335U(約1847点 10)を明確に上回っています。これは、Intelの高性能コア(P-core、Raptor Coveアーキテクチャ)のピーク性能が、Ryzen 3 7335UのZen 3+コアよりも高いことを示唆しています。
  • PassMark Single Thread Ratingにおいても、Core i3-1315U(3402点 9)がRyzen 3 7335U(約3041点 6)を上回っており、シングルスレッド処理能力ではCore i3-1315Uに分があると言えます。
  • 内蔵GPU性能の比較: Ryzen 3 7335Uに統合されているRadeon 660M(RDNA 2アーキテクチャ)1 は、Core i3-1315Uに統合されているIntel UHD Graphics(Xeアーキテクチャベースですが、実行ユニット数が少ない構成)と比較して、一般的に高い3Dグラフィックス性能を発揮すると期待されます。3DMark Time Spy Graphicsのスコア 10 も、この傾向を裏付けています。
  • 性能特性のトレードオフ: Ryzen 3 7335UとCore i3-1315Uの比較から、選択におけるトレードオフが見えてきます。データによれば、Ryzen 3 7335Uは、特にTDPが高く設定されたマシンにおける持続的なマルチコア性能(PassMark CPU Mark 6、高TDP時のCinebench R23 12)と、内蔵GPU性能 10 で有利な傾向があります。一方、Core i3-1315Uは、シングルコア性能(Geekbench 6 Single 19、PassMark Single Thread Rating 9)で明確なアドバンテージを持っています。Geekbench 6のマルチコアスコアはCore i3が有利な結果 10 もあります。これらの性能差の背景には、アーキテクチャの違い(Ryzenの均質なZen 3+コアに対し、Intelの高性能P-coreと高効率E-coreのハイブリッド構成)と、標準TDPの違い(Ryzenの28Wに対し、Intelの15W)があります。Ryzen 3 7335UのZen 3+コアは堅実な性能を提供しますが、IntelのP-coreはピーク性能に優れています。Ryzenの高い標準TDPはマルチコアの持続性能を支える一方で、IntelのE-coreは電力効率に貢献します。GPUに関しては、Radeon 660M (RDNA 2) がIntel UHD Graphicsよりも強力です。結論として、どちらのCPUを選択すべきかは、ユーザーの主な用途に依存します。内蔵GPUによるグラフィック性能(軽いゲームやメディア再生)や、動画エンコードなど持続的なマルチコア負荷がかかる作業を少しでも快適に行いたい場合は、Ryzen 3 7335U(特にTDPが高めに設定されたモデル)が適している可能性があります。一方で、WebブラウジングやOfficeソフトの利用など、アプリケーションの起動や操作時の瞬間的な応答性(シングルコア性能が影響)をより重視する場合には、Core i3-1315Uが有利な場面があるかもしれません。バッテリー持続時間については、CPUの効率だけでなく、TDP設定、実際の作業負荷、搭載バッテリー容量など多くの要因に左右されるため、一概にどちらが優れているとは言えません。
  • vs AMD Ryzen 3 5300U (旧世代):
  • 基本仕様の比較: Ryzen 3 5300Uは、Zen 2アーキテクチャを採用した4コア/8スレッドのプロセッサです。最大ブーストクロックは3.8GHz、L3キャッシュは4MB、標準TDPは15Wで、内蔵GPUはRadeon Vega 6です 7
  • CPU性能の比較:
  • Ryzen 3 7335Uは、Ryzen 3 5300Uに対して、CPUアーキテクチャの世代進化(Zen 2からZen 3+へ 7)、共有L3キャッシュ容量の倍増(4MBから8MBへ 7)、最大ブーストクロックの向上(3.8GHzから4.3GHzへ 7)、そして標準TDPの引き上げ(15Wから28Wへ 7)といった複数の点で改良が施されています。これらの改善により、シングルコア性能、マルチコア性能共にRyzen 3 5300Uを上回る性能を発揮します。
  • 具体的にCinebench R23のマルチコアスコアで比較すると、Ryzen 3 7335U(環境により5400点~9700点 10)は、Ryzen 3 5300U(平均5212点 7)を明確に超える性能を示します。シングルコア性能においても、Ryzen 3 7335U(1300点台~1400点弱 10)はRyzen 3 5300U(平均1115点 7)よりも高速です。
  • GPU性能の比較: Ryzen 3 7335Uに内蔵されたRadeon 660M(RDNA 2アーキテクチャ)1 は、Ryzen 3 5300UのRadeon Vega 6 7 と比較して、大幅に高性能です。これは、GPUアーキテクチャ自体の刷新(VegaからRDNA 2へ)に加え、システムメモリの帯域幅向上(DDR4からDDR5/LPDDR5へ 1)が大きく寄与しています。特に、ゲームやその他のグラフィックス負荷が高いアプリケーションにおいては、その性能差は顕著に現れるでしょう。
  • 結論: Ryzen 3 7335Uは、旧世代のRyzen 3 5300Uからの明確な世代進化を示しており、CPU性能(特に高TDP設定時)とGPU性能の両面で大きなアドバンテージを持っています。

表3: Ryzen 3 7335U と競合CPUのベンチマーク比較

ベンチマークテスト指標AMD Ryzen 3 7335U <br>(代表値/範囲)Intel Core i3-1315U <br>(平均値/代表値)AMD Ryzen 3 5300U <br>(平均値/代表値)出典例
Cinebench R23マルチコア~6000 – 9700 [注1]657752127
シングルコア~1395 [注2]– [注3]11157
Geekbench 6マルチコア~6027 [注2]7430– [注4]10
シングルコア~1847 [注2]2293– [注4]10
PassMark CPU Mark総合スコア1255811633~8500-9000 [注5]6, (23比較から推測)
PassMark Single Threadシングルスレッド30413402~2500-2600 [注5]6, (23比較から推測)

注釈:

[注1] Ryzen 3 7335UのCinebench R23マルチコアスコアはTDP設定と冷却に大きく依存するため範囲で記載 (10のパフォーマンスモード値と12の高TDP値)。

[注2] Ryzen 3 7335Uのスコアは10のパフォーマンスモード時の値を代表値として記載。

[注3] Core i3-1315UのCinebench R23シングルコアスコアは参照した資料19には記載なし。

[注4] Ryzen 3 5300UのGeekbench 6スコアは参照した資料22には記載なし。

[注5] Ryzen 3 5300UのPassMarkスコアは直接的なデータが見つからなかったため、他のCPUとの比較データ23などからのおおよその推定値。

この比較表は、Ryzen 3 7335Uと主要な競合製品の性能差を定量的に示しています。これにより、各CPUの得意な領域と不得意な領域、そして性能特性のトレードオフを視覚的に理解しやすくなります。

5. 実利用シーンでの評価

ベンチマークスコアだけでなく、AMD Ryzen 3 7335Uを実際に搭載したノートPCが、日常的な使用環境でどのようなパフォーマンスを発揮するのか、日本語のレビュー記事などから得られる評価情報をまとめます。

  • 搭載PCの例: Ryzen 3 7335Uは、Lenovo Yoga 7 16 12 や Lenovo ThinkBook 14 Gen 7 (AMD) 24 といった、比較的大画面でコストパフォーマンスを意識したモデルや、ビジネス向けノートPCのエントリー構成などで採用されている例が見られます。
  • 一般的なタスク (オフィスソフト、ブラウジング、動画視聴など):
  • for-real.jp 10 のレビュー担当者は、Ryzen 3 7335U搭載PCを主に執筆業務で使用しており、AI処理用の専用コア(NPU)が搭載されていない点を除けば、現時点での作業に特に不満はないと述べています。このことから、Microsoft Office(Word, Excel, PowerPoint)を用いた資料作成、Webサイトの閲覧、YouTubeなどの動画視聴といった、一般的なPC作業は問題なく快適にこなせると考えられます。
  • PCMark 10のベンチマークテストにおいて、Essentials(基本操作)やProductivity(オフィス作業)のスコアが比較的良好であったこと 10 も、これらの用途における快適な動作を裏付けています。
  • org.thehikaku.net 24 がレビューしたThinkBook 14 Gen 7 (AMD) は上位CPU搭載モデルでしたが、そのレビュー内でもWeb閲覧やOffice作業は快適であると評価されており、Ryzen 3 7335U搭載モデルでも同様の快適さが期待できるでしょう。
  • 軽度のクリエイティブ作業、カジュアルゲーム:
  • 画像編集: ディスプレイの色再現性が高い(例: sRGBカバー率100%)モデルであれば、趣味レベルでの写真の調整や簡単な画像編集作業は可能でしょう 24。ただし、高画素なRAWファイルの現像 24 や、多数のレイヤーを用いた複雑な編集作業では、処理に時間がかかる可能性があります。
  • 動画編集: フルHD解像度(1920×1080)程度の動画であれば、カット編集や簡単なテロップ挿入といった基本的な編集作業は可能かもしれません 24。しかし、複数の映像トラックを重ねたり、複雑なエフェクトを使用したり、あるいは4Kなどの高解像度素材を扱うような本格的な動画編集には、CPUおよびGPU性能の観点から厳しいと考えられます。PCMark 10のDigital Content Creationスコアが他の項目に比べて低めであったこと 10 も、この点を補強しています。
  • カジュアルゲーム: 内蔵GPUのRadeon 660M 1 は、旧世代の内蔵グラフィックスよりも性能が向上していますが、FFXIVベンチマークの結果 10 が示すように、グラフィックス負荷の高い最新の3Dゲームを快適にプレイするのは難しいです。画質設定を大幅に下げる、解像度を低くするといった調整を行えばプレイ可能なゲームの範囲は広がりますが、過度な期待は禁物です 10。特に、内蔵GPUの性能はメモリ構成(デュアルチャンネル動作か否か)に大きく影響されるため、少しでもゲームを楽しみたい場合はデュアルチャンネルメモリ構成のモデルを選ぶことが重要です。
  • バッテリー持続時間:
  • Ryzen 7000シリーズ(Zen 3+アーキテクチャ)は、前世代からの電力効率の改善が特徴の一つとして挙げられています 10
  • しかし、Ryzen 3 7335Uの標準TDPは28W 1 と、従来の省電力向けUシリーズ(15W)よりも高く設定されています。さらに、メーカーはcTDP機能により15Wから30Wの範囲でTDPを調整可能です 1
  • これらの要因が複合的に絡み合うため、実際のバッテリー持続時間は、搭載されるノートPCのバッテリー容量、メーカーによるTDP設定、ディスプレイの輝度、そしてユーザーの具体的な使用状況(実行するアプリケーションの種類や負荷)によって大きく変動します。
  • 参照したレビュー記事 for-real.jp 10 や org.thehikaku.net 24 では、Ryzen 3 7335U搭載モデルに特化した具体的なバッテリー駆動時間のテスト結果は見当たりませんでした。他の機種のレビュー 26 では実働約8時間という例も報告されていますが、CPUが異なる可能性もあり、直接比較はできません。
  • このように、バッテリー寿命の予測は困難です。Zen 3+アーキテクチャによる効率改善 10 は期待できるものの、標準TDPが28W 1 と比較的高く、さらにcTDPによって15Wから30W 1 という広い範囲で設定が変更されうるためです。バッテリー寿命は、単純化すれば「CPU効率 × 消費電力(負荷とTDP設定に依存) ÷ バッテリー容量」で決まります。Ryzen 3 7335U自体の効率が良いとしても、メーカーが性能を重視してTDPを高めに設定(例: 28W)していれば、消費電力は増加します。同じバッテリー容量のノートPCであっても、TDPが15Wに設定されたモデルと28Wに設定されたモデルでは、実際のバッテリー持続時間は大きく異なる可能性があります。したがって、「Ryzen 3 7335U搭載PC」という括りだけでバッテリー寿命を一概に評価することは難しく、購入を検討する際には、個別の機種レビューを参照し、そのモデルのバッテリー容量と、実際の使用状況を想定したバッテリーテスト結果(例: JEITA測定法に基づく駆動時間や、特定の作業を行った際の実働時間など)を確認することが不可欠です。
  • その他(筐体の質感、キーボードの使い勝手など):
  • ノートPCの筐体の素材やデザイン、キーボードの打鍵感や配列、タッチパッドの操作性、搭載されているインターフェース(USBポートの種類や数、SDカードスロットの有無など)、ディスプレイの品質(解像度、視野角、表面処理など)といった要素は、CPUの性能とは独立した、ノートPC製品固有の評価点です。参照したレビュー記事 27 では、これらの点について様々な評価(例: キーボードが打ちやすい 29, 視野角が広いIPSパネル 28, フルサイズのSDカードスロット搭載 29, テンキー付きだが配列にやや無理がある 30 など)がなされていますが、これらはRyzen 3 7335Uプロセッサ自体の評価とは切り離して考える必要があります。

6. 総括

AMD Ryzen 3 7335Uプロセッサに関する調査結果を総合的に評価します。

  • CPU性能: 4コア8スレッド構成とZen 3+アーキテクチャにより、Ryzen 3 7335Uはウェブブラウジング、Officeソフト利用、動画視聴といった日常的なタスクや、一般的なビジネス用途には十分なCPU性能を提供します。特に、ノートPCメーカーによってTDPが高めに設定されている場合(例: 28Wや30W)、マルチコア性能は良好なレベルに達します。ただし、シングルコアのピーク性能においては、同世代の競合製品であるIntel Core i3プロセッサに劣る可能性があります。
  • GPU性能: プロセッサに内蔵されたRadeon 660Mグラフィックスは、最新のRDNA 2アーキテクチャを採用しており、旧世代のRyzen 3プロセッサや競合するIntel Core i3プロセッサの内蔵GPUと比較して、優れた3Dグラフィックス性能を持っています。しかし、その性能を最大限に引き出すためには、システムメモリがデュアルチャンネル構成で動作していることが強く推奨されます。最新のAAAタイトルを高画質設定でプレイするには力不足ですが、負荷の軽いeスポーツタイトル、カジュアルゲーム、高解像度動画の再生などには十分対応可能です。
  • 消費電力とバッテリー持続時間: 標準TDPは28Wと設定されていますが、cTDP機能によりメーカーは15Wから30Wの範囲で動作設定を調整可能です。Zen 3+アーキテクチャにより電力効率は改善されていますが、実際のバッテリー持続時間は、搭載されるノートPCのバッテリー容量、メーカーによるTDP設定、およびユーザーの使用状況によって大きく変動するため、個別の製品レビューを確認することが重要です。
  • 競合製品との比較: 主な競合製品であるIntel Core i3-1315Uと比較した場合、Ryzen 3 7335Uは持続的なマルチコア性能(高TDP設定時)とGPU性能で優位に立つ場面がありますが、シングルコア性能(応答性)では劣る可能性があります。旧世代の同クラス製品であるAMD Ryzen 3 5300Uに対しては、CPU性能・GPU性能の両面で明確な性能向上を実現しています。
  • 実利用シーンでの評価: Web閲覧、Officeソフトを用いた文書作成や表計算、オンライン会議、動画視聴といった一般的なPC利用においては、快適な動作が期待できます。軽度の写真編集や、設定を調整した上でのカジュアルゲームのプレイも可能ですが、本格的な動画編集や最新の重い3Dゲームのプレイには向きません。
  • 推奨されるユーザー層: 主な用途が日常的なPC作業(インターネット、メール、Officeソフトなど)であり、加えて時々、負荷の軽いゲームや高画質動画などのメディアコンテンツを楽しみたいと考えているユーザーに適したプロセッサです。特に、同価格帯のIntel Core i3搭載ノートPCと比較して、少しでも内蔵グラフィックス性能を重視する場合には、Ryzen 3 7335U搭載モデルが魅力的な選択肢となり得ます。ただし、購入を検討する際には、メモリがデュアルチャンネル構成であるかを確認し、可能であれば関心のある特定のノートPCモデルに関するレビュー記事を参照して、実際の性能やバッテリー持続時間に関する情報を確認することが推奨されます。

引用文献

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