AMD Ryzen Z1 Extreme ベンチマークまとめ

CPU-AMD-Ryzen CPU・SoC

1. はじめに

AMD Ryzen Z1 Extremeは、AMDが携帯型(ハンドヘルド)ゲーミングPC市場向けに特化して開発した高性能APU(Accelerated Processing Unit)です 1。ノートPC向けに先行して投入されたRyzen 7040シリーズ(開発コードネーム: Phoenix)をベースとし、CPUアーキテクチャに「Zen 4」、GPUアーキテクチャに「RDNA 3」という最新世代の技術を採用しています 1。これにより、小型デバイスでありながら高い処理性能と電力効率の両立を目指しています。

Ryzen Z1 Extremeは、特にASUSの「ROG Ally」やLenovoの「Legion Go」といった、2023年以降に登場した主要なハンドヘルドゲーミングPCに採用されており、この市場におけるハイエンド性能の基準となっています 1

本レポートでは、主に日本語のテクノロジーレビューサイトやブログから収集したベンチマークデータを基に、AMD Ryzen Z1 ExtremeのCPUおよびGPU性能を詳細に分析します。主要なベンチマークソフトウェアのスコア、実ゲームにおけるパフォーマンス、そしてSteam Deck APUや他のRyzenモバイルプロセッサといった競合製品との比較を通じて、その性能特性、長所、短所を明らかにすることを目的とします。

2. AMD Ryzen Z1 Extremeの仕様

AMD Ryzen Z1 Extremeの主な技術仕様は以下の通りです。

  • CPU: Zen 4 アーキテクチャを採用した8コア/16スレッド構成です。最大ブーストクロックは5.1GHzに達し、ハンドヘルドデバイス向けとしては非常に強力なCPU性能を提供します 1
  • GPU: RDNA 3 アーキテクチャを採用した統合GPU「AMD Radeon Graphics」を搭載しています。Compute Unit (CU) 数は12基で、これは下位モデルのRyzen Z1 (4CU) の3倍にあたります 1。理論上の単精度浮動小数点演算性能(FP32)は最大8.6 TFLOPSに達するとされています 4
  • キャッシュメモリ: L2キャッシュ容量は8MB、L3キャッシュ容量は16MBで、合計24MBのキャッシュを備えています 1
  • TDP (Thermal Design Power): 熱設計消費電力は15Wから30Wの範囲でデバイスメーカーが設定可能です 1。これにより、デバイスの冷却能力やバッテリー容量に応じて性能と消費電力のバランスを調整できます。ASUS ROG Allyなどでは、ユーザーが「パフォーマンスモード」や「ターボモード」といった形でTDP設定を変更できる機能も搭載されています 4
  • メモリ: 高速なLPDDR5およびLPDDR5Xメモリをサポートしています 3。メモリ帯域幅は統合GPUの性能に大きく影響するため、これは重要な要素です。特にROG Ally Xのような後継モデルでは、メモリ容量の増加(例:16GB→24GB)や高速化(LPDDR5-6400→LPDDR5X-7500)が行われ、内蔵グラフィックスに割り当てられるメモリ容量が増えることで、さらなる性能向上が期待されます 12
  • 製造プロセス: CPUダイとGPUダイを含む主要部分はTSMCの4nmプロセスで製造されています(ベースとなるPhoenixと同様)3。I/Oダイは6nmプロセスです 3
  • その他: Ryzen 7040シリーズと同様に、AI処理を高速化する「Ryzen AI」エンジンも搭載していると考えられます 3。また、最新のインターフェース規格であるUSB4もサポートしています 3

3. CPU性能ベンチマーク

Ryzen Z1 ExtremeのCPU性能は、その8コア16スレッドという構成と最新のZen 4アーキテクチャにより、ハンドヘルドデバイスとしては卓越したレベルにあります 11

  • CPU-Z: ベンチマークツールCPU-Zでは、8コア16スレッド構成が確認されています 11。シングルスレッド性能に関しても、レビュー動画によれば、電源接続時のパフォーマンスモード(15W)でもデスクトップ向けのRyzen 7 5700Xに匹敵するスコアを出すことが示唆されており、Zen 4アーキテクチャのIPC(クロックあたりの命令実行数)の高さを裏付けています 15
  • PassMark CPU Mark: cpubenchmark.netに集計されたデータによると、Ryzen Z1 Extremeの平均CPU Markスコアは25,000点台後半から27,000点前後となっています 17。これは、Intelのモバイル向けCPUであるCore i5-12600HE(約3.2%上)やCore i7-14701E(約7.9%上)といったプロセッサと比較されるレベルであり、高いマルチスレッド性能を示しています 17
  • Cinebench / Geekbench: 具体的なスコアデータは今回の調査範囲では限定的でしたが、Zen 4アーキテクチャの特性から、これらのベンチマークにおいても高いシングルスレッドおよびマルチスレッド性能を示すことが予想されます。特にマルチスレッド性能は、8コア16スレッド構成により、従来のハンドヘルドデバイス向けAPUを大きく上回るでしょう。

分析:

Ryzen Z1 ExtremeのCPU部は、ハンドヘルドゲーミングPCにおいて、ゲームプレイだけでなく、OSの動作やバックグラウンドタスク、コンテンツ制作などの一般的なPC作業も快適に行えるだけの十分なパワーを持っています。TDPが15Wから30Wの範囲で変動するため、実際のパフォーマンスはデバイスの冷却設計やユーザーが選択する動作モード(省電力、バランス、パフォーマンス/ターボ)に依存します 4。例えば、ROG Allyではターボモード(例:25WやAC接続時30W超)に設定することで、CPUのフルパワーに近い性能を引き出すことができますが、バッテリー駆動時間は短くなります 15。競合となるIntel Core Ultraプロセッサと比較した場合、特に電力効率の面で優位性を持つ可能性が指摘されています 19。

4. GPU性能ベンチマーク

Ryzen Z1 Extremeの統合GPUは、RDNA 3アーキテクチャと12基のCompute Unit (CU) を組み合わせることで、従来の統合GPUの性能を大きく超えるグラフィックス処理能力を実現しています 4

  • 3DMark:
  • Night Raid (DirectX 12, 軽量): Ryzen 5 8500G (Radeon 740M, 4CU) のGraphics scoreが19,000程度であるのに対し、Ryzen Z1 Extreme (30W動作時) はテスト中のフレームレートで130fpsから190fps台を記録しており、CU数の差(4CU vs 12CU)が性能に大きく反映されていることがわかります 20。これは、Z1 Extremeが軽量なDirectX 12ゲームや低設定でのプレイにおいて非常に高いパフォーマンスを発揮することを示唆します。
  • Solar Bay (Vulkan, レイトレーシング): マルチプラットフォーム向けのレイトレーシングテストであるSolar Bayでは、Ryzen 5 8600G (Radeon 760M, 8CU) のスコアが約8900、フレームレートが30fps台であるのに対し、Ryzen Z1 Extreme (30W動作時) はフレームレート40fps台を記録しています 20。CU数が多く(8CU vs 12CU)、おそらく動作クロックも高いZ1 Extremeが、より負荷の高い最新APIやレイトレーシング処理においても優位性を持つことを示しています。
  • CPU Profile (Max Threads): 3DMarkのCPU ProfileテストにおけるMax Threadsスコアは6140と報告されています 21。これはCPUのマルチスレッド性能を測る指標の一つです。
  • 理論演算性能: AMDは、Ryzen Z1 ExtremeのGPU演算性能を最大8.6 TFLOPS (FP32) と公表しています 4。これは、下位モデルのRyzen Z1 (4CU, 最大2.8 TFLOPS) の約3倍に相当し、グラフィックス性能において大きな差があることを意味します 5。この性能は、一世代前の据え置きゲーム機に匹敵するレベルであり、ハンドヘルドデバイスとしては画期的です。

分析:

Ryzen Z1 ExtremeのGPU性能は、ハンドヘルドゲーミング体験を大きく向上させる要因です。12CUのRDNA 3 GPUは、多くのPCゲームをネイティブ解像度(多くの場合フルHD)でプレイ可能にするパワーを持っています。特に、Ryzen Z1との比較では、CU数が3倍違うため、グラフィック負荷の高いゲームや高画質設定でのプレイにおいて、その差は顕著になります 13。また、ROG Ally Xのように搭載メモリ容量が増加し、GPUへの割り当てメモリが増えることで、テクスチャデータの扱いや高解像度でのパフォーマンスがさらに改善される可能性があります 12。ただし、外部GPU(eGPU)と比較すると絶対的な性能では劣るため、最高設定でのAAAタイトルのプレイには限界があります 24。

5. 実ゲームにおけるパフォーマンス

Ryzen Z1 Extremeを搭載したデバイス(主にASUS ROG Ally)における実ゲームのパフォーマンスは、TDP設定(サイレント、パフォーマンス、ターボなど)や、ACアダプタ接続の有無によって変動します 4。以下は、いくつかの代表的なゲームタイトルにおけるベンチマーク結果の概要です。

ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク 23

解像度・品質設定Z1 Extreme (AC駆動)Z1 Extreme (バッテリー駆動)
HD (1280×720), 標準品質10735ポイント (快適) / 79.8fps8689ポイント (快適) / 63.9fps
HD (1280×720), 最高品質8382ポイント (快適) / 60.9fps6719ポイント (やや快適) / 49.9fps
フルHD (1920×1080), 標準品質7723ポイント (やや快適) / 55.4fps5643ポイント (普通) / 40.3fps
フルHD (1920×1080), 最高品質5230ポイント (普通) / 36.8fps4501ポイント (普通) / 33.5fps
  • FF14のような比較的負荷の軽いMMORPGでは、フルHD解像度でも標準品質なら「やや快適」、最高品質でも「普通」の評価を得ており、十分プレイ可能です。HD解像度であれば最高品質でも快適なプレイが期待できます。バッテリー駆動時はスコアが低下しますが、HD解像度なら快適性を維持できます。

ファイナルファンタジーXV ベンチマーク 23

解像度・品質設定Z1 Extreme (AC駆動)Z1 Extreme (バッテリー駆動)
HD (1280×720), 軽量品質7448ポイント (快適) / –7314ポイント (快適) / –
HD (1280×720), 標準品質5799ポイント (やや快適) / –5859ポイント (やや快適) / –
フルHD (1920×1080), 軽量品質4735ポイント (やや快適) / –4528ポイント (やや快適) / –
フルHD (1920×1080), 標準品質3611ポイント (普通) / –3546ポイント (普通) / –
  • FF15はFF14よりも負荷が高いですが、フルHD/軽量品質で「やや快適」、標準品質で「普通」評価となり、プレイ可能なレベルです。HD解像度であれば標準品質でも「やや快適」評価となります。AC駆動とバッテリー駆動での差はFF14ほど大きくない結果となっています。

サイバーパンク2077 23

解像度・品質設定Z1 Extreme (FSRオフ)Z1 Extreme (FSRオン, Quality想定)
HD (1280×720), 中設定51.29fps75.85fps
HD (1280×720), ウルトラ設定38.45fps57.57fps
フルHD (1920×1080), 中設定29.04fps59.46fps
フルHD (1920×1080), ウルトラ設定22.87fps42.93fps
  • サイバーパンク2077のような非常に負荷の高いAAAタイトルでは、ネイティブ解像度でのプレイは設定次第で厳しくなります。フルHD/中設定では平均30fpsを下回りますが、AMD FidelityFX Super Resolution (FSR) を有効にすることで、平均60fps近いフレームレートを達成可能です。HD解像度であれば、FSRなしでも中設定で平均50fpsを超え、FSRを活用すればウルトラ設定でも60fps近いプレイが可能です。

その他のタイトル:

  • モンスターハンターワイルズ (想定): ベンチマークテストでは、フルHD/最低設定(フレーム生成なし)で平均36.13FPSと報告されており、プレイは可能ですが、より快適性を求めるなら720p解像度や設定のさらなる調整が必要になる可能性があります 25
  • ストリートファイター6: フルHD/NORMAL設定で平均60fpsを超える快適なプレイが可能と報告されています 26。格闘ゲームにおいて重要な安定したフレームレートを確保できる性能を持っています。
  • エルデンリング: フルHD/中設定(レイトレーシングオフ)では平均40fps前後ですが、解像度をHD (720p) に下げるか、AMD Radeon Super Resolution (RSR) を併用することで平均50fpsを超えることが可能です 26
  • 軽量なeスポーツタイトル: レインボーシックス シージのようなタイトルでは、フルHD/低設定で平均100fpsを超えるパフォーマンスが期待でき、搭載デバイスの持つ高リフレッシュレートディスプレイ(例: 120Hz)を活かした滑らかな描画が可能です 11

分析:

Ryzen Z1 Extremeは、多くのPCゲームをフルHD解像度でプレイできる能力を持っていますが、タイトルの要求スペックに応じて画質設定の調整が必要です 15。特に最新のAAAタイトルでは、フルHD/最高設定での60fps維持は困難な場合があります 26。しかし、FSRやRSRといったアップスケーリング技術を積極的に活用することで、描画負荷を軽減しつつ、フレームレートを大幅に向上させることが可能です 23。これにより、見た目の品質を大きく損なうことなく、より多くのゲームを快適なフレームレートで楽しむことができます。デバイスのディスプレイが持つ120Hzなどの高リフレッシュレートは、対応するゲームにおいて非常に滑らかな視覚体験を提供します 29。

6. 競合プロセッサとの比較

Ryzen Z1 Extremeの性能を理解する上で、他のハンドヘルド向けプロセッサとの比較は重要です。

  • AMD Ryzen Z1:
  • Z1 Extremeの直接の下位モデルにあたります。CPUコア数は6コア12スレッド、GPUのCU数は4基と、それぞれZ1 Extreme(8コア16スレッド、12CU)よりも少なくなっています 1
  • GPUの理論演算性能もZ1 Extreme(最大8.6 TFLOPS)に対してZ1は最大2.8 TFLOPSと、約1/3程度です 5
  • 実ゲームのベンチマーク(FF14, FF15, Cyberpunk 2077)においても、特にGPU負荷が高い場面(高解像度、高画質設定)でZ1 ExtremeがZ1を大幅に上回る結果が示されています 23。よりカジュアルなゲームや低設定でのプレイが主であればZ1も選択肢に入りますが、幅広いゲームを快適にプレイしたい場合はZ1 Extremeの優位性が明確です。
  • Steam Deck APU (AMD Custom APU 0405):
  • ValveのSteam Deckに搭載されているカスタムAPUです。CPUはZen 2アーキテクチャ(4コア8スレッド)、GPUはRDNA 2アーキテクチャ(8CU)を採用しています 31
  • Z1 ExtremeはCPU・GPU共に新しい世代(Zen 4, RDNA 3)のアーキテクチャを採用し、CPUコア数/スレッド数(8C/16T vs 4C/8T)、GPU CU数(12CU vs 8CU)も上回っています 31
  • この結果、特にCPU負荷の高いゲームや、より高い解像度(Steam Deckは主に1280×800、Z1 Extreme搭載機は1920×1080)でのゲーミングにおいて、Z1 Extreme搭載機が大幅に高性能となります 15。レビュー比較でも、Z1 Extreme搭載のROG AllyはSteam Deckよりも多くのゲームで高いフレームレートを達成しています 15
  • ただし、Steam Deckは最適化されたSteamOS環境と、比較的安価な価格設定という利点があります 15
  • Intel Core Ultra (例: Core Ultra 7 155H / Arc Graphics):
  • IntelもCore Ultraプロセッサでハンドヘルドゲーミング市場に参入しています 7。MSI Clawなどがその例です。
  • Core Ultraに統合されたArc Graphicsの性能は、現時点での情報からは、Ryzen Z1以上、Ryzen Z1 Extreme未満となる可能性が示唆されています 7
  • PassMarkなどのベンチマーク比較では、特定のCore UltraモデルがZ1 Extremeを上回るスコアを出すこともありますが、実ゲーム性能や特に電力効率の面では、Z1 Extremeに分がある可能性も指摘されています 17。今後のドライバ最適化や製品展開によって評価が変わる可能性もあります。
  • その他Ryzenモバイルプロセッサ (例: Ryzen 7 6800U, Ryzen 7 7840U):
  • Ryzen 7 6800Uは一世代前のZen 3+ CPUとRDNA 2 GPU (12CU) を搭載しており、AYANEO 2などに採用されました 33。Z1 ExtremeはCPU/GPU共に新世代アーキテクチャのため、より高い性能と電力効率が期待できます。
  • Ryzen 7 7840Uは、Z1 Extremeと同じZen 4 CPU (8C/16T) とRDNA 3 GPU (12CU) を搭載する汎用モバイルAPUです 31。ONEXPLAYER 2 Proなどに搭載されています。基本的なアーキテクチャは共通ですが、Z1 Extremeはハンドヘルドデバイス向けに消費電力カーブなどが最適化されている可能性があります。実際の性能差はデバイスのTDP設定や冷却設計に大きく依存しますが、同等クラスのポテンシャルを持つと考えられます。

7. 性能特性、長所と短所

収集したデータに基づき、AMD Ryzen Z1 Extremeの主な性能特性、長所、短所をまとめます。

長所 (Pros):

  • クラス最高の統合グラフィックス性能: 12CUのRDNA 3 GPUは、ハンドヘルドデバイス向けAPUとしては現時点でトップクラスの性能を誇り、多くのPCゲームをフルHD解像度でプレイ可能にします 4
  • 強力なCPU性能: Zen 4アーキテクチャの8コア16スレッドCPUは、ゲームだけでなく一般的なPCタスクも快適にこなせる高い処理能力を提供します 11
  • 優れた電力効率: 最新のZen 4およびRDNA 3アーキテクチャと4nmプロセスにより、高性能ながら比較的良好な電力効率を実現しています 1
  • アップスケーリング技術対応: AMD FSR (FidelityFX Super Resolution) および RSR (Radeon Super Resolution) に対応しており、これらを活用することで、画質への影響を抑えつつフレームレートを向上させ、より重いゲームや高設定でのプレイ体験を改善できます 23
  • 最新インターフェース対応: USB4をサポートしており、高速なデータ転送や外部ディスプレイ接続、eGPU接続(対応デバイスの場合)などの拡張性を提供します 3

短所 (Cons):

  • バッテリー駆動時間: 高性能を発揮するターボモードなど、高TDP設定で負荷の高いゲームをプレイする場合、バッテリー駆動時間は1時間から2時間程度と短くなる傾向があります 18。長時間の外出先での利用にはモバイルバッテリーが推奨されます 18
  • TDP設定への依存度: パフォーマンスはデバイスのTDP設定に大きく左右されます 4。最高の性能を引き出すにはACアダプタ接続やターボモード設定が必要になる場面が多く、バッテリー駆動時には性能が制限されることがあります。
  • AAAタイトルの限界: 最新の非常に要求スペックが高いAAAタイトルにおいては、フルHD解像度で最高設定、高フレームレートを維持することは困難な場合があります 26。解像度や画質設定の調整、FSR/RSRの活用が前提となることがあります。
  • 搭載デバイスの価格: Ryzen Z1 Extremeを搭載するハンドヘルドゲーミングPCは、比較的高価になる傾向があります 8。下位モデルのZ1搭載機やSteam Deckと比較すると、初期投資が大きくなります。
  • 発熱と冷却: 高性能なAPUであるため、特に高負荷時には相応の発熱があります。デバイスの冷却設計がパフォーマンス維持やコンポーネントの寿命(例:microSDカードスロット周辺の熱問題が一部で報告された 28)に影響を与える可能性があります。

8. 結論

AMD Ryzen Z1 Extremeは、ハンドヘルドゲーミングPC市場に投入された画期的なAPUであり、性能と電力効率のバランスにおいて新たな基準を打ち立てました。Zen 4アーキテクチャの強力な8コア16スレッドCPUと、RDNA 3アーキテクチャに基づく高性能な12CU統合GPUの組み合わせは、従来のハンドヘルドデバイスでは難しかったフルHD解像度でのPCゲーミング体験を現実のものとしています。

ベンチマークテストや実ゲームでのパフォーマンス評価結果は、Ryzen Z1 Extremeが競合となるSteam Deck APUや下位モデルのRyzen Z1に対して明確な性能的優位性を持つことを示しています。特にグラフィックス性能の高さは顕著であり、FSRやRSRといったアップスケーリング技術を併用することで、最新のAAAタイトルを含む幅広いゲームを快適にプレイできるポテンシャルを秘めています。

一方で、その高性能ゆえに、高負荷時のバッテリー消費は大きく、駆動時間の短さが課題となる場面もあります。また、パフォーマンスはデバイス側のTDP設定や冷却能力に大きく依存するため、ユーザーは利用シーンに応じて動作モードを適切に選択する必要があります。

総じて、AMD Ryzen Z1 Extremeは、携帯性を損なうことなく高いゲーミング性能を求めるユーザーにとって非常に魅力的な選択肢です。このAPUの登場は、ハンドヘルドゲーミングPCの可能性を大きく広げ、今後の市場の発展を牽引する重要な役割を担っていると言えるでしょう。

引用文献

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