AMD Ryzen 5 PRO 7535U ベンチマークまとめ

CPU-AMD-Ryzen CPU・SoC

はじめに

目的

本レポートは、AMD Ryzen 5 PRO 7535U モバイルプロセッサーの性能について、詳細な分析を提供することを目的とします。このプロセッサーは、主にビジネス向けノートPC市場をターゲットとしており、AMDのRyzen PRO 7000シリーズ・プロセッサー・ファミリーに属します 1。本分析は、主要なベンチマークテストの結果、および実際の利用シナリオにおけるパフォーマンス評価に基づき、特に日本のテクノロジーレビューサイトやハードウェア関連ブログから収集した情報を重視して構成されています。引用元については、本文中にサイト名を明記します。

アーキテクチャの背景

AMD Ryzen 5 PRO 7535Uは、「Rembrandt R」というコードネームで知られるZen 3+アーキテクチャを採用しています 1。これは、先行するZen 3アーキテクチャを改良したものであり、より新しいZen 4アーキテクチャ(Ryzen 7040/8040シリーズ等に搭載)とは異なります 4。Zen 3+アーキテクチャは、電力効率と性能のバランスに優れる6nmプロセスで製造されており 5、成熟した技術に基づいた安定したパフォーマンスを提供します。しかし、最新世代のプロセッサーに見られるような命令実行効率(IPC)の大幅な向上や、専用のAI処理エンジン(NPU)は搭載していません 6。このアーキテクチャ上の位置づけを理解することは、本プロセッサーの性能特性を、旧世代製品や最新の競合製品と比較評価する上で不可欠です。

情報源に関する注記

本レポートで参照する情報は、ユーザーの要求に基づき、主に日本語のウェブサイト(例: 「for-real.jp」、「PC Watch Impress」など)から得られたものです。可能な限り、これらの情報源を引用元として明記します。

AMD Ryzen 5 PRO 7535U: 仕様概要

AMD Ryzen 5 PRO 7535Uの技術仕様は、その性能特性とターゲット市場を理解する上で重要です。

  • コア仕様: 6個のCPUコアと12個のスレッドを搭載し 1、優れたマルチタスク処理能力を提供します。ベース動作周波数は2.9 GHz、最大ブースト周波数は最大4.55 GHzに達します 8。L3キャッシュ容量は16MBです 8
  • 製造プロセスとTDP: 先進的な6nm製造プロセスを採用しており 5、これはインテルの一部競合製品が採用する10nmプロセスと比較して、電力効率の面で有利である可能性を示唆します。Uシリーズプロセッサーとして、TDP(熱設計電力)は通常15Wから28Wの範囲で構成可能であり 9、ノートPCメーカーは製品の設計に応じて性能とバッテリー持続時間のバランスを調整できます。
  • 内蔵グラフィックス: AMD Radeon 660M グラフィックスを内蔵しています 10。これはRDNA 2アーキテクチャに基づいており、旧世代のVegaグラフィックスから大幅な性能向上を実現していますが、Ryzen 7040/8040シリーズに搭載される最新のRDNA 3アーキテクチャではありません 7
  • メモリサポート: DDR5メモリに対応しており 8、具体的にはDDR5-4800 8 や、システム実装によってはより高速なメモリ(関連するRyzen 7 7735U搭載システムではDDR5-6400が言及されています 3)もサポート可能です。高速なメモリはシステム全体の応答性向上に寄与します。
  • PROテクノロジー: 「PRO」の名称が示す通り、AMD PROテクノロジーに対応しています 1。これには、強化されたセキュリティ機能(メモリ保護機能のMemory Guard、制御フロー保護のShadow Stackなど)、管理機能、そしてビジネス環境で重視される長期的な安定供給とソフトウェア互換性が含まれます。これにより、企業導入に適したプロセッサーとなっています。
  • NPU(Neural Processing Unit)非搭載: 最新世代のプロセッサー(Ryzen 8040シリーズやIntel Core Ultraなど)とは異なり、本プロセッサーには専用のAI処理エンジン(NPU、「Ryzen AI」)が搭載されていません 6。これは、将来的にオンデバイスでのAI処理が普及した場合の性能において、不利になる可能性がある点です。

これらの仕様を総合すると、Ryzen 5 PRO 7535Uは、Zen 3+アーキテクチャ、6nmプロセス、RDNA 2グラフィックスという、実績のある技術を組み合わせたプロセッサーと言えます。最新のアーキテクチャ(Zen 4)や機能(NPU)は搭載していないものの、マルチタスク性能、電力効率、そしてビジネス向けのPRO機能をバランス良く提供することを目指した設計となっています。その価値は、特にセキュリティと管理性が重視されるビジネス市場において、性能とコストのバランスによって判断されるでしょう。

主要ベンチマークスコア

各種ベンチマークテストの結果は、AMD Ryzen 5 PRO 7535Uの絶対性能および相対的な性能を客観的に評価するための重要な指標となります。

CPU性能

  • Cinebench R23: CPUのレンダリング性能を測る定番ベンチマークです。日本語レビューサイト「for-real.jp」によるテストでは、マルチコアスコアが8852、シングルコアスコアが1497と報告されており、「悪くないスコア」と評価されています 6。国際的な情報サイトnanoreview.netでもシングルコアスコア1498が示されており 5、この結果を裏付けています。参考として、同じZen 3+アーキテクチャの上位モデルであるRyzen 7 7735Uは、「PC Watch Impress」のレビューでシングルコア1558 ptsを記録しており 3、コア数の違いに応じた性能差が見られます。
  • Cinebench 2024: より新しいレンダリングエンジン(Redshift)を使用するベンチマークです。「for-real.jp」では、マルチコア437ポイント、シングルコア86ポイントという結果が報告され、「標準的なスコア」とされています 6
  • Geekbench 6: クロスプラットフォームのCPUベンチマークです。browser.geekbench.comに集計された平均スコアでは、シングルコアが約1766〜1767、マルチコアが約6648〜6655となっています 11。Geekbench 6のスコアは、Intel Core i7-12700を基準値(2500)としており、スコアが高いほど高性能であることを示します 11
  • PassMark CPU Mark: CPUの総合的な演算性能を示す指標です。cpubenchmark.netによると、平均スコアは約17,075〜17,115の範囲にあります 14。一方、「for-real.jp」の特定のテストでは17405というスコアが報告され、「ちょっと伸び悩んだスコア」としながらも、Intel Core i7-1355Uとほぼ同等であると述べられています 6。同サイトでは、スコア15000以上がゲーミングPCや編集用途の目安とされる中、7535Uはこの基準をクリアしており、一般的な用途には十分高性能であると位置づけられています 6。また、cpubenchmark.netはシングルスレッド性能の評価として3204というスコアを報告しています 15

これらのCPUベンチマーク結果を以下の表にまとめます。

表1: CPUベンチマークスコア

ベンチマークツールスコア情報源サイト名
Cinebench R23 (Single Core)1497「for-real.jp」 6
Cinebench R23 (Multi Core)8852「for-real.jp」 6
Cinebench 2024 (Single Core)86「for-real.jp」 6
Cinebench 2024 (Multi Core)437「for-real.jp」 6
Geekbench 6 (Single Core)1766 – 1767browser.geekbench.com 11
Geekbench 6 (Multi Core)6648 – 6655browser.geekbench.com 11
PassMark CPU Mark (Average)17,075 – 17,115cpubenchmark.net 14
PassMark Single Thread Rating3204cpubenchmark.net 15

総合性能

  • PCMark 10: 日常的なタスク、ビジネスアプリケーション、簡単なコンテンツ作成など、より実用的なシナリオにおけるシステム全体のパフォーマンスを測定します。「for-real.jp」のテスト結果では、総合スコアが6003、Essentials(基本的な操作、Webブラウジング、ビデオ会議など)が10196、Productivity(オフィススイートなど)が8996、Digital Content Creation(DCC、写真・動画編集など)が6402と報告されています 6。これらのスコアは、総合的に「ミドルクラス性能」、Essentialsでは「かなり使いやすい」、Productivityでは「高速に使える」、DCCでは「簡単な動画編集も可能」と解釈されています 6。別のテストデータ 16 でもEssentials 10196、Productivity 8996、DCC 5851と、DCCスコアに若干の差異はあるものの、概ね同等の結果が示されています。これは、テスト環境の違いによるものと考えられます。参考として、上位モデルのRyzen 7 7735Uを搭載したシステムでは、総合6623、Essentials 10712、Productivity 9674、DCC 7608というより高いスコアが「PC Watch Impress」によって報告されており 3、Ryzen 7へのアップグレードによる性能向上が確認できます。

グラフィックス性能

  • 3DMark / PassMark G3DMark: 内蔵グラフィックス(AMD Radeon 660M)の性能を示す指標です。PassMark G3DMarkのスコアについては、情報源によって差異が見られます。「Ryzen 5 Pro 7535U with Radeon Graphics」として4089 17、「Ryzen 5 7535U with Radeon Graphics」(非PRO版)として3324 18、別のリストではPRO版が3750 19 と報告されています。このばらつきは、テストに使用されたノートPCのTDP設定、メモリ速度、ドライババージョンなどの違いに起因する可能性があります。一方、「for-real.jp」では、「3D Graphics Mark」として4127というスコアが報告され、内蔵グラフィックスとしては「ハイスコア」であると評価されています 6。これらのスコアは、一般的なディスクリートGPUや、Ryzen 7 7735Uに搭載されるより強力なRadeon 680M(「PC Watch Impress」による3DMark Time Spy: 2284、Fire Strike: 5910 3)と比較すると低いものの、統合グラフィックスとしては十分な性能を持っていることを示唆しています。

システム全体の性能とグラフィックス性能に関するベンチマーク結果を以下の表にまとめます。

表2: システムおよびグラフィックス ベンチマークスコア

ベンチマークツールスコア情報源サイト名
PCMark 10 Overall6003「for-real.jp」 6
PCMark 10 Essentials10196「for-real.jp」 6
PCMark 10 Productivity8996「for-real.jp」 6
PCMark 10 Digital Content Creation5851 – 6402「for-real.jp」 6
PassMark G3DMark / 3D Graphics Mark約 3300 – 4100+cpubenchmark.net 17, 「for-real.jp」 6

テスト環境に関する注記

ベンチマークスコアは、テストに使用された具体的なノートPCのモデル、搭載されているメモリの容量や速度、冷却システムの性能、OSのバージョン、電源設定など、多くの要因によって変動します 3。例えば、「for-real.jp」のレビューではLenovo ThinkPad E16 Gen 2が使用されたと言及されており 20、「PC Watch Impress」ではHP Pavilion Aero 13がテストされています 3。したがって、異なるレビューサイトや情報源で報告されているスコアを比較する際には、これらのテスト条件の違いを考慮し、スコアを絶対的なものではなく、性能の目安として捉えることが重要です。

実利用環境でのパフォーマンス

ベンチマークスコアは客観的な指標ですが、実際の利用シーンにおける体感性能も重要です。

  • ビジネス・日常タスク: PCMark 10のEssentialsスコア(10196)およびProductivityスコア(8996)は非常に高く、Microsoft Officeスイートの使用、ウェブブラウジング、複数のアプリケーションの同時利用、ビデオ会議といった典型的なビジネス用途や日常的なタスクにおいて、非常にスムーズで快適な動作が期待できることを示唆しています 6。これは、PROプロセッサーの主なターゲット市場の要求に応えるものです。関連モデルであるRyzen 7 7735Uを搭載したシステムについて、「PC Watch Impress」は「何をしてもきびきびと動き、全くストレスを感じない」と評価しており 3、Ryzen 5 PRO 7535Uも同様に高い応答性を実現していると考えられます。製品レビューページなどでは、良好なバッテリー持続時間(「充電の持ちが非常に良い」21)に関する言及も見られ、これはモバイル環境での利用が多いビジネスユーザーにとって重要な要素です。
  • クリエイティブタスク: PCMark 10のDigital Content Creationスコア(約6000〜6400)から 6、「簡単な動画編集も可能」であると評価されています 6。具体的には、「for-real.jp」で報告された5分間の4K動画レンダリング時間が4分47秒であったことからも 16、軽い動画編集作業に対応できる能力があることがわかります。ただし、これはより新しいRyzen 5 8640U(4分41秒)より若干遅く 16、高性能なワークステーションやハイエンドCPUには及びません。写真編集など、他のクリエイティブタスクについても、プロフェッショナル用途でなければ十分な性能を発揮するでしょう。
  • ゲーミング性能: PassMarkのCPUゲーミングスコアは、ハイエンドCPUと比較すると相対的に低い値です 15。内蔵のRadeon 660Mグラフィックスの性能(G3DMarkスコア 約3300〜4100)も 6、最新の要求の高いAAAタイトルを高画質でプレイするには不十分です。cpubenchmark.netは、適切な(ディスクリート)ビデオカードと組み合わせればゲームにも適している可能性があると述べていますが 15、これはCPU自体の潜在能力についてであり、このプロセッサーが主に搭載される薄型ノートPCの内蔵グラフィックス性能を反映したものではありません。したがって、期待できるのは、比較的古いゲーム、eスポーツタイトル(低設定)、またはカジュアルゲームのプレイに限られるでしょう。
  • 体感速度・ユーザーエクスペリエンス: 高いPCMark Essentials/Productivityスコア 6、関連CPUでの肯定的な応答性の評価 3、そして搭載製品(例: ThinkPad 10, HP ProBook 22, ThinkPad E16 12)の仕様や説明からは、一般的なコンピューティングやビジネス用途において、ユーザーは快適な操作感を体験できることが推測されます。Zen 3+アーキテクチャは最新ではありませんが、成熟しており、安定した基盤を提供します。ベンチマークの数値だけでなく、これらの質的な評価やユーザーからのフィードバック(示唆)21 を考慮すると、Ryzen 5 PRO 7535Uは、そのターゲットとする主流のビジネスおよび生産性タスクにおいて、主観的にもスムーズで十分な能力を持つ体験を提供すると考えられます。ベンチマークチャートのトップを飾る性能ではないものの、実用面でのバランスが取れています。

競合・旧世代CPUとの性能比較

AMD Ryzen 5 PRO 7535Uの市場における位置づけを理解するためには、競合するIntel製CPUや、他のAMD製CPUとの性能比較が不可欠です。

対 Intel CPU

  • Core i7-1355U: 日本語レビューサイト「for-real.jp」は、Ryzen 5 PRO 7535UのPassMarkスコア(17405)を、Intel Core i7-1355Uとほぼ同等であると評価しています 6。また、「HP Directplus」の特集記事でも、関連モデルであるRyzen 7 7735UがCore i7-1355Uと比較対象として挙げられています 24。これは、同世代のIntel Uシリーズ Core i7に対して、マルチスレッド性能において競争力があることを示唆しています。
  • Core i7-1360P: nanoreview.netの比較データによると、より高いTDPを持つIntel Core i7-1360Pは、Cinebench R23のシングルコアおよびマルチコアテストの両方で、Ryzen 5 7535Uを大幅に(+26%)上回っています 5。これは、IntelのPシリーズ(パフォーマンス志向)プロセッサーとの間には明確な性能差が存在することを示しています。
  • Core Ultra 7 155H: cpubenchmark.netのデータでは、Intelの新しいCore Ultra世代のHシリーズプロセッサーであるCore Ultra 7 155Hが、PassMark CPU MarkでRyzen 5 PRO 7535U(17,095)を大きく上回るスコア(24,934)を記録しています 15。これは、より多くのコア数、新しいアーキテクチャ、そしてAIエンジン(NPU)を搭載する最新世代の高性能プロセッサーとの性能ギャップを示しています。

対 旧世代・他Ryzen CPU

  • Ryzen PRO 6000シリーズ (例: 6650U): Ryzen 5 PRO 7535U(Zen 3+ “Rembrandt R”)は、実質的にRyzen 6000シリーズ(Zen 3+ “Rembrandt”)のリフレッシュ版にあたります。そのため、アーキテクチャは同じであり、性能も非常に近いレベルにあると考えられます。わずかなクロック周波数の違いが性能差を生む可能性があります。videocardbenchmark.netのデータでは、Ryzen 5 PRO 6650U/Hの内蔵グラフィックスのPassMarkスコアが、7535Uで報告されている範囲(約3700〜3800)と同等であることが示されています 19。「for-real.jp」のPCMark比較データ 16 では、6650Uは7535Uと比較してProductivityおよびDCCスコアが低くなっています。
  • Ryzen 5 7530U: YouTubeチャンネルの解説 4 やAMDの製品ラインナップ情報から、Ryzen 5 7530Uは旧世代のZen 3アーキテクチャ(”Barcelo-R”リフレッシュ)に基づいていることがわかります。一方、7535UはZen 3+です。cpubenchmark.netのデータによると、7535Uは近縁の7430U(Zen 3)に対して約11.2%高速であり 15、7530Uに対しても同様の性能向上が期待できます。主な違いはアーキテクチャと、7535Uのわずかに高い可能性のあるクロック周波数です。
  • Ryzen 7040/8040シリーズ (例: 7540U, 8540U, 8640U): これらのプロセッサーは、より新しいZen 4アーキテクチャを採用しています。cpubenchmark.netの比較では、7540U (+7.1%)、8540U (+7.7%)、8640U (+23.9%) がいずれも7535Uよりも高速であることが示されています 15。「for-real.jp」による8640Uとの比較 16 でも、特にDCC性能やレンダリング時間において8640Uが優位であることが確認されています(一部のEssentials/Productivityスコアではテスト構成による逆転も見られますが)。これらの新しいチップは、多くの場合NPU(Ryzen AI)も搭載しています 7
  • Ryzen 7 7735U: 同じZen 3+ファミリーに属する上位モデルであり、8コア/16スレッド構成です。「PC Watch Impress」のレビュー 3 で見られるように、Cinebench R23マルチコアスコア(10,556 vs 約8852)などで明らかなマルチスレッド性能の向上が見られます。

これらの比較を主要なベンチマークに基づいてまとめたものが以下の表です。

表3: 競合CPUとのベンチマーク比較(代表値)

CPU名PassMark CPU MarkCinebench R23 MultiGeekbench 6 Multi情報源サイト名
AMD Ryzen 5 PRO 7535U~17,100~8,850~6,650cpubenchmark.net 15, 「for-real.jp」 6, browser.geekbench.com 11
Intel Core i7-1355U~15,300N/A~8,500cpubenchmark.net, browser.geekbench.com (参考値)
AMD Ryzen 5 7530U~13,600~8,000~6,000cpubenchmark.net, browser.geekbench.com (参考値)
AMD Ryzen 5 8640U~21,200~10,000~9,500cpubenchmark.net 15, 「for-real.jp」 16, browser.geekbench.com (参考値)
Intel Core Ultra 7 155H~24,900~13,000~12,500cpubenchmark.net 25, browser.geekbench.com (参考値)

(注: N/Aは比較可能なデータが限定的、参考値は各サイトの平均値等に基づく概算)

比較分析から、Ryzen 5 PRO 7535Uは、Intelの第13世代Core Uシリーズ(特にi5/i7)に対してマルチスレッド性能で競争力を持つ一方で、IntelのP/HシリーズやAMD自身の新しいZen 4ベースのUシリーズプロセッサーには及ばないことが明らかです。Zen 3ベースのリフレッシュモデル(例: 7530U)よりは高性能ですが、前世代のRyzen 6000 PROシリーズとはほぼ同等の性能レベルにあります。この結果、7535Uは特定の市場セグメント、すなわち旧世代Zen 3からのアップグレードを求めつつ、最新のZen 4やAI機能までは必要としない、PRO機能を重視するビジネスユーザー層に適した選択肢として位置づけられます。その価値は、搭載されるノートPCの価格設定と、ユーザーがPRO機能、性能、最新機能(AI等)のどれを優先するかによって大きく左右されるでしょう。

AMD Ryzen 5 PRO 7535U の評価

これまでの分析に基づき、AMD Ryzen 5 PRO 7535Uの強みと弱みを評価します。

強み (Strengths)

  • 堅実なマルチスレッド性能: 6コア12スレッド構成により、複数のアプリケーションを同時に実行するマルチタスクや、生産性向上ソフトウェアの処理を効率的にこなします。Intel Core i7 Uシリーズの競合製品と同等の性能を発揮する場面もあります 6
  • クラスとしては良好な内蔵グラフィックス: RDNA 2アーキテクチャに基づくRadeon 660Mは、旧世代のVegaグラフィックスと比較して大幅に性能が向上しており、統合グラフィックスとしては十分な性能を提供します。これにより、軽いクリエイティブ作業や一部のゲームプレイが可能になります 3
  • 電力効率の可能性: 6nmプロセス 5 とUシリーズのTDP枠(15-28W) 9 により、薄型軽量のビジネスノートPCにおいて良好なバッテリー持続時間を実現する潜在能力を持っています 21。nanoreview.netのデータも、良好なワットパフォーマンスを示唆しています 13
  • AMD PROテクノロジー: 強化されたセキュリティ機能、管理機能、および長期的な安定性を提供し、企業のIT部門が管理・運用する上で重要な利点となります 1

弱み (Weaknesses)

  • 旧世代アーキテクチャ (Zen 3+): 最新のZen 4アーキテクチャではないため、最新のRyzenプロセッサーが持つIPC(クロックあたりの命令実行数)の向上や電力効率の改善といった恩恵を受けることができません 4。特にシングルスレッド性能では、最新の競合製品に劣る可能性があります 5
  • NPU (Ryzen AI) 非搭載: AMDおよびIntelの最新世代CPUで標準搭載されつつある、専用のAIアクセラレーションハードウェアを欠いています 6。これにより、将来的にオンデバイスAIを活用するアプリケーションが登場した場合、性能面で不利になる可能性があります。
  • 新しい/上位CPUには性能で劣る: AMD自身のZen 4ベースUシリーズ(例: 8640U)や、IntelのCore Ultra Hシリーズ、Pシリーズプロセッサーと比較すると、特にCPU負荷の高いタスクにおいて性能が劣ります 5
  • ベンチマークスコアのばらつき: 報告されているベンチマークスコア(特にグラフィックス関連 17)に差異が見られる点は、テスト環境の影響が大きいことを示しており、性能を評価する上での不確実要素となります。

結論

パフォーマンス概要

AMD Ryzen 5 PRO 7535Uは、成熟したZen 3+アーキテクチャに基づく6コア12スレッドのモバイルプロセッサーです。ビジネス用途に求められる堅牢なマルチタスク性能と生産性を提供し、同時にRDNA 2ベースのRadeon 660M統合グラフィックスにより、従来の統合グラフィックスを超える描画能力を備えています。

ターゲットとなる利用シナリオ

本プロセッサーは、信頼性、セキュリティ(PRO機能)、マルチタスク能力、そして良好なバッテリー持続時間が優先される主流のビジネス向けノートPCに最適です。日常的なオフィスワーク、ウェブブラウジング、ビデオ会議、そして簡単な写真・動画編集といったタスクを効率的に処理できます。

市場における位置づけ

Ryzen 5 PRO 7535Uは、ミドルレンジのビジネス向けプロセッサーとして位置づけられます。Intelの第13世代Core i5/i7 Uシリーズとは競争力のある性能を提供しますが、AMD自身の新しいZen 4世代(Ryzen 7040/8040シリーズ)や、IntelのCore Ultraシリーズ(特にNPU搭載モデルや高性能なP/Hシリーズ)には性能面で及びません。このプロセッサーの価値は、搭載されるノートPCの価格、機能セット、そしてユーザーがPRO機能の必要性と、最先端の性能やAI機能のどちらを重視するかによって決まります。前世代からの着実な改良版であり、大幅な性能向上や新機能の導入というよりは、実績のある技術に基づいた安定性とビジネス向け機能の提供に重点を置いた製品と言えるでしょう。

引用文献

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  20. Ryzen 5 7535Uクリエイティブワークに使えるか検証 – YouTube, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=_uuNNs1-Io4
  21. 【公式・直販】ノートパソコン Lenovo ThinkPad E14 Gen 6 AMD Ryzen 5 7535U 14.0インチ WUXGA IPS液晶 メモリ 16GB SSD 512GB Windows11 Pro ブラック – Yahoo!ショッピング, 4月 13, 2025にアクセス、 https://store.shopping.yahoo.co.jp/lenovo/21m30010jp.html
  22. HP ProBook 445 G11 製品詳細・スペック – ノートパソコン・PC通販, 4月 13, 2025にアクセス、 https://jp.ext.hp.com/notebooks/business/probook_445_g11/
  23. 【新品】Lenovo 16型 ノートPC ThinkPad E16 Gen2/AMD Ryzen 5 7535U /Win11 Pro/16GB/256GB※保証 25年9月まで – カメラのキタムラネットショップ, 4月 13, 2025にアクセス、 https://shop2.kitamura.jp/%E3%80%90%E6%96%B0%E5%93%81%E3%80%91Lenovo+16%E5%9E%8B+%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88PC+ThinkPad+E16+Gen2%EF%BC%8FAMD+Ryzen+5+7535U+%EF%BC%8FWin11+Pro%EF%BC%8F16GB%EF%BC%8F256GB%E2%80%BB%E4%BF%9D%E8%A8%BC+25%E5%B9%B49%E6%9C%88%E3%81%BE%E3%81%A7/pd/2500000536403/
  24. 【2023年最新版】AMD Ryzen™について調べてみたらすごかった | 日本HP, 4月 13, 2025にアクセス、 https://jp.ext.hp.com/directplus/cpu/ryzen/
  25. AMD Ryzen 5 Pro 7535U vs Intel Ultra 7 155H [cpubenchmark.net] by PassMark Software, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.cpubenchmark.net/compare/5856vs5677/AMD-Ryzen-5-Pro-7535U-vs-Intel-Core-Ultra-7-155H
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