MediaTek Dimensity 7200 ベンチマークまとめ

CPU・SoC

2025.04.22

1. はじめに

本レポートは、MediaTek Dimensity 7200 システムオンチップ（SoC）の性能を、公開されているベンチマークスコアおよび競合製品との比較を通じて詳細に分析することを目的とします。調査対象は主に日本語および英語の技術レビューサイト、ガジェット関連ブログ、ニュースサイトとし、客観的なデータに基づき、Dimensity 7200の技術的特徴、パフォーマンスレベル、および市場における位置付けを明らかにします。特に、AnTuTu Benchmark、Geekbench、3DMarkといった主要なベンチマークテストの結果を中心に分析を進めます。

2. MediaTek Dimensity 7200 公式スペックと技術的特徴

MediaTek Dimensity 7200は、ミドルレンジからアッパーミドルレンジのスマートフォン市場をターゲットとした5G対応SoCであり、その技術仕様は現代のモバイルコンピューティングにおける要求を満たすよう設計されています ¹。

2.1. 主要スペック

Dimensity 7200の主要な技術仕様は以下の通りです。

仕様項目	詳細	出典
製造プロセス	TSMC 第2世代 4nm プロセス (N4P)	¹
CPU	オクタコア構成: <br/> – 2x Arm Cortex-A715 @ 最大 2.8GHz <br/> – 6x Arm Cortex-A510 @ 2.0GHz	³
GPU	Arm Mali-G610 MC4	³
AIプロセッサ	MediaTek APU 650 (第5世代NPU)	²
メモリサポート	LPDDR5 / LPDDR4x、最大周波数 6400Mbps	³
ストレージサポート	UFS 3.1	³
ディスプレイサポート	最大 Full HD+ @ 144Hz、HDR10+, Dolby HDR, CUVA HDR 対応	¹
カメラISP	MediaTek Imagiq 765 (14-bit HDR-ISP)、最大 200MP カメラサポート、4K HDRビデオ撮影対応	¹
5Gモデム	3GPP Release-16準拠、Sub-6GHz対応、最大ダウンリンク速度 4.7Gbps	¹
Wi-Fi	Wi-Fi 6E (802.11ax)、2×2 アンテナ	¹
Bluetooth	Bluetooth 5.3	³
その他	MediaTek HyperEngine 5.0、AI-VRS、MediaTek 5G UltraSave 2.0	¹

2.2. 技術的特徴

Dimensity 7200の特筆すべき技術的特徴は、TSMCの先進的な第2世代4nmプロセス（N4P）を採用している点です。これは、同社のフラッグシップSoCであるDimensity 9200にも用いられているプロセスであり、ミドルレンジSoCとしては異例の採用と言えます ¹。この微細プロセスは、電力効率とパフォーマンスの両立に大きく貢献します ⁵。

CPUには、最新のArmv9アーキテクチャを採用したCortex-A715（高性能コア）とCortex-A510（高効率コア）を搭載しています ²。これにより、従来のArmv8ベースのコア（例: Cortex-A78/A55）と比較して、性能向上と効率改善が期待されます ⁵。特に、2つの高性能コアを最大 2.8GHz で駆動させる構成は、応答性の高い動作と効率的なマルチタスク処理を実現します ³。

GPUにはArm Mali-G610 MC4を採用しており、ミドルレンジとしては強力なグラフィックス性能を提供します。MediaTek HyperEngine 5.0ゲーミングテクノロジーとの組み合わせにより、AIベースの可変レートシェーディング（AI-VRS）による電力削減や、最適化されたネットワーク接続、低遅延のワイヤレスオーディオなどがサポートされ、ゲーム体験の向上が図られています ¹。

カメラ機能も強化されており、Imagiq 765 ISPは最大 200MP のセンサーをサポートし、4K HDRビデオ撮影や、2つのカメラからの同時フルHDビデオ録画が可能です ³。AI処理ユニットであるAPU 650は、リアルタイムポートレート補正などのAIカメラ機能を実現します ³。

2.3. Dimensity 7200 Ultra / Pro バリアントについて

市場には「Dimensity 7200-Ultra」や「Dimensity 7200 Pro」といった名称のSoCを搭載したデバイスも存在します ²。これらのバリアントは、基本的なCPU、GPU、製造プロセスなどのコア仕様においては、標準のDimensity 7200と同一です ²。UltraやProといった名称は、特定のスマートフォンメーカー（例: Xiaomi、Nothing）とのパートナーシップに基づき、ISPのカスタマイズや特定の機能（例: ファイル転送速度の改善）の最適化が施されていることを示す場合が多いと考えられます ²。ベンチマークスコアに若干の差が見られることもありますが、これはチップ自体の根本的な性能差というよりは、デバイス側の冷却設計やソフトウェア最適化、あるいは特定の機能強化に起因する可能性が高いです ⁷。

3. 主要スマートフォンベンチマークテスト概要

スマートフォンの性能を客観的に評価するために、いくつかの標準的なベンチマークテストが広く利用されています。本レポートでは、以下の主要なテストに焦点を当てます。

AnTuTu Benchmark: CPU、GPU、メモリ（RAMおよびストレージ）、UX（ユーザーエクスペリエンス）の性能を総合的に測定し、トータルスコアを算出します。スマートフォンの全体的なパフォーマンスを示す指標として広く参照されます ¹⁰。
Geekbench: 主にCPUの性能を測定するテストです。シングルコア性能（単一タスクの処理速度）とマルチコア性能（複数タスクの並列処理能力）を個別に評価します。また、GPUの演算性能（Compute Score）も測定可能です ⁴。
3DMark: GPUのグラフィックス性能を測定することに特化したベンチマークです。特に「Wild Life」や「Wild Life Extreme」テストは、最新のモバイルゲームにおける描画負荷をシミュレートし、フレームレート（FPS）やスコア、ストレステストにおける性能維持率（Stability）などを評価します ⁴。

これらのベンチマークスコアは、デバイスの絶対的な性能を示すだけでなく、異なるSoCやスマートフォン間の性能比較を行う上で重要な指標となります。

4. MediaTek Dimensity 7200 ベンチマークパフォーマンス

Dimensity 7200を搭載した実際のスマートフォンにおけるベンチマークテストの結果を、複数の情報源から収集・分析しました。

4.1. AnTuTu Benchmark v10 スコア

AnTuTu v10におけるDimensity 7200のスコアは、概ね70万点台前半から中盤で観測されています。

総合スコア:

約 718,576点 (nanoreview.net集計平均) ⁴
728,534点 (iQOO Z9 5G, 91mobiles) ²
718,245点 (Nothing Phone (2a), nanoreview.net) ⁴
708,424点 (Nothing Phone (2a), Beebom) ¹⁰
727,120点 (Vivo V27, nanoreview.net) ⁴
716,511点 (Vivo T3 5G, nanoreview.net) ⁴
685,052点 (Vivo T4X, 91mobiles) ¹² – 注: この機種はDimensity 7300搭載の可能性あり
715,922点 (Vivo T3, 91mobiles) ¹²
スコア内訳 (例: iQOO Z9 5G, 91mobiles) ²:

CPU: 240,090点
GPU: 176,074点
Memory: 126,934点
UX: 185,436点
スコア内訳 (例: nanoreview.net集計平均) ⁴:

CPU: 234,910点
GPU: 183,564点
Memory: 128,651点
UX: 171,451点

これらのスコアは、Dimensity 7200がミドルレンジ上位からアッパーミドルレンジに位置する性能を持つことを示唆しています。特にUXスコアが17万点を超えている点は、日常的な操作における快適性の高さを裏付けています ⁴。

4.2. Geekbench 6 スコア

Geekbench 6では、CPUのシングルコアおよびマルチコア性能が評価されます。

シングルコアスコア:

1187点 (nanoreview.net) ⁴
1190点 (iQOO Z9 5G, 91mobiles) ²
1114点 (Nothing Phone (2a), Beebom) ¹⁰
1177点 (Vivo T3, 91mobiles) ¹²
マルチコアスコア:

2643点 (nanoreview.net) ⁴
2681点 (iQOO Z9 5G, 91mobiles) ²
2561点 (Nothing Phone (2a), Beebom) ¹⁰
2646点 (Vivo T3, 91mobiles) ¹²
GPU Compute Score:
3549点 (nanoreview.net) ⁴

シングルコアスコアは約1100点台後半、マルチコアスコアは約2600点台となっており、最新のArmv9コアの性能が反映されています。特にシングルコア性能は、応答性に関わるため重要です。

4.3. 3DMark Wild Life スコア

GPU性能を測る3DMark Wild Lifeテストの結果は以下の通りです。

Wild Life スコア:

4166点 (nanoreview.net) ⁴
4130点 (Nothing Phone (2a), Best Loop Score, Beebom) ¹⁰
Wild Life Stability (安定性):

99% (nanoreview.net) ⁴
99.2% (Nothing Phone (2a), Beebom) ¹⁰
Wild Life Graphics Test (平均FPS):
24 FPS (nanoreview.net) ⁴

スコア約4100点台、安定性99%以上という結果は、Dimensity 7200のMali-G610 MC4 GPUが、ミドルレンジSoCとしては優れたグラフィックス性能と、高負荷時でも性能を維持できる安定性を持っていることを示しています ⁴。これはゲーム性能において有利な要素となります。

4.4. パフォーマンスの安定性と放熱

Dimensity 7200はTSMCの4nmプロセスで製造されており、これは電力効率の向上に寄与します ³。効率的なプロセスは発熱の抑制にも繋がり、長時間の使用や高負荷時におけるパフォーマンスの安定性に貢献する可能性があります ⁵。実際に、Redmi Note 13 Pro+ 5G（Dimensity 7200-Ultra搭載）のレビューでは、AnTuTuベンチマークを3回連続で実行してもスコアが安定し、最大温度も約37℃台に抑えられたと報告されています ¹⁶。これは、SoC自体の効率性に加え、デバイス側の冷却設計（例: 大型ベイパーチャンバー）も寄与していると考えられます ¹⁶。BeebomによるCPUスロットリングテストでも、Nothing Phone (2a)搭載のDimensity 7200 Proは目立った性能低下なく良好な結果を示しています ¹⁰。

5. Dimensity 7200 Ultra / Pro パフォーマンス

前述の通り、Dimensity 7200 UltraおよびProは、基本仕様は標準モデルと共通ですが、特定の最適化が施されている可能性があります。以下に、これらのバリアントを搭載したデバイスのベンチマークスコアを示します。

5.1. Dimensity 7200-Ultra (例: Xiaomi Redmi Note 13 Pro+ 5G)

AnTuTu v10:

総合スコア: 750,632点 ⁷ / 799,033点 ⁹ / 698,756点 ¹² / 約77万点以上 ¹⁶
CPU: 242,812点 ⁷
GPU: 180,896点 ⁷ / 185,764点 ⁹
Memory: 155,997点 ⁷
UX: 170,927点 ⁷ / 184,823点 ⁹
Geekbench 6:

シングルコア: 1128点 ⁷ / 1127点 ¹²
マルチコア: 2710点 ⁷ / 2690点 ¹²
GPU Compute: 3143点 ¹⁷
3DMark Wild Life:

スコア: 4228点 ⁷
Graphics Test (FPS): 25 FPS ⁷

5.2. Dimensity 7200 Pro (例: Nothing Phone (2a))

AnTuTu v10:

総合スコア: 701,196点 ¹⁵ / 708,424点 ¹⁰ / 718,102点 ¹⁴ / 707,480点 ¹²
GPU: 181,931点 ¹⁵ / 178,291点 ¹⁴
UX: 166,346点 ¹⁵ / 170,875点 ¹⁴
CPU: 222,490点 ¹⁴
Memory: 146,446点 ¹⁴
Geekbench 6:

シングルコア: 1114点 ¹⁰ / 1068点 ¹²
マルチコア: 2561点 ¹⁰ / 2454点 ¹²
3DMark Wild Life Stress Test:

Best Loop Score: 4130点 ¹⁰ / 1155点 (Extreme Test) ¹⁴
Stability: 99.2% ¹⁰ / 99.1% (Extreme Test) ¹⁴

5.3. 比較分析

Ultraモデルは、一部のAnTuTuスコアで標準モデルやProモデルをやや上回る傾向が見られますが（特に総合スコアで75万点～80万点近くを記録 7）、Geekbenchや3DMarkのスコアは標準モデルとほぼ同等か、僅差です 4。Proモデルのスコアは、標準モデルの平均的なスコアと非常に近い値を示しています 10。

これらの結果から、Ultra/Proバリアントは、デバイスメーカーによる最適化やチューニング、あるいはテスト環境の違いによってスコアに変動が生じている可能性が高く、SoC自体の基本性能が大幅に異なるわけではないと考えられます 2。

6. 競合プロセッサとの比較

Dimensity 7200の性能をより明確に把握するため、主要な競合製品とされるQualcomm Snapdragonシリーズの同等クラスSoCと比較します。

6.1. vs. Qualcomm Snapdragon 7 Gen 1

Snapdragon 7 Gen 1は、Dimensity 7200と同様にミドルレンジ上位をターゲットとしたSoCですが、いくつかの点で異なります。

主な仕様:

製造プロセス: Samsung 4nm ¹⁸
CPU: 1x Cortex-A710 @ 2.4GHz + 3x Cortex-A710 @ 2.36GHz + 4x Cortex-A510 @ 1.8GHz (Armv8.2-Aベース) ¹⁸
GPU: Adreno 644 ¹⁸
メモリ: LPDDR5 ¹⁸
ベンチマーク比較 (Dimensity 7200 vs Snapdragon 7 Gen 1):

ベンチマーク	Dimensity 7200	Snapdragon 7 Gen 1	優位性 (D7200比)	出典
AnTuTu 10	718,576	678,813	D7200 (+6%)	²⁰
Geekbench 6 SC	1,187	964	D7200 (+23%)	²⁰
Geekbench 6 MC	2,643	2,761	SD 7 Gen 1 (+4%)	²⁰
Geekbench 6 Comp	3,549	2,548	D7200 (+39%)	²⁰
3DMark Wild Life	4,166	3,166	D7200 (+32%)	²⁰

分析: Dimensity 7200は、AnTuTu総合スコア、Geekbenchシングルコア、GPU性能（Geekbench Compute, 3DMark）においてSnapdragon 7 Gen 1を明確に上回っています ²⁰。これは、Dimensity 7200がより新しいArmv9 CPUコアを採用し、最大クロック周波数が高いこと（2.8GHz vs 2.4GHz）、そしてGPU性能が優れていることに起因すると考えられます ²⁰。また、製造プロセスにおいても、TSMC 4nm (D7200) と Samsung 4nm (SD 7 Gen 1) の違いが効率性や性能に影響を与えている可能性も指摘されています ²⁰。一方で、Snapdragon 7 Gen 1は高性能コアを合計4つ搭載しているため、Geekbenchマルチコアスコアでは僅かにDimensity 7200（高性能コア2つ）を上回る結果となっています ²⁰。

6.2. vs. Qualcomm Snapdragon 7s Gen 2

Snapdragon 7s Gen 2は、Dimensity 7200より後に発表されたミドルレンジSoCですが、ネーミングとは異なり、Dimensity 7200やSnapdragon 7 Gen 1とはアーキテクチャが異なります。

主な仕様:

製造プロセス: Samsung 4nm ¹⁷
CPU: 4x Cortex-A78 @ 2.4GHz + 4x Cortex-A55 @ 1.95GHz (Armv8.2-Aベース) ¹⁷
GPU: Adreno 710 ²²
メモリ: LPDDR5 ²²
ベンチマーク比較 (Dimensity 7200/Ultra vs Snapdragon 7s Gen 2):

ベンチマーク	Dimensity 7200	Dimensity 7200 Ultra	Snapdragon 7s Gen 2	優位性 (D7200/Ultra比)	出典
AnTuTu 10	718,576	750,632	608,141	D7200/Ultra (+18%/+23%)	¹⁷
Geekbench 6 SC	1,187	1,128	1,012	D7200/Ultra (+17%/+11%)	¹⁷
Geekbench 6 MC	2,643	2,710	2,943	SD 7s Gen 2 (+11%/+9%)	¹⁷
Geekbench 6 Comp	3,549	3,143	2,197	D7200/Ultra (+62%/+43%)	¹⁷
3DMark Wild Life	4,166	4,228	3,018	D7200/Ultra (+38%/+40%)	¹⁷

分析: Dimensity 7200および7200 Ultraは、Snapdragon 7s Gen 2に対して、AnTuTu総合スコア、Geekbenchシングルコア、GPU性能（Geekbench Compute, 3DMark）で大幅な優位性を示しています ¹⁷。特にGPU性能の差は顕著であり、Dimensity 7200のMali-G610 MC4はSnapdragon 7s Gen 2のAdreno 710よりも強力です ¹⁰。Dimensity 7200が最新のArmv9 CPUコアとTSMC 4nmプロセスを採用しているのに対し、Snapdragon 7s Gen 2は旧世代のArmv8.2コア（Cortex-A78/A55）とSamsung 4nmプロセスを採用していることが、この性能差の主な要因と考えられます ¹⁰。Snapdragon 7s Gen 2は高性能コアを4つ搭載するため、GeekbenchマルチコアスコアではDimensity 7200（高性能コア2つ）を上回りますが、総合的なパフォーマンス、特にGPU性能と効率性においてはDimensity 7200が有利です ¹⁷。

7. ゲームパフォーマンス

ベンチマークスコアだけでなく、実際のゲームプレイにおけるパフォーマンスも重要です。Dimensity 7200シリーズ搭載デバイスでのゲーム性能に関する報告をまとめます。

原神 (Genshin Impact):

Dimensity 7200-Ultra (Redmi Note 13 Pro+ 5G): デフォルト設定は「低」。グラフィック設定「中」、フレームレート60FPS設定でプレイした場合、高負荷時の下限フレームレートは36FPS ⁹。別のレビューでは、同設定で平均44.398FPS、おおよそ45FPS前後で動作したとの報告もあります ¹⁶。これは、ミドルレンジモデルとしては良好な結果ですが、GPU性能を完全に活かしきれていない可能性も指摘されており、今後のゲーム側の最適化に期待が持たれます ⁹。
Dimensity 7200 Pro (Nothing Phone (2a)): グラフィック設定「中」、フレームレート60FPS設定で、高負荷時の下限フレームレートは31FPS ¹⁵。これもミドルレンジSoCとしては良好な結果であり、ほとんどのゲームを楽しめるレベルでプレイ可能と評価されています ¹⁵。Beebomのレビューでも、中程度のグラフィック設定でスムーズに動作したと報告されています ¹⁰。
PUBG Mobile:
Dimensity 7200-Ultra (Redmi Note 13 Pro+ 5G): フレーム設定「極限」（60FPS）でのプレイが可能。HDR画質でもこの設定を維持でき、高負荷状態（スモーク）での下限フレームレートは53FPSと、非常に快適なプレイが可能 ⁹。
Call of Duty Mobile:

Dimensity 7200 (iQOO Z9 5G): 「Very High」グラフィック設定で動作可能であり、競合製品よりも優れていると報告されています ²。
Dimensity 7200 Pro (Nothing Phone (2a)): スムーズに動作 ¹⁰。

分析:

Dimensity 7200シリーズは、その強力なGPU性能（Mali-G610 MC4）により、ミドルレンジSoCとしては優れたゲームパフォーマンスを発揮します 2。PUBG MobileやCall of Duty Mobileのような比較的最適化が進んだゲームでは、高画質・高フレームレート設定での快適なプレイが期待できます 2。一方で、「原神」のような特に負荷の高いゲームでは、グラフィック設定を「中」程度に調整することで、概ね30FPS以上を維持してプレイ可能なレベルに達しますが、SoCのポテンシャルを最大限に引き出すには、ゲーム側のさらなる最適化が必要となる場面も見られます 9。全体としては、多くの3Dゲームを中程度の画質設定で快適に楽しめる性能を持っていると言えます 10。

8. 総合的なパフォーマンス評価

収集したベンチマークデータと競合比較、実機レビューに基づき、MediaTek Dimensity 7200の総合的なパフォーマンスを評価します。

Dimensity 7200は、スマートフォン市場においてアッパーミドルレンジに位置づけられる高性能SoCです ¹。その最大の強みは、TSMCの先進的な4nmプロセスと最新のArmv9 CPUアーキテクチャの採用による高い電力効率と、クラス最高レベルのGPU（Mali-G610 MC4）性能にあります ³。これにより、日常的な操作は非常にスムーズであり ¹⁵、多くの3Dゲームも中程度の画質設定で快適にプレイ可能です ¹⁰。

AnTuTuスコアは70万点台前半～中盤、3DMark Wild Lifeスコアは4100点を超えるなど、ベンチマーク上でもその性能は明らかであり、特にGPU性能は競合のSnapdragon 7 Gen 1やSnapdragon 7s Gen 2を凌駕しています ⁴。Wi-Fi 6EやBluetooth 5.3といった最新の接続規格にも対応しており、総合的な機能面でも充実しています ³。

一方で、CPU構成は高性能コアが2つ（Cortex-A715 x2）であるため、高性能コアを4つ搭載する一部の競合製品（例: Snapdragon 7s Gen 2）と比較した場合、特定のマルチコア処理性能ではわずかに劣る可能性があります ¹⁷。また、比較的新しいSoCであるため、一部のゲームタイトルではまだ最適化が十分に進んでおらず、本来のGPU性能を発揮しきれていない場面も見られます ⁹。

Dimensity 7200 UltraおよびProバリアントは、基本性能は標準モデルと同等でありながら、デバイスメーカーとの連携による特定の機能最適化やチューニングが施されている可能性があり、選択するデバイスによって若干の性能差や機能差が現れることがあります ²。

総じて、Dimensity 7200は、性能（特にGPU）と電力効率のバランスに優れた、非常に競争力のあるミドルレンジSoCと言えます。ゲーム性能を重視しつつ、バッテリー持続時間も考慮したいユーザーにとって魅力的な選択肢となるでしょう。

9. 結論

本調査の結果、MediaTek Dimensity 7200は、TSMCの先進的な4nmプロセス、最新のArmv9 CPUコア、そしてクラス最高レベルのMali-G610 MC4 GPUを組み合わせることで、アッパーミドルレンジ市場において非常に強力なパフォーマンスを提供するSoCであることが確認されました。

AnTuTu Benchmark v10で70万点台、3DMark Wild Lifeで4100点を超えるスコアは、競合とされるSnapdragon 7 Gen 1やSnapdragon 7s Gen 2と比較しても、特にGPU性能において明確な優位性を示しています。この高いGPU性能は、実際のゲームプレイにおいても、多くのタイトルを中程度の画質設定で快適に動作させることを可能にしています。

4nmプロセスによる優れた電力効率は、パフォーマンスとバッテリー寿命の両立に貢献しており、日常的な使用からゲームプレイまで、幅広い用途で安定した性能を発揮することが期待されます。

Dimensity 7200 UltraおよびProバリアントは、基本性能こそ標準モデルと共通ですが、デバイス固有の最適化が施されている可能性があり、搭載スマートフォンを選択する際には、これらの違いも考慮に入れる価値があります。

結論として、MediaTek Dimensity 7200は、性能、効率、機能のバランスが取れた、ミドルレンジスマートフォン向けSoCとして高く評価でき、Qualcomm Snapdragon 7シリーズに対する有力な対抗馬としての地位を確立しています。