AMD Ryzen 5 8540U ベンチマーク分析まとめ

CPU-AMD-Ryzen CPU・SoC

はじめに

AMD Ryzen 5 8540Uプロセッサーの概要

AMD Ryzen 5 8540Uは、AMDのモバイル向けプロセッサーラインナップ「Ryzen 8040シリーズ」に属するCPUです。このシリーズは、開発コードネーム「Hawk Point」として知られています 1。Ryzen 5 8540Uは、特に薄型軽量ノートPC市場をターゲットとした「U」シリーズのモデルであり、消費電力と処理性能のバランスを重視した設計が特徴です。市場においては、IntelのCore Ultra Uシリーズプロセッサーや、AMD自身の前世代Ryzen 5モバイルプロセッサーの後継、あるいは競合製品として位置づけられるミドルレンジのCPUとなります 3

本レポートの目的と構成

本レポートは、AMD Ryzen 5 8540Uプロセッサーについて、その技術仕様、主要なベンチマークテストにおけるスコア、競合となるプロセッサーとの性能比較、内蔵GPUであるRadeon 740Mのグラフィックス性能、そして日常的な利用から高負荷な作業まで、様々な実利用シナリオにおけるパフォーマンスを深く掘り下げて分析します。これにより、Ryzen 5 8540Uの総合的な能力、長所と短所を明らかにし、その評価を提供することを目的とします。分析にあたっては、主に提供された日本語および英語のウェブサイト情報(テクノロジーレビューサイト、ベンチマークデータベース、メーカー公式サイトなど)を基にし、引用元情報は各所で明記します。

技術仕様

CPUアーキテクチャとコア構成

AMD Ryzen 5 8540Uは、AMDの最新CPUアーキテクチャである「Zen 4」と、電力効率に特化した「Zen 4c」コアを組み合わせたハイブリッド構成を採用しています 1。この構成により、合計で6コア、12スレッドを実現しています 1。具体的には、高性能を担うZen 4コアが2基、電力効率に優れたZen 4cコアが4基搭載されています 1

この2コア(Zen 4)+ 4コア(Zen 4c)という構成は、同シリーズの上位モデル(例えば8640Uや8840Uなど、より多くの、あるいは全てのコアがZen 4である可能性が高い)や、前世代の同等モデル(例えばRyzen 5 7540Uは全てZen 4コアだった可能性が高い)とは異なります。ハイブリッドアーキテクチャの採用は、バックグラウンドタスクや軽負荷な処理を効率的なZen 4cコアに任せ、要求の厳しいタスクが発生した際には高性能なZen 4コアを活用することで、全体の電力効率を最適化することを狙いとしています。Zen 4cコアは、性能よりも実装密度と効率を優先して設計されており、同じチップ内のZen 4コアと比較して動作周波数が低めに設定されています 1

Ryzen 5 8540Uにおいて、Zen 4cコア(4基)がZen 4コア(2基)よりも多く搭載されている点は、ピーク性能よりも電力効率と低消費電力下でのマルチスレッド性能を重視した設計思想を示唆しています。Zen 4cコアの最大クロックが3.5 GHzであるのに対し、Zen 4コアは最大4.9 GHzまで達するため 1、全てのコアに高い負荷がかかる持続的なマルチスレッドタスク(例:動画レンダリング、ソフトウェアのコンパイル)においては、Zen 4cコアの周波数が性能のボトルネックとなり、同じTDP枠で全てのコアがZen 4で構成されたCPUと比較した場合、わずかに性能が抑制される可能性があります。しかし、このアーキテクチャは、突発的な処理要求(Zen 4コアが担当)に対する応答性を確保しつつ、バックグラウンド処理(Zen 4cコアが担当)を効率的にこなすことで、特にバッテリー駆動時間を重視する薄型ノートPCにおいて利点をもたらすと考えられます 7

クロック周波数

  • ベースクロック: 3.2 GHz 1
  • 最大ブーストクロック: 最大 4.9 GHz 1
  • コアタイプ別クロック:
  • Zen 4 コア: ベース 3.7 GHz / 最大 4.9 GHz 1
  • Zen 4c コア: ベース 3.0 GHz / 最大 3.5 GHz 1

このZen 4コアとZen 4cコア間のクロック周波数の違いが、プロセッサーの総合的なパフォーマンス特性に影響を与えます。

キャッシュ

  • L2キャッシュ: 合計 6MB (各コアに1MB) 1
  • L3キャッシュ: 合計 16MB (全コアで共有) 1

キャッシュ容量は、このクラスのモバイルCPUとしては標準的なレベルであり、データアクセスの高速化に貢献します。

TDP (Thermal Design Power)

  • デフォルトTDP: 28W 1
  • 設定可能TDP (cTDP): 15W – 30W 1

このcTDPの範囲が広いことは、ノートPCメーカーにとって設計の自由度が高いことを意味します。CPUの性能、特に持続的なパフォーマンスは、設定された電力制限(TDP)とノートPC自体の冷却能力に大きく依存します。例えば、メーカーは極薄のデザインとバッテリー寿命を最優先するために15W設定を選択するかもしれず、その場合はCPUのピーク性能や持続性能は大幅に制限されます。一方で、より大型で冷却性能の高い筐体を持つノートPCでは、28Wや30Wといった高いTDP設定が採用され、より高いベンチマークスコアを記録し、高負荷状態を長く維持できる可能性があります 3。したがって、オンラインで報告されているベンチマークスコア 3 は、特定のノートPCモデルにおける特定の設定下での結果であり、同じRyzen 5 8540Uを搭載していても、全てのノートPCで同じ性能が発揮されるわけではありません。消費者は、CPU名だけでなく、検討しているノートPCモデルのTDP設定や冷却設計についても考慮する必要があります。

製造プロセス

Ryzen 5 8540Uは、TSMCの4nm FinFETプロセス技術を用いて製造されています 1。これは現行世代における最先端クラスの製造プロセスであり、プロセッサーの電力効率と性能密度の向上に寄与しています。

メモリサポート

  • 対応メモリタイプ: DDR5-5600 (SO-DIMMスロット形式、FP7r2ソケット) または LPDDR5x-7500 (マザーボード直付け、FP7/FP8ソケット) 1。特に内蔵GPUの性能はメモリ帯域幅に影響されるため、高速なメモリのサポートは重要です。
  • 最大メモリ容量: 256GB (理論上の最大値であり、実際にノートPCに搭載される容量はモデルによって異なります) 1

PCI Express サポート

  • PCI Express® Version: PCIe® 4.0 1。これにより、高速なNVMe SSDの性能を最大限に引き出し、将来的な拡張性も確保されます。
  • 利用可能なレーン数 (Total/Usable): 14 / 14 1

内蔵GPU: AMD Radeon™ 740M

  • アーキテクチャ: RDNA 3 11。AMDの最新世代GPUアーキテクチャです。
  • グラフィックスコア数 (Compute Units): 4 CU 1。これは、同8040シリーズの上位モデルに搭載されるRadeon 760M (8 CU) や Radeon 780M (12 CU) と比較して少ないコア数です 12
  • グラフィックス周波数: 最大 2800 MHz (2.8 GHz) 1
  • ビデオ出力: DisplayPort 2.1 および HDMI 2.1 をサポートし、最大で4台のディスプレイへの同時出力が可能です 1。最新のディスプレイ規格に対応しています。
  • ビデオコーデック: AV1, HEVC (H.265), AVC (H.264) といった主要なビデオコーデックのハードウェアデコードおよびエンコードに対応しています 1。これにより、高解像度動画の再生支援や、動画処理時のCPU負荷軽減、バッテリー消費の抑制が期待できます。

AI Engine (NPU)

  • AMD Ryzen™ AI: 非搭載 (Not Available) 1

これは、Ryzen 5 8540Uと、同じRyzen 8040シリーズの上位モデル(例: Ryzen 5 8640U, Ryzen 7 8840U/HSなど)との間の重要な違いです。公式仕様 1 およびレビュー記事 13 において、Ryzen AI NPU(Neural Processing Unit)が搭載されていないことが明記されています。NPUは、AI推論タスク(例:ビデオ会議での背景ぼかし、ノイズキャンセリング、将来のOS機能など)を効率的に実行するために設計された専用のハードウェアアクセラレーターです。Microsoftをはじめとする業界全体が、NPUを搭載した「AI PC」を推進しています。AMDはRyzen AIを8040シリーズにおけるプレミアムモバイル製品の主要機能として位置付けていますが、8540UからNPUを除外したことは、コスト削減と市場セグメンテーション(製品の差別化)を意図したものと考えられます。これにより、8540Uは、最新のAIアクセラレーション機能よりも、従来のタスクにおけるCPUコア性能と電力効率を優先するユーザー層をターゲットとしています。結果として、8540Uを搭載したノートPCは、NPUに最適化されたAI機能を効率的に利用できず、将来的にそのような機能に依存するアプリケーションが登場した場合、性能やバッテリー寿命の面で不利になる可能性があります。この点は、8540Uを、NPU搭載によって定義される「AI PC」カテゴリーとは異なる、より伝統的なミドルレンジCPUとして位置づける要因となります。AI機能を重視するユーザーは、8640UやIntel Core Ultraなど、NPUを搭載した上位モデルを選択する必要があります。

その他

  • 対応ソケット: FP7 / FP7r2 1
  • 最大動作温度 (Tjmax): 100°C 1

表1: AMD Ryzen 5 8540U 詳細技術仕様

仕様項目詳細出典例
アーキテクチャZen 4 (2コア) + Zen 4c (4コア) ハイブリッド1
コア数 / スレッド数6コア / 12スレッド1
最大ブーストクロック最大 4.9 GHz (Zen 4), 最大 3.5 GHz (Zen 4c)1
ベースクロック3.2 GHz (全体), 3.7 GHz (Zen 4), 3.0 GHz (Zen 4c)1
L2キャッシュ合計 6MB (1MB/コア)1
L3キャッシュ合計 16MB (共有)1
デフォルトTDP28W1
設定可能TDP (cTDP)15W – 30W1
製造プロセスTSMC 4nm FinFET1
内蔵GPUモデルAMD Radeon™ 740M1
GPUアーキテクチャRDNA 311
GPUコア数 (CU)41
GPU最大周波数2800 MHz (2.8 GHz)1
メモリサポートDDR5-5600 (SO-DIMM) / LPDDR5x-7500 (オンボード)1
PCI ExpressサポートPCIe 4.0 (14レーン)1
AI Engine (NPU)非搭載 (Not Available)1

CPUベンチマーク性能分析

Cinebench スコア分析

Cinebenchは、CPUのレンダリング性能を測定する標準的なベンチマークであり、特にマルチコア性能とシングルコア性能を評価するために広く用いられています。

  • Cinebench R23 (Multi Core): Ryzen 5 8540Uは、このテストにおいて約9800ポイント前後のスコアを記録しています。例えば、HP Pavilion 16搭載モデルでは9781ポイント 3、別のプロトタイプ機では9823ポイント 10 という結果が報告されています。このスコアレベルは、前世代のRyzen 5 7540U (9813ポイント 10) や、一世代前のRyzen 7 PRO 7735U (9825ポイント 3) とほぼ同等です。
  • Cinebench R23 (Single Core): シングルコア性能では、HP Pavilion 16搭載モデルで約1723ポイントを記録しています 3。これは比較的高く、Intel Core Ultra 7 155H (1726ポイント 3) に匹敵するレベルであり、OSやアプリケーションの応答性の良さを示唆しています。
  • Cinebench 2024 (Multi Core): より新しいバージョンのCinebench 2024では、HP Pavilion 16搭載モデルで約551ポイントを記録しています 3。これはIntel Core Ultra 7 155U (549ポイント 3) と同等のスコアです。
  • Cinebench 2024 (Single Core): シングルコアでは、約98ポイント(HP Pavilion 16)という結果が報告されています 3

これらのCinebenchスコアから、Ryzen 5 8540Uの性能特性を考察できます。まず、シングルコア性能が非常に高いことが注目されます 3。これは最大4.9 GHzという高いブーストクロック 1 と、Zen 4アーキテクチャのIPC(クロックあたりの命令実行数)向上の恩恵によるものです。高いシングルコア性能は、ウェブブラウジングやオフィスソフトの操作など、日常的なタスクにおける体感的な速さ、すなわち応答性の良さに直結します。

一方、マルチコア性能は、前世代の同クラス製品や一部の上位モデルと同等レベルに留まっています 3。これは、先に述べたハイブリッドコア構成(2x Zen 4 + 4x Zen 4c)と、テストされたノートPCのTDP制限(15-30Wの範囲)の影響を受けている可能性があります。Cinebenchのマルチコアテストは、全てのCPUコアに持続的に高い負荷をかけるため、Zen 4cコアの動作周波数の上限(最大3.5 GHz)が、全体のスコアをある程度抑制している可能性があります。特に、全てのコアが高性能コアで構成されているCPUと比較した場合、この傾向が現れるかもしれません。それでも、ミドルレンジのUシリーズCPUとしては堅実なマルチコア性能であり、一般的なマルチタスクや中程度のコンテンツ作成作業には十分対応できるレベルです。Cinebench 2024でのスコア 3 が示すように、最新のレンダリングワークロードにおいても、その電力枠内で優れた性能を発揮します。

Geekbench スコア分析

Geekbenchは、整数演算、浮動小数点演算、暗号化処理、機械学習など、より多様なワークロードを通じてCPU性能を測定するベンチマークです。

  • Geekbench 6 (Multi Core): 約9280ポイントというスコアが報告されており 3、これはIntel Core Ultra 7 155U (約8906ポイント 3) を上回る結果です。
  • Geekbench 6 (Single Core): 約2504ポイントという非常に高いスコアを記録しています 3。これは、より上位クラスのCPUであるAMD Ryzen 9 PRO 7940HS (約2519ポイント 3) に迫るレベルです。
  • Geekbench 5.5 (Multi Core): 旧バージョンのGeekbench 5.5でも、約7632ポイント 3 と、前世代のRyzen 5 6600H (約7442ポイント 3) を上回るスコアを示しています。
  • Geekbench 5.5 (Single Core): 約1872ポイント 3 であり、Intel Core 7 150U (約1855ポイント 3) を上回っています。

Geekbenchのスコア、特にシングルコアのスコアが際立って高い 3 ことは、Ryzen 5 8540Uの重要な特徴です。Geekbenchのテストは、Cinebenchのような長時間の持続負荷よりも、様々な種類のタスクにおける短時間のバースト(突発的な)性能を反映しやすい傾向があります。8540Uに搭載されたZen 4コアの高いブーストクロック(最大4.9 GHz 1)は、このような短時間で高い性能が要求されるシングルスレッド、あるいはライトスレッドの処理で特に威力を発揮します。これが、Geekbench Single-Coreで上位CPUに匹敵するスコアを出す要因と考えられます。

マルチコアスコアも、競合のCore Ultra 7 155Uを上回るなど 3、良好な結果を示しています。これは、2基の高性能なZen 4コアと4基の効率的なZen 4cコア、そしてSMT(同時マルチスレッディング)による合計12スレッド 1 が、Geekbenchに含まれる多様なワークロードに対して効果的に機能していることを示唆しています。異なるタイプのコア間でタスクを効率的にスケジューリングすることで、優れた総合性能を発揮していると考えられます。Cinebenchの持続的なレンダリング負荷と比較して、Geekbenchの結果は、ウェブページの読み込みやアプリケーションの起動といった、日常的なインタラクティブ操作における性能をより反映している可能性があります。これらの操作では、短時間で高いパフォーマンスを発揮する能力が重要となるため、8540Uは体感的に非常に応答性が良いと感じられる可能性が高いです。

PassMark CPU Mark スコア分析

PassMark CPU Markは、様々な種類のテスト(整数演算、浮動小数点演算、データ圧縮、暗号化、物理演算など 6)の結果を統合し、CPUの総合的な性能を示すことを目的としたベンチマークです。

  • CPU Mark (総合スコア): 約18300〜18400ポイントというスコアが報告されています 4。これは、旧世代のデスクトップ向けハイエンドCPUであるIntel Core i9-9900K 6 や、モバイル向けゲーミングCPUであるIntel Core i5-12450HX 16 に匹敵するレベルであり、薄型ノートPC向けの低消費電力CPUとしては非常に高い性能を示しています。ビジネス向けのRyzen 5 PRO 8540Uも同等のスコアを記録しています 4
  • Single Thread Rating: シングルスレッド性能評価も約3665〜3694ポイントと高く 4、場合によってはIntel Core i7-12700H (約3556ポイント 6) を上回ることもあります。

PassMarkのスコア 4 が示すように、Ryzen 5 8540Uは、低消費電力モバイルCPUとしては驚くほど高い総合性能を持っています。この高いスコアは、8540UがPassMarkの広範なテストスイート全体で優れたパフォーマンスを発揮することを示しており、強力なZen 4コアのシングルスレッド性能と、6コア/12スレッドによるマルチスレッド能力の両方を効果的に活用している結果と言えます。

旧世代のデスクトップCPU(例: i9-9900K 6)との比較は、近年のモバイルCPUがいかに性能と効率を向上させてきたかを浮き彫りにします。また、モバイルHシリーズCPU(例: i5-12450HX 16)との比較には注意が必要です。HシリーズCPUは通常、はるかに高いTDP(例: 45W以上)で動作します。8540Uが15Wから30Wという低いTDP枠内で 1、これらのCPUに匹敵するスコアを達成していることは、Zen 4/Zen 4cアーキテクチャの電力効率の高さを示しています。総じて、Ryzen 5 8540Uは、一般的なコンピューティングタスクからある程度の負荷がかかる作業まで、幅広い用途を効果的に処理できるだけの十分な性能を、優れた電力効率で提供するCPUであると言えます。

その他のベンチマーク

PassMarkの個別テスト項目においても、データ圧縮、データ暗号化、物理演算などで良好なスコアが確認されています 6。例えば、データ暗号化性能は約12.3〜12.4 GBytes/sec 6、データ圧縮性能は約209〜211 MBytes/sec 6 といった値が報告されています。

また、電力効率を示す指標として、Performance Per Watt(ワットあたりの性能)も注目されます。PassMark CPU MarkスコアをTDPで割った値は、616 PPWといった高い値を示すことがあり 8、これはRyzen 5 8540Uが消費電力に対して高い性能を発揮することを示唆する重要なデータです。

表2: 主要ベンチマークスコアまとめ

ベンチマーク名Ryzen 5 8540U 代表スコア出典例
Cinebench R23 Multi Core約 9800 ポイント3
Cinebench R23 Single Core約 1723 ポイント3
Cinebench 2024 Multi Core約 551 ポイント3
Cinebench 2024 Single Core約 98 ポイント3
Geekbench 6 Multi Core約 9280 ポイント3
Geekbench 6 Single Core約 2504 ポイント3
PassMark CPU Mark約 18391 ポイント4
PassMark Single Thread約 3665 ポイント6

注: 上記スコアは代表的な値であり、搭載されるノートPCのTDP設定や冷却性能によって変動する可能性があります。

競合プロセッサーとの性能比較 

対 Intel プロセッサー (Core Ultra 5 U/H シリーズ)

IntelのCore Ultraプロセッサー(開発コードネーム: Meteor Lake)は、Ryzen 5 8540Uの直接的な競合製品です。こちらもPコア、Eコア、LP Eコアからなるハイブリッドアーキテクチャを採用しています。

  • Cinebench R23: マルチコア性能では、Ryzen 5 8540U (約9781ポイント 3) は、Intel Core Ultra 7 155U (約9470ポイント 3) を若干上回り、Core Ultra 5 125U (約9580ポイント 3) と同等かやや優位なスコアを示しています。シングルコア性能では、8540U (1723ポイント 3) はCore Ultra 7 155H (1726ポイント 3) とほぼ同等であり、Core Ultra 5 125H (1708ポイント 3) を上回ります。
  • Geekbench 6: マルチコア性能では、8540U (約9280ポイント 3) はCore Ultra 7 155U (約8906ポイント 3) を上回りますが、より多くのコアを持つCore Ultra 5 125H (約10000ポイント 3) には及ばない可能性があります。シングルコア性能では、8540U (約2504ポイント 3) はCore Ultra 5 125H (約2400ポイント 3) よりも高いスコアを記録しています。

これらのベンチマーク結果 3 から、Ryzen 5 8540Uは、IntelのCore Ultra 5 Uシリーズや一部のCore Ultra 7 Uシリーズプロセッサーと互角以上に渡り合える性能を持っていることがわかります。特にシングルコア性能においては、8540UのZen 4コアが高い競争力を示しています。マルチコア性能は、比較対象となるIntel CPUのコア構成(例: Ultra 5 125Uは2P+8E+2LPE=12コア/14スレッド、Ultra 5 125Hは4P+8E+2LPE=14コア/18スレッド)やTDP設定によって優劣が変わりますが、8540U(2x Zen4 + 4x Zen4c = 6コア/12スレッド)は15W〜30WクラスのCPUとして非常に健闘しています。Intel CPUはモデルによってEコア数が多く、特定のマルチコアベンチマークで有利になる場面もありますが、8540Uはシングルコアの速度でリードすることが多いようです。

ただし、重要な差別化要因としてNPUの有無があります。多くのCore UltraプロセッサーはNPUを内蔵していますが、Ryzen 5 8540Uは搭載していません 1。したがって、純粋なCPU性能においてはRyzen 5 8540UはIntelの直接的な競合製品に対して高い競争力を持っていますが、製品選択においては、特定のワークロード(シングルスレッド重視かマルチスレッド重視か)、プラットフォーム全体の機能、価格、そしてNPUによるAI機能の必要性を考慮する必要があります。AI機能を重視する場合は、Intel Core UltraやNPU搭載のRyzen上位モデルが有利となります。

対 AMD 前世代/同世代プロセッサー

  • 対 Ryzen 5 7540U (Zen 4, 6C/12T): Cinebench R23 Multi Coreのスコアはほぼ同等 (8540U: 9823 vs 7540U: 9813 10) です。電力効率(ワットあたりの性能)については、PassMarkベースでは7540U/7640Uの方が高い場合がある 9 一方で、Geekbench 6ベースでは8540Uの方が高い場合もある 14 など、評価指標によって結果が異なります。全体的な性能は非常に近いものの、コアアーキテクチャの違い(Zen 4/4cハイブリッド vs 全コアZen 4)が、特定のワークロードや電力効率の特性に影響を与えている可能性があります。Cinebench R23のような特定のテスト条件下やTDP制限下では、ハイブリッド構成が全コアZen 4構成に対して明確なマルチコア性能の優位性(あるいは劣位性)を示さない場合もあるようです。
  • 対 Ryzen 7 8840U (Zen 4, 8C/16T, Radeon 780M): コア数の差(8コア vs 6コア)によりCPU性能には差がありますが、特に内蔵GPU性能(Radeon 780M/12 CU vs Radeon 740M/4 CU)において大きな差が存在します 7。動画編集ソフトDaVinci Resolveでの書き出し時間テストでは、8840U搭載機が約6分で完了したのに対し、8540U搭載機は10分以上かかっており、GPU性能の差が作業時間に顕著に表れています 7。一方で、バッテリー持続時間テストでは、同じ筐体のノートPCで比較した場合、8540U搭載モデルの方が8840U搭載モデルよりも約170分(2時間50分)長く動作しました 7。これは、8540UのCPUおよびGPUコア数が少ないこと、そしてZen 4cコアによる効率化が寄与していると考えられます。この比較から、AMDのラインナップ内での明確な製品階層(ティアリング)が確認できます。
  • 対 Ryzen 5 6600U/HS (Zen 3+, 6C/12T): Geekbench 5 Multi Coreスコアでは、8540Uが6600Hを上回っています 3。Cinebench R23 Multi Coreでは近いスコアを示すこともありますが 10、全体としては世代間の着実な性能向上が見られます。

これらの比較から、Ryzen 5 8540Uは、前世代のRyzen 5 7540Uに対しては、特定のワークロードにおける電力効率改善の可能性はあるものの、ピーク性能では同等レベルの、いわばマイナーチェンジに近い位置づけと言えます。一方で、Ryzen 7 8840Uに対しては、CPU性能、特にGPU性能で明確に下位に位置づけられ、その代わりに優れたバッテリー持続時間を提供します。旧世代の6000シリーズからは着実な性能向上を果たしています。

性能差の分析

Ryzen 5 8540Uの性能特性をまとめると、Zen 4コアの恩恵によるシングルスレッド性能は、競合製品と比較しても非常に高いレベルにあります。マルチスレッド性能は、コア数(6コア/12スレッド)とノートPC側のTDP設定に依存しますが、ミドルレンジのモバイルCPUとしては十分な能力を持っています。ハイブリッドコア構成は、電力効率とパフォーマンスのバランスを取る上で重要な役割を果たしています。競合製品やAMDの上位モデルと比較した場合、内蔵GPU性能(Radeon 740Mの限界)とNPUの非搭載が、主な性能上の差別化要因となります。

表3: Ryzen 5 8540U vs 主要競合CPU ベンチマーク比較

CPUモデルアーキテクチャ / コア/スレッドTDP (標準)Cinebench R23 Multi¹Cinebench R23 Single¹Geekbench 6 Multi¹Geekbench 6 Single¹PassMark CPU Mark¹iGPU (CU数) / NPU出典例
AMD Ryzen 5 8540UZen 4 (2) + Zen 4c (4) / 6C/12T28W約 9800約 1723約 9280約 2504約 18391Radeon 740M (4) / 非搭載1
Intel Core Ultra 5 125UMeteor Lake / 12C(2P+8E+2LPE)/14T15W (9-30W)約 9580約 1650 (推定)約 8500 (推定)約 2250 (推定)約 17349Intel Graphics (4 Xe) / 搭載3 (スコアは近接モデルや情報からの推定を含む)
AMD Ryzen 5 7540UZen 4 / 6C/12T28W (15-30W)約 9813約 1680 (推定)約 8800 (推定)約 2300 (推定)約 18000 (推定)Radeon 740M (4)² / 非搭載9 (7640Uデータや他情報からの類推、740Mは8540Uと同等と仮定)
AMD Ryzen 7 8840UZen 4 / 8C/16T28W (15-30W)約 13500 (推定)約 1750 (推定)約 12000 (推定)約 2550 (推定)約 25000 (推定)Radeon 780M (12) / 搭載7 (usshi-na-life比較や他レビューからの性能差に基づく推定)

¹ ベンチマークスコアは搭載ノートPCのTDP設定、冷却性能、メモリ構成により大きく変動するため、あくまで参考値です。

² Ryzen 5 7540Uの内蔵GPUはRadeon 740M相当とされていますが、公式な名称が異なる場合があります。性能レベルは8540Uの740Mと同等と考えられます。

NPU: Neural Processing Unit (AIアクセラレータ)

内蔵GPU (AMD Radeon™ 740M) の性能評価

グラフィックスベンチマーク

AMD Ryzen 5 8540Uに統合されているGPUは、RDNA 3アーキテクチャに基づく「Radeon 740M」です。このGPUは4基のコンピュートユニット(CU)を搭載しています 1

  • 3DMark: ベンチマークスイート「3DMark」における性能を見ると、軽量テストである「Night Raid」のGraphics Score(GPU性能のみを評価)では、19000程度のスコアが期待できるかもしれません 18。これはASCII.jpに掲載された、同じRadeon 740Mを搭載するデスクトップ向けAPU「Ryzen 5 8500G」のレビューからの類推ですが、ノートPC版ではTDPやメモリ帯域の制約から、これより低いスコアになる可能性があります。より負荷の高い「Time Spy」テストでは、Ryzen 7 8840Uに搭載される上位GPU「Radeon 780M」(12 CU)と比較して、GPUスコア、総合スコアともに約半分程度にとどまるという報告があります 7。これは、GPUの物理的なコア数(4 CU vs 12 CU)の差が、そのまま性能差として表れていることを示しています。
  • 理論演算性能 (FLOPS): Radeon 740Mの単精度浮動小数点演算性能(FP32 FLOPS)は、約1.4 TFLOPSと推定されています 8。これは、同じRDNA 3世代で8 CUを持つRadeon 760M(約2.7 TFLOPS 8)や、12 CUを持つRadeon 780M(さらに高い)と比較して、大幅に低い値です。

これらのベンチマーク結果は、Radeon 740Mが、AMDの現行統合GPUラインナップの中ではエントリーレベルに位置することを示しています。

ゲームにおける性能

Radeon 740Mのゲーム性能は、その限られたコア数から制約を受けます。

  • 軽量~中量級ゲーム: フルHD (1920×1080) 解像度で、グラフィック設定を低~中に調整すれば、比較的古いタイトルや、要求スペックの低いeスポーツタイトルなどはプレイ可能と考えられます。ASCII.jpのRyzen 5 8500G(デスクトップ版)レビューでは、Night Raidテスト中に60fpsを余裕で超えるフレームレートが出ていたと述べられています 18。しかし、前述の通り、これはTDPやメモリ環境が有利なデスクトップAPUでの結果であり、ノートPC環境では設定をさらに下げる必要があるかもしれません。
  • 重量級ゲーム (AAAタイトル): 2022年以降にリリースされたような最新のAAA(大作)ゲームを快適にプレイするには、性能が明らかに不足しています 3。usshi-na-life.comのレビューでは、人気タイトル「サイバーパンク2077」を低解像度・高画質設定でテストしたところ、ベンチマークがエラーで実行できなかったり、実行できても平均フレームレートが30fpsを下回ったりしたと報告されています 7。これらのゲームをプレイするには、解像度や画質設定を大幅に引き下げる必要があり、それでも快適なプレイは難しいでしょう。

結論として、Ryzen 5 8540Uは、最新の要求の高いゲームをプレイする目的には適していません。Radeon 740Mは、主に画面出力、動画再生支援、そして非常に軽いゲームや古いタイトルを低設定で楽しむためのGPUと考えるべきです。より高い統合グラフィックス性能を必要とするユーザーは、Radeon 760M(例: Ryzen 5 8640U搭載機)やRadeon 780M(例: Ryzen 7 8840U搭載機)を搭載したCPUを選択する必要があります。

動画再生支援とマルチディスプレイ

ゲーム性能は限定的ですが、Radeon 740Mはメディア機能において最新の技術をサポートしています。AV1、HEVC (H.265)、AVC (H.264) といった主要な最新ビデオコーデックのハードウェアデコードおよびエンコードに対応しており 1、これによりCPUに負荷をかけることなく、4Kや8Kといった高解像度動画をスムーズに再生したり、バッテリー消費を抑えながら動画視聴を楽しむことが可能です。

また、DisplayPort 2.1およびHDMI 2.1出力を通じて、最大で4台の外部ディスプレイを同時に接続できます 1。これは、複数のモニターを使用する作業環境において、生産性を向上させる上で有利な点です。

クリエイティブタスクにおけるGPU性能の影響

動画編集や画像編集といったクリエイティブタスクにおいても、GPU性能は作業効率に影響します。

  • 動画編集: GPUアクセラレーションを利用する処理、例えばビデオエフェクトの適用や最終的なレンダリング(書き出し)において、Radeon 740Mの性能限界が現れます。usshi-na-life.comの比較レビューでは、Radeon 780M搭載機に対してレンダリング時間が大幅に長くなることが示されています 7。yrpc.jpのレビューでも、動画編集自体は可能であるものの、レンダリングには時間がかかるだろうと指摘されています 19
  • 画像編集: Photoshopなどの画像編集ソフトにおける基本的な操作は可能ですが、GPUに高い負荷がかかるフィルター処理や複雑な操作では、動作が遅延する可能性があります。これらのクリエイティブタスクをある程度快適に行うためには、システムメモリとして16GB以上を搭載することが推奨されています 19

実利用シナリオにおけるパフォーマンス

日常タスク (ウェブブラウジング、オフィスソフト)

Ryzen 5 8540Uは、日常的に最もよく行われるコンピューティングタスクにおいて、非常に優れたパフォーマンスを発揮します。その理由は、先に見たようにシングルコア性能が非常に高い点にあります(Geekbench 6 Single Core: 約2504ポイント 3、PassMark Single Thread Rating: 3665ポイント以上 4)。これらのタスク、例えばウェブページの読み込み、複数のブラウザタブの切り替え、Microsoft WordやExcelといったOfficeアプリケーションの起動や操作などは、CPUのシングルコア性能に大きく依存するため、8540U搭載PCでは非常にスムーズで快適な操作感が期待できます。komameblog.jpのレビューにおいても、一般的な利用やビジネス利用を想定したテストで十分なスコアを記録していると言及されています 17。dosparaplus.comの記事では、一般的な事務作業であればRyzen 3やCore i3クラスでも十分としつつも、8540UのようなRyzen 5クラスであれば、より快適に作業できることが示唆されています 4

高負荷タスク (動画編集、プログラミング、マルチタスク)

より要求の高いタスクにおけるパフォーマンスは、タスクの種類によって評価が分かれます。

  • 動画編集: 軽い編集作業、例えばカット編集やテロップ(字幕)の挿入といった基本的な作業は可能ですが、内蔵GPU(Radeon 740M)の性能がボトルネックとなり、エフェクト処理や最終的なレンダリングにはかなりの時間を要します 7。4K動画編集や複雑なエフェクトを多用するなど、本格的な動画編集作業には不向きと言えます。
  • プログラミング: ソフトウェアのコンパイルなど、CPUに高い負荷がかかるタスクにおいては、6コア12スレッドのマルチスレッド性能が活かされます。中規模程度のプロジェクトであれば、比較的快適に開発作業を進められるでしょう。しかし、非常に大規模なプロジェクトのビルドなど、極端に高いマルチコア性能が要求される場面では、コア数の多い上位CPU(例えばRyzen 7やRyzen 9)を搭載したマシンに比べて時間がかかる可能性があります。
  • マルチタスク: 複数のアプリケーションを同時に起動し、切り替えながら作業を行う一般的なマルチタスクについては、12スレッドという十分なスレッド数と、推奨される16GB以上のシステムメモリ 19 があれば、スムーズにこなすことが可能です。例えば、ウェブブラウザで多くのタブを開きながら、Officeドキュメントを編集し、同時に音楽をストリーミング再生するといった使い方であれば、問題なく対応できるでしょう。

これらの評価から、Ryzen 5 8540Uの「スイートスポット」、すなわち最も得意とする領域が見えてきます。日常的なウェブブラウジングやオフィスワーク、軽いマルチタスクにおいては、その高いシングルコア性能により非常に快適なパフォーマンスを提供します 4。時折発生する中程度の負荷がかかる作業(軽い画像編集やプログラミングなど)もこなせますが、動画編集のようなGPU性能を要求されるタスクや、非常に重いマルチコア処理が長時間続くようなタスクにおいては、その限界が見えてきます 7。これは、ミドルレンジのUシリーズCPUとしては妥当な性能特性であり、ユーザーは自身の主な用途に合わせてCPUを選択する必要があります。

電力効率とバッテリー持続時間

Ryzen 5 8540Uの設計における重要な焦点の一つが、電力効率です。高効率なZen 4cコアの採用と、先端的なTSMC 4nm製造プロセス 1 により、特にCPU負荷が低い状態や中程度の状態において、優れた電力効率が期待されます 8

この優れた電力効率は、ノートPCのバッテリー持続時間に直接的なメリットをもたらします。usshi-na-life.comが実施した、同じDell Inspiron 14の筐体を用いたRyzen 5 8540U搭載モデルとRyzen 7 8840U搭載モデルの比較レビューでは、動画再生によるバッテリーテストにおいて、8540Uモデルが8840Uモデルよりも約2時間50分も長く動作したという結果が報告されています 7。この顕著な差は、8540UのCPUコア数(6コア vs 8コア)とGPUコア数(4 CU vs 12 CU)が少ないことに加え、Zen 4cコアが低負荷時の電力消費を効果的に抑制していることによるものと考えられます。ピーク性能では上位モデルに譲るものの、一般的な利用シーンにおける電力効率と、それに伴うバッテリー寿命の長さは、Ryzen 5 8540Uの大きな強みと言えるでしょう。薄型軽量ノートPCで、コンセントに繋がずに長時間使用したいユーザーにとって、この点は非常に魅力的です。

強みと弱みの評価

これまでの分析に基づき、AMD Ryzen 5 8540Uの主な強みと弱みを以下にまとめます。

Ryzen 5 8540U の主な利点 (Strengths)

  • 優れたシングルコア性能: Zen 4アーキテクチャによる高いIPC(クロックあたり命令実行数)と、最大4.9 GHzに達するブーストクロックにより、OSの操作、アプリケーションの起動、ウェブブラウジングといった日常的なタスクにおける応答性が非常に優れています 3
  • 良好な電力効率: Zen 4c高効率コアとTSMC 4nmプロセスの組み合わせにより、特にCPU負荷が低い〜中程度の状態での消費電力が抑えられており、ノートPCのバッテリー駆動時間の延長に大きく貢献します。同世代上位モデルとの比較でも、バッテリー持続時間で明確なアドバンテージが示されています 7
  • 堅実なマルチコア性能: 合計6コア12スレッドにより、ミドルレンジのモバイルCPUとして十分なマルチタスク処理能力を備えており、一般的な生産性タスクや、ある程度の負荷がかかる作業にも対応可能です 3
  • 最新プラットフォームへの対応: DDR5またはLPDDR5Xといった高速メモリ規格、PCIe 4.0による高速ストレージ接続、そしてAV1を含む最新のビデオコーデックのハードウェアアクセラレーションに対応しており、プラットフォームとして最新の機能をサポートしています 1

Ryzen 5 8540U の主な欠点 (Weaknesses)

  • 限定的な内蔵GPU性能: 統合されているRadeon 740M GPUは、4 CUという少ないコア数から、性能が限られています。最新の3Dゲームを高画質でプレイしたり、要求の高いグラフィックス処理(例:本格的な動画編集)を行ったりするには力不足です。同じRyzen 8040シリーズの上位GPU(Radeon 760M/780M)との性能差は顕著です 3
  • Ryzen AI (NPU) 非搭載: 専用のAI処理エンジン(NPU)を搭載していません。これにより、将来的にNPUの活用が進むと予想されるAI関連アプリケーション(例:OSレベルでのAI機能、AI支援クリエイティブツールなど)において、NPU搭載CPUと比較して性能面で不利になる可能性があります 1
  • ハイブリッドコア構成の潜在的限界: 全てのコアに極めて高い負荷が長時間続くようなシナリオ(例:特定の科学技術計算、非常に重いレンダリング)においては、Zen 4cコアの最大クロック周波数(3.5 GHz)が性能のボトルネックとなり、全てのコアが高性能なZen 4コアで構成されたCPUに対して、性能が頭打ちになる可能性があります。
  • 実装による性能のばらつき: 設定可能なTDPの範囲が15Wから30Wと広いため 1、搭載されるノートPCのメーカーによる設計(TDP設定や冷却システムの性能)によって、実際のパフォーマンスが大きく異なる可能性があります。購入時には個々の製品レビューを確認することが推奨されます。

結論と推奨事項

AMD Ryzen 5 8540U の総合評価

AMD Ryzen 5 8540Uは、最新のZen 4およびZen 4cコアを組み合わせたハイブリッドアーキテクチャを採用し、電力効率と処理性能のバランスを巧みに取ったミドルレンジのモバイルプロセッサーです。

最大の特長は、その優れたシングルコア性能と電力効率にあります。これにより、日常的なコンピューティングタスクにおける応答性は非常に高く、薄型軽量ノートPCにおいても長いバッテリー駆動時間を実現する大きなポテンシャルを秘めています。6コア12スレッドによるマルチタスク性能も、このクラスとしては堅実であり、一般的な用途において不足を感じることは少ないでしょう。

一方で、内蔵されているRadeon 740Mグラフィックスの性能は限定的であり、最新のゲームや本格的なクリエイティブワークには適していません。また、専用のAIエンジン(NPU)を搭載していないため、将来的なAI機能の活用を重視するユーザーにとっては、選択肢から外れる可能性があります。

総じて、Ryzen 5 8540Uは、特定の用途においては非常に魅力的な選択肢ですが、万能型のCPUではありません。その強みと弱みを理解した上で、自身のニーズに合致するかどうかを判断することが重要です。

推奨されるユーザーと用途

  • 強く推奨されるユーザー:
  • 学生、ビジネスプロフェッショナル、一般家庭ユーザーなど、主な用途がウェブブラウジング、ドキュメント作成・編集(Officeソフトなど)、動画視聴、オンライン会議、そして複数のアプリケーションを同時に使用するような一般的なマルチタスクである方。
  • 特に、ノートPCのバッテリー持続時間を重視し、外出先での利用が多い方。
  • あまり推奨されないユーザー:
  • 最新の3Dゲームを高画質設定でプレイしたいゲーマー。
  • 4K動画編集、3Dモデリングやレンダリングなど、高いGPU性能や持続的なマルチコア性能を要求されるクリエイティブワークを頻繁に行う方。
  • 現時点で、あるいは将来的に、NPUを活用したAI機能を積極的に利用したいと考えている方。

これらの用途を主とするユーザーは、Radeon 780MやディスクリートGPU(dGPU)を搭載した上位モデルのノートPC、あるいはRyzen 7 8840U、Ryzen 5 8640U、Intel Core Ultraシリーズなど、より高性能なGPUやNPUを搭載したCPUを検討することが推奨されます。

購入検討時の注意点

Ryzen 5 8540U搭載ノートPCを検討する際には、CPUの性能を最大限に引き出すために、以下の点も確認することが重要です。

  • ノートPCのTDP設定と冷却性能: 可能であれば、レビュー記事などで、そのモデルがどの程度のTDPで動作するように設計されているか、また冷却性能が十分であるかを確認してください。TDP設定が高いほど、持続的なパフォーマンスが期待できます。
  • メモリ容量: 快適なマルチタスクや、軽いクリエイティブ作業を行うためには、システムメモリとして16GB以上を搭載しているモデルを選ぶことを強く推奨します 19

これらの要素を考慮することで、Ryzen 5 8540Uの持つポテンシャルを活かした、満足度の高いノートPC選びが可能となるでしょう。

引用文献

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