MediaTek社のDimensityシリーズは、5G対応スマートフォン向けシステムオンチップ(SoC)市場において、幅広い性能帯の製品ラインナップを提供しています。その中で、Dimensity 7030はミドルレンジ市場セグメントに位置づけられるSoCであり、2023年9月に発表されました 1。この発表時期は、競合製品との比較において重要な時間軸となります。
本レポートは、信頼性の高い日本語および英語のWebサイトから収集したベンチマークデータに基づき、MediaTek Dimensity 7030の技術仕様とその性能を詳細に分析することを目的とします。これにより、同SoCの市場におけるポジショニングと実用的な性能特性を明らかにします。
1. MediaTek Dimensity 7030: 技術仕様概要
Dimensity 7030の性能ポテンシャルを理解するためには、まずその公式なハードウェア仕様を把握することが不可欠です。以下に、主要な技術仕様を詳述します。
1.1 CPU構成とアーキテクチャ
Dimensity 7030は、8コア(オクタコア)構成のCPUを搭載しています。この構成は、高性能タスクを処理するための2つのARM Cortex-A78コア(パフォーマンスコア)と、電力効率を重視する6つのARM Cortex-A55コア(効率コア)から成り立っています 1。
クロック周波数については、パフォーマンスコアが最大2.5 GHz、効率コアが最大2.0 GHzで動作します 1。ただし、一部情報源 11 ではパフォーマンスコアのクロック周波数が2.6 GHzと記載されており、わずかな差異が見られますが、技術仕様を詳細に記述する複数の情報源では2.5 GHzが支配的です。この差異は、特定の製品実装におけるブースト挙動や、情報源による報告のばらつきの可能性を示唆します。
アーキテクチャとしては、ARMv8.2-A命令セットを採用しており 1、これは旧世代のARMv8アーキテクチャと比較して改良が加えられています。特に、先行するDimensity 920と比較した場合、CPUコアのクロック周波数は同等ながら、より近代的な命令セットを採用している点が特徴です 1。
この2+6コア構成(2つの高性能コアと6つの高効率コア)は、ミドルレンジSoCにおいて一般的な設計思想を反映しています。要求の厳しいタスク(ゲームの起動、重いアプリケーションの処理など)には高性能なCortex-A78コアを使用し、バックグラウンド処理や軽負荷なタスクには電力効率に優れたCortex-A55コアを使用することで、性能と消費電力のバランスを図っています。ARMv8.2-A命令セットの採用は、同クラスのSoC内での近代性を示唆しています。
1.2 GPU仕様
グラフィックス処理を担当する統合GPU(iGPU)には、ARM Mali-G610 MP3(MC3とも表記される)が採用されています 1。このGPUはValhallアーキテクチャ(第3世代 14)に基づいています。なお、一部情報源では異なるGPU(Mali-G57 MC2 11、Mali-G77 MC9 12、Mali-G68 17)が記載されていますが、技術的な情報源における圧倒的な整合性を考慮すると、これらは誤りである可能性が高いと考えられます。GPUのクロック周波数は1000 MHzと言及されていますが 6、GPUクロックは報告のばらつきが大きいため、参考値と捉えるのが妥当です。
Mali-G610 MP3は、最大144Hzの高リフレッシュレートディスプレイをサポートし、HDR10+ Adaptive、HLG、Dolby Visionといった最新のHDR規格にも対応しています 1。これにより、滑らかなUI操作や高品質なメディア再生体験が可能です。
しかし、「MP3」という名称が示すように、このGPUは3つのシェーダーコアで構成されています。これは、ミドルレンジGPUとしては標準的な構成ですが、ハイエンドGPU(例えばDimensity 8020に搭載されるMali-G77 MP9 6 など)と比較すると、コア数が少ないため、グラフィックス性能には限界があります。144Hzディスプレイを駆動する能力はありますが、要求の厳しい最新3Dゲームをネイティブ解像度かつ高画質設定で144fps(フレーム/秒)で安定して描画することは困難と考えられます。したがって、144Hzという高リフレッシュレートの恩恵は、主にUIのスクロールやアプリのアニメーションといった日常的な操作において感じられる可能性が高いでしょう。
1.3 製造プロセス
Dimensity 7030は、TSMCの6nmプロセス技術(N6ノード)を用いて製造されています 1。この6nmプロセスは、従来の7nmプロセスの改良版であり、より古いプロセスノード(例えばSnapdragon 480の8nm 8 やSnapdragon 855の7nm 16)と比較して、消費電力効率の向上や性能の向上が期待できます。
これにより、Dimensity 7030は、同じ6nmプロセスを採用する競合製品(Snapdragon 778GやDimensity 1080 7 など)と同等の製造プロセスレベルにあり、コストと効率のバランスが取れたミドルレンジSoCとしての位置づけを強化しています。一方で、ハイエンドチップに採用される最先端の4nmプロセス(Snapdragon 6 Gen 1 9 など)や5nmプロセス(Snapdragon 888 12 など)と比較すると、トランジスタ密度や電力効率の点で一歩譲ることになります。この製造プロセスは、Dimensity 7030がミドルレンジ市場において、コストパフォーマンスと電力効率を両立させるための戦略的な選択であることを示唆しています。
1.4 メモリ・ストレージ対応
メモリ(RAM)に関しては、Dimensity 7030は最新規格のLPDDR5と、広く普及しているLPDDR4xの両方をサポートしています 1。一部情報源 11 ではLPDDR4xのみ(最大8GB)と言及されていますが、これは不完全な情報である可能性が高いです。また、情報源 17 ではDimensity 7030がLPDDR4X、Snapdragon 778GがLPDDR5と誤って記載されていますが、他の情報源 14 ではSnapdragon 778GもLPDDR5をサポートしていると正しく記述されています。情報源 6 は、7030がLPDDR5を、8020がLPDDR4Xをサポートすると正しく記述しています。メモリ周波数は3200 MHz、バス幅は4x 16 Bitと報告されており 6、最大帯域幅については情報源により51.2 Gbit/s 14、34.13 GB/s 16、25.6GB/s 17 などばらつきが見られますが、LPDDR5の仕様からは51.2 Gbit/sが最も妥当と考えられます。
ストレージに関しては、高速なUFS 3.1規格と、より一般的なUFS 2.1/2.2規格の両方をサポートします 1。ここでも一部情報源 11 ではUFS 2.2のみの言及がありますが、これも不完全な情報でしょう。
LPDDR5 RAMとUFS 3.1ストレージのサポートは、ミドルレンジSoCとしては特筆すべき点です。これにより、LPDDR4xやUFS 2.x規格に限定されるシステムと比較して、アプリケーションの起動時間短縮、ファイル転送速度の向上、そしてよりスムーズなマルチタスク処理が可能になります。これは、フラッグシップに近いレベルのメモリ・ストレージ性能をミドルレンジにもたらし、全体的なユーザーエクスペリエンスを大幅に向上させる潜在力を持っています。
1.5 通信機能 (5G, Wi-Fi, Bluetooth)
Dimensity 7030は、統合された5Gモデムを搭載しており、Sub-6 GHz帯とミリ波(mmWave)帯の両方をサポートしています(ただし、実装や地域によってはSub-6 GHzが主となる可能性があります)。SA(スタンドアロン)およびNSA(ノンスタンドアロン)モードに対応し、Sub-6 GHz帯では3CC(3コンポーネントキャリア)のキャリアアグリゲーション(CA)をサポートし、MediaTekは最大4.6 Gbpsのダウンロード速度を主張しています 1。アップリンクに関しても2CC CAに対応します。ただし、一部情報源 12 ではより低い速度(下り最大2.77 Gbps / 上り最大1.25 Gbps)が報告されており、これは理論上の最大値ではなく、特定の条件下での速度や異なる規格に基づいている可能性があります。MediaTekは、FR1(Sub-6)とFR2(ミリ波)の同時接続や、独自のFAR(Fast, Accurate, Robust)ミリ波技術など、高度な5G機能もアピールしています 4。
Wi-Fiについては、最新規格の一つであるWi-Fi 6E(802.11ax)に対応しており、従来の2.4GHz帯、5GHz帯に加えて、新たに6GHz帯を利用できます 1。これにより、混雑の少ない周波数帯での高速かつ低遅延な通信が期待できます。
Bluetoothのバージョンは、5.2または5.3に対応しています 1。Motorola Edge 40 Neoの実装ではBluetooth 5.3が採用されています 10。一部情報源 11 では5.1と記載されていますが、これは古いか不正確な情報と考えられます。
その他、デュアルSIM 5G(両方のSIMスロットで5G待受が可能)に対応し 1、GPS、GLONASS、BeiDou、Galileo、QZSS、NavICといった主要な衛星測位システムをサポートしています 12。
Wi-Fi 6Eや包括的な5G機能(Sub-6 CAやミリ波対応の可能性を含む)の搭載は、ミドルレンジSoCとしては非常に競争力の高い接続性を提供します。特にWi-Fi 6Eは、対応ルーター環境下で将来にわたって快適な無線LAN環境を約束します。Bluetooth 5.3も最新の規格であり、全体として堅牢なコネクティビティスイートは、Dimensity 7030の大きな価値提案の一つと言えます。
1.6 AI処理ユニット (NPU)
Dimensity 7030は、MediaTek NPU 550(MediaTek APUとも呼ばれる)という専用のAI処理ユニット(Neural Processing Unit)を搭載しています 4。このNPUは、マルチタスクスケジューラを備え、標準的なINT8/16整数演算や、精度が要求されるタスク向けのFP16浮動小数点演算をネイティブに処理できます 4。
NPUの搭載により、AIに関連するタスクをCPUやGPUからオフロードし、効率的に処理することが可能になります。これは、現代のスマートフォンに不可欠な機能、特にコンピュテーショナルフォトグラフィにおいて重要です。例えば、低照度下での撮影時にAIによるノイズリダクションを適用することで、写真の品質を向上させる効果が期待できます 4。その他、音声アシスタントの応答性向上や、リアルタイム翻訳といった機能もサポートされます 3。
専用NPUの存在は、単なるCPU/GPUの性能指数だけでは測れない価値を提供します。特にミドルレンジ市場においてカメラ性能は重要な差別化要素であり、NPUによる画質向上への貢献は大きいと考えられます。その性能レベルはミドルレンジ向けに最適化されていると推測され、一般的なAI機能には十分対応可能ですが、フラッグシップSoCに搭載されるような高性能NPUと比較すると、大規模言語モデル(LLM)などの高度なオンデバイスAI処理能力には限界があるでしょう。
1.7 ディスプレイ・カメラ・マルチメディア機能
Dimensity 7030は、最大解像度2520 x 1080ピクセル(FHD+)で、最大144Hzのリフレッシュレートを持つディスプレイをサポートします 1。MediaTek独自のMiraVision 760技術により、表示品質の向上が図られており、コンテンツに応じてリフレッシュレートを動的に調整するIntelligent Display Sync機能や、10億色の表示が可能な10bitカラー深度にも対応しています 4。
カメラ機能の中核を担うイメージシグナルプロセッサ(ISP)は、MediaTek Imagiq 760です 4。このISPは、最大1億800万画素(108MP)のシングルカメラ、またはデュアルカメラ構成(例:16MP+16MP 11、20MP+20MP 14)をサポートします。なお、最大対応解像度については情報源により64MP 12 や108MP 4 といった記述がありますが、108MPがISPの理論上の最大対応能力を示すと考えられます。実際にMotorola Edge 40 Neoでは50MP+13MPの構成が採用されています 18。
動画機能としては、4K解像度(3840×2160)で毎秒30フレーム(30fps)の撮影、エンコード、デコードが可能です 11。また、ユニークな機能として、2つのカメラ(例えば、セルフィーカメラとリアカメラ、あるいは広角カメラと望遠カメラ)で同時にHDR動画を撮影できるデュアルHDRビデオキャプチャエンジンを搭載しています 4。HDR再生に関しても、HDR10+ Adaptive、HLG、Dolby Visionといった主要規格をサポートします 1。
ゲーミング体験向上のための技術として、MediaTek HyperEngine 5.0が搭載されています。これには、AIベースの可変レートシェーディング(AI-VRS)、前述のIntelligent Display Sync、そしてゲームサーバーへのネットワーク接続を最適化する機能などが含まれます 4。
全体として、Dimensity 7030のマルチメディア機能はミドルレンジとしては非常に充実しています。144HzのFHD+ディスプレイサポート、アダプティブシンク、HDR対応(MiraVision)は、プレミアムな視聴体験を提供します。Imagiq ISPによる高解像度センサーサポートや4K動画撮影、デュアルHDRキャプチャといった機能は、カメラ性能の基盤を固めますが、実際の画質は搭載されるセンサーやレンズ、そしてメーカーによるソフトウェアチューニングに大きく依存します。HyperEngine 5.0は、リソース管理やネットワーク最適化を通じてゲーミング体験を向上させることを目指しており、ミドルレンジのハードウェアの潜在能力を最大限に引き出す試みと言えます。ただし、4K動画撮影が30fpsに制限される点など、フラッグシップSoC(60fpsや8K対応など)と比較すると限界も見られます。
1.8 Dimensity 1050との関連性
複数のユーザーコメント 13 や仕様比較から、Dimensity 7030は、先行するDimensity 1050の事実上のリブランド(名称変更)製品である可能性が指摘されています。CPU構成(コアタイプ、クロック周波数)、GPU(Mali-G610 MP3)、製造プロセス(TSMC 6nm)、メモリ・ストレージ対応(LPDDR5/UFS 3.1)、接続性(Wi-Fi 6E、5G Sub-6/mmWave)といった主要な技術仕様を比較すると、両者には実質的な差異が見られません(1 の仕様とDimensity 1050の公称スペックを比較)。
この強い類似性は、Dimensity 7030がアーキテクチャ的にDimensity 1050から大きな進化を遂げたものではなく、MediaTekの製品ポートフォリオ内での再配置やリフレッシュであることを示唆しています。これは、Dimensity 7030の性能特性が、基本的にDimensity 1050によって確立されたものであり、そのパフォーマンス層で競合することを意味します。この背景を理解することは、「7000シリーズ」という名称から期待されるかもしれない性能(「1000シリーズ」よりも新しい世代という印象)を調整する上で重要です。既存の設計を流用することで、コスト効率を高め、市場投入までの時間を短縮する狙いがあったと考えられます。
Dimensity 7030 主要技術仕様一覧
特徴 | 仕様 | 主な情報源 |
CPU | 8コア: 2x ARM Cortex-A78 @ 2.5GHz + 6x ARM Cortex-A55 @ 2.0GHz, ARMv8.2-A | 1 |
GPU | ARM Mali-G610 MP3 (Valhall Architecture) | 1 |
製造プロセス | TSMC 6nm (N6) | 1 |
RAM対応 | LPDDR5, LPDDR4x | 1 |
ストレージ対応 | UFS 3.1, UFS 2.1/2.2 | 1 |
5Gモデム | Sub-6 GHz (3CC CA, 最大4.6Gbps DL) & mmWave (FAR tech), SA/NSA, Dual SIM 5G | 1 |
Wi-Fi | Wi-Fi 6E (802.11ax), Tri-band (2.4/5/6 GHz) | 1 |
Bluetooth | 5.2 / 5.3 | 1 |
NPU | MediaTek NPU 550 (APU) | 4 |
最大ディスプレイ対応 | 2520 x 1080 (FHD+), 144Hz リフレッシュレート, HDR10+ Adaptive, HLG, Dolby Vision, MiraVision 760 | 1 |
最大カメラ対応 | 108MP シングル, デュアルカメラサポート, Imagiq 760 ISP | 4 |
動画撮影 | 4K @ 30fps, Dual HDR Video Capture | 4 |
ゲーミング技術 | MediaTek HyperEngine 5.0 (AI-VRS, Intelligent Display Sync) | 4 |
2. 主要ベンチマークソフトウェア
スマートフォンの性能を客観的に評価し、異なるデバイス間で比較するためには、標準化されたベンチマークソフトウェアが広く用いられます。本レポートでは、ユーザーからの要求および収集されたデータに基づき、以下の主要なベンチマークソフトウェアの結果を分析対象とします。
2.1 AnTuTu Benchmark
AnTuTu Benchmarkは、スマートフォンの総合的なシステム性能を測定する、古くから広く利用されているベンチマークアプリの一つです 26。CPU、GPU、メモリ(RAM)、そしてユーザーエクスペリエンス(UX)の各項目をテストし、それらを総合したスコアを算出します 3。これにより、デバイス全体のパフォーマンスレベルを把握するための指標が得られます。
2.2 Geekbench (v5 & v6)
Geekbenchは、特にCPUの処理能力測定に焦点を当てたベンチマークツールです。プロセッサのシングルコア性能とマルチコア性能を個別に評価するスコアを提供します 1。シングルコアスコアは、一般的なアプリケーションの応答性や軽負荷時のパフォーマンスを反映しやすく、マルチコアスコアは、複数のタスクを同時に処理する能力や、高度に並列化されたアプリケーションの性能を示します。また、GPUの演算能力を測定するComputeテストも含まれています。Geekbenchの大きな特徴は、Android、iOS、Windows、macOS、Linuxなど、異なるプラットフォーム間でのスコア比較が可能な点です 27。最新バージョンのGeekbench 6では、背景ぼかし処理やテキスト処理など、より現実世界のユースケースを反映したテストが追加されています 27。
2.3 3DMark
3DMarkは、主にGPUのグラフィックス性能評価に特化したベンチマークソフトウェアであり、特にゲーミング性能を測る上で重要な指標となります 28。OpenGL ESやVulkanといったグラフィックスAPIを使用し、様々な負荷レベルのテスト(例えば、Wild Life、Sling Shotなど)を提供します 26。これにより、異なる世代や性能クラスのデバイスのグラフィックス描画能力を比較できます。近年では、リアルタイムレイトレーシング性能を測定するSolar Bayのようなテストも追加されていますが 31、これは対応する比較的新しいデバイス向けです。また、高負荷状態での性能持続性や安定性を評価するためのストレステスト機能も提供しています 31。
これらのベンチマークソフトウェアがそれぞれ何を測定しているのかを理解することは、得られたスコアを正しく解釈するために不可欠です。AnTuTuは全体像を、GeekbenchはCPU(およびGPU演算)性能を、3DMarkはグラフィックス/ゲーミング性能を重点的に評価します。単一のスコアに頼るのではなく、複数のベンチマーク結果を組み合わせることで、より多角的で信頼性の高い性能評価が可能になります。
3. MediaTek Dimensity 7030 ベンチマークスコア
収集されたベンチマークスコアを以下に示します。これらのスコアは、テスト環境、ソフトウェアのバージョン、測定対象デバイスの具体的な実装(メモリ容量、冷却性能など)によって変動する可能性がある点に留意が必要です。各スコアには、情報源となったサイト名を明記します。
3.1 AnTuTu Benchmark (v9/v10)
AnTuTu BenchmarkにおけるDimensity 7030のスコアは、バージョンや情報源によっていくつかの異なる値が報告されています。
- AnTuTu v9: Motorola Edge 40 Neo(12GB RAM)を用いたテストでは、CPUスコアとして135,392点が記録されています 1。これは総合スコアの一部であり、全体像を示すものではありません。
- AnTuTu (バージョン不明、v9または初期v10の可能性): 総合スコアとして526,856点が報告されています 3。また、Motorola Edge 40 Neoの実機スコアとして約52万点という記述もあります 18。
- AnTuTu v10: Nanoreview.netによると、総合スコアは540,999点であり、内訳はCPU: 167,252点、GPU: 92,992点、MEM (メモリ): 120,009点、UX: 160,746点とされています 13。
- AnTuTu v10 (矛盾する情報源): 一方、Bajajfinserv.inでは、AnTuTu 10の総合スコアを440,000点とし、内訳をCPU: 120,000点、GPU: 150,000点、MEM: 80,000点、UX: 90,000点としています 12。
これらの結果を比較すると、AnTuTu v10におけるスコアとして最も整合性が高いのは、54万点前後 13 であり、他の情報源 3 の52-53万点という範囲とも比較的近い値です。情報源 12 の44万点というスコアは、他の情報源との乖離が大きく、特にGPUスコア(9.3万点 vs 15万点)の差が顕著であるため、テスト方法の違い、バージョン解釈の誤り、あるいは単純なエラーの可能性が考えられます。
より信頼性が高いと考えられる54万点 13 の内訳を見ると、CPU(約16.7万点)とUX(約16万点)がスコアに大きく貢献していることがわかります。GPUスコア(約9.3万点)は、ミドルレンジSoCとしての性能を反映していると言えます。このスコアのばらつきは、AnTuTuスコアが絶対的な指標ではなく、相対的な比較に用いるべきであることを示唆しています。
3.2 Geekbench (v5.5 / v6)
Geekbenchのスコアは、バージョン間で比較的一貫性が見られますが、バージョン6はテスト内容の変更により、バージョン5.5よりも高いスコアが出る傾向にあります。
- Geekbench 5.5: Motorola Edge 40 Neo(12GB RAM)を用いたテストでは、シングルコアスコアが約789点、マルチコアスコアが約2197点と報告されています 1。
- Geekbench 6.4: Notebookcheck.netでは、シングルコアスコアが約893点、マルチコアスコアが約2214点と報告されています 2。
- Geekbench 6: Peicheng-qps.com 3 および Nanoreview.net 13 では、シングルコアスコアが1024点、マルチコアスコアが2412点と報告されています。また、Nanoreview.netはGPU Computeスコアとして1973点も挙げています 13。
Geekbench 6のスコアについて、情報源 2 (893/2214) と 3 (1024/2412) の間に若干の差異が見られます。これは、特定のデバイス(Edge 40 Neo)での測定結果 2 と、複数のデータソースを集約した平均値 13 の違いによる可能性があります。より代表的な値としては、Nanoreview.netのスコア(シングルコア1024点、マルチコア2412点)が考えられます。
シングルコアスコアが1000点を超える 3 ことは、Cortex-A78コアの性能を反映しており、ミドルレンジとしては良好な応答性を示唆します。マルチコアスコア(約2400点)は、2つの高性能コアと6つの高効率コアの組み合わせによる性能を反映しており、日常的なマルチタスクには十分ですが、より多くの高性能コアを持つ上位チップには及びません。GPU Computeスコア(1973点)は、3DMarkとは異なる側面からGPUの演算能力を示すデータポイントとなります。
3.3 3DMark
3DMarkのスコアに関しては、提供された情報内では、標準的なグラフィックステスト(Wild Lifeなど)の明確なスコアが不足しています。
- Sling Shot Extreme (ES 3.1) Unlimited Physics: Motorola Edge 40 Neoを用いたテストで、約4053点というスコアが一貫して報告されています 1。ただし、これは3DMark内のCPU物理演算テストのスコアであり、純粋なGPUレンダリング性能を示すものではありません。
- Wild Life / Wild Life Extreme (Vulkan): Dimensity 7030に関する具体的なスコアは、提供された情報内には見当たりませんでした。
- Solar Bay (Vulkan Ray Tracing): このテストは最新のレイトレーシング対応デバイス向けであり 31、Dimensity 7030のGPUクラスでは非対応か、スコアが低すぎて意味のある比較ができない可能性が高いです。
- その他のスコア: 情報源 13 のユーザーコメントには「2586点、15fps」という記述がありますが、どのテストを指すのか不明です(Wild Lifeの可能性も?)。情報源 12 は、テスト名を特定せずにグラフィックステスト4500点、総合スコア5000点、安定性90%と報告していますが、同情報源の他のデータの信頼性を考慮すると、この数値の正確性には疑問符が付きます。情報源 6 ではDimensity 8020との比較で劣るとされていますが、具体的なスコアはありません。
現状、提供された情報から得られる最も信頼性の高い3DMark関連スコアは、CPU性能を反映するSling Shot Extreme Physicsの約4053点のみです。標準的なグラフィックステスト(Wild Lifeなど)のスコアが不足しているため、これらの情報だけではGPUのゲーミング性能を定量的に評価することは困難です。このデータ不足は、Dimensity 7030のグラフィックス性能が特筆すべき点ではないためレビューで大きく取り上げられなかったか、あるいは単に提供された資料の範囲外であることを示唆している可能性があります。
Dimensity 7030 ベンチマークスコア概要
ベンチマーク | スコア | 主な情報源 | 備考 |
AnTuTu v10 (総合) | 540,999 (CPU: 167k, GPU: 93k, MEM: 120k, UX: 160k) | 13 | 52-53万点程度の報告もあり3。44万点(GPU 150k)という乖離した報告12もあるため注意。 |
Geekbench 6 (シングルコア) | 1024 | 3 | 893点という報告もあり2。 |
Geekbench 6 (マルチコア) | 2412 | 3 | 2214点という報告もあり2。 |
Geekbench 6 (GPU Compute) | 1973 | 13 | |
3DMark Sling Shot Ext. Physics | ~4053 | 1 | CPU物理演算テストのスコア。GPUグラフィックステストのスコアは情報不足。 |
4. Dimensity 7030搭載スマートフォンと実測データ
SoCの性能は、搭載されるデバイスの設計やソフトウェア最適化によっても影響を受けます。ここでは、Dimensity 7030を搭載する具体的なスマートフォン機種と、それらの実機におけるベンチマーク結果を確認します。
4.1 確認済み搭載機種
Dimensity 7030を搭載するスマートフォンとして、最も一貫して言及されているのはMotorola Edge 40 Neoです 1。このモデルは、日本を含むグローバル市場で販売されており 11、本レポートで参照するベンチマークデータの多くが、このデバイスで測定されたものと考えられます。
一方で、情報源 11 では、Realme Narzo 50、POCO M4 Pro、OPPO A77、vivo Y76 5G、Redmi Note 11 Proといった複数のモデルもDimensity 7030を搭載しているとリストアップされています。しかし、これらのモデルは、一般的に異なるSoC(例:Narzo 50はHelio G96、Poco M4 ProはHelio G96またはDimensity 810など)を搭載していることが知られており、この情報源 11 のデバイスリストに関する記述は極めて疑わしく、不正確である可能性が高いと判断されます。したがって、これらのモデルに関する情報は本レポートの分析からは除外します。
その他、情報源 11 の価格リストには、Motorola Edge 2023(米国モデル)やHONOR Play 8T ProもDimensity 7030搭載として記載されていますが、これらについても追加の検証が必要です。特にHONOR Play 8T Proは通常Dimensity 6080を搭載すると考えられています。
現状では、Motorola Edge 40 NeoがDimensity 7030を搭載する主要かつ広く確認されているデバイスであると言えます。他のメーカーからの採用が(現時点では)限定的である可能性を示唆しています。
4.2 実機でのベンチマーク結果
Motorola Edge 40 Neoの実機で測定されたベンチマーク結果は以下の通りです。
- Motorola Edge 40 Neo (12GB RAM): Geekbench 5.5 シングルコア 約789点、マルチコア 約2197点。AnTuTu v9 CPUスコア 135,392点。3DMark Sling Shot Extreme Physics 約4053点 1。
- Motorola Edge 40 Neo (RAM容量不明): AnTuTu 総合スコア 約52万点 18。
これらの実機スコアは、前述のDimensity 7030の一般的なSoCスコア(セクション3で議論)と非常によく一致しています。例えば、Geekbench 5.5のスコアや3DMark SSE Physicsスコアはほぼ同一であり、AnTuTuスコアも52万点〜54万点の範囲内に収まっています。
これは、Motorola Edge 40 NeoがDimensity 7030の性能を代表的な形で引き出しており、テストにおいて顕著なサーマルスロットリング(熱による性能低下)や人為的なスコアの嵩上げが見られない、標準的な実装であることを示唆しています。したがって、Edge 40 Neoのデータは、Dimensity 7030の一般的な性能レベルを評価する上で信頼できる基準となり得ます。
5. 競合プロセッサとの性能比較
Dimensity 7030の性能を市場において正しく位置づけるためには、同クラスの競合プロセッサとの比較が不可欠です。ベンチマークスコアや仕様に基づき、主要な競合製品との比較分析を行います。
5.1 比較対象
Dimensity 7030の比較対象として、以下のミドルレンジSoCが挙げられます。これらは、ベンチマークデータや市場でのポジショニングから選定されました。
- Qualcomm Snapdragon 778G / 778G+ 5G: Dimensity 7030と同様に6nmプロセスで製造され、ミドルレンジ市場で広く採用されているため、直接的な比較対象となります 7。
- Qualcomm Snapdragon 7s Gen 2: より新しい世代のSnapdragonミドルレンジSoCで、4nmプロセスを採用しています 2。
- Qualcomm Snapdragon 6 Gen 1: Snapdragon 7s Gen 2より下位に位置づけられる4nmプロセスのミドルレンジSoCです 2。
- Qualcomm Snapdragon 695 5G: Dimensity 7030登場以前に人気のあったミドルレンジSoCであり、性能比較の基準となります 2。
- Qualcomm Snapdragon 855 / 865 / 888: 旧世代のフラッグシップSoCですが、性能比較のベンチマークとして参照されます 2。
- MediaTek Dimensity 1080 / 7050: Dimensity 7030と同じMediaTek製の6nmプロセスSoCであり、性能が近いと予想されます(Dimensity 7050は1080のリブランドとされることが多い)2。
- MediaTek Dimensity 8020 / 7200: Dimensity 7030よりも上位に位置づけられるMediaTek製ミドルレンジSoCです 2。
- Samsung Exynos 1380: Samsung製のミドルレンジSoCで、5nmプロセスを採用しています 2。
5.2 ベンチマークスコア比較
各競合プロセッサとDimensity 7030のベンチマークスコアを比較します。
- vs Snapdragon 778G: Geekbench 6では、Dimensity 7030がシングルコアでわずかに優位 (+1%) ですが、マルチコア (-18%) とGPU Compute (-19%) ではSnapdragon 778Gが上回ります 14。AnTuTu 10スコアもSnapdragon 778Gが約10%高い結果です 14。Snapdragon 778Gは浮動小数点演算性能が高く、ISPのカメラ対応解像度も高いです 14。一方で、Dimensity 7030はGPUクロック周波数が高い(1000 MHz vs 550 MHz)ものの、シェーダー数が少なく(192 vs 512)、結果として理論演算性能(FLOPS)では劣ります 14。メモリ帯域幅については情報源により記述が異なりますが 14、両者ともLPDDR5をサポートします。3DMark Sling Shot Extreme Physicsスコアでは、Dimensity 7030 (4053) に対しSnapdragon 778G (平均4710) が優位です 7。総じて、Snapdragon 778Gが特にマルチコアCPUとGPU性能でやや優位ですが、Dimensity 7030はシングルコア性能で拮抗し、Wi-Fi 6Eなどの機能面でアドバンテージを持つ場合があります。ユーザー投票ではDimensity 7030がわずかに好まれる傾向も見られます 14。情報源 17 は、778Gがゲーミングやマルチメディアに優れ、7030は電力効率に焦点を当てていると評価しています。
- vs Snapdragon 7s Gen 2: Geekbench 6スコアでは、Dimensity 7030はシングルコアで約10%、マルチコアで約21%下回ります 15。3DMark SSE PhysicsスコアはDimensity 7030 (4053) に対しSnapdragon 7s Gen 2 (4113) と僅差ですが 2、CPU性能ではSnapdragon 7s Gen 2が明確に優位であると考えられます。
- vs Snapdragon 6 Gen 1: Geekbench 5.5の比較では、Dimensity 7030がシングルコアで優位、マルチコアでわずかに劣る可能性がありますが、データが限定的です 9。3DMark SSE PhysicsスコアではDimensity 7030 (4053) に対しSnapdragon 6 Gen 1 (4354) と、Snapdragon 6 Gen 1がやや優位です 2。全体として同等か、ややSnapdragon 6 Gen 1が優位な性能レベルにある可能性があります。
- vs Snapdragon 695: Dimensity 7030はSnapdragon 695に対して、ベンチマークスコアで大幅に(103.86%優位との主張あり 22)上回ります。CPUクロック、GPU性能(Mali-G610 MP3 vs Adreno 619)、Wi-Fi規格(Wi-Fi 6E vs Wi-Fi 5)などで優位性があります 22。ただし、Snapdragon 695はバッテリー効率の点で評価が高いとされています 22。
- vs Dimensity 1080 / 7050: Dimensity 1080はCPUの高性能コアクロックがわずかに高く(2.6 GHz vs 2.5 GHz)、GPUもMali-G68 MC4(4コア)を搭載しており、Dimensity 7030のMali-G610 MP3(3コア)よりも強力です 7。3DMark SSE PhysicsスコアでもDimensity 1080 (平均4229) がDimensity 7030 (4053) を上回っており 7、全体的にDimensity 1080/7050が、特にGPU性能においてDimensity 7030をわずかに上回ると考えられます。
- vs Dimensity 8020: Dimensity 8020は、CPU構成(4x A78 @ 2.6GHz vs 2x A78 @ 2.5GHz)、GPU(Mali-G77 MP9 vs G610 MP3)ともにDimensity 7030より大幅に強力であり、各種ベンチマークスコアでも大差をつけています 6。
- vs Snapdragon 888: 旧フラッグシップであるSnapdragon 888は、AnTuTuスコア(75万点 vs 54万点)、Geekbench、3DMarkのいずれにおいてもDimensity 7030を圧倒します 12。
- vs Snapdragon 855: さらに古いフラッグシップであるSnapdragon 855と比較しても、Dimensity 7030はAnTuTu 10スコア(54万点 vs 61万点)、Geekbench 6マルチコア(2412 vs 2834)、GPU Compute(1973 vs 2257)で下回りますが、Geekbench 6シングルコア(1024 vs 930)では上回るという、項目によって優劣が入れ替わる結果となります 16。Dimensity 7030は製造プロセス(6nm vs 7nm)やGPUクロックで優位ですが、Snapdragon 855はシェーダー数やメモリ帯域幅で大きく勝ります 16。
これらの比較から、Dimensity 7030はミドルレンジ市場において確固たる地位を占めていることがわかります。Snapdragon 695のような旧世代ミドルレンジは明確に上回りますが、Snapdragon 778GやDimensity 1080/7050といった同世代の競合とは拮抗しており、総合的なベンチマークスコア、特にマルチコアCPUやGPU性能ではわずかに後塵を拝する場面も見られます。Snapdragon 7s Gen 2やDimensity 8020/7200といった新しい、あるいは上位のミドルレンジチップには及ばず、旧世代フラッグシップ(Snapdragon 888)との間には依然として大きな性能差があります。最も近い競合はSnapdragon 778Gであり、性能面では778Gがやや優位な傾向ですが、Dimensity 7030はWi-Fi 6E対応などの機能面や、電力効率(主張ベース)で差別化を図っていると考えられます。Dimensity 1050のリブランドであるという説を考慮すると、その性能ポジショニングは妥当なものと言えます。
Dimensity 7030 vs 競合プロセッサ ベンチマーク比較
プロセッサ | 主要スペック (プロセス, CPU, GPU) | AnTuTu v10 (総合) | Geekbench 6 (SC/MC) | 3DMark SSE Physics |
MediaTek Dimensity 7030 | 6nm, 2xA78@2.5+6xA55@2.0, Mali-G610 MP3 | ~541,000 | ~1024 / ~2412 | ~4053 |
Qualcomm Snapdragon 778G | 6nm, 1xA78@2.4+3xA78@2.4+4xA55@1.8, Adreno 642L | ~598,000 | ~1017 / ~2841 | ~4710 (avg) |
Qualcomm Snapdragon 7s Gen 2 | 4nm, 4xA78@2.4+4xA55@1.95, Adreno 710 | (データなし) | ~983 / ~2800 (avg) | ~4113 |
MediaTek Dimensity 1080/7050 | 6nm, 2xA78@2.6+6xA55@2.0, Mali-G68 MC4 | ~530,000 (D1080) | (データなし) | ~4229 (avg D1080) |
注: スコアは代表的な値であり、情報源や測定条件により変動します。AnTuTu/Geekbenchスコアは主に 13、3DMarkスコアは 1 を参照。Snapdragon 7s Gen 2のAnTuTu、Dimensity 1080/7050のGeekbench 6スコアは提供情報内になし。
6. 性能評価分析
これまでに収集した技術仕様とベンチマークデータに基づき、Dimensity 7030の性能特性をより深く分析し、実際の使用感への影響を評価します。
6.1 CPU処理能力
Dimensity 7030のCPUは、2つの高性能Cortex-A78コア(最大2.5GHz)と6つの高効率Cortex-A55コア(最大2.0GHz)の組み合わせにより、ミドルレンジとして堅実な処理能力を提供します。Geekbench 6のスコア(シングルコア約1024点、マルチコア約2412点 3)が示すように、シングルスレッド性能は良好であり、これはウェブブラウジング、SNSの利用、アプリの起動といった日常的なタスクにおける体感的な応答性の良さに繋がります。マルチスレッド性能も、複数のアプリを同時に利用するような一般的なマルチタスクには十分対応可能です。
Snapdragon 778Gと比較すると、シングルコア性能では拮抗していますが、マルチコア性能ではやや劣る傾向が見られます 14。これは、Snapdragon 778Gが高性能コアを4つ搭載している構成(情報源により1+3または4+4と記述あり)に起因する可能性があります。
全体として、Dimensity 7030のCPU性能は、ターゲットとするミドルレンジ市場のユーザーにとって十分なレベルにあり、一般的なスマートフォンの利用シナリオにおいてボトルネックとなる可能性は低いと考えられます。スムーズなUI操作や快適なアプリケーション利用体験を提供する基盤となっています。
6.2 GPUグラフィック性能 (ゲーミング適性)
GPU性能は、Dimensity 7030において、ハイエンド志向のユーザーにとっては制限要因となる可能性があります。搭載されているMali-G610 MP3は、3つのシェーダーコアを持つミドルレンジGPUであり、その性能は競合するSnapdragon 778GのAdreno 642L 14 やDimensity 1080のMali-G68 MC4 7 と比較して、同等かやや劣る水準にあると考えられます。提供された情報内では、標準的な3DMarkグラフィックステスト(Wild Lifeなど)のスコアが乏しく、これはGPU性能が突出していないことを間接的に示唆している可能性があります。
Dimensity 7030は最大144Hzの高リフレッシュレートディスプレイをサポートしますが 1、GPUの描画能力を考慮すると、要求の厳しい最新3Dゲーム(例:Genshin Impact)を高画質設定で144fpsのような高いフレームレートで安定して動作させることは難しいでしょう。カジュアルゲームや、グラフィック設定を中程度に調整したゲームであれば、快適なプレイ(30fps〜60fps目標)が期待できます。MediaTek HyperEngine 5.0 4 といったゲーミング最適化技術は、限られたハードウェアリソースを効率的に活用し、体感的なパフォーマンスを向上させる助けにはなりますが、根本的なGPU性能の限界を覆すものではありません。情報源 17 がSnapdragon 778Gの方がゲーミングに適していると指摘している点は、この評価を裏付けています。情報源 5 の「ほぼ全てのゲームをプレイ可能」という主張は、画質設定を調整すれば可能という意味合いで捉えるべきでしょう。
結論として、Dimensity 7030はカジュアルからミドルコアレベルのゲーミングには十分対応可能ですが、最高のグラフィック設定や最高のフレームレートを要求するヘビーゲーマーにとっては、より高性能なGPUを搭載したSoCが適しています。144Hzディスプレイの恩恵は、主にUIの滑らかさや対応する軽負荷コンテンツで発揮されると考えられます。
6.3 AI性能
Dimensity 7030は、専用のAI処理ユニットであるMediaTek NPU 550 (APU) を搭載している点が特徴です 4。これにより、AI関連の処理をCPUやGPUに負荷をかけることなく、効率的に実行できます。
このNPUの恩恵が最も顕著に現れるのは、カメラ機能と考えられます。特に、AIを活用した低照度下でのノイズリダクション 4 は、センサーの物理的な性能だけでは得られない画質向上をもたらす可能性があります。これは、カメラ性能が重視されるミドルレンジスマートフォンにおいて、大きな付加価値となります。その他、音声アシスタントの処理やリアルタイム翻訳といった機能のパフォーマンス向上にも寄与します 3。
提供された情報内にはNPU自体のベンチマークスコアはありませんが、専用ハードウェアの搭載は、バックグラウンドで動作する様々なAI機能(シーン認識、画質調整など)を効率的に処理し、全体的なユーザーエクスペリエンスを向上させる上で重要です。その性能レベルはミドルレンジ向けに最適化されており、一般的なAI機能には十分ですが、フラッグシップクラスのNPUが担うような高度なオンデバイスAI処理には限界があると考えられます。
6.4 電力効率と発熱傾向 (情報があれば)
Dimensity 7030はTSMCの6nmプロセスで製造されており、これは一般的に良好な電力効率を提供します 1。MediaTek自身も「卓越した電力効率」を謳っており 4、HyperEngine 5.0によるゲーミング時の電力効率改善もアピールしています 4。また、いくつかの比較記事では、Dimensity 7030が電力効率に焦点を当てていると示唆されています 17。
一方で、情報源 22 は、特に電力効率に定評のあるSnapdragon 695と比較した場合、高負荷時にはDimensity 7030の方がバッテリー消費が大きい可能性があるというユーザーコメントに言及しています。情報源 1 にはMotorola Edge 40 Neoのアイドル時(1.2W)やGeekbench実行時(8.2W)の消費電力データがありますが、比較対象がないため評価は困難です。発熱に関しては、情報源 13 のユーザーコメントでゲーミング時にあまり熱くならないとの記述がありますが、これも限定的な情報です。
総合的に見ると、6nmプロセスとCortex-A55効率コアの採用により、日常的な軽負荷〜中負荷の利用においては良好な電力効率が期待できます。しかし、高性能なCortex-A78コアとGPUがフル稼働するような高負荷状態(長時間のゲームプレイなど)では、相応の電力消費と発熱が発生する可能性があります。Snapdragon 695との比較 22 からは、Dimensity 7030が絶対的な電力効率よりも、ある程度の性能を確保することとのバランスを取っている可能性が示唆されます。ユーザーコメント 13 は良好な熱管理を示唆していますが、最終的なバッテリー持続時間や発熱は、デバイスのバッテリー容量、ディスプレイ設定、冷却設計、ソフトウェア最適化といった実装に大きく左右されます。
6.5 総合的な性能と市場での位置づけ
Dimensity 7030は、ミドルレンジ市場において非常にバランスの取れた機能セットを提供するSoCです。その強みは、Wi-Fi 6Eや包括的な5G対応といった最新の接続性、144Hzの高リフレッシュレートディスプレイ対応、LPDDR5 RAMとUFS 3.1ストレージという高速なメモリ・ストレージ規格への対応、そして専用NPUによるAI機能の強化にあります。CPU性能もクラス相応に堅実です。
一方で、主な潜在的弱点はGPU性能であり、日常利用やカジュアルゲームには十分ですが、クラス最高レベルとは言えず、ゲーミング性能を最優先するユーザーには物足りない可能性があります。また、Dimensity 1050のリブランドである可能性が高いという点は、最新のアーキテクチャを求めるユーザーにとってはマイナス要素かもしれませんが、実績のある設計をコスト効率よく活用しているとも言えます。
市場におけるポジショニングとしては、Snapdragon 778G、Snapdragon 7s Gen 2、Dimensity 1080/7050といったSoCと競合します。現時点ではMotorola Edge 40 Neo(および可能性としてEdge 2023)での採用が主であり、他のメーカーへの普及は限定的です。Dimensity 7030は、性能、最新機能、そして(6nmプロセスと既存設計流用による)コスト効率のバランスを提供することで、魅力的な選択肢となり得ます。特に、接続性やディスプレイの滑らかさ、全体的な応答性を重視しつつ、最高レベルのゲーミング性能は求めないユーザー層に適していると言えるでしょう。その市場での成功は、搭載デバイスの価格設定と、カメラISPやNPUといった特徴をメーカーがどれだけうまく活用できるかにかかっています。
7. 総括
MediaTek Dimensity 7030は、TSMCの6nmプロセスで製造されたミドルレンジ向けの5G対応SoCです。CPUは2つのARM Cortex-A78パフォーマンスコア(最大2.5GHz)と6つのARM Cortex-A55効率コア(最大2.0GHz)で構成され、GPUにはARM Mali-G610 MP3が搭載されています。
性能面では、CPUはミドルレンジとして十分な処理能力を持ち、日常的な操作や一般的なアプリケーションを快適に動作させます。GPU性能はカジュアルからミドルコアレベルのゲームには対応可能ですが、高負荷なゲームを高画質・高フレームレートでプレイするには限界があります。一方で、Wi-Fi 6Eや包括的な5G(Sub-6/mmWave対応、キャリアアグリゲーション)といった最新の通信機能、LPDDR5 RAMとUFS 3.1ストレージへの対応、最大144HzのFHD+ディスプレイサポート、そして専用NPU(MediaTek NPU 550)によるAI機能(特にカメラ画質向上)の強化といった、充実した機能セットが大きな特徴です。
ベンチマークスコア(AnTuTu v10で約54万点、Geekbench 6でシングルコア約1024点、マルチコア約2412点)は、ミドルレンジ市場において競争力のあるレベルを示しており、特にSnapdragon 778GやDimensity 1080/7050といったSoCと性能的に近い位置にあります。ただし、これらの競合製品に対して、項目によってはわずかに劣る場合も見られます。
Dimensity 7030は、先行するDimensity 1050のリブランドである可能性が高く、これは実績のある設計に基づいていることを意味します。Motorola Edge 40 Neoなどの搭載デバイスにおいて、Dimensity 7030は、突出したピーク性能よりも、最新機能とバランスの取れたパフォーマンスを重視するユーザーにとって、魅力的な選択肢を提供するSoCと言えるでしょう。
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