Apple A16 Bionic ベンチマークまとめ

cpu_apple-silicon CPU・SoC

I. Apple A16 Bionicチップ概要

A. 導入

Apple A16 Bionicチップは、Appleが自社設計する高性能System-on-a-Chip(SoC)であり、主にiPhoneの上位モデルおよび標準モデル、一部iPadに搭載されています。前世代からの着実な性能向上を実現し、スマートフォンの処理能力、グラフィックス性能、AI処理能力の新たな基準を打ち立てることを目指して開発されました。本レポートでは、A16 Bionicチップの技術的詳細、各種ベンチマークスコア、前世代や競合チップとの性能比較、そして実際のデバイスにおける使用感や発熱について、日本語のウェブサイト情報を中心に深く掘り下げて分析します。

B. 主な仕様

A16 Bionicチップのアーキテクチャと主要なスペックは以下の通りです。

  • CPU: 高性能コア「Everest」2基と高効率コア「Sawtooth」4基からなる6コア構成を採用しています 1。これにより、高い処理能力と優れた電力効率の両立を図っています。高性能コアの最大クロック周波数は3.46GHz、高効率コアは2.02GHzに達します 4。ただし、iPad (第11世代 / A16)に搭載されるバージョンでは、CPUコア数が5コアに削減されています 2。アーキテクチャはARMv8.6-Aに基づいています 2
  • GPU: Appleが設計した5コアGPUを搭載し、高いグラフィックス描画性能を提供します 1。これにより、要求の厳しいゲームやグラフィックアプリケーションもスムーズに動作させることが可能です。iPad (A16)搭載版では、GPUコア数も4コアに削減されています 2
  • Neural Engine: 機械学習処理に特化した16コアのNeural Engineを搭載しています 1。1秒間に最大17兆回の演算処理能力を持ち 2、顔認識、自然言語処理、拡張現実(AR)などのAI関連機能を高速かつ効率的に実行します。後継のA17 Proでは演算能力が35兆回/秒へと大幅に向上しています 6
  • トランジスタ数: 約160億個のトランジスタを集積しており、チップの複雑性と能力の高さを示しています 2
  • メモリ: 高速なLPDDR5メモリに対応しており 7、前世代と比較してメモリ帯域幅が50%増加しています 2。これにより、CPUやGPUへのデータ供給が高速化され、システム全体のパフォーマンス向上に寄与しています。
  • キャッシュ: 効率的なデータアクセスを実現するため、多層のキャッシュシステムを備えています。L1キャッシュは高性能コアあたり命令192KB+データ128KB、高効率コアあたり命令128KB+データ96KB。L2キャッシュは高性能コア用に16MB、高効率コア用に4MB。さらに、共有のシステムキャッシュとして24MBが搭載されています 2
  • その他: 写真1枚あたり最大4兆回の演算を行う新しい画像信号処理プロセッサ(ISP)を搭載し、コンピュテーショナルフォトグラフィー能力を強化しています 2。また、セキュリティを担保するSecure Enclaveも内蔵されています 2。さらに、Display Engineも刷新され、「Dynamic Island」で活用されるアンチエイリアシング処理や、常時表示ディスプレイのための1Hzの低リフレッシュレート出力にも対応しています 9

C. 製造プロセス

A16 Bionicの製造プロセスについては、発表当初の情報と、その後の分析で異なる見解が存在します。

  • 公式発表と初期報道: Appleは当初、iPhone 14 Proシリーズ発表時に、A16 BionicがTSMCの4nmプロセスで製造されると発表しました 3。これは、当時最先端の製造技術であり、性能と電力効率の向上に寄与すると期待されました。
  • 異論と分析: しかし、その後の技術的な分析や業界情報からは、実際にはTSMCの改良型5nmプロセスである「N5P」 10、あるいは同じく5nm世代に属する「N4」プロセス 8 で製造されている可能性が指摘されています。アナリストのミンチー・クオ氏は、TSMCの本格的な3nmプロセス(N3)や次世代4nmプロセス(N4P)の量産開始時期が2023年以降であること、そしてN4プロセスがN5Pに対して明確な優位性を持たないことから、A16 BionicはN5Pで製造される可能性が高いと分析しました 10。もしA15 Bionicと同じN5Pプロセスで製造されている場合、性能や電力効率の向上は小幅に留まり、「A16」という名称変更はマーケティング的な意味合いが強い可能性も示唆されています 10
  • 考察: このような情報の錯綜は、プロセスノードの呼称が必ずしも物理的なゲート長を示すものではなく、世代や改良度合いを示すマーケティング的な側面も持つことに起因すると考えられます。実際にN4プロセスはN5プロセスの改良版と位置づけられており、「4nm」という呼称が使われたものの、実質的には5nm世代の技術に基づいている可能性があります 11。この製造プロセスの実態は、後述する性能比較における向上幅の評価にも影響を与えます。

D. 搭載デバイス

A16 Bionicチップは、以下のAppleデバイスに搭載されています。

  • iPhone:
  • iPhone 14 Pro 2
  • iPhone 14 Pro Max 2
  • iPhone 15 1
  • iPhone 15 Plus 1
  • iPad:
  • iPad (第11世代 / A16) 2

当初はiPhoneのProモデル専用チップとして導入されましたが、翌年のiPhone 15シリーズでは標準モデルにも搭載が拡大されました。これは、最新チップをProモデルに先行投入し、翌年の標準モデルに展開するという近年のAppleのチップ戦略を踏襲するものです。さらに、2025年(一部記事では2024年発表、2025年発売と誤記あり)には、エントリーモデルのiPad(第11世代)にも搭載されました 12。ただし、iPad版ではCPUコア数が6から5へ、GPUコア数が5から4へと削減されており 2、デバイスの特性やコストに応じて仕様が調整されています。これにより、無印iPadの性能が底上げされ、iPad Airとの間の性能ギャップを埋める、コストパフォーマンスに優れたモデルとして位置づけられています 12

II. ベンチマークスコア

A16 Bionicチップの性能を客観的に評価するため、主要なベンチマークテストのスコアを以下に示します。

A. Geekbench

GeekbenchはCPUのシングルコアおよびマルチコア性能を測定する代表的なベンチマークツールです。

  • Geekbench 6:
  • シングルコア: 2597点 〜 2627点 14
  • マルチコア: 6663点 〜 6838点 14
  • iPhone 14 Pro Maxでの実測値例: シングルコア 2597点、マルチコア 6663点 16
  • Geekbench 5 (参考): 比較的新しい情報源ではGeekbench 6のスコアが主流ですが、過去の比較記事などではGeekbench 5のスコアも参照されます。参考値として、シングルコア約1874〜1887点、マルチコア約5372〜5455点といったスコアが報告されています 17

Geekbenchのバージョンが異なるとスコアの基準も変わるため、比較の際にはバージョンを揃えることが重要です。また、OSのバージョンやバックグラウンドで動作しているアプリなど、測定時のデバイスの状態によってスコアは変動する可能性があります。

B. AnTuTu Benchmark

AnTuTu Benchmarkは、CPU、GPU、メモリ、UX(ユーザーエクスペリエンス)の性能を総合的に評価するベンチマークツールです。

  • AnTuTu Benchmark v10: 1,445,704点 14
  • これはA15 Bionicのスコア(約129万点)と比較して約12%高い数値です 14
  • AnTuTu Benchmark v9 (参考): A16 Bionicのv9スコアに関する信頼性の高い日本語ソースは限定的ですが、A15 Bionicのスコアが約130万点弱であったことから 14、A16 Bionicではそれ以上のスコアが期待されます。

AnTuTuはスマートフォンの総合的なパフォーマンスを示す指標として広く用いられています。

C. 3DMark (Wild Life)

3DMarkは、特にGPUのグラフィックス性能を測定するためのベンチマークツールです。Wild Lifeは比較的新しいテストで、モバイルデバイスのゲーム性能を測る指標として利用されます。

  • Wild Life Performance: 9874点 14
  • A15 Bionicのスコア(約9395点)と比較して約5%高い数値です 14
  • Wild Life Extreme: 3359点 19
  • より高負荷なテストであるWild Life Extremeでも、A15 Bionic(3206点)を上回るスコアを記録しています。しかし、A14 Bionic(2450点)からの伸びと比較すると、性能向上の伸び率は鈍化している傾向が見られます 19

これらのスコアは、A16 Bionicが高いGPU性能を持つことを示していますが、世代間の性能向上率には変化が見られることも示唆しています。

III. 性能比較: A16 Bionic vs 前世代 (A15 Bionic)

A16 Bionicが前世代のA15 Bionicからどの程度性能向上を果たしたのか、CPU、GPU、Neural Engineの各項目で比較します。

A. CPU性能

  • ベンチマークスコア: Geekbench 6のスコア比較では、A16 BionicはA15 Bionicに対してシングルコア性能で約13%、マルチコア性能で約19%向上しています 14。特にシングルコア性能の向上が目立ちます。
  • 実使用感: この性能向上は、アプリの起動速度や動作の滑らかさとして体感できます 12。あるレビューでは、Geekbench 5ベースの比較でCPUスコアが5%以上高速化しているものの、10%には届かない程度と評価されています 20。これは、ベンチマークのバージョンや測定環境の違いによるものと考えられますが、着実な性能向上は確認できます。

B. GPU性能

  • ベンチマークスコア: 3DMark Wild Life Performanceスコアでは、A15 Bionic比で約5%の向上に留まっています 14。より高負荷なWild Life Extremeテストでもスコアは向上していますが、A14からA15への伸びと比較すると、向上率は鈍化しています 19
  • ハードウェア: GPUコア数はA15 Bionic搭載のiPhone 13 Proと同じ5コアですが、メモリ帯域幅が50%増加したことが性能向上に寄与していると考えられます 2
  • 実使用感: グラフィック処理能力は向上しており 12、Geekbench 5のCompute (Metal) スコアでは、iPhone 13 Pro Max (A15) 比で約10%高速化しているとの報告もあります 20
  • 考察: GPUの絶対性能は向上しているものの、世代間の性能向上率はCPUほど大きくなく、落ち着きを見せ始めています。メモリ帯域幅の向上が、コア数増加なしでの性能向上に貢献した主要因と推測されます。

C. Neural Engine

  • ハードウェア: Neural Engineのコア数はA15 Bionicと同じ16コアです 1
  • 演算能力: 1秒あたりの演算能力は17兆回とされており 2、A15 Bionic(15.8兆回)から微増しています。なお、次世代のA17 Proでは35兆回へと飛躍的に向上しました 6
  • 機能向上: コア数は同じでも内部的な改良により、機械学習を用いた機能はより高速に動作するようになっています 12。特に、新しいISPとの連携により、写真1枚あたり最大4兆回の演算を行うコンピュテーショナルフォトグラフィー能力が向上し、画質改善に貢献しています 2
  • 考察: コア数に変更はないものの、内部アーキテクチャの改善やISPとの連携強化により、AI関連機能の性能と応用範囲が拡大されています。

IV. 性能比較: A16 Bionic vs 競合SoC

A16 Bionicと同世代のハイエンドAndroidスマートフォンに搭載される主要な競合SoCとの性能比較を行います。

A. vs Snapdragon 8 Gen 2

Snapdragon 8 Gen 2は、A16 Bionic搭載iPhoneと同時期の多くのハイエンドAndroidスマートフォンに採用されたQualcomm製のSoCです。

  • CPU性能 (Geekbench): Geekbench 6のスコア比較では、シングルコア性能、マルチコア性能ともにA16 BionicがSnapdragon 8 Gen 2を大きく上回っています(シングルで約35%、マルチで約29%の差)21。Geekbench 5ベースの比較でも同様の傾向が見られ、A16 BionicのCPUパフォーマンスの優位性が示されています 17
  • 総合性能 (AnTuTu): AnTuTu Benchmarkの総合スコアでは、Snapdragon 8 Gen 2がA16 Bionicを上回るケースも報告されています 22。これは、AnTuTuがCPU、GPU、メモリ、UXの各項目を合算して評価するため、GPU性能やメモリ性能など、特定の項目でSnapdragon 8 Gen 2が優位に立つ場合があることを示唆しています。
  • GPU性能: ベンチマークテストの種類や条件によっては、Snapdragon 8 Gen 2のGPU性能がA16 Bionicと同等か、あるいは上回る場面もあると指摘されています 17
  • 考察: CPUのシングルコア性能においては、Appleの独自設計コアが依然として強力なアドバンテージを維持しています。一方で、GPU性能や総合的なベンチマークスコアでは、Snapdragon 8 Gen 2が非常に高いレベルに達しており、A16 Bionicとの差は縮まっているか、特定のテストでは逆転する可能性もあります。Appleのハードウェアとソフトウェアを垂直統合する開発体制が、特にCPU性能における優位性を支えていると考えられます 17

B. vs MediaTek Dimensity 9000シリーズ (Dimensity 9200/9200+)

MediaTekのDimensityシリーズも、ハイエンドAndroid市場における有力な競合チップです。

  • CPU性能 (Geekbench):
  • vs Dimensity 9200: Geekbench 5および6のスコア比較において、A16 BionicはDimensity 9200に対してシングルコア、マルチコアともに明確なリードを保っています 18
  • vs Dimensity 9200+: Dimensity 9200の改良版である9200+と比較しても、A16 BionicはGeekbench 6のマルチコアスコアで約24%上回っています 24。シングルコア性能でも優位です。
  • GPU性能: Dimensity 9200のGPUスコアがA16 Bionicを上回る可能性があるという情報(噂)も存在します 18。MediaTekは近年、GPU性能の強化に注力しており、グラフィックス性能ではAppleに肉薄、あるいは凌駕する可能性を秘めています。
  • 電力効率: 電力効率の点では、MediaTek Dimensityシリーズも優れているとの指摘があります 19
  • 考察: CPU性能ではA16 Bionicが依然としてリードしていますが、GPU性能においてはMediaTek Dimensityシリーズが強力なライバルとなっています。特にゲーム性能を重視する場合、Dimensity搭載デバイスも有力な選択肢となり得ます。チップ選択においては、CPU性能、GPU性能、そして電力効率のバランスを考慮する必要があります。

V. 実使用感レビュー

ベンチマークスコアはチップの潜在能力を示すものですが、実際のユーザー体験は様々な要因に影響されます。A16 Bionic搭載デバイスの実使用感に関するレビューをまとめます。

A. アプリ起動速度・マルチタスク

  • 多くのレビューで、アプリの起動や切り替え、ウェブブラウジングなどの基本的な操作が非常にスムーズで、ストレスなく行える点が評価されています 25
  • 複数のアプリを同時に使用するマルチタスク性能も高く、負荷のかかる場面でも快適さが維持されると報告されています 25
  • A15 Bionic搭載機と比較しても、動作の高速化が感じられるという意見があります 20。ただし、iPhone 14 Pro/Pro Maxに搭載された6GBのメモリについて、その恩恵を日常的な使用で明確に体感できる場面はまだ少ないかもしれない、という指摘も見られます 20
  • iPhone 14 Pro以降で導入されたDynamic Islandは、バックグラウンドで動作しているアプリ(タイマーや音楽再生など)の状態を視覚的に分かりやすく表示する役割も担っています 20

B. ゲーム性能 (フレームレートなど)

  • A16 Bionicの高いGPU性能により、グラフィック負荷の高い最新の3Dゲームも快適にプレイできると評価されています 25
  • 人気ゲーム「原神」を最高画質設定、60fpsモードでプレイした場合でも、高いフレームレートを維持して快適に遊べたという報告があります 27
  • ただし、長時間プレイによる発熱が原因で、一時的にフレームレートが低下したり、カクつきが発生したりする可能性も指摘されています 27
  • また、多くのゲームアプリは幅広いデバイスで動作するように最適化されているため、A16 Bionicの持つ性能の全てを常に引き出せるわけではない、という見方もあります 20
  • 考察: ベンチマークスコアが示す通り、A16 Bionicは高いゲーム性能ポテンシャルを持っています。しかし、実際のゲーム体験は、ゲーム側の最適化状況や、デバイスの熱設計、そして長時間のプレイにおける発熱制御(サーマルスロットリング)の影響を受けるため、スコアだけでは測れない側面があります。

C. 動画編集・その他高負荷タスク

  • スマートフォン上での4K動画編集といった高負荷なタスクも、A16 Bionic搭載デバイスであればスムーズに行えると評価されています 25
  • 写真や動画の撮影、編集作業全般においても、処理速度の速さが快適な操作感に繋がっています 26
  • 強化されたISPとNeural Engineの連携により、暗所撮影性能の向上や、より高度な画像処理(ポートレートモードの精度向上など)が実現されています 2

D. ベンチマークスコアとの関連性考察

  • 高いベンチマークスコアは、アプリ起動の速さ、マルチタスクの快適さ、動画編集のような高負荷タスクの処理能力といった、デバイスの基本的なパフォーマンスの高さに直結しています 25
  • 一方で、特にゲームのような特定のユースケースにおいては、ベンチマークスコアの差が必ずしもそのまま体感的な差として現れるとは限りません 20。ソフトウェアの最適化度合い、ディスプレイのリフレッシュレート(iPhone 15/15 Plusは60Hz 26)、そして発熱とその制御といった要因が、実際のユーザー体験に大きく影響します 27
  • 結論: ベンチマークスコアはA16 Bionicの持つ高い潜在能力を示す重要な指標ですが、それが実際の使用感としてどのように現れるかは、利用するアプリや状況、デバイス全体の設計によって左右されると言えます。

VI. 消費電力と発熱

スマートフォンの性能向上に伴い、消費電力とそれに伴う発熱は重要な課題となります。A16 Bionicにおけるこれらの側面を検証します。

A. 電力効率

  • A15 Bionicとの比較: A16 Bionicは、製造プロセスの進化(N5PからN4/4nmへの移行と発表)により、前世代のA15 Bionicと比較して電力効率が向上していると期待されました 29。Apple自身も「これまでで最も電力効率に優れる」と発表時にアピールしています 9
  • 競合との比較: 高性能コアの電力効率は、競合他社のチップと比較しても優れているとされています 3。ただし、MediaTek Dimensityシリーズなども電力効率の面で優れているとの指摘もあります 19
  • 次世代チップとの比較: 後継のA18チップは、A16 Bionicと比較して同じ負荷の作業を30%少ない電力で処理できるとされており、世代間の電力効率改善幅が大きいことを示唆しています 30
  • 考察: A16 Bionicは性能向上と電力効率の両立を目指して設計されましたが、製造プロセスの実質的な進化が限定的だった可能性があり 10、電力効率の向上幅も期待ほどではなかった可能性があります。次世代チップ(A17 Pro, A18)では、より進んだプロセス(3nm)の採用により、電力効率が大幅に改善されています。

B. 発熱に関するレビュー

  • 高負荷時の発熱: ベンチマークテストを連続して実行したり、高負荷なゲームを長時間プレイしたりすると、本体が顕著に熱を持つというレビューが多く見られます 27
  • 具体的な温度: iPhone 15で「原神」をプレイした際に本体温度が46.8℃ 27、iPhone 14 Proでは同条件で47.8℃ 33 に達したという報告があります。AnTuTuベンチマークテスト後には41℃〜44℃程度 34、別の検証では45℃を超えるケース 35 も見られました。
  • 通常使用時: 一方で、ウェブブラウジングやSNS利用などの通常用途では、本体が少し暖かくなる程度で、特に問題視するほどではない、あるいは同時期のハイエンドAndroidスマートフォンと比較すると温度は低めである、という評価もあります 32
  • iPhone 15シリーズとの関連: iPhone 15 Pro/Pro Max (A17 Pro搭載)では発売初期に発熱問題が大きく取り沙汰されましたが 36、A16 Bionicを搭載するiPhone 15/15 Plusにおいても、高負荷時には相応の発熱が見られます 27。iOSのアップデート(例: iOS 17.0.3)によって発熱問題の緩和が図られたとされていますが 34、根本的な解決には至っていない可能性も指摘されています。
  • 発熱の影響: 高温状態が続くと、パフォーマンスが意図的に抑制されるサーマルスロットリングが発生し、動作が不安定になる可能性があります 38。また、バッテリーの劣化を早める要因にもなり得ます 39
  • 考察: A16 Bionicの高い性能は、必然的に発熱という課題を伴います。特に持続的な高負荷がかかる状況(長時間のゲームプレイ、高画質動画撮影、急速充電中など)で顕著になります。デバイスの冷却設計や筐体の素材・サイズ 34、そしてソフトウェアによる温度管理 40 が、実際の体感温度やパフォーマンスの安定性に影響を与える重要な要素となります。

VII. まとめ

Apple A16 Bionicチップは、iPhone 14 Pro/Pro MaxおよびiPhone 15/15 Plus、iPad (第11世代)に搭載され、その時点でのモバイルデバイスにおける最高クラスの性能を提供しました。

  • 性能: CPU性能、特にシングルコア性能においては競合に対して明確な優位性を維持しました。GPU性能も高く、ほとんどのタスクやゲームを快適にこなせる能力を持っています。Neural Engineも強化され、AI機能やコンピュテーショナルフォトグラフィーの進化を支えました。
  • ベンチマークと実使用感: GeekbenchやAnTuTu、3DMarkといったベンチマークスコアは、その高いポテンシャルを裏付けています。このスコアは、アプリ起動の速さや基本的な操作の快適さ、高負荷タスクの処理能力として、実際の使用感にも反映されています。ただし、ゲームなど特定の用途では、ソフトウェアの最適化や発熱制御といった要因が体感性能に影響を与えるため、スコアが絶対的な指標とは言えません。
  • 競合との比較: Snapdragon 8 Gen 2やDimensity 9200シリーズといった同世代の競合ハイエンドSoCと比較すると、CPU性能ではリードを保つ一方で、GPU性能では差が縮小、あるいは一部のテストでは逆転される場面も見られました。電力効率に関しても、著しいアドバンテージとは言えなくなってきています。
  • 課題: 高性能化に伴う発熱は依然として課題であり、特に高負荷が持続する場面でのパフォーマンス維持やユーザーの快適性に影響を与える可能性があります。製造プロセスに関しても、発表された「4nm」が実質的には5nm世代の改良版であった可能性が指摘されており、性能や電力効率の向上幅が期待ほどではなかったという見方もできます。
  • 位置づけ: A16 Bionicは、Apple Siliconの進化の過程における重要なチップであり、A15からの着実な性能向上を果たしました。しかし、次世代のA17 ProやA18における3nmプロセス採用による飛躍的な進化と比較すると、過渡期的なチップであったとも評価できるかもしれません。それでもなお、搭載デバイスにおいては非常に高いパフォーマンスを提供し続けています。

引用文献

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  32. 【西川和久の不定期コラム】「iPhone 14 Pro」。A16 Bionic、4,800万画素カメラ、Dynamic Islandなどが特徴的な2022年版! – PC Watch, 4月 17, 2025にアクセス、 https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/nishikawa/1443465.html
  33. iPhone 14 Pro 実機レビュー!使って感じたメリット・デメリットと評価 – モバイルドットコム, 4月 17, 2025にアクセス、 https://mobile-com.ne.jp/review/iphone-14-pro/
  34. iPhone 15 Pro 発熱問題を検証 iPhone15 iPhone14Proと比較 検証結果 発熱原因 発熱があるとバッテリーの減りが早い? サーモグラフィー antutu ベンチマーク 原神 – YouTube, 4月 17, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=XvVvvHa_kwE
  35. iPhone15 発熱問題を14と比較しながら検証してみた! – YouTube, 4月 17, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=mraQqMm8QYM
  36. iPhone15 ProがiPhone14 Proより低評価なのは”あれ”が影響!? – iPhone Mania, 4月 17, 2025にアクセス、 https://iphone-mania.jp/news-558014/
  37. iPhone15 Proがぬるい問題の解決策は無いのか?|みずき – note, 4月 17, 2025にアクセス、 https://note.com/mizuki_0m0/n/n8ec916081d2d
  38. 【iPhone 16eレビュー】iPhone 16と徹底比較!どっちを買うべき?使ってわかったメリット・デメリット・評価, 4月 17, 2025にアクセス、 https://chibimegane.jp/iphone-16e/
  39. 発熱が気になる方へ、iPhone 14 Pro の温度対策|スマホ比較 – note, 4月 17, 2025にアクセス、 https://note.com/sumaho_hikaku/n/n07b679b51d5e
  40. 新しい iPhone 14 – 充電器でつなげていると背面が熱くなる – Apple サポートコミュニティ, 4月 17, 2025にアクセス、 https://discussionsjapan.apple.com/thread/255512507
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