CFD PG5NFZ (CSSD-M2M1TPG5NFZ) 1TB PCIe Gen5 NVMe SSD ベンチマークまとめ

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1. エグゼクティブサマリー

本レポートは、CFD Gaming PG5NFZシリーズの1TBモデル、CSSD-M2M1TPG5NFZの詳細なパフォーマンス分析を提供する。初期のPCIe Gen5 NVMe SSDとして登場した本製品は、Phison PS5026-E26コントローラーとMicron B58R 3D TLC NANDフラッシュを搭載し、公称シーケンシャルリード最大9.5 GB/s、ライト最大8.5 GB/sを実現する 1。PCIe Gen4 SSDを大幅に上回るこの転送速度は、大容量ファイルの扱いや特定の高負荷ワークロードにおいて明確な利点となる。しかし、その性能を発揮するためには、「Phnix」と名付けられたファン付きの大型ヒートシンクによる積極的な冷却が不可欠であり、これは本製品の設計上の特徴かつ制約ともなっている 1。ベンチマークテストでは、特にシーケンシャル性能においてそのポテンシャルを示す一方、ランダムアクセス性能、特に低キュー深度(QD1)における性能向上は、シーケンシャル性能の飛躍ほど顕著ではない可能性がある。また、発熱と消費電力は高く、冷却ソリューションの存在は物理的な互換性や静音性への影響も考慮する必要がある。本レポートでは、公式仕様、主要コンポーネント、各種ベンチマークにおける期待性能、実アプリケーションでの挙動、競合製品との比較、そして熱管理ソリューションの効果と課題について深く掘り下げ、CSSD-M2M1TPG5NFZの総合的なパフォーマンスプロファイルを明らかにする。

2. 序論:コンシューマー向けPCIe Gen5ストレージの黎明期

PCI Express (PCIe) 5.0インターフェースの登場は、コンシューマー向けストレージデバイスにおける新たな性能の地平を切り開いた。理論上の帯域幅がPCIe 4.0の2倍に達することで、NVMe SSDは前例のない転送速度を実現する可能性を得た。しかし、この新技術の導入初期には、コントローラーの成熟度、高い消費電力、そしてそれに伴う発熱といった課題も存在した。

このような背景の中、CFD販売株式会社のゲーミングブランド「CFD Gaming」からリリースされたPG5NFZシリーズは、この新しいインターフェース規格をいち早く採用し、その性能を活用しようとした初期の製品群の一つである 1。特にゲーマーや高性能コンピューティングを求めるユーザーをターゲットとし、PCIe Gen4 SSDを超える圧倒的な速度を提供することを目指して設計された。本レポートでは、そのシリーズ中の1TBモデルであるCSSD-M2M1TPG5NFZに焦点を当て、その技術的詳細とパフォーマンス特性を詳細に分析する。

3. CFD PG5NFZ (CSSD-M2M1TPG5NFZ) 1TB:公式仕様と主要コンポーネント

3.1. コア仕様

CSSD-M2M1TPG5NFZモデルの公式仕様は、メーカーおよび販売代理店の情報源から確認できる 1。以下に主要な技術仕様をまとめる。

表1:CFD PG5NFZ (CSSD-M2M1TPG5NFZ) 1TB 公式仕様

項目仕様出典例
モデル名CFD Gaming PG5NFZ1
型番CSSD-M2M1TPG5NFZ1
容量1TB1
フォームファクターM.2 2280-D2-M (両面実装, M-Key)1
インターフェースPCI Express 5.0 x41
プロトコルNVMe 2.01
コントローラーPhison PS5026-E262
NANDフラッシュMicron 236層 3D TLC (B58R)2
DRAMキャッシュ2GB DDR41
シーケンシャルリード (最大)9.5 GB/s1
シーケンシャルライト (最大)8.5 GB/s1
ランダムリード (最大)1300K IOPS (1.3×106 IOPS)2
ランダムライト (最大)1100K IOPS (1.1×106 IOPS)2
冷却ヒートシンク一体型空冷ファン「Phnix」(厚さ20mm、5Vコネクタ)1
保証期間3年間2

この表は、複数の情報源 1 に散在する重要な技術情報を集約し、製品の基本的な性能ポテンシャルと構成要素を明確に示す。これは、後続のパフォーマンス分析と比較のための基礎となる。

3.2. 主要ハードウェアコンポーネント

  • Phison PS5026-E26 コントローラー: 本SSDの心臓部であり、市場に登場した最初のコンシューマー向けPCIe Gen5 SSDコントローラーの一つである 2。このコントローラーは、TSMCの12nmプロセスで製造され、ARM Cortex-R5コアなどを搭載し、PCIe 5.0の高速帯域を活用するように設計されている 7
  • Micron 236層 3D TLC NAND (B58R): 採用されているNANDフラッシュメモリは、Micron製の236層3D TLC NANDであり、モデル名はB58Rとして特定されている 2。これは比較的高密度で高速なTLC(Triple-Level Cell)フラッシュ技術であり、大容量と高性能のバランスを提供する。
  • DDR4 DRAMキャッシュ: 1TBモデルには2GBのDDR4 DRAMキャッシュが搭載されている 1。このキャッシュは、NANDフラッシュへのマッピングテーブル(FTL: Flash Translation Layer)や小さな書き込みデータを一時的に保持するために使用され、ランダムアクセス性能の向上とNANDの書き込み寿命の改善に寄与する。
  • 「Phnix」統合クーラー: 本製品の最も顕著な物理的特徴は、標準で装着されている大型のヒートシンクと統合された冷却ファンである 1。この「Phnix」クーラーは、ボトムカバーを含めて厚さ20mmに達し、中央には17mm角、最大21,000rpmで回転するファンを備える 2。冷却ファンへの電力供給は5Vコネクタ(一部情報では4ピンペリフェラルまたはSATA電源コネクタとも言及 2)を介して行われる。重要な点として、このヒートシンクを取り外すと保証が無効になることが明記されている 4

3.3. 技術的背景と設計思想の考察

CFD PG5NFZ (CSSD-M2M1TPG5NFZ) の仕様とコンポーネント選択からは、いくつかの重要な点が読み取れる。

第一に、初期Gen5製品としてのコンポーネント選択と性能階層が挙げられる。PG5NFZはPhison E26コントローラーとMicron B58R NANDを組み合わせ、公称9.5 GB/s(リード)/ 8.5 GB/s(ライト)の速度を実現している 1。しかし、Phison E26プラットフォームに関する後のレビューを見ると、同じコントローラーを使用しながらも、より高速なNANDフラッシュ(例えば2000MT/sや2400MT/s)を採用することで、12 GB/sや14 GB/sを超えるシーケンシャル性能を達成する製品が登場している 7。PG5NFZが市場に投入されたのはPCIe Gen5 SSDの黎明期であり 2、その性能スペックは、当時利用可能だった、あるいは採用が選択されたNANDフラッシュの転送速度(おそらく1600MT/sクラス 12)に制約されていると考えられる。これは、PG5NFZがPCIe Gen4を大幅に超える性能を提供する一方で、E26コントローラー自体の持つ最大ポテンシャルから見ると、初期の性能ティアに位置づけられることを意味する。つまり、E26ファミリー内では「エントリーレベル」のGen5性能を持つ製品と言えるだろう。

第二に、必須とされる冷却ソリューションが示す設計上の制約である。本製品には、ファン付きの大型クーラー「Phnix」が標準装備され、取り外しが保証対象外となる 1。Phison E26コントローラーは12nmプロセスで製造されているにも関わらず、その高い性能ゆえに相当な発熱を伴うことがレビューで一貫して指摘されている 9。標準的なM.2 2280フォームファクターは表面積が限られており、PCI-SIGによって定められた電力供給も平均11.55Wという上限がある 9。公称速度での安定動作を維持するためには、特に高負荷時において、サーマルスロットリング(熱による性能低下)やシャットダウンを防ぐための強力な冷却が不可欠となる 11。CFDがアクティブ冷却ソリューションを選択し、それを必須とした 4 という事実は、一般的なPCケース環境において、パッシブ冷却だけでは信頼性のある動作を保証するには不十分であると判断されたことを示唆している。したがって、このクーラーは単なる付加価値ではなく、M.2規格の限界に近い領域で動作するコンポーネントの熱特性によって必然的に要求される、設計上の基本要件なのである。これは、マザーボード上のM.2スロット周辺の物理的なクリアランス(高さ)に影響を与え、またファンによる潜在的な動作音の問題も提起する 2

4. パフォーマンス分析:合成ベンチマーク

合成ベンチマークは、SSDの理論上の最大性能や特定のアクセスパターンにおける性能を測定するための標準的な手法である。CSSD-M2M1TPG5NFZの性能ポテンシャルを評価するために、公式仕様とPhison E26プラットフォームのレビューから得られる期待値を分析する。

4.1. シーケンシャルリード/ライトスループット

公式仕様では、1TBモデルの最大シーケンシャルリード速度は9.5 GB/s、最大シーケンシャルライト速度は8.5 GB/sとされている 1。これは、PCIe Gen4 x4インターフェースの理論的上限(約7 GB/s強)を大幅に超える値であり、PCIe 5.0インターフェースの恩恵を明確に示している 1

Phison E26リファレンスデザインを用いたレビューでは、特に10 GB/sクラスの初期モデル(1600MT/s NAND搭載と推定されるもの)において、CrystalDiskMarkやATTO Disk Benchmarkなどのツールで、公称値に近いシーケンシャル性能が確認されている 8。これらの最高速度は、通常、ドライブ内部のSLC(Single-Level Cell)キャッシュとして動作する領域内で達成されるものであり、大容量ファイルの連続的な読み書きにおけるピークスループットを表す。CFD自身の主張によれば、PCIe Gen4 SSDと比較して1.4倍から2倍、SATA SSDと比較して約19倍の高速転送が可能であるとされる 1

4.2. ランダムリード/ライト性能 (IOPSとレイテンシ)

ランダムアクセス性能は、OSの起動、アプリケーションの応答性、小さなファイルの多数処理など、日常的なコンピューター利用における体感速度に大きく影響する。CSSD-M2M1TPG5NFZの1TBモデルの公式仕様では、最大ランダムリードは1300K IOPS (1.3×106 IOPS)、最大ランダムライトは1100K IOPS (1.1×106 IOPS) とされている 2

これらのIOPS値は非常に高い水準にあるが、特に重要なのは低キュー深度(Queue Depth: QD)、とりわけQD1におけるランダムリード性能である。これは、単一のコマンドが処理される際の応答速度を反映し、システムの「キビキビ感」に直結する 10。Phison E26プラットフォームのレビューを見ると、CrystalDiskMarkのRandom 4K Q1T1テストなどで高いIOPS値が示されているものの、一部のレビューでは、トップクラスのPCIe Gen4 SSDと比較した場合、QD1ランダムリード性能の向上幅は、シーケンシャル性能の向上幅ほど劇的ではない可能性が示唆されている 10。これは、PCIe 5.0インターフェースが帯域幅を大幅に向上させる一方で、低キュー深度でのレイテンシ削減は、コントローラーのアーキテクチャ、NANDの特性、ファームウェアの最適化といった複数の要因に依存するためである。初期のGen5コントローラーは、まずシーケンシャルスループットの最大化に注力した可能性がある。

4.3. 総合システムパフォーマンスベンチマーク

PCMark 10のような総合ベンチマークは、ファイルコピー、アプリケーション起動、コンテンツ作成など、より現実的な利用シナリオをシミュレートし、システム全体のストレージ性能を評価する。ASCII.jpによるレビューでは、PG5NFZシリーズの2TBモデル(CSSD-M2M2TPG5NFZ)がPCMark 10 Full System Drive Benchmarkで4721ポイントというスコアを記録したことが報告されている 14。これは、当時のPCIe 4.0 NVMe SSDの最速クラス(3000点台後半~4000点台前半)を大幅に上回るものであり、PG5NFZシリーズの高い総合性能を示唆している 14。1TBモデルも同様に強力なパフォーマンスを示すことが期待される。

Phison E26リファレンスデザインのレビューでは、PCMark 10 Quick System Storage Benchmark(日常的な使用状況をより反映)でもトップクラスのスコアが報告されており 15、Anvil’s Storage Utilitiesのような他のベンチマークでも高いスコアが確認されている 10。これらの結果は、PG5NFZが多様なワークロードにおいて優れたパフォーマンスを発揮するポテンシャルを持つことを裏付けている。

4.4. 合成ベンチマーク結果の含意

合成ベンチマークの結果から、CSSD-M2M1TPG5NFZはシーケンシャル性能においてPCIe Gen4世代を明確に凌駕する能力を持つことがわかる。これは、大容量ファイルの転送やビデオ編集など、連続的なデータアクセスが主体となるタスクにおいて、顕著な時間短縮効果をもたらすだろう。

一方で、ランダムアクセス性能、特にシステムの応答性に直結するQD1ランダムリード性能については、その向上幅がシーケンシャル性能ほど革命的ではない可能性がある。これは、PCIe 5.0インターフェースの帯域幅向上が直接的な要因となるシーケンシャル性能とは異なり、ランダム性能、特に低レイテンシ性能の向上には、コントローラー設計やファームウェアの成熟度がより重要になるためである。初期のGen5コントローラーであるE26は、まず帯域幅のポテンシャルを引き出すことに重点が置かれた可能性がある。したがって、OS起動やアプリケーションの読み込みといった日常的なタスクにおける体感速度の向上は存在するものの、その度合いは、SATAからNVMe Gen3/4への移行時に経験したほどの劇的な変化ではないかもしれない。それでも、PCMark 10の高いスコア 14 が示すように、全体的な応答性は依然として非常に高いレベルにあると考えられる。

表2:CFD PG5NFZ (CSSD-M2M1TPG5NFZ) 1TB 期待されるベンチマーク性能概要

ベンチマークツール/項目公称スペック (CFD)期待される性能レンジ (E26レビューに基づく)
CrystalDiskMark Seq Q8T1 Read最大 9.5 GB/s9.0 – 9.5 GB/s (またはそれ以上、テスト環境依存) 8
CrystalDiskMark Seq Q8T1 Write最大 8.5 GB/s8.0 – 8.5 GB/s (またはそれ以上、テスト環境依存) 8
CrystalDiskMark 4K Q1T1 Read1300K IOPS (Max Random)80 – 100 MB/s 前後 (IOPS換算で約20K-25K IOPS)。最大IOPSは高QD時。QD1性能はGen4最速機比で微増か同等レベルの可能性あり 10
CrystalDiskMark 4K Q1T1 Write1100K IOPS (Max Random)300 – 400 MB/s 前後 (IOPS換算で約75K-100K IOPS)。最大IOPSは高QD時。 10
PCMark 10 Full System Score4500 – 5000 ポイント (2TBモデルで4721 14)。Gen4最速クラス (3000後半-4000前半) を大幅に上回る 11
PCMark 10 Quick System ScoreGen4 SSDを上回るトップクラスのスコアが期待される 15
ATTO Disk Benchmark Max Read最大 9.5 GB/s9 GB/s 超 (大転送サイズ時) 12
ATTO Disk Benchmark Max Write最大 8.5 GB/s9 GB/s 超 (大転送サイズ時、一部E26レビューではReadより高いWriteを示す場合も) 10

注: 期待される性能レンジは、Phison E26プラットフォーム(特に10GB/sクラス)のレビューに基づく一般的な傾向であり、テスト環境やファームウェアのバージョンによって変動する可能性があります。

5. パフォーマンス分析:実アプリケーションとゲーミング

合成ベンチマークが理論上の性能を示すのに対し、実アプリケーションテストは、実際の使用状況におけるパフォーマンスを評価する上で重要である。

5.1. ファイル転送性能

大容量ファイルのコピーや、多数の小さなファイルが含まれるフォルダのコピーは、ストレージ性能が直接影響する一般的なタスクである。Phison E26プラットフォームのレビューにおける「True Data Testing」などの項目では、大容量ファイルのコピーにおいて非常に高速な転送速度が示されている 15。ただし、これは主にSLCキャッシュが有効な範囲での性能であり、キャッシュ容量を超えるような長時間の連続書き込みが発生した場合、NANDフラッシュ本来の書き込み速度(TLC速度)に低下する可能性がある。一部のレビューでは、E26ドライブの持続書き込み速度がSLCキャッシュ枯渇後に約4 GB/s程度に落ち着くことが示唆されている 13。それでもなお、これは多くのGen4 SSDの持続書き込み速度を上回るレベルである。

5.2. アプリケーションとOSのロード時間

OSの起動時間や、Adobe Creative Suite、Microsoft Officeのような日常的に使用するアプリケーションの起動時間は、高いランダムリード性能と全体的な帯域幅の恩恵を受ける。前述のPCMark 10ベンチマークにおける高いスコア 11 は、これらのタスクにおいてPG5NFZが優れた応答性を提供することを示唆している。特にQD1ランダムリード性能が重要となるが、全体的なIOPS性能の高さと帯域幅の広さが、ロード時間の短縮に貢献すると考えられる。

5.3. ゲームローディング性能

現代のゲームは、膨大なテクスチャやアセットデータをロードする必要があり、高速なストレージはロード時間の短縮に不可欠である。Phison E26プラットフォームは、Final Fantasy XIV: Endwalkerベンチマーク 12 や、より包括的な3DMark Storage Benchmark 10 において、トップクラスの成績を収めていることが報告されている。特に3DMark Storage Benchmarkでは、E26ベースのドライブが新記録を樹立した例もあり 11、PG5NFZも同様に優れたゲームローディング性能を発揮することが期待される。

さらに、PhisonはE26コントローラー向けに「IO+ Technology」と呼ばれるファームウェア技術を開発しており、これはMicrosoftのDirectStorage APIに最適化されているとされる 12。DirectStorageは、GPUがストレージから直接データを読み込むことでCPUのボトルネックを解消し、ロード時間をさらに短縮する技術である。現時点ではDirectStorage対応タイトルは限られているが、PG5NFZはこの将来のゲーミング技術に対応する準備ができていると言える。

5.4. 実利用における性能の意義

実アプリケーションやゲーミングにおけるテスト結果は、PG5NFZが要求の厳しいタスクにおいても高いパフォーマンスを発揮することを示している。特に大容量データの扱いや最新ゲームのローディングにおいては、その高速性が明確な利点となるだろう。

しかしながら、将来性への投資と現在の実質的な利益という側面も考慮する必要がある。PG5NFZはゲーミングベンチマークで優れた結果を示し 11、DirectStorageにも最適化されている 12。だが、現在の多くのゲームやアプリケーションは、まだPCIe Gen5の広大な帯域幅を完全には活用しきれていない。そのため、多くの一般的な利用シナリオにおいては、ハイエンドのPCIe Gen4 SSDと比較した場合の体感的な差は、ベンチマークスコアの差ほど大きくない可能性がある 13。DirectStorageのような技術が普及すれば、Gen5 SSDの真価がより発揮されるようになるだろう。現状では、PG5NFZの主な利点は、特定の高帯域幅を要求するタスク(例:非圧縮ビデオ編集、大規模データセット分析)と、将来のソフトウェアエコシステムへの対応能力にある。したがって、PG5NFZの導入は、現時点での特定のニーズ充足に加え、将来の技術進化を見据えた投資という側面も持つ。一般的なユーザーにとっては、ソフトウェア環境が追いつくまで、高性能なGen4ドライブがコストパフォーマンスに優れた選択肢であり続ける可能性もある。

6. 比較パフォーマンス評価

CSSD-M2M1TPG5NFZの性能をより深く理解するためには、競合製品や旧世代製品との比較が不可欠である。

6.1. 競合PCIe Gen5 SSDとの比較

市場には、同じPhison E26コントローラーを搭載した他のPCIe Gen5 SSDが多数存在する。これらの製品間の主な性能差は、搭載されているNANDフラッシュの速度(転送レート、MT/s)に起因することが多い。PG5NFZの公称スペック(9.5/8.5 GB/s)1 は、E26プラットフォームにおける初期の性能ティア(約10 GB/sクラス、多くは1600MT/s NANDを採用)に属する 12

その後、より高速なNAND(2000MT/sや2400MT/s)を採用した製品が登場し、シーケンシャルリードで12 GB/sや14 GB/sを超える性能を実現している 10。例えば、Crucial T700やT705 10 などがこれに該当する。したがって、PG5NFZは、これらの後発の高性能Gen5 SSDと比較すると、シーケンシャル性能においては下位に位置づけられる。

また、Phison E26以外のGen5コントローラー(例:Silicon Motion SM2508)も登場しており、これらは異なるプロセス技術(例:TSMC 6nm)で製造され、発熱特性が異なる可能性がある 9。ただし、市場投入初期においてはPhison E26搭載製品が主流であった。

6.2. PCIe Gen4および旧世代SSDとの性能向上比較

PCIe Gen4 SSDとの比較では、PG5NFZは明確な性能向上を示す。ハイエンドのPCIe Gen4 SSDのシーケンシャルリード速度は一般的に約7 GB/s程度で頭打ちとなるため 8、PG5NFZの9.5 GB/sという速度は約1.35倍に相当する。CFDはGen4比で1.4倍~2倍の高速化を主張している 1。PCMark 10のような総合ベンチマークでも、Gen4最速クラスを大幅に上回るスコアが確認されている 14

さらに旧世代のPCIe Gen3 SSD(シーケンシャルリード約3.5 GB/s)やSATA SSD(同約0.55 GB/s)と比較すると、その性能差は圧倒的であり、CFDはSATA比で約19倍の高速性を謳っている 1

6.3. 市場におけるポジショニングと価値提案

これらの比較から、CSSD-M2M1TPG5NFZの市場における立ち位置が明らかになる。PCIe Gen4に対しては顕著なシーケンシャル性能向上を提供するが、後発のより高速なPCIe Gen5 SSDには性能面で劣る。一方で、ハイエンドのGen4 SSDは、多くの現行アプリケーションにおいて十分すぎる性能を提供し、しばしばより低価格で、発熱も少ないという利点がある 8

この状況は、移行期市場における価値提案という問題を提起する。PG5NFZを導入するには、対応するマザーボードやCPUが必要であり、製品自体もGen4ドライブより高価になる傾向がある。加えて、アクティブ冷却に伴う物理的な制約や潜在的な騒音といった運用上のオーバーヘッドも存在する。その性能は確かに高いが、より高速なGen5製品が存在し、かつGen4製品が多くの用途で十分な性能をより低いコストと複雑性で提供している。

したがって、PG5NFZの価値は、ユーザーが約10 GB/sクラスのシーケンシャル性能を特定のタスクで必要としているか、あるいは最新技術をいち早く導入したいという要求を持っているかに大きく依存する。コスト、発熱、騒音、そしてGen4で十分かどうかという点を考慮し、これらのトレードオフを受け入れられるユーザーにとって魅力的な選択肢となる。結果として、PG5NFZは、特定の高帯域幅ニーズを持つユーザーや、関連するコストや制約を許容できる早期導入者向けのニッチな製品として位置づけられる。成熟しコスト効率の良いGen4オプションと、より高速で洗練された後発Gen5競合製品の両方からのプレッシャーに直面していると言えるだろう。

7. 熱性能と「Phnix」冷却ソリューション

PCIe Gen5 SSDの性能を最大限に引き出す上で、熱管理は極めて重要な要素となる。

7.1. 発熱特性

Phison E26コントローラーは、その高性能と12nmという(最新プロセスと比較して)やや古い製造プロセスにより、かなりの熱を発生することが知られている 9。これに高速なNANDフラッシュメモリが組み合わさり、PCIe 5.0の高速データ転送が加わることで、SSD全体の発熱量はPCIe Gen4世代のハイエンド製品よりも顕著に増加する。E26搭載SSDのレビューでは、大型のヒートシンクを備えていても、高負荷時には動作温度がかなり上昇することが報告されている 10。したがって、PG5NFZも同様に、特に持続的な負荷がかかる状況では相当な熱を発生すると予想される。

7.2. 「Phnix」クーラーの効果

CFDが採用した「Phnix」クーラーは、フィン構造を持つヒートシンクと中央に配置された17mm角の小型ファン(最大21,000rpm)で構成されるアクティブ冷却ソリューションである 2。Phison E26リファレンスクーラーに関するレビュー 7 を参考にすると、このようなアクティブ冷却は、高負荷時でもSSDの温度を抑制し、深刻なサーマルスロットリングを防ぐ上で非常に効果的であると考えられる。TweakTownのレビューでは、Phisonのリファレンスクーラー(改良版)を搭載したE26ドライブが、エアフローのないテスト環境で高負荷をかけても53℃程度までしか上昇しなかったと報告されている 10。Phnixクーラーも同様に、ほとんどの通常使用および高負荷シナリオにおいて、SSDの性能を維持するのに十分な冷却能力を提供すると期待される。

しかし、この冷却ソリューションにはトレードオフも存在する。17mmという小径ファンが21,000rpmという高速で回転するため 2、特に負荷がかかった際には、高周波の耳障りなノイズが発生する可能性がある 11。レビューによっては、ファンは常時100%で回転する仕様である可能性も示唆されている 15。ファンへの電力供給コネクタ(5Vコネクタ、またはペリフェラル/SATA電源 2)の取り回しも考慮する必要がある。

7.3. サーマルスロットリング分析

サーマルスロットリングは、SSDの温度が一定の閾値を超えた場合に、過熱による損傷を防ぐためにコントローラーが意図的に性能を低下させる保護機能である。Phnixクーラーが正常に機能していれば、PG5NFZが深刻なサーマルスロットリングに陥る可能性は低いと考えられる 10。しかし、非常に長時間の連続書き込み(SLCキャッシュを使い切り、TLC領域への直接書き込みが続く状況)や、PCケース内のエアフローが極端に悪い場合、あるいはファンが故障した場合には、パフォーマンスの低下が発生する可能性は否定できない。

7.4. 消費電力

Phison E26搭載SSDは、その高性能と引き換えに高い消費電力を示すことが知られている。レビューでは、M.2規格の電力供給上限(平均11.55W、ピークはそれ以上許容)に迫る、あるいは一時的に超えるような消費電力が観測されている 9。これは、システム全体の電源容量への影響だけでなく、M.2スロット周辺のコンポーネントへの熱負荷増加にもつながる可能性がある。

7.5. 熱管理に関する考察

PG5NFZの熱管理ソリューションは、いくつかの重要な示唆を与えている。

まず、**アクティブ冷却という「諸刃の剣」**である。Phnixクーラーは、E26コントローラーの発熱 9 を効果的に処理し、持続的な高性能を可能にする上で必要不可欠な要素である 4。しかし、その代償として、ファンによる潜在的な動作音と、可動部品であるファン自体の故障リスクという新たな懸念材料をもたらす 2。特に小型・高回転のファンは、長期的な信頼性について疑問視する声もある 13。ヒートシンクが保証規定により取り外し不可 4 であるため、ユーザーはこのトレードオフを受け入れるしかない。静音性を重視するシステム構成においては、この点が大きなデメリットとなる可能性がある。

次に、M.2フォームファクターの熱的限界が示唆される。PG5NFZのような製品で、これほど大型でアクティブ冷却を伴うクーラーが必要とされること 1、そしてM.2の電力供給制限に関する議論 9 は、M.2 2280というフォームファクターが、PCIe Gen5 SSDの発生する熱と電力要求によって限界に近づきつつあることを示している。元々、M.2 2280はより低消費電力のSSD向けに設計された規格であり、Gen5世代の要求する電力とそれに伴う発熱を、限られた表面積と空間内で処理するには、ますます高度な冷却技術が必要となっている 9。エンタープライズ向けでは、U.2やU.3といったフォームファクターがより優れた熱管理能力を提供している 13。コンシューマー向けにおいても、将来的に性能追求が進む中で、M.2規格の物理的・熱的な制約が、さらなる性能向上のボトルネックとなるか、あるいはより大型の冷却ソリューションや代替フォームファクターへの関心を高める可能性がある。

8. 結論

CFD PG5NFZ (CSSD-M2M1TPG5NFZ) 1TBモデルは、PCIe Gen5インターフェースを早期に採用したNVMe SSDであり、その性能プロファイルは明確な強みと考慮すべき課題を併せ持つ。

強み:

  • 卓越したシーケンシャル性能: 公称リード9.5 GB/s、ライト8.5 GB/sという速度は、PCIe Gen4 SSDを大幅に上回り、大容量ファイルの転送や特定の高帯域幅ワークロードにおいて顕著な効果を発揮する 1
  • 高い総合アプリケーション性能: PCMark 10などのベンチマークで示されるように、OS起動、アプリケーションロード、ゲーミングなど、多様なタスクにおいて優れた応答性とパフォーマンスを提供する 11
  • 将来技術への対応: DirectStorageへの最適化 12 など、将来のソフトウェアやゲーミング技術の恩恵を受ける準備ができている。

課題と考慮点:

  • 初期Gen5の性能ティア: 後発のより高速なNANDを採用したGen5 SSDと比較すると、性能面では見劣りする 10
  • 必須のアクティブ冷却: 高い発熱のため、大型のファン付きヒートシンク「Phnix」が必須であり 1、物理的なクリアランス(高さ)に制約が生じる。
  • 潜在的なノイズと信頼性: アクティブ冷却ファンは、動作音の原因となり、長期的な信頼性において懸念材料となる可能性がある 2
  • 高い消費電力と発熱: M.2規格の限界に近い電力消費とそれに伴う発熱は、システム全体の熱設計に配慮を要する 9
  • コストと価値: Gen4 SSDと比較して高価であり、その性能向上が全てのユーザーにとってコストに見合うとは限らない 8

理想的なユーザー:

本製品は、以下のようなユーザーに最も適していると考えられる。

  • 大容量ファイルの頻繁な転送、高解像度ビデオ編集、大規模なデータセット処理など、特定のタスクで最高のシーケンシャルスループットを必要とするプロフェッショナルやエンスージアスト。
  • 最新のPCIe Gen5プラットフォームを構築し、その性能ポテンシャルを(現時点での限界も含めて)活用したいと考えている早期導入者。
  • アクティブ冷却に伴う物理的な制約(高さ)、潜在的なノイズ、コストといったトレードオフを理解し、受け入れることができるユーザー。

最終的な評価:

CFD PG5NFZ (CSSD-M2M1TPG5NFZ) は、PCIe Gen5 SSD時代の幕開けを告げる製品の一つとして、その高いシーケンシャル性能で注目に値する。しかし、それは初期世代の製品としての特性、すなわち後発製品に対する性能的な限界、そして高性能と引き換えに要求される強力な(そして潜在的に騒々しい)冷却ソリューションという側面も併せ持つ。市場には、依然としてコストパフォーマンスに優れた高性能なPCIe Gen4 SSDが存在し、また、より高速で洗練されたPCIe Gen5 SSDも登場している。したがって、本製品の選択は、ユーザー固有のニーズ、予算、そして最新技術への要求度を慎重に衡量した上で決定されるべきである。特定の要求を持つユーザーにとっては強力な選択肢となり得るが、一般的なユーザーにとっては、他の選択肢との比較検討が不可欠となるだろう。

引用文献

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  2. 【鉄板&旬パーツ】初のPCIe 5.0対応NVMe SSD「PG5NFZ」の実力をチェック – AMD HEROES, 4月 24, 2025にアクセス、 https://amd-heroes.jp/article/2023/03/22634/
  3. PCパーツの総合サプライヤー「CFD販売」から、PCIe Gen5 x4接続のハイエンド M.2 NVMe SSD「PG5NFZシリーズ」発売 – PR TIMES, 4月 24, 2025にアクセス、 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000571.000032645.html
  4. CFD GamingからPCI Express 5.0対応 M2 2280 NVMe 1TB SSD「CSSD-M2M1TPG5NFZ」販売開始 | Ark Tech and Market News Vol.3004388, 4月 24, 2025にアクセス、 https://www.ark-pc.co.jp/news/article/3004388
  5. [bn:5]【送料無料】CFD製 SSD PG5NFZ CSSD-M2M1TPG5NFZ 1TB:オンラインショッピングエクセラー JRE MALL店通販, 4月 24, 2025にアクセス、 https://shopping.jreast.co.jp/products/detail/s210/s210-1000028506
  6. CFD CFD Gaming PG5NFZ シリーズ M.2接続 SSD 1TB [M.2]「バルク品」 CSSD-M2M1TPG5NFZ – コジマネット, 4月 24, 2025にアクセス、 https://www.kojima.net/ec/prod_detail.html?prod=4988755063364
  7. Phison E26 Max14um Gen5 SSD Review and Benchmarks – NAS Compares, 4月 24, 2025にアクセス、 https://nascompares.com/review/phison-e26-max14um-gen5-ssd-review-and-benchmarks/
  8. Phison Showcases 12 GB/s Speeds for PCIe 5.0 SSDs Through Its New E26 Controller, 4月 24, 2025にアクセス、 https://www.techpowerup.com/forums/threads/phison-showcases-12-gb-s-speeds-for-pcie-5-0-ssds-through-its-new-e26-controller.295369/
  9. First look at a reference design of the fastest SSDs we’re likely to see in 2024 — Phison’s E26 ‘Max14um’ will hit 14 GB/s, and we’ll test performance early next year : r/hardware – Reddit, 4月 24, 2025にアクセス、 https://www.reddit.com/r/hardware/comments/18ol58i/first_look_at_a_reference_design_of_the_fastest/
  10. Phison E26 Max14um Reference Design 2TB SSD Review – TweakTown, 4月 24, 2025にアクセス、 https://www.tweaktown.com/reviews/10629/phison-e26-max14um-reference-design-2tb-ssd-14-000-mb-ready-for-primetime/index.html
  11. This is the fastest SSD we’ve ever tested — Phison E26 Max14um 2TB performance preview, 4月 24, 2025にアクセス、 https://www.tomshardware.com/pc-components/ssds/this-is-the-fastest-ssd-weve-ever-tested-phison-e26-max14um-2tb-performance-preview
  12. Phison E26 SSD Preview: PCIe 5 Storage Breaks Out For 2023 | HotHardware, 4月 24, 2025にアクセス、 https://hothardware.com/reviews/phison-e26-pcie-5-nvme-ssd-preview
  13. This is the fastest SSD we’ve ever tested — Phison E26 Max14um 2TB performance preview : r/hardware – Reddit, 4月 24, 2025にアクセス、 https://www.reddit.com/r/hardware/comments/196576n/this_is_the_fastest_ssd_weve_ever_tested_phison/
  14. Socket AM5で活かせる次世代PCIe5.0 NVMe SSD「PG5NFZ」のパフォーマンスをチェック (4/5), 4月 24, 2025にアクセス、 https://ascii.jp/elem/000/004/126/4126157/4/
  15. Phison PS5026-E26 Max14um Gen5 SSD Reference Design Preview – 14GB/s Nails that Performance Sweet Spot, 4月 24, 2025にアクセス、 https://www.thessdreview.com/our-reviews/nvme/phison-ps5026-e26-max14um-gen5-ssd-preview/4/
  16. CFD GamingからPCIe Gen5対応で連続リード10GB/sの大台に乗せたM2 2280 NVMe 2TB SSD「CSSD-M2M2TPG5NFZ」販売開始 | Ark Tech and Market News Vol.3004290, 4月 24, 2025にアクセス、 https://www.ark-pc.co.jp/news/article/3004290
  17. CFD CSSD-M2M1TPG5NFZ | パソコン工房【公式通販】, 4月 24, 2025にアクセス、 https://www.pc-koubou.jp/products/detail.php?product_id=987174
  18. PCIe 5.0対応の1TB SSDが約2万2000円でCFDから発売 – ASCII.jp, 4月 24, 2025にアクセス、 https://ascii.jp/elem/000/004/137/4137305/
  19. 内蔵SSD PCI-E Gen5接続 CFD Gaming PG5NFZ シリーズ CSSD-M2M1TPG5NFZ [1TB /M.2] – ソフマップ, 4月 24, 2025にアクセス、 https://www.sofmap.com/product_detail.aspx?sku=24733264
  20. SSD Benchmarks Hierarchy 2025: We’ve tested over 100 different SSDs over the past few years, and here’s how they stack up. | Tom’s Hardware, 4月 24, 2025にアクセス、 https://www.tomshardware.com/features/ssd-benchmarks-hierarchy
  21. Crucial T705 2TB PCIe Gen5 NVMe SSD Review – Page 2 of 3 – ServeTheHome, 4月 24, 2025にアクセス、 https://www.servethehome.com/crucial-t705-2tb-pcie-nvme-gen5-ssd-review-phison-micron/2/
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