MediaTek Dimensity 8400 ベンチマークまとめ

CPU・SoC

2025.04.23

1. MediaTek Dimensity 8400 概要と技術仕様

MediaTek Dimensity 8400は、2024年後半（情報源により12月24日 ¹ または単に2024年 ²）に発表された、プレミアムスマートフォン市場向けのSoC（System-on-a-Chip）です。ミドルレンジクラスに位置づけられながらも ¹、フラッグシップDimensity 9400の設計思想を受け継ぎ、このクラスでは初となる「All Big Core」CPU設計を採用している点が最大の特徴です ²。

1.1. 製造プロセスとCPUアーキテクチャ

Dimensity 8400は、TSMCの4nmプロセス技術を用いて製造されています ¹。CPUは8コア構成で、その全てがパフォーマンスコアであるArm Cortex-A725で構成される「All Big Core」設計を採用しています ²。具体的なコア構成とクロック周波数は以下の通りです ¹：

1x Arm Cortex-A725 @ 最大3.25 GHz (L2キャッシュ 1MB)
3x Arm Cortex-A725 @ 最大3.0 GHz (L2キャッシュ各512KB)
4x Arm Cortex-A725 @ 最大2.1 GHz (L2キャッシュ各256KB)

合計でL2キャッシュは3.5MB ⁷、共有L3キャッシュは6MB ¹、さらに5MBのSLC（System Level Cache）⁶ を搭載しています。命令セットはARMv9.2-Aに対応しています ¹。

このAll Big Core設計とキャッシュ容量の増強（L2キャッシュ最大100%増、L3キャッシュ50%増、SLCキャッシュ25%増 ⁶）により、前世代のDimensity 8300と比較してマルチコア性能が最大41%向上したとされています ²。一方で、ピーク電力使用量はDimensity 8300比で40%～44%削減され、電力効率も大幅に改善されています ²。

1.2. GPU

グラフィックス処理には、Arm Mali-G720 MP7 GPUが搭載されています ¹。一部情報源ではMC7 ⁵ やImmortalis-G720 MP7 ⁷ と記載されていますが、コア数7基（MP7）が有力です。アーキテクチャはValhall 5th gen ¹、GPU周波数は1300 MHz ¹、演算性能（FLOPS）は2329.6 Gigaflopsとされています ¹。

Dimensity 8300のMali-G615 MC6と比較して、ピークパフォーマンスが24%以上向上し、電力効率も40%～42%改善されています ²。また、MediaTek Frame Rate Converter (MFRC) や MediaTek Adaptive Gaming Technology (MAGT) 3.0 といったゲーミング技術もサポートし、より滑らかで最適化されたゲーム体験を提供します ²。

1.3. AI処理 (NPU)

AI処理を担当するのは、MediaTek NPU 880です ¹。これはDimensity 8300のAPU 780からアップグレードされたもので ⁵、整数演算および浮動小数点演算が20%高速化、電力効率が18%向上したとされています ⁶。

さらに、フラッグシップのDimensity 9400で導入されたDimensity Agentic AI Engine (DAE) も統合されており ²、従来のAIアプリケーションをより高度なエージェント型AIアプリケーションへと進化させることが可能です。これにより、翻訳、リライト、文脈に応じた返信、AI録音、メディア生成といった最新の生成AIアプリケーションをサポートします ²。NeuroPilot圧縮技術やINT4量子化技術にも対応し、LLM（大規模言語モデル）の推論速度向上が図られています ⁶。

1.4. メモリとストレージ

メモリはLPDDR5Xに対応し、周波数は4266 MHz（一部情報源では4200 MHz ⁴）、バスは4x 16 Bit、最大帯域幅は68.2 Gbit/s、最大容量は24 GBです ¹。ストレージは高速なUFS 4.0をサポートします ¹。

1.5. マルチメディア機能

ISP（Image Signal Processor）としてMediaTek Imagiq 1080を搭載しています ²。QPD（Quad Pixel Debayer）リモザイク技術を活用し、より多くの光を取り込み、高速かつ正確なフォーカスを実現します ²。最大カメラ解像度はシングルで320MP、トリプルで32MP@30FPSに対応 ¹。動画撮影・再生は4K@60FPSまでサポートし ¹、全ズーム範囲でのHDR動画撮影も可能です ²。対応ビデオコーデックはH.264, H.265, AV1, VP9です ¹。ディスプレイ解像度は最大WQHD+ (2960 x 1440) で、リフレッシュレートは最大144Hzに対応します ¹。

1.6. 接続性

5G-Advanced (5G-A) 対応モデムを内蔵し、Sub-6GHz (FR1) において最大3CCキャリアアグリゲーション (3CC-CA) をサポート、下り最大通信速度は5.17 Gbpsに達します ¹。Wi-FiはWi-Fi 6（一部情報源ではWi-Fi 6E ⁷）に対応 ¹、Bluetoothはバージョン6.0（一部情報源では5.4 ⁴ や5.2 ¹⁹）に対応します ¹。Network Observation System (NOS) 技術により、5GとWi-Fi間の正確な切り替えを可能にし、電力効率と接続性を最適化します ²。

2. ベンチマークソフトの特定

スマートフォンのプロセッサ性能を測定するために一般的に用いられるベンチマークソフトとして、以下のものが特定されました。これらのソフトは、CPU、GPU、AI、メモリ、ユーザーエクスペリエンス（UX）など、多岐にわたる性能を数値化するために広く利用されています。

AnTuTu Benchmark (v10): CPU、GPU、メモリ、UXの各項目を測定し、総合スコアを算出する定番ベンチマークソフト ¹。
Geekbench (v6): CPUのシングルコア性能とマルチコア性能を測定する代表的なソフト。GPUの演算性能（Compute Score）も測定可能 ¹。
3DMark: 主にGPUのグラフィック性能を測定するためのソフト。Wild Life ExtremeやSolar Bayといったテストが用いられる ⁴。
GFXBench: グラフィック性能を測定する別のツール。ManhattanやT-Rexといったテストがある ⁵。
PCMark: 実世界のオフィスアプリケーションをシミュレートし、一般的なタスクにおけるパフォーマンスを測定する ⁵。
AI Benchmark (ETH Zurich): スマートフォンにおけるAI（ディープラーニング）性能を測定する専門的なベンチマーク ³³。

3. Dimensity 8400 ベンチマークスコア

Dimensity 8400を搭載したデバイス（主にXiaomi Redmi Turbo 4, Realme Neo 7 SE, Xiaomi Poco X7 Proなど）で測定された各種ベンチマークスコアを以下に示します。スコアはテストに使用されたデバイス、ソフトウェアバージョン、測定環境によって変動する可能性がある点に注意が必要です。

3.1. AnTuTu Benchmark v10

AnTuTu v10におけるDimensity 8400のスコアは、複数の情報源から報告されています。

総合スコア:

nanoreview.netの平均値 (67テスト): 1,633,597点 ¹
Xiaomi Redmi Turbo 4: 1,769,868点 ¹
Realme Neo 7 SE: 1,752,770点 ¹
Xiaomi Poco X7 Pro: 1,618,718点 ¹、1,557,069点 (91mobilesによるテスト) ⁵、1,638,596点 (ガルマックスによるテスト) ²⁰、1,590,202点 (Gizmochinaによる報告) ²¹、170万点超え (smhn.infoによる言及) ¹⁰
Dimensity 8400-Max (Realme Neo7): AnTuTuランキングで上位に記載 ²⁷
Dimensity 8400-Ultra (Poco X7 Pro): AnTuTuランキングで上位に記載 ²⁷
リーク情報では170万～180万点と予測されていた ²⁵
項目別スコア (nanoreview.net平均値 ¹):

CPU: 350,248点
GPU: 607,362点
Memory: 363,103点
UX: 312,884点
項目別スコア (91mobiles, Poco X7 Pro ⁵):

CPU: 368,051点
GPU: 562,853点
Memory: 326,881点
UX: 319,284点
項目別スコア (ガルマックス, Poco X7 Pro ²⁰):

GPU: 591,042点
UX: 313,468点
項目別スコア (Technetbooks, Redmi Turbo 4 ²²):

CPU: 394,810点
GPU: 658,114点

これらのスコアから、Dimensity 8400はAnTuTu v10において160万点から170万点台後半の総合スコアを記録することがわかります。特にGPUスコアが60万点前後と高く、CPUスコアも35万点から40万点弱と、ミドルハイ～準ハイエンドクラスとしては非常に高い性能を示しています。搭載端末やチューニング（Ultra, Maxなど）によってスコアに幅が見られますが ¹、これは冷却性能やソフトウェア最適化の違いによるものと考えられます。

3.2. Geekbench 6

Geekbench 6では、CPUのシングルコア、マルチコア性能、およびGPU演算性能が測定されます。

シングルコアスコア:

Poco X7 Pro (91mobiles): 1,161点 ⁵
Dimensity 8400 Ultra (Gizmochina/YouTube): 1,579点 ²¹
Redmi Turbo 4 (Technetbooks/Notebookcheck): 1,639点 ²²
nanoreview.net 平均値: 1,571点 ⁴
マルチコアスコア:

Poco X7 Pro (91mobiles): 5,489点 ⁵
Dimensity 8400 Ultra (Gizmochina/YouTube): 6,238点 ²¹
Redmi Turbo 4 (Technetbooks/Notebookcheck): 6,500点 ²²
nanoreview.net 平均値: 6,033点 ⁴
Xiaomi Poco X7 Pro (Notebookcheck): 6,239点 ⁷
GPU Computeスコア:
nanoreview.net: 12,817点 ¹

Geekbench 6の結果を見ると、シングルコア性能は1,100点台から1,600点台とばらつきがありますが、1,500点～1,600点台が中心的なスコアと考えられます。これはミドルレンジとしては良好ですが、競合のハイエンドコア（Cortex-Xシリーズ）搭載チップには及ばない場合があります ¹⁸。一方、マルチコア性能はAll Big Core設計の恩恵を受け、5,400点台から6,500点と非常に高いスコアを記録しています。特に6,000点を超えるスコアは、多くの競合チップセットを上回るレベルです ¹⁸。GPU Computeスコアも高く、グラフィック性能だけでなく汎用演算能力の高さも示唆しています ¹³。

3.3. 3DMark

3DMarkはGPU性能を測る上で重要な指標となります。

Wild Life Extreme:

Redmi Turbo 4 (Technetbooks/Notebookcheck): 4,086点 ²²
Poco X7 Pro (YouTube): 競合より優れた性能と持続性を示唆 ¹⁸
Solar Bay (Ray Tracing):
Xiaomi Poco X7 Pro (UL Benchmarks): 5,940点 (Unlimited: 6,090点) ¹⁴

Wild Life Extremeのスコアは4,000点を超え、Snapdragon 8s Gen 3 (約3,161点) や Snapdragon 7+ Gen 3 (約4,729点 – AnTuTu GPUスコアからの類推) と比較しても高いグラフィック性能を持っていることが確認できます ²²。Solar Bayのスコアは、レイトレーシング性能も有していることを示しています。高負荷時の持続性能（Stress Test Stability）についても、Poco X7 Proの冷却機構の助けもあり、良好な結果が報告されています ¹⁸。

3.4. AI性能 (AI Benchmark)

AI性能に関する直接的なベンチマークスコア（例: AITuTu, ETH AI Benchmark）は限定的ですが、搭載されているNPU 880とDAEにより、高いAI処理能力が期待されます ²。

ETH AI Benchmark:

Dimensity 8400: 3,877点 ³³
搭載デバイス例 (Xiaomi Poco X7 Pro): 5,237点 (AI Benchmarkアプリランキングより) ³⁴

ETH AI Benchmarkのスコアは3,877点と報告されており、これはSnapdragon 8 Gen 2 (5,192点) よりは低いものの、Apple A17 Pro (3,790点) と同等レベルであり、ミドルレンジとしては高いAI性能を示しています ³³。ただし、AI BenchmarkアプリのランキングではPoco X7 Pro (Dimensity 8400 Ultra) が5,237点を記録しており ³⁴、チップセット単体のスコアと実デバイスでのスコアには差が見られます。これは、メモリやソフトウェア最適化の影響が大きいことを示唆しています。

3.5. その他のベンチマーク

GFXBench (Poco X7 Pro ⁵):

Manhattan ES 3.0: 7,742フレーム (120 FPS)
T-Rex: 6,724フレーム (120 FPS)
PCMark (Poco X7 Pro ⁵):
Work 3.0 Performance: 14,658点

GFXBenchの結果は、多くのテストでフレームレート上限（120 FPS）に達しており、GPU性能の高さを示しています。PCMarkのスコアも高く、日常的なタスクにおける快適な動作が期待できます。

3.6. スコアのばらつきについて

収集したデータからは、同じDimensity 8400でも搭載デバイスや情報源によってベンチマークスコアに差異が見られました。特にAnTuTu総合スコアでは155万点台から177万点近くまで幅があります ¹。これは、以下の要因によるものと考えられます。

搭載デバイスの冷却性能: 高性能な冷却システムを持つデバイスほど、高負荷時の性能低下（サーマルスロットリング）が抑えられ、高いスコアが出やすくなります ¹⁸。
ソフトウェアの最適化: メーカーによるOSやドライバのチューニング度合いがスコアに影響します。「Ultra」や「Max」といったサフィックスが付くモデルは、特定のメーカー向けに最適化されている可能性があります ⁵。
ベンチマークアプリのバージョン: アプリのバージョンによってスコアリングの基準が変わることがあります。
メモリ/ストレージ構成: 搭載されているRAMの容量や速度、ストレージの速度も総合スコアに影響します。

そのため、単一のスコアだけでなく、複数の情報源や異なるテストの結果を総合的に見ることが重要です。

4. パフォーマンス評価

収集したベンチマークスコアに基づき、Dimensity 8400のパフォーマンスを評価します。

4.1. 総合性能

AnTuTu v10の総合スコアが160万点を超えることから、Dimensity 8400は準ハイエンドクラスの性能を持つと評価できます ²⁰。これは、2023年のフラッグシップであるSnapdragon 8 Gen 2に匹敵、あるいは僅かに上回るレベルです ¹³。ミドルハイ市場においては、トップクラスの性能を提供します。

4.2. CPU性能

Geekbench 6の結果から、CPU性能は特徴的なプロファイルを示します。シングルコア性能は1,500～1,600点台と、ミドルレンジとしては優秀ですが、Cortex-Xシリーズを採用するハイエンドチップセットには及びません ¹⁸。一方で、All Big Core設計によりマルチコア性能は6,000点を超える非常に高いスコアを記録しており、多くの競合チップセット（Snapdragon 8s Gen 3, 7+ Gen 3など）を凌駕します ⁹。これは、マルチスレッド処理が重要となる現代のアプリケーションにおいて大きなアドバンテージとなります ¹⁸。

4.3. GPU性能

Mali-G720 MP7 GPUは非常に強力で、AnTuTu GPUスコアは約60万点、3DMark Wild Life Extremeでは4,000点を超えます ¹。これはSnapdragon 8s Gen 3やSnapdragon 7+ Gen 3のGPU性能を大幅に上回るレベルです ²²。Snapdragon 8 Gen 2のAdreno 740に匹敵する、あるいは僅かに上回るグラフィック性能を持っていると考えられます ¹³。これにより、高画質設定でのゲームプレイも期待できます。

4.4. AI性能

NPU 880とDAEの搭載により、AI性能はDimensity 8300から大きく向上しています ²。ETH AI Benchmarkのスコアは、ミドルレンジとしては高く、生成AIなどの高度なAIタスクの実行能力を示唆しています ³³。今後のAI機能の拡充において、重要な役割を果たす可能性があります。

4.5. ゲーム性能

高いGPU性能とMAGT 3.0などのゲーミング技術により、多くのゲームで快適なプレイが期待できます ²。91mobilesのテストでは、BGMI、Call of Duty、Real Racing 3といったゲームでラグやカクつきは見られなかったと報告されています ⁵。ガルマックスのレビューでも、高負荷時に下限FPSが30を大きく上回り、多くのゲームが快適に動作する水準にあると評価されていますが、画質設定の調整が必要な場合もあるとしています ²⁰。ただし、一部のレビューでは、特定のゲーム（例：Genshin Impact）でのバッテリー消費が大きい、あるいはUIの動作がDimensity 1200より劣るといった指摘も見られます ⁴。これは、ゲーム側の最適化や端末固有の問題である可能性も考えられます。今後のソフトウェアアップデートやゲーム側の最適化によって、さらにゲーム体験が向上する可能性があります ²⁰。

4.6. 電力効率

Dimensity 8300と比較して、CPUで最大44%、GPUで最大42%のピーク電力使用量削減が謳われており ²、電力効率の大幅な向上が期待されます。All Big Core設計でありながら、TDP（Sustained Power Limit）も7Wと、競合のSnapdragon 8s Gen 3 (7.5W) や Snapdragon 8 Gen 2 (8.5W) より低く抑えられています ¹。これにより、高性能を維持しつつバッテリー持続時間の向上が見込めます。ただし、前述の通り、一部ユーザーからはバッテリー消費に関する懸念も報告されています ⁴。

5. 競合製品との比較

Dimensity 8400の性能を、主要な競合プロセッサと比較します。

5.1. vs Qualcomm Snapdragon 8s Gen 3

Snapdragon 8s Gen 3は、Dimensity 8400の直接的な競合製品の一つです。

AnTuTu v10: Dimensity 8400 (約163万点) が Snapdragon 8s Gen 3 (約149万点) を約10%上回ります ⁴。特にGPUスコアでDimensity 8400が大きくリードしています (D8400: 約60.7万点 vs S8sG3: 約50.2万点) ⁴。CPUスコアは僅差ですが、テストによってはDimensity 8400が上回る場合もあります (D8400: 約39.5万点 vs S8sG3: 約37.5万点 ²²)。
Geekbench 6: シングルコア性能ではSnapdragon 8s Gen 3 (Cortex-X4搭載、約2019点) がDimensity 8400 (約1571点) を上回りますが、マルチコア性能ではDimensity 8400 (約6033点) がSnapdragon 8s Gen 3 (約5570点) を約8%上回ります ⁴。
GPU性能 (3DMark): Wild Life ExtremeでDimensity 8400 (4,086点) がSnapdragon 8s Gen 3 (3,161点) を大きく上回ります ²²。

総合的に見て、Dimensity 8400はSnapdragon 8s Gen 3に対して、特にGPU性能とCPUマルチコア性能で優位性を持っています。シングルコア性能では劣るものの、全体的なパフォーマンスではDimensity 8400が有利と言えます。

5.2. vs Qualcomm Snapdragon 7+ Gen 3

Snapdragon 7+ Gen 3もミドルハイ市場の有力なプロセッサです。

AnTuTu v10: Dimensity 8400 (約163万点) が Snapdragon 7+ Gen 3 (約141万点) を約16%上回ります ⁹。CPU、GPU、メモリ、UXの全ての項目でDimensity 8400がリードしています。特にGPUスコアの差が大きいです (D8400: 約60.7万点 vs S7+G3: 約49.2万点) ⁹。
Geekbench 6: シングルコア性能ではSnapdragon 7+ Gen 3 (Cortex-X4搭載、約1913点) がDimensity 8400 (約1571点) を上回りますが、マルチコア性能ではDimensity 8400 (約6033点) がSnapdragon 7+ Gen 3 (約5098点) を約18%上回ります ⁹。
GPU性能 (AnTuTu): Dimensity 8400 (約65.8万点) がSnapdragon 7+ Gen 3 (約47.3万点) を大きく上回ります ²²。

Dimensity 8400は、Snapdragon 7+ Gen 3に対してもCPUマルチコア性能とGPU性能で明確なアドバンテージを持っています。シングルコア性能を除けば、全体的にDimensity 8400の方が高性能です。

5.3. vs Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2

Snapdragon 8 Gen 2は、2023年のフラッグシッププロセッサであり、Dimensity 8400の性能を測る上での重要な比較対象です。

AnTuTu v10: Dimensity 8400 (約163万点) が Snapdragon 8 Gen 2 (約156万点) を約5%上回る結果が出ています ¹³。項目別に見ると、CPUスコアではSnapdragon 8 Gen 2がやや優位ですが、メモリとUXスコアではDimensity 8400が上回り、GPUスコアはほぼ互角です ¹³。
Geekbench 6: シングルコア性能ではSnapdragon 8 Gen 2 (Cortex-X3搭載) が優位ですが、マルチコア性能ではDimensity 8400が同等か僅かに上回る可能性があります。GPU ComputeスコアではDimensity 8400 (12,817点) がSnapdragon 8 Gen 2 (9,064点) を約41%上回る結果も報告されています ¹³。
CPU/GPU性能 (Notebookcheck評価): Dimensity 8400はCPU、GPUともにSnapdragon 8 Gen 2を上回ると評価されています ²³。

総合的に、Dimensity 8400はSnapdragon 8 Gen 2に匹敵、あるいは一部のテストではそれを上回る性能を持っていると言えます。特にGPU性能やCPUマルチコア性能、メモリ性能において、Dimensity 8400が優位性を示す場面があります。

5.4. vs MediaTek Dimensity 8300

Dimensity 8300はDimensity 8400の直接の前世代モデルです。

AnTuTu v10: Dimensity 8400 (約163万点) が Dimensity 8300 (約141万点) を約16%上回ります ¹⁷。
Geekbench 6: シングルコア性能で約12%、マルチコア性能で約41%の向上が見られます ¹⁷。これは公式発表の性能向上率（マルチコア最大41%向上）と一致します ²。
GPU性能: GPU性能もDimensity 8300から向上しています (AnTuTu GPUスコア比較 D8400: 約60.7万点 vs D8300: 約53.6万点 ¹)。公式発表ではピーク性能24%向上、電力効率42%改善とされています ²。
AI性能: NPUがAPU 780からNPU 880にアップグレードされ、性能と効率が向上しています ⁵。

Dimensity 8400は、Dimensity 8300からCPUマルチコア性能、GPU性能、AI性能、電力効率の全てにおいて着実な進化を遂げています。特にAll Big Core設計によるマルチコア性能の向上は顕著です。

5.5. vs Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3

Snapdragon 8 Gen 3は現行（比較時点）のフラッグシッププロセッサです。

AnTuTu v10: Snapdragon 8 Gen 3 (約205万点) が Dimensity 8400 (約163万点) を大きく上回ります ¹⁵。CPU、GPUともにSnapdragon 8 Gen 3が圧倒しています。
Geekbench 6: シングルコア、マルチコアともにSnapdragon 8 Gen 3がDimensity 8400を上回ります ¹⁵。
GPU性能 (3DMark): Snapdragon 8 Gen 3が優位です ¹⁵。

Dimensity 8400はミドルハイ～準ハイエンド向けであり、フラッグシップのSnapdragon 8 Gen 3には性能面で及びません ²³。

比較表：Dimensity 8400 vs 主要競合プロセッサ

プロセッサ	AnTuTu v10 (総合)	Geekbench 6 (Single)	Geekbench 6 (Multi)	GPU (参考: AnTuTu)	CPUアーキテクチャ (Big Core)	製造プロセス
Dimensity 8400	~1,633,597 ¹	~1,571 ⁹	~6,033 ⁹	~607,362 ¹	8x Cortex-A725 ¹	4nm TSMC ¹
Snapdragon 8s Gen 3	~1,488,885 ⁴	~2,019 ⁴	~5,570 ⁴	~502,377 ⁴	1x Cortex-X4 ⁴	4nm TSMC ⁴
Snapdragon 7+ Gen 3	~1,409,887 ⁹	~1,913 ⁹	~5,098 ⁹	~492,256 ⁹	1x Cortex-X4 ⁹	4nm TSMC ⁹
Snapdragon 8 Gen 2	~1,557,749 ¹³	~1,900-2,000 (推定)	~5,200-5,400 (推定)	~619,179 ¹³	1x Cortex-X3 ¹³	4nm TSMC ¹³
Dimensity 8300	~1,406,012 ¹⁷	~1,398 ¹⁷	~4,293 ¹⁷	~535,987 ³⁶	1x Cortex-A715 ³⁶	4nm TSMC ³⁶
Snapdragon 8 Gen 3	~2,052,774 ¹⁵	~2,200-2,300 (推定)	~7,000-7,500 (推定)	~896,726 ¹⁵	1x Cortex-X4 ¹⁵	4nm TSMC ¹⁵

(注: スコアはおおよその平均値または代表値であり、テスト環境により変動します)

6. 結論

MediaTek Dimensity 8400は、ミドルハイから準ハイエンドのスマートフォン市場において、非常に競争力の高いプロセッサです。その主な特徴と評価は以下の通りです。

強力なマルチコア性能とGPU性能: このクラスで初となるAll Big Core CPU設計は、Geekbench 6マルチコアスコアで6,000点を超える高い性能を実現し、マルチタスク処理に優位性をもたらします。また、Mali-G720 MP7 GPUは、Snapdragon 8s Gen 3や7+ Gen 3を凌駕し、前世代フラッグシップのSnapdragon 8 Gen 2に匹敵する高いグラフィック性能を提供します。これにより、要求の厳しいゲームやアプリケーションも快適に動作させることが可能です。
優れた電力効率: Dimensity 8300からCPU・GPUともに電力効率が大幅に改善されており、高性能とバッテリー持続時間の両立が期待できます。TDPも競合製品と比較して低く抑えられています。
強化されたAI機能: 最新のNPU 880とDAEの搭載により、AI性能が向上し、生成AIなどの先進的な機能への対応力が強化されています。
バランスの取れた仕様: LPDDR5Xメモリ、UFS 4.0ストレージ、高リフレッシュレートWQHD+ディスプレイ、高解像度カメラ、5G-Aモデムなど、全体的にバランスの取れた最新仕様をサポートしています。
懸念点: シングルコア性能は競合のCortex-Xシリーズ搭載チップに一歩譲ります。また、一部のレビューでは、特定の条件下でのUI挙動やバッテリー消費に関する指摘も見られました ⁴。これらは端末固有の最適化やソフトウェアの問題である可能性もありますが、注意が必要です。

総じて、Dimensity 8400は、Snapdragon 8 Gen 2に匹敵する総合性能を、より新しいアーキテクチャと改善された電力効率で実現したプロセッサと言えます。特にCPUマルチコア性能とGPU性能を重視するユーザーにとって、Snapdragon 8s Gen 3や7+ Gen 3に対する有力な選択肢となるでしょう。今後のソフトウェア最適化や、搭載スマートフォンの増加によるさらなる評価が待たれます。