MediaTek Dimensity 6080 ベンチマークまとめ

SoC_mediatek CPU・SoC

I. MediaTek Dimensity 6080 概要

A. 概要と市場での位置づけ

MediaTek Dimensity 6080は、MediaTekが2023年6月に発表したオクタコアのSystem-on-Chip（SoC）である 1。MediaTekのDimensity 6000ファミリーに属し、「ローワーミドルレンジ」または「エントリーレベル5G」スマートフォンセグメントをターゲットとしている 3。このセグメントは、5G接続、高リフレッシュレートディスプレイ、高解像度カメラといった機能を、より手頃な価格帯で提供することを目的としている。

本SoCはTSMCのN6（6nmクラス）プロセスで製造されており、電力効率の向上が意図されている 2。

B. Dimensity 810との関係性

Dimensity 6080（MT6833V/MT6833GP）は、技術的には先行するMediaTek Dimensity 810と同一、あるいはリブランド/リフレッシュ版であると複数の情報源が指摘している 4。

主な違いとして挙げられているのは、Dimensity 6080が公式に最大108MP（メガピクセル）のカメラセンサーをサポートする点である。一方、Dimensity 810は通常64MPまでのサポートとされていた 4。ただし、一部の情報源ではDimensity 6080も64MPと記載されている場合があり 13、これは混乱や地域差の可能性を示唆するが、MediaTekの公式仕様では108MPサポートが確認されている 9。

Dimensity 810とほぼ同一であるという事実は、MediaTekの戦略的な動きを示唆している。実績がありコスト効率の良い6nm設計を、新しいDimensity 6000シリーズの命名規則の中に再配置する戦略と考えられる。Dimensity 810は2021年8月に発表されており 25、Dimensity 6080（2023年6月発表）よりも古い。MediaTekは後に6000シリーズを導入したため、Dimensity 810をDimensity 6080としてリブランドすることで、成熟しコスト最適化されたであろうチップを用いて6000シリーズのラインナップを埋めることができる。同時に、ターゲット市場にアピールする機能（108MPカメラサポート）を、大きな研究開発投資なしに追加している。これは、この特定のSKU（Stock Keeping Unit）において、最先端の革新よりも量産とコスト効率を重視していることを示唆する。したがって、Dimensity 6080の性能に対する期待値は、Dimensity 810のそれとほぼ一致すると考えるべきである。

II. 技術仕様

A. CPU (Central Processing Unit)

Dimensity 6080は、ヘテロジニアスマルチプロセッシング対応のオクタコア構成を採用している 2。

  • アーキテクチャ: 2基のArm Cortex-A76（パフォーマンスコア）最大2.4GHz + 6基のArm Cortex-A55（効率コア）最大2.0GHz 1。
  • ビット幅: 64ビットアーキテクチャ（ARMv8.2-A命令セット）1。
  • キャッシュ: L1キャッシュ 512KB、L2キャッシュ 1MB、L3キャッシュ 2MB（一部情報源に基づく）1。

Cortex-A76コアの2.4GHzというクロック周波数はこのセグメントとしては妥当であるが、A76アーキテクチャ自体は、Snapdragon 695などの主要な競合製品で採用されているCortex-A78よりも古い 1。Cortex-A78は一般的にA76よりも新しく効率的なアーキテクチャであり、IPC（Instructions Per Clock、クロックあたりの命令実行数）が高いとされる。Dimensity 6080は一部のA78実装（例：SD695の2.2GHz）よりも高いクロック周波数（+200MHz）を持つものの、A78のアーキテクチャ上の利点が、特にシングルスレッド性能が重要となるタスクにおいて、このクロック周波数の差を相殺する可能性がある。実際に、Geekbenchのシングルコアスコアでは、クロック周波数が低いにもかかわらずSD695が優位に立つことが多い 15。A76コアの採用は、旧世代のコスト効率の良い設計を活用するという戦略を裏付けている。

B. GPU (Graphics Processing Unit)

  • タイプ: Arm Mali-G57 MC2（Valhall 第1世代アーキテクチャ、2コア）2。
  • GPU周波数: 情報源により850MHz 14、950MHz 2、1068MHz 1 とばらつきがある。950MHzが仕様表で頻繁に見られるが、詳細な比較やコメントでは1068MHzがブーストクロックや訂正値として言及されている可能性がある 2。MediaTek公式サイト 9 では周波数は明記されていない。
  • APIサポート: Vulkan 1.3、OpenCL 2.0、DirectX 12 1。
  • 演算性能 (FLOPS): 136.7 GFLOPS（ギガフロップス）と記載されている 1。ただし、Helio G99との比較からこの数値に疑問を呈するコメントもある 2。この潜在的な不一致に留意する必要がある。

C. 製造プロセス

  • TSMC N6（6nmクラス）プロセス技術 2。
  • このノードは、旧プロセス（Dimensity 700/6020の7nm 4 やSD690の8nm 15 など）と比較して電力効率の利点をもたらすと強調されている 3。

D. メモリとストレージ

  • メモリタイプ: LPDDR4x 1。
  • 最大メモリ周波数: 2133MHz 1。
  • メモリバス: 2x 16ビット（デュアルチャネル）1。
  • 最大帯域幅: 17.07 GB/s 1。
  • ストレージタイプ: UFS 2.2（2レーン）1。MediaTekは「競合他社の代替品」と比較して2倍高速なデータ転送を実現すると主張している 9。

LPDDR4xとUFS 2.2はこのセグメントの標準であるが、上位チップ（Dimensity 7050 11、Dimensity 7025 1、Dimensity 1050 14、Snapdragon 6 Gen 1 30）や一部の競合製品（Dimensity 7020 29）に見られるLPDDR5やUFS 3.1よりは低速である。この低いメモリ帯域幅（17.07 GB/s）1 は、LPDDR5をサポートするチップと比較して、メモリ集約的なタスクや高解像度ゲーミングにおいて性能を制限する可能性がある。一方で、MediaTekが主張する2レーンUFS 2.2による高速転送が実際に効果を発揮するのであれば、標準的なUFS 2.2実装に対しては利点となる可能性がある 3。これは、UFS 2.2規格内で最適化を図ろうとする試みを示唆しており、ベースラインのUFS 2.2競合製品に対してわずかな優位性をもたらすかもしれないが、依然としてUFS 3.1には及ばない。

E. ディスプレイ

  • 最大解像度: フルHD+（2520 x 1080ピクセル）1。
  • 最大リフレッシュレート: 最大120Hz 2。滑らかなスクロールやゲーム体験を実現するとされている 9。
  • 特徴: MediaTek MiraVision技術によるディスプレイ強化（Dimensityシリーズ全般で言及 5、適用可能性あり）。

F. カメラ

  • 最大ISPサポート: シングル108MPカメラ 1 または デュアル16MP + 16MPカメラ 1。一部情報源で最大64MPとされているのは 13、おそらくDimensity 810の古い仕様に基づくもので、Dimensity 6080の公式発表/更新前の情報であろう。
  • カメラ機能: ハードウェアアクセラレーションによるマルチフレームノイズリダクション（MFNR）、3Dノイズリダクション（3DNR）、AI顔検出（AI-FD）、デュアルカメラ＆深度認識用ハードウェアアクセラレーション、AIカメラ強化 1。MediaTekは、より高速なノイズリダクションと顔認識を主張している 9。
  • ビデオ撮影/再生: 最大2K@30fps（フレーム/秒）が有力 1。一部では4K@30fpsとの記載もあるが 13、MediaTek公式サイトではビデオ解像度は明記されていない。NanoreviewやYouTubeの情報源 1 に基づき、2K@30fpsが妥当と判断される。対応コーデック: H.264、H.265 (HEVC)、VP9 1。

G. 接続性

  • セルラー: 統合5Gモデム（Sub-6 GHz）。SA（スタンドアロン）& NSA（ノンスタンドアロン）モード、デュアル5G SIM（5G SA + 5G SA）、デュアルVoNR（Voice over New Radio）をサポート 3。混合デュプレックスFDD+TDDによる2CC（コンポーネントキャリア）キャリアアグリゲーション（CA）をサポート 9。ピークダウンロード速度: 2.77 Gbps 1。ピークアップロード速度: 1.25 Gbps 1。MediaTek 5G UltraSave省電力技術を搭載 9。第3世代5G Call/Data Concurrency対応 9。
  • Wi-Fi: Wi-Fi 5 (802.11a/b/g/n/ac) 1。アンテナ: 1T1R 7。
  • Bluetooth: バージョン 5.1 1。
  • GNSS: GPS (L1CA+L5)、BeiDou (B1I+B2a)、Glonass (L1OF)、Galileo (E1+E5a)、QZSS (L1CA+L5)、NavICをサポート 1。

Dimensity 6080の5G機能（デュアルSIM 5G SA、VoNR、最大2.77 Gbpsの2CC CA）は、ローワーミドルレンジセグメントとしては非常に堅牢であり、しばしば上位ティアで見られる機能を提供している 9。これにより、基本的な5G実装と比較して接続の信頼性と速度が向上する。しかし、Wi-Fi 5とBluetooth 5.1への制限は、一部の競合製品や上位のDimensityチップ（例：D7050はWi-Fi 6E、BT 5.2 11、D7025はBT 5.3 1、D6100+/D6300はBT 5.2 10、SD695はBT 5.2 15）に見られる新しい規格（Wi-Fi 6/6E、BT 5.2/5.3/5.4）に比べて見劣りする。Wi-Fi 6は、特に混雑した環境において速度、容量、効率を向上させ、新しいBluetoothバージョンはLE Audioや改善された範囲/効率などの利点を提供する。Dimensity 6080は、最新のWi-Fi/BT規格よりも堅牢な5Gモデム機能を優先しているように見え、これはターゲット市場に合わせたコスト削減策である可能性が高いが、最新のワイヤレステクノロジーを必要とするユーザーにとっては潜在的な欠点となる。

H. その他の特徴

  • MediaTek HyperEngine 3.0 Lite: ゲーム中のネットワーク応答、接続性、パフォーマンス/電力管理を強化するゲーミング技術 3。
  • 高速化されたアプリ体験: UFS 2.2 2レーンと最適化により、アプリの切り替えや起動が高速化されると主張 9。
  • TDP (Thermal Design Power): 一部の情報源では6W 1、別の情報源では4W 14 と記載されている。確認が必要だが、効率重視を示唆している。

表1: MediaTek Dimensity 6080 詳細仕様

機能項目仕様主な情報源
CPUArm Cortex-A76 x2 (最大2.4GHz) + Arm Cortex-A55 x6 (最大2.0GHz), オクタコア, 64-bit (ARMv8.2-A), L3キャッシュ 2MB (推定)1
GPUArm Mali-G57 MC2, 周波数 950MHz-1068MHz (推定), Vulkan 1.3, OpenCL 2.0, DirectX 121
製造プロセスTSMC N6 (6nmクラス)4
メモリLPDDR4x, 最大2133MHz, 2x 16ビット, 最大帯域幅 17.07 GB/s1
ストレージUFS 2.2 (2レーン)1
ディスプレイ最大解像度 2520 x 1080 (FHD+), 最大リフレッシュレート 120Hz6
カメラ最大ISP 108MP (シングル) or 16MP+16MP (デュアル), MFNR, 3DNR, AI-FD1
ビデオ最大 2K@30fps 撮影/再生 (推定), H.264, H.265, VP9 コーデック1
接続性 (5G)Sub-6 GHz, SA/NSA, Dual 5G SIM (SA+SA), 2CC CA, ピークDL 2.77Gbps / UL 1.25Gbps, VoNR1
接続性 (その他)Wi-Fi 5 (ac), Bluetooth 5.1, GPS/BeiDou/Glonass/Galileo/QZSS/NavIC1
その他MediaTek HyperEngine 3.0 Lite, MediaTek 5G UltraSave5
TDP6W (推定)1

注: 一部の仕様（キャッシュ、GPU周波数、ビデオ解像度、TDP）は情報源により異なる場合があり、推定値を含む。

III. 合成ベンチマーク分析

A. AnTuTu Benchmark パフォーマンス (v9 & v10)

Dimensity 6080のAnTuTu Benchmark v10スコアは、複数のレビューやデータベースによると、全体的に約40万点から46万点の範囲に収まることが多い 1。具体的なデバイススコアとしては、Redmi Note 13 5Gが453,830点 3、POCO X6 Neoが445,887点 3、Tecno Pova 6 Proが441,943点 3 などが報告されている。Nanoreviewの平均スコアは436,846点である 1。Bajaj Finservの比較記事では、競合製品との比較で約40万点 13 や46万点 14 のスコアが示されている。

利用可能な場合、コンポーネント別のスコア内訳は以下のようになることが多い 1：CPU 約13万～14.7万点、GPU 約7万～10万点（ばらつきあり）、Memory 約8万～11.6万点、UX 約9.5万～12万点。

スコアのばらつきについては、その範囲と、Nanoreviewでユーザー報告された53万点のような外れ値の存在を認識する必要がある 2。考えられる理由としては、デバイスの実装（冷却性能、RAM/ストレージ速度）、ソフトウェアの最適化、テスト中のバックグラウンドプロセス、ベンチマークバージョンの違い（ただし最近のスコアの多くはv10）などが挙げられる。古い比較のためにAnTuTu v9のスコア（約38万～40万点の範囲 13）に言及することも有効である。

特にGPUスコアには顕著なばらつきが見られる（例：3 では70,964点、1 では84,970点、13 では10万点、14 では15万点、42 では12万点）。この広範な差は異例であり、情報源によるテスト方法の一貫性の欠如、デバイス固有の大幅なスロットリング/ブースト、あるいは一部報告データ（特にBajaj Finservからの12万点/15万点という高い数値 14 は、Nanoreview/91mobilesと比較して過大に見える）の誤りの可能性を示唆している。分析においては、より一貫性のある約7万～8.5万点の範囲を代表的なものとして扱い、それ以上の数値には注意が必要である。Mali-G57 MC2の期待される性能レベルを考慮すると、7万～8.5万点が最も信頼性の高いAnTuTu GPUスコア範囲と考えられる。

B. Geekbench パフォーマンス (v5 & v6)

Geekbench 6のスコアは、シングルコア性能がおおむね760～780点 1、マルチコア性能がおおむね1900～2100点 1 の範囲で報告されている。Redmi Note 13 5Gではシングルコア737点、マルチコア1905点 3、Tecno Pova 6 Proではシングルコア780点、マルチコア1856/2099点 4 といった具体的なデバイススコアも存在する。

より広範な比較のため、Geekbench 5のスコアも参照すると、シングルコアは約585～595点 4、マルチコアは約1850～1950点 4 となっている。

これらのスコアは、CPUの純粋な処理能力、特にシングルスレッド対マルチスレッドの能力を示している。Cortex-A76とA55のコア構成との関連性を分析する上で重要である。

C. 3DMark グラフィックスパフォーマンス

利用可能な3DMarkスコアとしては、Sling Shot Extreme (ES 3.1) Unlimited Physicsが約3750～3870点 7、Sling Shot (ES 3.0) Unlimited Physicsが約3720点 7 が報告されている。Wild Lifeのスコアは約1331点 2 で、グラフィックステスト結果は7 FPSと報告されている 2。なお、Sling Shot Physicsスコアは主にCPU性能を反映するものであり、純粋なGPU能力を示すものではない。Wild Lifeスコア（1331点）は、現代のGPU性能をより直接的に測定する指標である。

これらのスコア、特に低いWild Lifeスコアは、Mali-G57 MC2がゲームやグラフィックス負荷の高いタスク、特に要求の厳しい現代のゲームに対して限界があることを示唆している。

D. その他のベンチマーク (任意だが参考になる)

  • PCMark Work 3.0 Performance: Redmi Note 13 5Gで10,540点 6。一般的な生産性タスクにおけるパフォーマンスを示す。
  • GFXBench: Redmi Note 13 5GでManhattan 2,363、T-Rex 3,278 6。古いグラフィックステストだが、追加のデータポイントを提供する。

表2: Dimensity 6080 合成ベンチマークスコア概要

ベンチマークテスト代表的なスコア範囲デバイス例 (スコア)主な情報源
AnTuTu v10 (総合)400,000 – 460,000Redmi Note 13 5G (453,830)2
AnTuTu v10 (CPU)130,000 – 147,000Redmi Note 13 5G (146,923)2
AnTuTu v10 (GPU)70,000 – 85,000 (注1)Redmi Note 13 5G (70,964)1
AnTuTu v10 (MEM)80,000 – 116,000Redmi Note 13 5G (116,139)2
AnTuTu v10 (UX)95,000 – 120,000Redmi Note 13 5G (119,804)2
Geekbench 6 (シングルコア)760 – 780Tecno Pova 6 Pro (780)1
Geekbench 6 (マルチコア)1900 – 2100Tecno Pova 6 Pro (2099)1
Geekbench 5 (シングルコア)585 – 595–4
Geekbench 5 (マルチコア)1850 – 1950–4
3DMark Wild Life (総合)~1331–2
3DMark Wild Life (グラフィックス FPS)~7 FPS–2
3DMark Sling Shot Ext. Physics3750 – 3870Redmi Note 13 5G (3873)15
PCMark Work 3.0~10,540Redmi Note 13 5G (10,540)6

注1: AnTuTu GPUスコアは情報源により大きなばらつきがあるため、最も一貫性のある範囲を記載。

IV. 競合製品との比較

A. 主要な競合製品の特定

Dimensity 6080の主要な競合製品は、情報源で頻繁に比較されているQualcomm Snapdragon 695 5Gである 15。

その他、関連性の高い競合製品としては、Snapdragon 4 Gen 2 27、Snapdragon 6 Gen 1 30、MediaTek Dimensity 6100+ 16、Dimensity 6300（実質的なリブランド/後継）10、Dimensity 7020 29、Dimensity 720 4、そしてユーザーコメントで価値/性能の文脈で比較されることが多いHelio G99 2 などが挙げられる。

B. 仕様比較 (Dimensity 6080 vs. Snapdragon 695)

  • プロセスノード: 共に6nm 9。
  • CPUコア: D6080 (2x A76 @ 2.4GHz + 6x A55 @ 2.0GHz) vs. SD695 (2x A78 @ 2.2GHz + 6x A55 @ 1.7-1.8GHz) 9。D6080の高いクロック周波数と、SD695の新しいパフォーマンスコアアーキテクチャが対照的である。
  • GPU: D6080 (Mali-G57 MC2 @ ~950-1068MHz) vs. SD695 (Adreno 619 @ ~840MHz) 9。同クラスだがアーキテクチャが異なる。
  • メモリ/ストレージ: 共に通常LPDDR4xとUFS 2.2をサポート 9。D6080は2レーンUFS 2.2の利点を主張 9。
  • 接続性: D6080 (Wi-Fi 5, BT 5.1) vs. SD695 (Wi-Fi 5, BT 5.2) 9。SD695がわずかに新しいBluetoothを搭載。5Gモデムは同等レベル（SD695はX51）15。
  • カメラISP: 共に最大108MPをサポート 9。
  • ビデオ性能: D6080は2K@30fpsが有力 1、一方SD695は1080p@60fpsの撮影/再生に制限される 35。2Kが確認されればD6080に利点がある。

C. ベンチマーク性能比較 (Dimensity 6080 vs. Snapdragon 695)

  • AnTuTu v10: 総合スコアは非常に近く、誤差の範囲内であることが多い。D6080の平均は約43.7万点 33、SD695の平均は約44.2万点 33。一部の比較ではD6080がわずかに上回り 14、他の比較ではSD695がわずかに上回る 33。コンポーネントスコアは変動し、SD695がCPUで高いことが多く、D6080がUXで高い可能性があり、GPU/メモリは非常に近い 33。
  • Geekbench 6: SD695は一貫して高いシングルコアスコア（約900 vs 約770）と、わずかに高いマルチコアスコア（約2100 vs 約2050）を示し、Cortex-A78の利点を反映している 15。
  • 3DMark Wild Life: スコアは非常に近く（SD695 ~1215 33, D6080 ~1331 33）、同等のGPU性能を示唆している。この差は実使用感において大きな違いとならない可能性がある。Sling Shot PhysicsではD6080がわずかに優位（約3800 vs 約3500）15 であり、これは特定のテストにおける高いCPUクロック周波数によるものと考えられる。

ベンチマーク結果は、異なるCPUアーキテクチャ（A76対A78）とGPUタイプ（Mali対Adreno）にもかかわらず、Dimensity 6080とSnapdragon 695の全体的なパフォーマンスレベルが、総合的に見て（AnTuTu、3DMark Wild Life）驚くほど類似していることを明らかにしている。しかし、根底にある強みは異なる。SD695は新しいコアによりCPU負荷の高いタスク（Geekbench）でリードする一方、D6080の高いクロック周波数は特定のシナリオ（例：Sling Shot Physics）や、潜在的にUXの応答性（33 でのAnTuTu UXスコアが高い）で優位に立つ可能性がある。この性能の同等性は、これら2つのSoCを搭載したデバイスの選択が、しばしば純粋な性能以外の要因、例えば特定の機能実装（カメラ、ディスプレイ）、ソフトウェア最適化、ブランドの好み、そして決定的に重要な価格/価値 33 によって決まることを意味する。どちらのチップが「優れている」かは状況に依存する。CPU負荷の高いユーザーにはSD695が好まれるかもしれない。予算を重視するユーザーにとっては、もし搭載スマートフォンがより安価であればD6080の方が良い価値を提供する可能性がある 33。ターゲット市場における日常的な使用において、性能差が劇的である可能性は低い。

表3: Dimensity 6080 vs. Snapdragon 695 5G – 仕様・ベンチマーク比較

機能/ベンチマークDimensity 6080Snapdragon 695 5G比較
プロセスTSMC 6nm6nm同等
CPU2x A76 @ 2.4GHz + 6x A55 @ 2.0GHz2x A78 @ 2.2GHz + 6x A55 @ 1.7-1.8GHzSD695: 新コア / D6080: 高クロック
GPUMali-G57 MC2 (~950-1068MHz)Adreno 619 (~840MHz)性能は同等レベル
メモリLPDDR4x @ 2133MHzLPDDR4x @ 2133MHz同等
ストレージUFS 2.2 (2-lane)UFS 2.2D6080: 2レーン主張
Wi-Fi / BTWi-Fi 5 / BT 5.1Wi-Fi 5 / BT 5.2SD695: 新しいBT
カメラ (最大)108MP108MP同等
ビデオ撮影2K@30fps (推定)1080p@60fpsD6080が優位か
AnTuTu v10 (総合)~437,000~442,000ほぼ同等
AnTuTu v10 (CPU)~131,000~147,000SD695 優位
AnTuTu v10 (GPU)~85,000~82,000ほぼ同等
Geekbench 6 (シングル)~770~910SD695 優位
Geekbench 6 (マルチ)~2050~2130SD695 やや優位
3DMark Wild Life~1331~1215ほぼ同等 (D6080僅かに優位)

注: スコアは平均値や代表値であり、デバイスやテスト条件によって変動する。

V. 実使用感とユーザーエクスペリエンス

A. ゲーミング性能

Dimensity 6080は、カジュアルから中程度のゲーミングには対応できるが、ハイエンド向けではないと位置づけられている。これはローワーミドルレンジというターゲットと一致する 2。MediaTek HyperEngine 3.0 Liteは、ゲーム体験の向上を目的としている 3。

  • 具体的なゲーム例:
  • Asphalt 9: (おそらく中設定で) 50-60 FPSでの動作が可能 6。
  • PUBG Mobile / BGMI: プレイ可能。多くの場合「スムーズ – ウルトラ」（通常40fpsを意味する）設定 46。高設定も可能かもしれないが、安定しない可能性がある 46。長時間のプレイでは発熱やカクつきが発生することがある 6。
  • Call of Duty: Mobile: プレイ可能。スムーズなフレームレートのためには低/中設定が推奨される 6。
  • 原神 (Genshin Impact): 低設定でプレイ可能だが、30 FPS程度で不安定、特に戦闘シーンなど負荷が高い場面で顕著 6。高設定でのプレイは現実的ではない 46。発熱も報告されている 6。
  • 崩壊：スターレイル (Honkai Star Rail): プレイ可能だが、安定性のためには低めの設定が必要となる可能性が高い。特に画面録画をしていない場合に安定する傾向 26。
  • Mobile Legends: Bang Bang: 良好に動作。あるユーザーによればウルトラグラフィックス/スーパーフレームレートでも問題なし 46。別の情報源もウルトラ設定が可能であることを示唆 33。
  • エミュレーション (例: PS2 – Gran Turismo 4): 1倍解像度とパッチ適用で動作可能。一部コースでは55-60fpsを維持できるが、鈴鹿サーキットのような要求の高いコースでは約45fps（80-85%速度）まで低下する 52。チップにはある程度の能力があるが、重いエミュレーションには限界があることを示している。
  • 発熱とスロットリング: 長時間ゲームセッション中の潜在的な問題として言及されており、安定性に影響を与える可能性がある 6。一部ユーザーは、時間の経過とともに著しいラグや発熱を報告しているが、体験にはばらつきがある 46。デバイスの冷却ソリューションが大きな役割を果たす（例：Tecno Pova 5 Proのベイパーチャンバー搭載 23）。

AnTuTu（約44万点）や3DMark Wild Life（約1300点）のようなベンチマークスコアはDimensity 6080をローワーミドルレンジに位置付けるが、実際のゲームプレイのフィードバックは、原神のような要求の厳しいタイトルでは低設定でもかなり苦戦することを示唆している 6。より軽いゲーム（Asphalt 9、Mobile Legends）は快適に動作し 6、中程度のゲーム（PUBG/CoD Mobile）は設定を下げればプレイ可能である 6。これは、合成ベンチマークが、グラフィックス負荷の高い現代的なタイトルにおける実用的なゲーミング能力を過大評価している可能性を示唆している。Mali-G57 MC2 GPUが主なボトルネックとなっているようである。ユーザーは期待値を適切に設定する必要がある。カジュアルゲーミングには良好、人気のある対戦型タイトルを低設定でプレイするには許容範囲だが、高忠実度のモバイルゲーミングには適していない。

B. 日常的な使用感

  • 一般的な応答性: 特に120Hzディスプレイと組み合わせることで、日常的なタスク（メール、メッセージング、SNS、ウェブブラウジング）はスムーズに処理できると期待される 9。MediaTekはアプリの切り替えや起動時間の短縮を主張している 9。
  • マルチタスク: オクタコアCPUと、デバイスに搭載されることが多い十分なRAM容量（6GB/8GB/12GBなど）28 により、一般的なマルチタスクには十分対応できるはずである。ただし、非常に重いマルチタスクシナリオでは、LPDDR4xメモリがLPDDR5と比較して制限要因となる可能性がある。
  • ユーザーフィードバック: スムーズな動作を報告するユーザーもいるが 22、一方で（特定のデバイスや長期間使用後に）YouTubeやInstagramのような基本的なタスクでもラグが発生すると報告するユーザーもおり、これはソフトウェア、RAM管理、または熱に関連する可能性がある 46。これは、デバイス固有の最適化とユーザーエクスペリエンスのばらつきの重要性を浮き彫りにしている。

C. 電力効率とバッテリーへの影響

  • 6nm製造プロセス: 電力効率とバッテリー寿命延長の重要な要因として繰り返し強調されている 3。
  • MediaTek 5G UltraSave: 5G使用時の消費電力を削減することを目的とした特定の技術 9。
  • 実使用への影響: 特定のデバイスでのバッテリーテストなしに定量化することは困難だが、6nmプロセスと省電力機能は、同等のバッテリー容量と使用パターンを仮定した場合、より効率の低いノードの旧世代チップと比較してバッテリー寿命にプラスに寄与するはずである。搭載デバイスはしばしば大容量バッテリー（例：5000mAh、6000mAh）を特徴としている 23。

D. デバイスレビューとユーザーフィードバックからの洞察

Reddit 22、YouTubeの要約 40、レビューサイト 3 などの情報源からのコメントを統合すると、以下のテーマが繰り返し現れる。

  • コストパフォーマンス: 価格に見合った価値がある 33。
  • 日常使用: 日常的な使用には十分 43。
  • ゲーミング: 可能だが限界がある 6。
  • 潜在的な問題: 持続的な負荷下や時間経過による発熱やラグの可能性 6。
  • RAM容量の重要性: RAMの量がパフォーマンスに影響する 46。
  • 最適化: Snapdragonの方が最適化されているという認識が一般的 46。

Dimensity 6080が手頃な価格のデバイスに搭載されていることは、書類上では強力な価値提案となっている 3。しかし、ユーザーからのフィードバックは、パフォーマンスとユーザーエクスペリエンスの一貫性に潜在的なばらつきがあることを明らかにしている。満足しているユーザーもいる一方で 22、ゲーム以外のタスクであっても、時間の経過とともに著しいラグや発熱の問題を報告するユーザーもいる 46。これは、チップ自体は適切に動作 できる ものの、実際の体験は特定のスマートフォンの実装（冷却、ソフトウェア最適化、RAM管理）に大きく依存し、時間経過やストレス下で劣化する可能性があることを示唆している。魅力的な価格設定は、一部のユーザー/デバイスにおいて、持続的なパフォーマンスやユーザーエクスペリエンスの一貫性に関する妥協を伴う可能性がある。したがって、購入者はDimensity 6080搭載の 特定のスマートフォンモデル のレビューを調査し、SoCの仕様だけに頼るべきではない。可能であれば長期的なレビューにも注意を払うことが賢明である。

VI. 搭載デバイス例

A. Dimensity 6080を搭載する主なスマートフォン

情報源に基づき、以下のスマートフォンがDimensity 6080を搭載している 2:

  • Xiaomi Redmi Note 13 5G
  • POCO X6 Neo 5G
  • Tecno Pova 6 Pro
  • Tecno Pova 5 Pro
  • Lava Storm 5G
  • Infinix Note 30 5G
  • Itel P55 5G
  • Honor 200 Lite
  • itel Color Pro 5G
  • OPPO A3m

これらのモデルは地域によって販売状況が異なる（例：インド、中国、その他の市場向け）3。

B. 搭載デバイスの共通の特徴

このチップを使用するデバイスには、大画面ディスプレイ（6.6～6.8インチ）と120Hzリフレッシュレート、大容量バッテリー（5000mAh以上）、108MPメインカメラ（チップの能力を活用）、そして手頃な価格/価値を重視する傾向が見られる 23。

VII. 総合評価

A. パフォーマンス概要

  • ベンチマーク: ローワーミドルレンジとして堅実なスコアを示し、概してSnapdragon 695と競合するレベル。日常タスクには良好なCPU性能を持つが、要求の厳しいゲームにはGPU性能が限定的。
  • 実使用感: 日常的な使用はスムーズ。カジュアルゲームは良好に動作するが、ハイエンドゲームには苦戦する。体験はデバイスの実装と最適化に大きく左右される。

B. 強み

  • 電力効率: TSMC 6nmプロセスにより、良好なバッテリー寿命が期待できる 9。
  • 価格帯に対する機能サポート: 手頃な価格のデバイスで120Hz FHD+ディスプレイや108MPカメラといった主要なミドルレンジ機能を実現 3。
  • 堅牢な5G接続性: クラスとしては強力なモデム機能（デュアル5G SA、2CC CA、VoNR）を備える 9。
  • コスト効率: メーカーが競争力のある価格の5Gスマートフォンを製造することを可能にする 3。成熟したDimensity 810設計のリフレッシュであることから恩恵を受けている可能性が高い。

C. 弱み

  • 旧世代のCPUアーキテクチャ: 古いCortex-A76コアを使用しており、Cortex-A78を採用する競合製品にIPCで劣る 1。
  • 中程度のGPU性能: Mali-G57 MC2は、要求の厳しい現代のゲームにとってボトルネックとなる 6。
  • 古い接続規格: Wi-Fi 5とBluetooth 5.1に限定される 1。
  • パフォーマンスの一貫性への懸念: ユーザーレポートは、デバイスの実装に依存して、持続的な負荷下や時間経過によるラグや発熱の可能性を示唆している 6。
  • 限定的なビデオ撮影: おそらく2K@30fpsに制限される（一部競合は4K対応）1。ただし、SD695はさらに限定的（1080p）35。

D. 市場での位置づけと価値提案

Dimensity 6080は、予算重視/ローワーミドルレンジの5Gセグメントにおける堅実な競争相手であり、Snapdragon 695や類似のチップと激しく競合している。その典型的な価格帯に対して、魅力的な機能セット（120Hz、108MP、効率的な6nmプロセス、良好な5G）を提供する。

その価値提案は、最終的なデバイス価格と、メーカーがパフォーマンスを最適化し、熱管理を効果的に行う能力に大きく依存する。Dimensity 810の系譜を引くため、メーカーにとっては安全で既知の選択肢となる。

本質的にはリフレッシュされたDimensity 810であり、現在ではDimensity 6300として再び後継/リブランドされている可能性があり 2、これはMediaTekのポートフォリオ内でのライフサイクル段階を示している。Dimensity 6080は、旧世代の実績ある設計（D810）を活用し、新しい命名規則の下で、予算重視の5G市場に望ましい機能（108MP、120Hz、6nm効率）をもたらす橋渡し役として機能している。D810との類似性、そしてほぼ同一のDimensity 6300の登場は 2、MediaTekがこの特定の6nmプラットフォームの有用性を複数の製品世代と価格帯にわたって最大化する戦略の一環であることを示唆している。これはおそらく、このセグメント向けには大幅なアーキテクチャ変更ではなく、マイナーな調整（D6300でのBTバージョンのような 10）やクロック速度に焦点を当てていることを意味する。Dimensity 6080はギャップを効果的に埋めるが、飛躍的な進歩というよりは漸進的な改善を代表するチップである。

引用文献

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  56. 鉄板スマホ！「Redmi Note 13 Pro 5G」開封レビュー！2024年ミッドレンジスマホの本命？グローバル発売開始！国内でも発売される？7＋ Gen2 搭載 POCO F5とベンチマーク対決 – YouTube, 4月 21, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=4UyJwkcKp6I
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