はじめに
Google Pixel 8a は、スマートフォン市場において重要な位置を占めるデバイスであり、その性能に対する関心は非常に高くなっています。本レポートでは、公開されている調査データに基づいて、このデバイスのベンチマーク性能を詳細に分析します。具体的には、AnTuTu、Geekbench、PCMark、3DMark、PassMarkといった主要なベンチマークスイートの結果を検証し、その性能特性を明らかにすることを目的としています。この分析を通じて、Pixel 8a がどのような性能を発揮するのか、より深く理解することができます。
AnTuTu ベンチマーク分析
AnTuTu ベンチマークは、スマートフォンの総合的な性能を評価するために広く用いられており、CPU、GPU、メモリ、UX(ユーザーエクスペリエンス)の各項目を個別に測定し、総合スコアとして提示します。
総合 AnTuTu スコア
複数の情報源から、Google Pixel 8a の総合 AnTuTu スコアが報告されています。1 によると、そのスコアは 1,072,406 であり、一方、2 では 745,383 という数値が示されています。また、3 には AnTuTu 10 の平均スコアとして 1,179,223 が記録されています。これらのスコアには顕著な差異が見られますが、これは AnTuTu のバージョンやテスト環境の違いによる可能性があります。特に、AnTuTu 10 のスコアが他のバージョンよりも高い傾向が見られることは、ベンチマークソフトウェアの進化がスコアに影響を与えることを示唆しています。異なる情報源のスコアを比較検討する際には、これらの要因を考慮に入れる必要があります。
CPU スコア
CPU スコアについても、情報源によってばらつきが見られます。1 では 312,775、2 では 160,990、そして AnTuTu 10 3 では 363,260 という結果が出ています。AnTuTu 10 の CPU スコアが高いことは、総合スコアと同様の傾向を示しており、新しいバージョンのベンチマークが CPU の性能評価において異なる基準を用いている可能性が考えられます。この差異は、Pixel 8a のプロセッサである Google Tensor G3 の性能を評価する上で、どのベンチマークバージョンを参照するかが重要であることを示唆しています。
GPU スコア
GPU スコアは、CPU スコアほど大きな差異は見られませんが、それでも情報源によって差があります。1 では 379,528、2 では 303,382、AnTuTu 10 3 では 396,428 と報告されています。これらの数値は、Pixel 8a のグラフィックス処理能力がおおむね同程度の範囲にあることを示唆していますが、わずかながら AnTuTu 10 が高いスコアを示しています。これは、GPU の性能評価においても、ベンチマークのバージョンが影響を与えている可能性を示唆しています。
メモリスコア
メモリスコアにおいても、情報源間で差異が見られます。1 では 160,282、2 では 128,158、AnTuTu 10 3 では 189,558 となっています。ここでも AnTuTu 10 のスコアが最も高く、メモリ性能の評価方法が新しいバージョンで変更されたか、または最適化が進んだ可能性があります。デバイスのメモリ性能は、マルチタスク処理やアプリケーションの動作速度に直接影響するため、これらのスコアの違いを理解することは重要です。
UX スコア
UX スコアは、ユーザーエクスペリエンスに関わる性能を評価する項目であり、1 では 219,821、2 では 152,853、AnTuTu 10 3 では 229,977 と報告されています。他の項目と同様に、AnTuTu 10 が最も高いスコアを示しています。これは、新しいベンチマークバージョンが、より洗練された方法でユーザーインターフェースの快適性や応答性を評価している可能性を示唆しています。
他のスマートフォンとの比較
Google Pixel 8a の AnTuTu スコアを他のスマートフォンと比較することで、その相対的な性能をより深く理解することができます。以下の表は、複数の情報源から得られたデータをまとめたものです。
スマートフォン | 総合 | CPU | GPU | メモリ | UX | 出典 |
Google Pixel 8A | 1,072,406 | 312,775 | 379,528 | 160,282 | 219,821 | 91mobiles |
Google Pixel 8A | 745,383 | 160,990 | 303,382 | 128,158 | 152,853 | MySmartPrice |
Google Pixel 8A (平均) | 1,179,223 | 363,260 | 396,428 | 189,558 | 229,977 | NanoReview.net |
iQOO 12 5G | 2,073,660 | 450,083 | 891,269 | 402,166 | 330,142 | 91mobiles |
OnePlus 13R | 1,709,077 | 246,716 | 846,270 | 375,904 | 240,187 | 91mobiles |
Samsung Galaxy S24 FE | 1,625,873 | 400,082 | 698,721 | 238,234 | 288,836 | 91mobiles |
OnePlus 12R | 1,240,474 | 232,053 | 606,671 | 201,361 | 200,389 | 91mobiles |
Samsung Galaxy A55 5G | 733,093 | 247,282 | 175,808 | 149,957 | 160,046 | 91mobiles |
OPPO Reno10 Pro 5G | 575,976 | – | – | – | – | 91mobiles |
OnePlus Nord 4 | 1,145,842 | – | 500,364 | 224,982 | 182,778 | MySmartPrice |
vivo V50 | 818,280 | – | 259,798 | 132,645 | 160,142 | MySmartPrice |
Nothing Phone 3a Pro | 806,678 | – | 200,628 | 163,613 | 168,101 | MySmartPrice |
Samsung Galaxy A36 5G | 638,436 | – | 154,946 | 139,994 | 141,712 | MySmartPrice |
Google Pixel 7A | – | 175,006 | – | 108,868 | – | 91mobiles |
この比較表から、Pixel 8a の AnTuTu スコアは、多くの競合機種と比較して中程度の性能であることがわかります。特に、iQOO 12 5G や OnePlus 13R のような高性能機種には及ばないものの、Samsung Galaxy A55 5G や Google Pixel 7A といった他のミッドレンジモデルと比較すると、良好な性能を示しています。ただし、Pixel 8a 自体のスコアが情報源によって大きく異なる点には注意が必要です。これは、テスト条件やベンチマークバージョンの違いが影響していると考えられます。MySmartPrice のデータによると、Pixel 8a は同様の価格帯のスマートフォンの中で総合スコアが 8 位にランク付けされており、これは全体の 25% のスマートフォンよりも優れていることを意味します。CPU スコアは 10 位で上位 5% 以内、GPU スコアは 5 位で上位 55% 以内、メモリと UX スコアはどちらも 9 位で上位 15% 以内となっています。2
Geekbench ベンチマーク分析
Geekbench は、主に CPU のシングルコアおよびマルチコア性能を評価するために用いられるベンチマークです。
シングルコアスコア
Google Pixel 8a のシングルコアスコアについても、情報源によって報告されている数値に差異が見られます。1 では 1,514 とされていますが、2 では 727 という低いスコアが報告されています。この大きな違いは、使用された Geekbench のバージョンやテスト時のシステムの状態などが影響している可能性があります。91mobiles のデータは、MySmartPrice のデータよりも大幅に高いスコアを示しており、Pixel 8a のシングルコア性能に関する評価が情報源によって異なることを示しています。MySmartPrice のデータによれば、Pixel 8a のシングルコアスコアは同様の価格帯のスマートフォンの中で 10 位であり、上位 5% の性能です。2
マルチコアスコア
マルチコアスコアについても、シングルコアスコアと同様に情報源間で差が見られます。1 では 3,407、2 では 2,826 と報告されています。シングルコアほどの大きな差ではありませんが、やはり情報源によって評価が異なることがわかります。MySmartPrice のデータでは、マルチコアスコアもシングルコアと同様に 10 位であり、上位 5% の性能とされています。2
他のスマートフォンとの比較
Google Pixel 8a の Geekbench スコアを他のスマートフォンと比較することで、その CPU 性能の相対的な位置づけを把握することができます。
スマートフォン | シングルコア | マルチコア | 出典 |
Google Pixel 8A | 1,514 | 3,407 | 91mobiles |
Google Pixel 8A | 727 | 2,826 | MySmartPrice |
iQOO 12 5G | 2,223 | – | 91mobiles |
OnePlus 13R | 2,210 | 6,515 | 91mobiles/MSP |
Samsung Galaxy S24 FE | 2,074 | 6,407 | 91mobiles/MSP |
Nothing Phone 3a Pro | 1,161 | 3,298 | MySmartPrice |
vivo V50 | 1,141 | 3,097 | MySmartPrice |
Samsung Galaxy A36 5G | 1,008 | 2,893 | MySmartPrice |
OnePlus Nord 4 | 955 | 3,920 | MySmartPrice |
Google Pixel 7A | – | – | 91mobiles |
この表から、MySmartPrice のデータに基づくと、Pixel 8a の CPU 性能はシングルコア・マルチコアともに、OnePlus 13R や Samsung Galaxy S24 FE といった高性能機種と比較して低いことがわかります。また、Nothing Phone 3a Pro や vivo V50、Samsung Galaxy A36 5G といった他のミッドレンジモデルと比較しても、シングルコア性能はやや劣る傾向が見られます。一方、91mobiles のデータでは、シングルコア性能はより競争力があるように見えますが、マルチコア性能では依然として上位機種に劣ります。このように、Geekbench のスコアも情報源によって解釈が異なるため、注意が必要です。
PCMark バッテリー性能
PCMark は、実際の利用シナリオを想定したテストを通じて、スマートフォンのバッテリー性能を評価するベンチマークです。
Google Pixel 8a の PCMark バッテリー性能テストの結果は、12 時間 12 分と報告されています。1 この数値は、Pixel 8a が日常的なタスクにおいて、比較的良好なバッテリー持続時間を提供できる可能性を示唆しています。バッテリー性能は、ユーザーがスマートフォンを快適に使用できる時間に直接影響するため、この結果は重要な指標となります。
3DMark ベンチマーク分析
3DMark は、スマートフォンの GPU 性能、特にゲームやグラフィックスを多用するアプリケーションの性能を評価するために広く用いられるベンチマークスイートです。
Sling Shot Extreme スコア
Google Pixel 8a は、3DMark Sling Shot Extreme (OpenGL ES 3.1) および Sling Shot Extreme (Vulkan) テストにおいて、「MAXED OUT!」という結果を示しています。4 これは、これらの比較的古いテストにおいては、Pixel 8a の GPU が十分に高い性能を発揮できることを意味します。具体的なフレームレートは、OpenGL ES 3.1 でグラフィックテスト 1 が 73 FPS、グラフィックテスト 2 が 44 FPS、物理演算テスト 1 が 39 FPS、物理演算テスト 2 が 25 FPS、物理演算テスト 3 が 15 FPS であり、Vulkan ではグラフィックテスト 1 が 87 FPS、グラフィックテスト 2 が 47 FPS、物理演算テスト 1 が 29 FPS、物理演算テスト 2 が 21 FPS、物理演算テスト 3 が 15 FPS となっています。4
より詳細なスコアとして、3DMark Sling Shot Extreme Unlimited のスコアは 7831 であり、内訳は物理演算スコアが 3001、グラフィックスコアが 14090 となっています。4 また、3DMark Sling Shot テストも「MAXED OUT!」であり、グラフィックテスト 1 が 61 FPS、グラフィックテスト 2 が 59 FPS、物理演算テスト 1 が 41 FPS、物理演算テスト 2 が 26 FPS、物理演算テスト 3 が 16 FPS という結果です。4 これらの結果から、Pixel 8a は一定レベルまでのグラフィックス処理能力を有していることがわかります。
Steel Nomad Light スコア
より新しい、負荷の高いテストである 3DMark Steel Nomad Light のスコアは 979 であり、安定性は 67%、グラフィックテスト 1 のフレームレートは 7 FPS です。4 また、3DMark Steel Nomad Light Unlimited のスコアは 972 で、グラフィックテスト 1 のフレームレートは 7 FPS となっています。4 これらの結果は、Pixel 8a が最新の非常に要求の厳しいグラフィックス処理においては、やや苦戦する可能性があることを示唆しています。特に、グラフィックテストのフレームレートが低いことは、高負荷な現代のゲームやアプリケーションを実行する際に、性能の限界に達する可能性があることを示唆しています。しかし、安定性のスコアは、持続的な負荷に対する性能の一貫性を示す指標となります。
PassMark ベンチマーク分析
PassMark は、CPU、メモリ、ディスク、2D グラフィックス、3D グラフィックスなど、スマートフォンの様々な側面を評価するベンチマークスイートです。
Google Pixel 8a の平均 PassMark 評価は 17,085 です。5
CPU Mark
平均 CPU Mark は 8,444 と報告されています。5 このスコアは、Geekbench の結果と合わせて、Pixel 8a のプロセッサ性能を多角的に評価する上で役立ちます。異なるベンチマークが異なる種類のテストを実施するため、これらのスコアを比較することで、プロセッサの強みと弱みをより深く理解することができます。
Mem Mark
平均 Mem Mark は 25,328 です。5 これは、AnTuTu のメモリスコアとは異なる方法でメモリ性能を評価した結果であり、両方のスコアを分析することで、Pixel 8a のメモリ性能に関するより包括的な理解が得られます。メモリ性能は、システムの応答性やマルチタスクの効率に影響を与える重要な要素です。
2D Mark
平均 2D Mark は 62,559 です。5 このスコアは、日常的なタスクやユーザーインターフェースの描画性能など、2D グラフィックス処理能力を評価するものです。高い 2D Mark は、スムーズな画面遷移やアプリケーションの快適な動作に貢献します。
3D Mark
平均 3D Mark は 53,420 です。5 これは、3DMark の結果と合わせて GPU の性能を評価するための指標となります。PassMark の 3D Mark スコアと 3DMark の個別のテスト結果を比較することで、Pixel 8a のグラフィックス処理能力をより詳細に分析することができます。
総合的な性能に関する考察と議論
これまでに分析した各ベンチマークの結果を総合的に見ると、Google Pixel 8a はミッドレンジのスマートフォンとして、バランスの取れた性能を提供していると言えます。Google Tensor G3 チップセットは、日常的な使用や比較的負荷の低いゲームにおいては十分な性能を発揮すると考えられます。
ただし、AnTuTu や Geekbench のスコアには情報源によって大きなばらつきが見られました。これは、ベンチマークソフトウェアのバージョン、テスト時のデバイスの状態、あるいはテスト環境の違いなどが影響している可能性があります。例えば、AnTuTu のスコアはバージョンによって評価基準が異なることが示唆されており、新しいバージョンである AnTuTu 10 では、より高いスコアが得られる傾向が見られます。また、ソフトウェアアップデートもデバイスの性能に影響を与える可能性があり、テストの実施時期によってスコアが変動することも考えられます。実際に、ベンチマーク結果の報告日は 2024 年後半から 2025 年 3 月までと幅があり、この期間にソフトウェアのアップデートが行われた可能性も否定できません。2
3DMark の結果からは、Pixel 8a は古い世代のグラフィックステストでは高い性能を発揮するものの、最新のより負荷の高いテストではフレームレートが低下する傾向が見られました。これは、Pixel 8a が高度なグラフィックス処理を必要とする最新のゲームやアプリケーションにおいては、性能の限界に達する可能性があることを示唆しています。一方、PCMark のバッテリーテストの結果は良好であり、日常的な使用においては十分なバッテリー持続時間が期待できると考えられます。
これらのベンチマークスコアは、Pixel 8a の性能を客観的に評価する上で重要な指標となりますが、実際の使用感は個々のユーザーの利用状況によって異なる可能性があります。例えば、ヘビーゲーマーであれば GPU 性能がより重要な要素となりますし、日常的なSNSやWeb閲覧が中心のユーザーであれば、バッテリー持続時間や基本的な処理性能がより重要となるでしょう。
Google Tensor G3 チップセットの採用は、Pixel 8a のベンチマーク性能に直接的な影響を与えています。そのオクタコア構成と特定のクロック周波数を持つ CPU コア、そして Immortalis-G715s MC10 GPU の組み合わせが、処理能力とグラフィックス性能を決定づけています。1 また、Google によるソフトウェアの最適化も、ベンチマークスコアや実際の使用感に影響を与える可能性があります。
Pixel 8a のベンチマーク性能は、競合するミッドレンジスマートフォンと比較検討する上で重要な要素となります。市場には多くの選択肢が存在するため、Pixel 8a の相対的な性能を把握することは、消費者にとって購入の判断材料の一つとなります。ベンチマークスコアだけでなく、実際の使用レビューや価格なども総合的に考慮することが、最適なスマートフォン選びには不可欠です。
結論
Google Pixel 8a のベンチマーク性能を詳細に分析した結果、このデバイスはミッドレンジ市場において、バランスの取れた性能を提供していることが示唆されました。AnTuTu、Geekbench、PCMark、3DMark、PassMark といった複数のベンチマークスイートの結果を比較検討することで、Pixel 8a の強みと弱みをより深く理解することができました。
特に、バッテリー性能は良好である一方、最新の高度なグラフィックス処理においてはやや課題が見られる可能性があります。また、ベンチマークスコアは情報源やテスト条件によって変動するため、複数のデータポイントを総合的に考慮することが重要です。Pixel 8a の購入を検討する際には、これらのベンチマーク結果を参考にしつつ、自身の利用目的や重視するポイントと照らし合わせて判断することが推奨されます。
引用文献
- Google Pixel 8A AnTuTu Score – Geekbench & PCMark Score …, 3月 18, 2025にアクセス、 https://www.91mobiles.com/google-pixel-8a-price-in-india?ty=benchmark-scores
- Google Pixel 8A Antutu Score and other Benchmark scores (17-03 …, 3月 18, 2025にアクセス、 https://www.mysmartprice.com/mobile/google-pixel-8a-msp21840/benchmark-scores
- AnTuTu 10 Scores of Google Pixel 8a – NR Benchmark – NanoReview, 3月 18, 2025にアクセス、 https://nanoreview.net/en/benchmark-ranking/google-pixel-8a
- Google Pixel 8a Review – Benchmarks – UL Solutions, 3月 18, 2025にアクセス、 https://benchmarks.ul.com/hardware/phone/Google+Pixel+8a+review
- PassMark Android Benchmark for Google Pixel 8a, 3月 18, 2025にアクセス、 https://www.androidbenchmark.net/phone.php?phone=Google+Pixel+8a