Crucial T700 CT1000T700SSD5JP (1TB) PCIe 5.0 SSD ベンチマークまとめ

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Crucial T700シリーズは、PCI Express 5.0インターフェースに対応したコンシューマー向けNVMe SSDの先駆けとして登場しました。本レポートでは、ヒートシンク搭載1TBモデルである「CT1000T700SSD5JP」に焦点を当て、その公式仕様、各種ベンチマークテストから明らかになる実性能、熱管理の重要性、そして市場における位置づけについて詳細に分析します。Micron製232層TLC NANDとPhison E26コントローラーを採用し、次世代のストレージ性能を標榜する本製品の実力を検証します。

公式仕様 (CT1000T700SSD5JP)

Crucial T700 CT1000T700SSD5JPは、最新のテクノロジーを搭載したハイエンドSSDです。その主な仕様は以下の通りです。

  • インターフェース: PCI Express (PCIe) 5.0 x4、NVMe 2.0 1
  • フォームファクタ: M.2 2280 (両面実装) 1
  • 容量: 1TB 1
  • コントローラー: Phison PS5026-E26 2
  • NANDフラッシュ: Micron 232層 3D TLC NAND 1
  • DRAMキャッシュ: 2GB LPDDR4 2 (TechPowerUpによる1TBモデルの解析情報 2)
  • シーケンシャル読込速度 (最大): 11,700 MB/s 1
  • シーケンシャル書込速度 (最大): 9,500 MB/s 1
  • ランダム読込IOPS (最大): 1,200,000 IOPS 1 (一部ソースでは1,350K IOPS 6 との記載あり)
  • ランダム書込IOPS (最大): 1,500,000 IOPS 1 (一部ソースでは1,400K IOPS 6 との記載あり)
  • 総書込容量 (TBW): 600 TBW 2
  • 保証期間: 5年間限定保証 2
  • ヒートシンク: 搭載 (CT1000T700SSD5JPモデル) 4
  • その他の機能: Microsoft DirectStorage対応、TCG Opal 2.01 ハードウェア暗号化 7

これらの仕様は、特にシーケンシャルアクセス速度において、前世代のPCIe 4.0 SSDを大幅に上回るポテンシャルを示しています 7。コントローラーには高性能なPhison E26が採用され、NANDにはMicron自社製の最新232層TLC NANDが搭載されており、技術的な先進性がうかがえます 2。ただし、最大速度は2TBや4TBモデルでより高く設定されており（最大読込12,400MB/s、最大書込11,800MB/s）、1TBモデルのスペックはそれに次ぐものとなります 7。耐久性評価であるTBWは600TBWと、1TBのコンシューマー向けハイエンドSSDとしては標準的な値です 2。

ベンチマーク性能分析

CT1000T700SSD5JPの性能を評価するため、国内外のレビューサイトからベンチマークテスト結果を収集・分析しました。

シーケンシャル性能

シーケンシャルアクセス性能は、大容量ファイルの読み書き速度を示す重要な指標です。

CrystalDiskMark結果

  • ssd-tester.com (1TBモデル): SEQ1M Q8T1テストにおいて、読込速度 11,729.60 MB/s、書込速度 9,645.54 MB/sを記録しました。これは1TBモデルの公称スペック（読込11,700 MB/s、書込9,500 MB/s）をわずかに上回る良好な結果です。一方、SEQ1M Q1T1テストでは、読込 8,961.23 MB/s、書込 9,427.88 MB/sとなり、特に読込速度はキュー深度が低い場合に低下する傾向が見られます 17。
  • itmedia.co.jp / news.mynavi.jp (エンジニアリングサンプル、おそらく2TBモデル): これらのサイトでは、エンジニアリングサンプル（ES品）を用いたテスト結果が報告されており、読込速度が12,300 MB/s超、書込速度が11,500 MB/s超と、1TBモデルの公称値を大幅に上回る結果が示されています 18。これは、テストされたサンプルがより高速な2TBモデルであった可能性が高いことを示唆しています。製品版ファームウェア（PACR5101）でのテスト結果も公開されていますが、こちらも2TBモデルでの計測のようです 20。
  • servethehome.com (2TBモデル): 2TBモデルのテストでは、1GBおよび8GBのテストサイズで公称スペックに近い性能を発揮したと報告されています 22。

総じて、CT1000T700SSD5JP (1TB) は、CrystalDiskMarkにおいて公称スペック通りの高いシーケンシャル性能を発揮することが確認できますが、より高い性能を求める場合は2TB以上のモデルが有利であると言えます。

AS SSD Benchmark結果

  • ssd-tester.com (1TBモデル): シーケンシャル読込 9,097.27 MB/s、書込 8,963.52 MB/s、総合スコア9655を記録しました 17。CrystalDiskMarkと比較してスコアが低めに出る傾向があるAS SSD Benchmarkにおいても、高い性能レベルを示しています。
  • gdm.or.jp (製品版、2TBモデル): シーケンシャル読込 8,876 MB/s、書込 9,559 MB/sと報告されており、1TBモデルの結果と近い傾向を示しています 20。

ATTO Disk Benchmark結果

  • servethehome.com (2TBモデル): 256MBのファイルサイズでは良好な性能を示しましたが、8GBのファイルサイズでは一部パフォーマンスの問題が見られたと報告されています。これは他の初期のGen5 SSDでも見られた現象と類似している可能性が指摘されています 22。

ランダム性能

ランダムアクセス性能は、OSやアプリケーションの起動、細かいファイルの読み書きなど、システム全体の応答性に影響します。

CrystalDiskMark結果

  • ssd-tester.com (1TBモデル): RND4K Q32T16テストで読込 5,500.45 MB/s、書込 4,331.93 MB/s、RND4K Q1T1テストで読込 84.39 MB/s、書込 323.85 MB/sを記録しました 17。特にQ1T1の性能は、体感速度に直結する重要な指標であり、ハイエンドSSDとして十分な性能を示しています。
  • news.mynavi.jp (ESサンプル、2TBモデル): エンジニアリングサンプルの段階では、ランダムアクセス性能（Q32T1）が一部のGen4ハイエンドSSD（Crucial P5 Plus）よりも低い結果が見られましたが、これはES品特有の問題であった可能性があります 19。gdm.or.jpによる製品版（2TB）のレビューでは、ES品からのランダム書込性能の向上が示唆されています 20。

AS SSD Benchmark結果

  • ssd-tester.com (1TBモデル): 4K読込 85.63 MB/s、書込 287.06 MB/s、4K-64Thrd読込 3,030.24 MB/s、書込 2,396.94 MB/sを記録しました 17。CrystalDiskMark RND4K Q1T1の結果と整合性のある高いランダム性能を示しています。

実アプリケーション性能

ベンチマークスコアだけでなく、実際の使用環境での性能も重要です。

  • ゲームロード時間: Microsoft DirectStorageに対応しており、対応ゲームにおいてテクスチャの読み込みが最大60%高速化され、ロード時間が短縮されるとされています 7。chimolog.coのレビューでは、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」ベンチマークのロードタイムが5.557秒と、TLC NAND搭載SSDとしては最速クラスの結果を記録しています 24。Amazonのユーザーレビューでも、ゲームのロード時間が爆速になったとの評価が見られます 5。
  • ファイルコピー性能: AS SSD Copy-Benchmark (1TB) では、ISO（大容量ファイル）コピーで 5,031.11 MB/s、Program（多数の小容量ファイル）コピーで 1,473.74 MB/s、Game（混合ファイル）コピーで 2,805.77 MB/sという高速な転送速度を記録しています 17。大容量ファイルの転送が非常に高速であることは、ユーザーレビューでも確認されています 25。ただし、news.mynavi.jpによる2TB ESサンプルの連続書込テストでは、約210GBの書き込み後にSLCキャッシュが枯渇し、速度が約9,000 MB/sから約3,500 MB/sへ低下する挙動が見られました。それでも3,500 MB/sは依然として高速ですが、巨大なファイルを連続して書き込むようなヘビーな用途では留意が必要です 19。
  • システム応答性: OSの起動やアプリケーションの読み込みが大幅に高速化され、ストレスのない操作感が得られると評価されています 5。chimolog.coでは、実用性能スコアが非常に高く、空き容量があればコンシューマー向けSSDとして最高クラスのスコアに達すると分析されています 26。

性能の強みと弱み

  • 強み:
  • クラス最高レベルのシーケンシャルアクセス速度（特に2TB/4TBモデル）6。
  • 強力なランダムアクセス性能、特に読込性能 17。
  • Microsoft DirectStorageへの最適化による将来的なゲーム性能向上への期待 7。
  • 実際のアプリケーション（ゲームロード、大容量ファイル転送の初期速度）における高いパフォーマンス 17。
  • 弱み:
  • PCIe 5.0 SSD共通の課題である高い発熱。効果的な冷却が不可欠 25。
  • SLCキャッシュ枯渇後の持続的な書込速度の低下 19。
  • 一部のベンチマーク（ATTO大容量ファイルテストなど）で見られる不安定さの可能性 22。
  • Gen4ハイエンドSSDと比較した場合、現状の一般的な用途では価格差に見合うほどの体感差が得られない可能性。
  • 高い消費電力（高性能コントローラーと高速NANDに起因）6。

熱性能とヒートシンクの効果

PCIe 5.0 SSDは、その高い転送速度を実現するためにコントローラーやNANDフラッシュが高クロックで動作し、結果として大きな熱を発生します。CT1000T700SSD5JPも例外ではありません。

  • 発熱: Phison E26コントローラーと高速な232層NANDの組み合わせにより、特に高負荷時にはかなりの熱が発生します 6。適切な冷却策がない場合、Amazonのユーザーレビューでは70℃を超える温度に達したとの報告もあります 25。my-best.comのレビューでも内部温度が61℃と比較的高かった点が指摘されています 27。
  • サーマルスロットリング: 高温状態が続くと、SSDは自身を保護するために性能を意図的に低下させるサーマルスロットリングが発生する可能性があります。Crucialは、CT1000T700SSD5JPに搭載されているプレミアムヒートシンクが、適切なエアフロー環境下であればサーマルスロットリングなしに最大性能を発揮できるとしています 3。Tom’s Hardwareのレビューでも、このパッシブヒートシンクは効果的であると評価されています 6。news.mynavi.jpによるESサンプルのテストでも、スロットリングは観察されませんでした 19。
  • ヒートシンクの重要性: Crucial自身も、ヒートシンク非搭載モデル（CT1000T700SSD3JPなど）を使用する場合は、マザーボード標準のヒートシンクや別途用意したヒートシンクの装着が最適性能を得るために必須であると強調しています 8。CT1000T700SSD5JPに付属するヒートシンクは、アルミニウムとニッケルメッキ銅を組み合わせたカスタム設計で、ファンレスでの放熱効果を最大化するように作られています 7。しかし、複数のユーザーレビューでは、特に長時間の高負荷運用を考慮する場合、ケース内のエアフロー確保に加えて、ファン付きのM.2 SSDクーラーの使用が強く推奨されています 5。これは、付属ヒートシンクの性能だけでは、あらゆる環境や負荷状況で完全に熱を抑制しきれない可能性を示唆しています。

結論として、CT1000T700SSD5JPの性能を最大限に引き出し、安定した動作を確保するためには、付属ヒートシンクの利用に加え、PCケース内の良好なエアフロー、あるいはより積極的な冷却ソリューション（ファン付きヒートシンクなど）の導入を検討することが賢明です。

市場におけるポジショニングと比較

Crucial T700 CT1000T700SSD5JPは、登場時点において最先端の性能を持つコンシューマー向けSSDの一つとして市場に投入されました。

  • 対 Gen5競合製品: 本製品は、Phison E26コントローラーとMicron 232層NANDを採用する第一世代のPCIe 5.0 SSD群に属します。Seagate FireCuda 540やGigabyte Aorus Gen5 10000 SSDなどが直接的な競合製品となります 22。発売当初は市場最速クラスの製品でしたが 6、その後、同じCrucialからさらに高速化されたT705が登場するなど 28、Gen5 SSD市場も進化を続けています。Addlink G55なども競合として挙げられます 5。
  • 対 Gen4ハイエンド製品: シーケンシャル性能においては、Crucial P5 Plusなどの高性能なPCIe 4.0 SSDに対して約2倍近い速度向上を実現しています 7。この差は、大容量ファイルの転送や、将来的に普及が進むであろうMicrosoft DirectStorage対応アプリケーションにおいて大きなアドバンテージとなり得ます 7。一方で、ランダム性能、特に低キュー深度（Q1T1）における性能向上幅は、シーケンシャル性能ほど劇的ではなく、一般的なOS操作やアプリケーション起動における体感速度の差は、Gen4ハイエンド製品と比較して限定的かもしれません 17。
  • ターゲットユーザーと要求環境: 主なターゲットは、最新技術による最高のストレージ性能を求めるPCエンスージアスト、ヘビーゲーマー、高解像度ビデオ編集や3Dレンダリングを行うコンテンツクリエーター、プロフェッショナルユーザーです 6。その性能を最大限に発揮するには、Intel第13世代Coreプロセッサー以降またはAMD Ryzen 7000シリーズ以降のCPUと、PCIe 5.0対応のマザーボードが必要です 5。PCIe 3.0および4.0環境との後方互換性も備えていますが、その場合は転送速度が各インターフェースの上限に制限されます 5。

CT1000T700SSD5JPは、最新プラットフォームを所有し、絶対的なストレージ性能を追求するユーザーにとって魅力的な選択肢ですが、その性能に見合った価格設定と、発熱対策への配慮が求められる製品と言えます。

結論

Crucial T700 CT1000T700SSD5JP (1TB, ヒートシンク付) は、PCIe 5.0インターフェースの性能を活かした高速なNVMe SSDです。1TBモデルにおいても公称値である読込最大11,700 MB/s、書込最大9,500 MB/sに迫る、あるいは上回るシーケンシャル性能をベンチマークテストで示しました。ランダムアクセス性能や、DirectStorageによるゲームロード時間短縮効果も本製品の強みです。

しかし、その高性能と引き換えに発熱量が大きく、安定動作のためには付属ヒートシンクの利用と良好なエアフロー、あるいは追加の冷却対策が強く推奨されます。また、SLCキャッシュ枯渇後の持続書込性能の低下は、非常に大きなファイルを連続して扱うユーザーにとっては留意すべき点です。

市場においては、登場時点での最速クラスSSDとして位置づけられましたが、後発のさらに高速なGen5 SSDとの競争に直面しています。Gen4ハイエンドSSDと比較すると、シーケンシャル性能の向上は顕著ですが、現状の一般的な利用シーンではその差を体感しにくい場面もあります。

総括すると、CT1000T700SSD5JPは、最新のPCプラットフォームで最高のストレージ性能を追求し、かつ適切な冷却環境を用意できるエンスージアストやプロフェッショナルユーザー向けの製品です。600 TBWという耐久性と5年保証は、ハイエンドモデルとして標準的な信頼性を提供します。

引用文献

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