1. はじめに
本レポートは、MediaTekのハイエンドモバイルプラットフォームであるDimensity 9200+ System-on-a-Chip (SoC) に関する詳細な技術分析を提供することを目的とする。日本語および英語のウェブサイトから収集したベンチマークデータ、実使用レビュー、技術仕様に基づき、その性能特性、主要機能、市場における位置づけを深く掘り下げる。Dimensity 9200+は、先行モデルであるDimensity 9200の強化版として位置づけられ、主にフラッグシップクラスの5Gスマートフォン市場をターゲットとしている 1。本SoCは2023年5月10日頃に発表され、搭載デバイスは同月以降に市場投入が見込まれていた 2。
2. Dimensity 9200+ の概要と主要仕様
本セクションでは、Dimensity 9200+を構成する基本的な要素とその能力について詳述する。
2.1. アーキテクチャと製造プロセス
Dimensity 9200+は、Dimensity 9200と同様に、TSMCの第2世代4nmプロセスノードで製造されている 4。このプロセスは、高性能と電力効率のバランスを追求するものである。アーキテクチャにはArmv9を採用し、現代の性能要求に応えるため64ビット演算のみをサポートする 1。トランジスタ数は170億個と報告されており(9200/9200+ファミリー)、その複雑さと高い能力を示唆している 17。
2.2. CPU構成
CPUは、1+3+4構成のオクタコア(8コア)設計を採用している 1。
- ウルトラコア: 1基のArm Cortex-X3を搭載し、最大動作クロックは3.35GHzに達する。これはDimensity 9200の3.05GHzから引き上げられている 1。
- スーパーコア: 3基のArm Cortex-A715を搭載し、最大動作クロックは3.0GHz。Dimensity 9200の2.85GHzから向上している 1。
- 高効率コア: 4基のArm Cortex-A510を搭載し、最大動作クロックは2.0GHz。Dimensity 9200の1.8GHzから引き上げられている 1。
- キャッシュ構造: 全てのCPUコアで共有される8MBのL3キャッシュと6MBのシステムレベルキャッシュ(SLC)を備える 10。
Dimensity 9200と9200+の主な違いは、これら全てのコアタイプにおける動作クロックの向上にある。MediaTek自身が9200+は前モデルより高いクロック速度をサポートすると明言しており 3、複数の情報源が各コアタイプの具体的なクロック向上を確認している(X3: 3.05→3.35GHz, A715: 2.85→3.0GHz, A510: 1.8→2.0GHz)1。これは、より高性能なシリコンを選別する「ビンニング」戦略、あるいは設計限界をさらに押し上げることで、「+」バリアントのピーク性能向上を目指した結果と考えられる 10。
MediaTekは、これらのクロック速度向上により、Dimensity 9200と比較してCPU性能が約10%向上し、同時に同等の電力消費レベルを維持していると主張している 10。MediaTekの公式製品ページ 15 およびNotebookCheckの要約 10 がこの10%のCPU性能向上を述べている。同等の電力消費を維持するという主張 15 は重要であり、クロック向上と並行してプロセス技術の成熟や効率化チューニングが行われた可能性を示唆しているが、この点は実際のデバイスでの検証が必要である(セクション7参照)。
2.3. GPU構成
GPUにはArm Immortalis-G715 MP11(11コア)を採用している 1。Dimensity 9200に搭載されたGPU実装と比較して、動作クロックが17%向上している 1。Immortalisアーキテクチャによるハードウェアアクセラレーション対応のレイトレーシングをサポートし、対応するゲームやアプリケーションにおいて、よりリアルなグラフィック表現を可能にする 4。また、Vulkan 1.3 API標準をサポートしている 16。MediaTekは、このオーバークロックによりDimensity 9200比で10%のGPU性能向上を実現したと主張している 10。
この17%というGPUクロック速度の大幅な向上は、Dimensity 9200に対するグラフィックス性能向上の主要因であると考えられる。複数の公式情報源 1 および第三者のレポート 3 がこの具体的な17%のオーバークロック数値を強調している。これは、特にゲーミングシナリオにおいて、QualcommのAdreno GPUとの競争力を高めるために、グラフィックス能力を意図的に強化したことを示唆している。
2.4. AIプロセッシングユニット (APU)
MediaTekの第6世代APUを統合している(9200ではAPU 690 4、9200+ではAPU 680 1 と言及されることがあるが、これは命名規則のバリエーションや特定の実装詳細の可能性あり)1。AIタスク(例: AI超解像)の実行速度が第5世代APUと比較して最大35%高速化されたと主張されている 1。また、9200のAPU 690についても、ETHZ5.0ベンチマークで前世代比35%高速化とされている 9。電力効率に関しては、AI-SRタスクにおいて第5世代APU比で最大45%の消費電力削減を達成したと主張されている 1。カメラ、GPU、ビデオ再生など、様々なビジュアルアプリケーションでAI-SRによる省電力化が図られている 1。9200では、AI-NRを用いた4Kビデオ再生時に最大25%の省電力を実現したとされている 9。
APU 690(主に9200関連)とAPU 680(主に9200+関連)の名称には若干の不整合または不明瞭さが見られる。出典 4 はAPU 690に言及し(主に9200の文脈で)、一方で 1 はAPU 680に言及している(主に9200+の文脈で)。しかし、性能/効率に関する主張(例:第5世代比35%高速)は、時に両方の名称に帰属させられている 1。これはマイナーリビジョン、地域差、あるいは単なる報告の不一致である可能性がある。中核となる能力や世代的な改善点は、おそらく類似していると考えられる。
2.5. メモリとストレージのサポート
- メモリ: 最大8533 Mbpsの速度を持つLPDDR5X RAMをサポートし、要求の厳しいアプリケーションに不可欠な高いメモリ帯域幅を実現する 2。(注記: 12 のような一部の情報源では4266MHzと記載されているが、これはおそらくDouble Data Rate適用前のベースクロックを指している)。
- ストレージ: UFS 4.0ストレージ規格をサポートし、UFS 3.1と比較して大幅に高速な読み書き速度と改善された電力効率を提供する 2。
- UFS 4.0向けにMulti-Circular Queue (MCQ) 技術を搭載し、ストレージへのマルチスレッドアクセスを改善する可能性がある 2。
2.6. 接続機能
- 5Gモデム: Release-16規格をサポートする統合5Gモデムを搭載 1。
- Sub-6GHz(4CCキャリアアグリゲーション、最大7Gbpsダウンリンク)とミリ波(最大8CCキャリアアグリゲーション)の両方をサポート 1。(注記: 24 は9200で7.9Gbps、20 も7.9Gbpsと言及)。
- 5G接続中のバッテリー寿命を最適化するMediaTek 5G UltraSave 3.0技術を搭載 1。
- ネットワーク検索や接続回復を高速化するAI拡張機能を搭載 1。
- 独自の「FAR」拡張機能により、ミリ波性能が最大40%向上すると主張 1。
- Wi-Fi: Wi-Fi 7 (802.11be) 規格をサポート 1。
- 理論上のピーク速度は最大6.5Gbps(前世代比2.7倍高速)1。
- 320MHz帯域幅(BW320)、4096-QAM、Multi-Link Operation(MLO)、Multi-RU、MU-MIMOなどの機能を搭載 1。
- デュアルバンド・デュアルコンカレント接続(2×2 2.4GHz + 2×2 5/6GHz)をサポート 1。
- Bluetooth: Bluetooth 5.3をサポート 2。
- LE Audio、Auracastブロードキャストオーディオ、スタジオグレードワイヤレスオーディオ(24-bit/192kHz)をサポート 11。
- 干渉を最小限に抑えるWi-Fi/Bluetooth共存技術を搭載 3。
- 位置情報: 包括的なGNSSカバレッジ(GPS, BeiDou, Glonass, Galileo, QZSS, NavIC)と高精度な非衛星測位(デッドレコニング)機能を提供 1。
発売当時、Wi-Fi 7のサポートは先進的な機能であり、デバイスを次世代ワイヤレスネットワークに対応させる位置づけであった。Wi-Fi 7対応ルーターやインフラは2023年中頃の9200+発売時点ではまだ普及していなかったが 2、この機能を搭載することで製品寿命を延ばし、エコシステムの進化に伴ってユーザーがより高速・低遅延の恩恵を受けられるようにした。これはWi-Fi 6/6Eに限定されたSoCに対する重要な差別化要因となる。
2.7. マルチメディア機能
- イメージシグナルプロセッサ (ISP): MediaTek Imagiq 890 ISPを搭載 1。
- ネイティブRGBWセンサーをサポートし、光感度を向上させ(最大30%)、消費電力を削減(競合ソリューション比最大34%)1。
- AI駆動機能: AIノイズリダクション(写真・動画)、AI-PQ+シネマティックビデオ、AIモーションアンブラー/ボケ補正、AIデュアルストリームシャッター、シーン最適化のためのAI画像セマンティックセグメンテーション 1。
- ビデオ撮影: 最大8K@30fpsおよび4K@60fpsの録画をサポートし、EIS(電子式手ぶれ補正)使用時の省電力効果も主張 9。
- カメラセンサーサポート: 最大320MP(ただし、実際の搭載はこれより低い解像度)9。
- ディスプレイエンジン: MediaTek MiraVision 890を搭載 1。
- 高リフレッシュレートをサポート: Full HD+で最大240Hz、WQHDで最大144Hz 2。
- 機能: Intelligent Display Sync 3.0(適応リフレッシュレート、パネル消費電力35%削減を主張)、EnergySmart Screen 2.0(コンテンツ/環境適応輝度制御、ディスプレイ消費電力10%以上削減を主張)、モーションブラー低減、AI SDR-to-HDR変換、Smart BluLight Defender 1。
- USB-C/DisplayPort経由で最大8Kの外部ディスプレイ出力をサポート 9。
MediaTekは、品質向上と省電力化のために、マルチメディア(ISP、ディスプレイ)全体にわたるAI統合を強く強調している。Imagiq(AI-NR, AI-PQ, AIセマンティックセグメンテーション)1 やMiraVision(AI SDR/HDR, EnergySmart Screen)1 の下にリストされている多数の機能が、明確にAIに言及している。これは業界のトレンドを反映しているだけでなく、MediaTekがAPUの能力 1 を単なる処理能力以上に活用し、写真撮影やメディア消費といった一般的なシナリオで具体的なユーザーメリットを目指す戦略を示している。
2.8. ゲーミング強化機能
- MediaTek HyperEngine 6.0 ゲーミングテクノロジースイートを搭載 2。
- 性能と電力の最適化を図るMediaTek Adaptive Game Technology (MAGT) を含む 1。
- Frame Rate Smoother (FRS) 2.0は、FPSの変動(ジッター)を低減し(競合比60%削減を主張)、平均FPSを向上させる(10%向上を主張)ことを目的とする 1。
- Variable Rate Shading (VRS) / AI-VRSをサポート 16。
- 特定のゲームジャンルにおいて、電力効率の優位性を主張(例:MOBAで12%、FPSで10%の省電力、競合比)1。
表 2.1: MediaTek Dimensity 9200+ 主要仕様概要
仕様項目 | 詳細 | 出典例 |
プロセスノード | TSMC 第2世代 4nm | 10 |
CPU | オクタコア (1x Cortex-X3 @ 最大3.35GHz + 3x Cortex-A715 @ 最大3.0GHz + 4x Cortex-A510 @ 最大2.0GHz), Armv9, 64ビット専用, 8MB L3 + 6MB SLC | 1 |
GPU | Arm Immortalis-G715 MP11, 9200比 17% OC, ハードウェアレイトレーシング対応, Vulkan 1.3 | 1 |
AI (APU) | 第6世代 APU (APU 680/690), AI-NR/SR/PQ機能強化 | 1 |
メモリ | LPDDR5X, 最大 8533 Mbps | 2 |
ストレージ | UFS 4.0 + MCQ | 2 |
5Gモデム | R16準拠, Sub-6GHz (4CC CA, 最大7Gbps DL) + mmWave (8CC CA), 5G UltraSave 3.0, AI拡張 | 1 |
Wi-Fi | Wi-Fi 7 (802.11be), 最大6.5Gbps, BW320, 4096-QAM, MLO, 2×2+2×2 Dual-Band Dual-Concurrent | 1 |
Bluetooth | Bluetooth 5.3, LE Audio, Auracast, 24-bit/192kHz オーディオ | 2 |
ISP | Imagiq 890, ネイティブRGBWサポート, AI機能 (AI-NR, AI-PQ, セマンティックセグメンテーション等), 最大320MPセンサーサポート, 8K@30fps / 4K@60fps ビデオ撮影 | 1 |
ディスプレイ | MiraVision 890, 最大 FHD+ @ 240Hz / WQHD @ 144Hz, Adaptive Refresh Rate (Intelligent Display Sync 3.0), EnergySmart Screen 2.0, 8K外部出力 | 1 |
ゲーミング | HyperEngine 6.0, MAGT, FRS 2.0, VRS/AI-VRS | 1 |
この表は、SoCの核となる技術的詳細を簡潔にまとめたものであり、後の性能分析の基礎となる。
3. 総合ベンチマーク性能分析
本セクションでは、標準化されたベンチマークテストの結果を集約・分析し、SoCのピーク性能ポテンシャルを定量化する。なお、スコアはテストに使用するデバイス、ファームウェア、テスト条件によって変動する可能性がある。
3.1. AnTuTu Benchmark (v9 & v10)
AnTuTuは、CPU、GPU、メモリ(MEM)、ユーザーエクスペリエンス(UX)の性能を総合的に測定する人気のベンチマークである。
- 報告スコア (v10): スコアはおおむね140万点台から150万点を超える範囲で報告されている。
- nanoreview.net: 平均 約1,489,987点 (CPU 386k, GPU 530k, MEM 303k, UX 270k)。特定デバイスのスコア例: Xiaomi 13T Pro (複数、約1.4M~1.54M), iQOO Neo 8 Pro (約1.53M), Vivo V40 Pro (約1.5M~1.56M) 17。
- MySmartPrice (Vivo V40 Proテスト): 1,461,727点 (CPU 402k, GPU 498k, MEM 256k, UX 304k) 12。
- 91mobiles (デバイス特定せず、平均または特定テストか): 1,524,110点 (CPU 392k, GPU 577k, MEM 255k, UX 298k) 13。
- 日本語情報源: 約150万点 27, 約151万点 28, Xiaomi 13T Pro 約143万点 29。 (注: Vivo X90 (おそらく9200) で約149万点との報告あり 30)。
- 初期リーク (Vivoデバイス): 1,338,597点 (CPU 298k, GPU 594k, MEM 263k, UX 212k) – 試作段階の可能性ありと注記 31。
- 報告スコア (v9 – 現在は稀):
- 日本語情報源の推定: 総合 約130万点 (CPU 26万点, GPU 58万点) 32。 (注: Dimensity 9200は126万点のスコアでプロモーションされていた 5)。
Dimensity 9200+のAnTuTuスコアは、異なる情報源やデバイス間で顕著なばらつきを示している。スコアを比較すると 12、約133万点(リーク)から約156万点(ピーク)まで、20万点以上の幅があることがわかる。このばらつきは、デバイスの冷却ソリューションの違い、ファームウェアの最適化(特にスケジューラやサーマルリミット)、RAM/ストレージ構成(全体スコアへの影響は比較的小さいが)、テスト中のバックグラウンドプロセス、そして可能性としてはAnTuTuのサブバージョンの違い(33 でv10 OB1 vs OB2に言及あり)に起因すると考えられる。
特にGPUスコアの構成要素は強力であり、時に57万点~59万点を超えるが、ばらつきも見られる。これはオーバークロックされたImmortalis-G715を反映している。初期のリーク 31 では、総合スコアに対して非常に高いGPUスコア(594k)が示された。91mobiles 13 も高いGPUスコア(577k)を報告している。一方で、Nanoreviewの平均 17 はそれより低く(530k)、MySmartPrice 12 はさらに低い(498k)。これは、GPUのピークポテンシャルは非常に高いものの、それを安定して引き出すにはサーマルヘッドルームとデバイスのチューニングに大きく依存することを示唆している。
表 3.1: Dimensity 9200+ AnTuTu v10 ベンチマークスコア
総合スコア | CPU スコア | GPU スコア | MEM スコア | UX スコア | 出典サイト | テスト端末 (判明分) |
1,489,987 (平均) | 386,348 | 530,558 | 303,093 | 269,988 | nanoreview.net | (複数デバイス平均) |
1,534,769 | N/A | N/A | N/A | N/A | nanoreview.net | Vivo iQOO Neo 8 Pro |
1,477,178 | N/A | N/A | N/A | N/A | nanoreview.net | Xiaomi 13T Pro |
1,461,727 | 402,092 | 498,004 | 256,880 | 304,751 | MySmartPrice | Vivo V40 Pro |
1,524,110 | 392,576 | 577,207 | 255,761 | 298,576 | 91mobiles | (特定せず) |
1,338,597 (リーク) | 298,850 | 594,203 | 263,503 | 212,401 | NotebookCheck | Vivo (試作機か) |
1,502,816 | N/A | N/A | N/A | N/A | mobile-com.ne.jp | (特定せず) |
1,430,000 | N/A | N/A | N/A | N/A | note.com/smaho_diff | Xiaomi 13T Pro |
1,510,545 | N/A | N/A | N/A | N/A | nemunote.com | (特定せず) |
参考: D9200 | ||||||
1,468,431 (平均) | 350,846 | 570,425 | 261,583 | 285,577 | nanoreview.net | (複数デバイス平均) |
この表は、広く引用されるAnTuTuベンチマークの結果を統合し、性能範囲と構成要素の内訳を示すことで、スコアのばらつきを考慮した比較を可能にする。
3.2. Geekbench スコア (v5 & v6)
Geekbenchは主に、シングルコアおよびマルチコアのワークロードにおけるCPUの素の性能を測定する。Geekbench 6は、より実世界に関連性の高いサブテストを含んでいる。
- 報告スコア (Geekbench 6):
- nanoreview.net (平均): シングルコア 約2090, マルチコア 約5532 17。
- MySmartPrice (Vivo V40 Pro): シングルコア 1039, マルチコア 3460。(これらのスコアはGB6としては異常に低く、誤報またはGB5の結果をGB6とラベル付けした可能性あり) 12。
- NotebookCheck (平均): シングルコア 約1806 (最小1491, 最大2120), マルチコア 約4659 (最小3787, 最大5530) 23。
- GSMArena / Telegrafi (リーク, Vivoデバイス): シングルコア 2121, マルチコア 5655 7。
- HuaweiCentral (Vivo X90s): シングルコア 2117, マルチコア 5583 34。
- nanoreview.net (SD 8 Gen 2との比較): シングルコア 2090, マルチコア 5532 21。
- 報告スコア (Geekbench 5):
- NotebookCheck (平均): シングルコア 約1541, マルチコア 約4937 23。
- Android Benchmarks (Xiaomi 13T Pro): シングルコア 1434 (マルチコアはここではリストされていないが、上位のSD8G2端末より低いことが示唆される) 35。
- (参考: Dimensity 9200 on Vivo X90: シングルコア 1353, マルチコア 4055 36 または GB6平均 シングルコア 1949, マルチコア 5281 18)。
Geekbench 6のスコア、特にマルチコアは、報告されているGeekbench 5のスコアと比較して大幅な向上を示している。これはベンチマークの進化と、GB6がコア構成をより有効に活用している可能性を反映している。平均的なGB5マルチコア(約4937 23)と平均/ピークGB6マルチコア(約4659~5655 7)を比較すると、GB6のスコアが一般的に高いことがわかる。Geekbench 6は現代のワークロードとコアアーキテクチャをより良く反映するように設計されており、これが同じハードウェア上でGB5よりも高いマルチコア結果をもたらす理由かもしれない。
AnTuTuと同様に、Geekbenchスコアにもばらつきがあり、特にMySmartPriceの結果 12 は他の報告 7 と比較して異常値のように見える。リークや初期テストで報告されたピークスコア 7 は非常に高く、理想的な条件下での結果である可能性がある。MySmartPriceのスコア(1039/3460)12 は、他の全ての報告されている9200+のGB6スコア(シングル約1800-2100 / マルチ約4600-5600の範囲に集中)7 よりも著しく低い。これは、報告エラー(GB5だった可能性)、深刻なスロットリングが発生したデバイス、またはテスト実行の不具合を示唆している。リークからの高スコア 7 は、サーマルリミットが作動する前の短時間のバースト性能、あるいは最適化されたリリース前ファームウェアを反映している可能性がある。
表 3.2: Dimensity 9200+ Geekbench ベンチマークスコア
ベンチマーク Ver | シングルコア スコア | マルチコア スコア | 出典サイト | テスト端末 (判明分) |
Geekbench 6 | 2090 (平均) | 5532 (平均) | nanoreview.net | (複数デバイス平均) |
Geekbench 6 | 1039 (?) | 3460 (?) | MySmartPrice | Vivo V40 Pro |
Geekbench 6 | 1806 (平均) | 4659 (平均) | NotebookCheck | (複数デバイス平均) |
Geekbench 6 | 2121 (リーク) | 5655 (リーク) | GSMArena/Telegrafi | Vivo (試作機か) |
Geekbench 6 | 2117 | 5583 | HuaweiCentral | Vivo X90s |
Geekbench 5 | 1541 (平均) | 4937 (平均) | NotebookCheck | (複数デバイス平均) |
Geekbench 5 | 1434 | N/A | browser.geekbench | Xiaomi 13T Pro |
参考: D9200 | ||||
Geekbench 6 | 1949 (平均) | 5281 (平均) | nanoreview.net | (複数デバイス平均) |
Geekbench 5 | 1353 | 4055 | iphone-mania.jp | Vivo X90 |
この表は、異なるGeekbenchバージョンと情報源からのCPU性能を明確に比較し、シングルスレッドおよびマルチスレッド能力とスコアのばらつきの両方を浮き彫りにする。
3.3. 3DMark グラフィックスベンチマーク
3DMarkテストは、グラフィックス負荷の高いシーンを使用してGPU性能に特化して評価する。Wild Life Extremeは、Vulkan APIを使用した一般的なクロスプラットフォームテストである。
- 報告スコア (Wild Life Extreme):
- MySmartPrice (Vivo V40 Pro): 3,768 12。
- (注記: Sling Shot / Sling Shot Extremeは古いOpenGL ESテストであり、フラッグシップSoCではしばしば最高スコアに達する 12)。
- 報告スコア (Wild Life Performance – おそらく標準版):
- nanoreview.net (平均): スコア 11021, グラフィックステスト 65 FPS (テスト名は特定されていないが、Wild Life標準または他の3DMarkテストの可能性あり) 17。
- (参考: Dimensity 9200: スコア 12376, グラフィックステスト 73 FPS 18 – これは直感に反し、nanoreview上では9200が9200+平均より高くスコアリングしている。要調査/明確化、異なるテストの平均化またはデータ異常の可能性あり)。
- (参考: Snapdragon 8 Gen 2: スコア 約13003 21)。
報告されている3DMarkスコアには大きな不一致があり、特にMySmartPriceのWild Life Extremeスコア(3768)12 とnanoreviewの平均(11021、おそらく異なるテスト)17 の間で顕著である。さらに、nanoreviewの9200+の平均スコアは、同サイトの9200の平均スコア 18 よりも低い。スコア3768 12 はWild Life Extremeの典型的な値である。スコア11021 17 は、標準のWild Lifeテストの典型的な値に近い。これは、nanoreviewがExtremeではなく標準テストのスコアを平均している可能性を示唆している。nanoreviewの9200平均(12376)18 が9200+平均(11021)17 よりも高いという事実は非常に疑わしく、データ収集の不整合(異なるテストの平均化)、平均に大きく影響する外れ値、またはサイト上のデータエラーを示している可能性が高い。オーバークロックされた9200+ GPUは、9200よりも高いスコアを出すはずである。
表 3.3: Dimensity 9200+ 3DMark ベンチマークスコア
テスト名 | スコア | FPS (判明分) | 出典サイト | テスト端末 (判明分) |
Wild Life Extreme | 3,768 | N/A | MySmartPrice | Vivo V40 Pro |
Wild Life (推定) | 11,021 (平均) | 65 FPS (平均) | nanoreview.net | (複数デバイス平均) |
参考: D9200 | ||||
Wild Life (推定) | 12,376 (平均) | 73 FPS (平均) | nanoreview.net | (複数デバイス平均) |
参考: SD 8 Gen 2 | ||||
Wild Life (推定) | 13,003 (平均) | N/A | nanoreview.net | (複数デバイス平均) |
この表は、ゲーミング評価に重要なGPU性能指標に焦点を当て、報告データにおける潜在的な不整合を強調し、批判的な分析を促す。
3.4. その他の関連ベンチマーク
- GFXBench: 様々なシーンでのフレームレートに焦点を当てた、もう一つのGPU中心のベンチマーク。
- MySmartPrice (Vivo V40 Pro): Manhattan 7412フレーム (120fps), Car Chase 5916フレーム 12。
- 91mobiles: Manhattan (30分実行) 119 FPS, T-Rex 120 FPS 13。
- (参考 D9200: Manhattan 3.0 328fpsとの報告 22 – これは非常に高く見える、異なるManhattanバージョンまたはエラーの可能性あり)。
- PCMark: 一般的な生産性タスク(ウェブ閲覧、ビデオ編集、文書作成、写真編集)における性能を測定。
- 91mobiles: Work 3.0 Performance Score 11,856 13。
- Burnout Benchmark / CPU Throttling Test: 持続的な負荷下での性能安定性を測定。
- MySmartPrice (Vivo V40 Pro): 最大性能の69%にスロットリング 12。
- 91mobiles (8.5分実行): 最大性能の46.3%にスロットリング 13。
- YouTube (Golden Reviewer, 9200 vs 8G2 vs 8+G1比較): Dimensity 9200 (Vivo X90) が良好な持続性能を示し、Pixel 7 Proより優れているが、デバイス実装によっては冷却の良い8+G1/8G2にわずかに劣る可能性を示唆 37。(注: これは9200だが、スロットリング挙動の関連コンテキストとして)。
CPUスロットリングテストは、Dimensity 9200+が持続的な負荷下で潜在的に大幅な性能低下を示すことを示唆している。 12 (69%にスロットリング) および特に 13 (46.3%にスロットリング) の両方が、スロットリングテストで実質的な性能低下を報告している。これは、MediaTekが性能向上と同時に効率維持を主張していること 15 とはいくらか対照的である。これは、クロック向上 1 によってピーク性能は高いものの、その性能を維持するには積極的な熱管理が必要であり、重いゲームやストレステストのような要求の厳しい長時間のタスクではクロック速度の低下(スロットリング)につながることを示唆している。低下の度合い(46.3% vs 69%)は、やはりデバイスの実装差を指摘している。
4. CPU性能 詳細分析
アーキテクチャ 1 およびベンチマーク構成要素 12 に基づく分析を行う。
向上したクロック速度(X3 最大3.35GHz, A715 最大3.0GHz, A510 最大2.0GHz)1 が、Dimensity 9200に対する性能向上の主要因である。シングルコア性能は、主に高クロックのCortex-X3コアによって駆動される。Geekbench 6シングルコアスコアが約2100に達する 7 ことは、非常に強力なピークシングルスレッドスループットを示しており、アプリの読み込み時間や応答性に寄与する。
マルチコア性能は、X3コア、3基のA715コア、4基のA510コアの組み合わせから恩恵を受けるが、これら全てが9200よりも高いクロックで動作する。高いGeekbench 6マルチコアスコア(ピーク約5500-5600)7 は、並列化されたタスクを処理する優れた能力を示唆している。AnTuTu CPUスコア(ほとんどのv10テストで約38万~40万点 12)は、その特定のベンチマークの重み付け内での強力な全体的CPU能力を反映している。
ピークCPU性能は明らかに高いものの、スロットリングの結果 12 は、実際の重負荷使用時にこれらのピーク性能を安定して達成することが、デバイスの熱設計によっては困難である可能性を示唆している。高いクロック速度 1 は熱を発生させる。スロットリングテスト 12 は、持続的な負荷下で著しい性能低下を示している。これはトレードオフを示唆している:SoCは非常に高い性能レベルに到達できる(Geekbenchのようなピークベンチマークスコア 7 に反映される)が、そのレベルを維持するには発生した熱を放散する必要がある。冷却が不十分な場合、システムはクロック速度を低下させ(スロットリング)、持続性能が低下する。これは高性能モバイルSoCに共通の課題である。
5. GPU性能 詳細分析
アーキテクチャ 1 およびベンチマーク構成要素 12 に基づく分析を行う。
Immortalis-G715 MP11 GPUに対する17%のオーバークロック 1 が主要な強化点であり、トップティアのゲーミングおよびグラフィックスレンダリング性能を目指している。ハードウェアレイトレーシングのサポート 4 は、将来のゲーム/アプリにおける視覚的忠実度向上の可能性を提供するが、モバイルでの広範な採用はまだ発展途上である。
AnTuTu GPUスコアは高いポテンシャルを示す(ピーク約57万~59万点 13)が、ばらつきも見られる(一部テストでは約50万~53万点と低い 12)。これは、テストのGPU負荷が高い部分でのサーマルスロットリングに関連している可能性がある。3DMarkスコアは提供されたデータ内で一貫性がなく (17 vs 12)、これらの断片情報のみに基づいて決定的な結論を出すのは困難である。しかし、GFXBenchの結果(Manhattan 約120fps 12)は強力な性能を示しており、一般的な解像度で高いフレームレートを処理できる能力があることを示している。
MediaTekのHyperEngine 6.0、MAGT、Frame Rate Smoother 2.0 1 は、単なる処理能力を超えて、安定性と効率性に焦点を当て、ゲーミング体験を最適化することを目指している。主張されているFPSジッター削減(60%)と平均FPS向上(10%)1 は注目すべき目標である。
Immortalis-G715 GPU、特に9200+でオーバークロックされたものは、非常に高いピークグラフィックス性能を提供し、競合製品に挑戦する可能性があるが、熱負荷下での持続性能は依然として重要な要因である。17%のオーバークロック 1 は、理論上のFLOPSとレンダリング能力の向上に直接つながる。AnTuTu GPU 13 やGFXBench 12 での高いピークスコアはこれを裏付けている。しかし、GPUは主要な発熱源である。一般的なストレステストで見られたスロットリング 12 は、持続的なGPU性能にも影響を与える可能性が高い。したがって、ピーク性能は競合製品と同等かそれ以上かもしれないが、長時間のゲーミングセッションでその性能を維持する能力は、デバイスの冷却と電力管理に大きく依存する。これはCPUに関する分析と同様の結論である。
6. 競合比較: Dimensity 9200+ vs. Snapdragon 8 Gen 2
本セクションでは、Dimensity 9200+を同世代の主要な競合製品であるQualcomm Snapdragon 8 Gen 2(データが許す限り、標準版および「for Galaxy」版を含む)と直接比較する。
6.1. ベンチマーク直接比較
- AnTuTu v10:
- Snapdragon 8 Gen 2は、一部の比較では平均してわずかに高いスコアを示す傾向がある(21 では約155万 vs 約149万)が、他の比較では低い場合もある(12 では約134万 vs 約146万)。一部の情報源では9200+がわずかにリードするか、互角であると示されている 31。Dimensity 9200(非プラス)はSD 8 Gen 2より低いスコアである(25 では約146万 vs 約155万)。
- BajajFinservはSD 8 Gen 2の方が高いと報告している(86万 vs 80万 – 注: これらのスコアは異常に低く、v9または誤報の可能性あり)24。
- Geekbench 6:
- Dimensity 9200+は、直接比較やリーク情報において、標準のSD 8 Gen 2と比較してシングルコア(約2090-2121 vs 約1991-2005)およびマルチコア(約5532-5655 vs 約5274-5299)の両方で、わずかに高いピークスコアを示すことが多い 7。
- SD 8 Gen 2 “for Galaxy”(高クロック版)はこの差を埋めるか、上回る可能性がある 19。
- 3DMark (Wild Life / Wild Life Extreme):
- Snapdragon 8 Gen 2(Adreno 740)は、3DMark Wild Lifeにおいて一般的に高いスコアを示す(約13003 vs 約11021 – nanoreviewの潜在的に不整合な9200+スコアを使用)21。BajajFinservもSD 8 Gen 2がわずかに高いと報告している 24。
- これは、Adreno 740が、このベンチマークで測定される持続的なグラフィックス性能や効率において、オーバークロックされたImmortalis-G715に対して優位性を持っている可能性を示唆している(9200+の高いピークポテンシャルにもかかわらず)。
ベンチマーク比較は非常に接戦であることを示唆しており、Dimensity 9200+はピークCPUテスト(Geekbench)でリードする可能性がある一方、Snapdragon 8 Gen 2はGPU中心のテスト(3DMark)や、情報源やデバイスによっては総合的なAnTuTuスコアで優位性を示すことが多い。ベンチマークデータ 7 を集約すると、このパターンが明らかになる:9200+はGB6スコアで優れている 7、これはおそらく高いCPUクロックによるものである。SD 8 Gen 2は3DMarkで一貫して良好なスコアを記録しており 21、Adreno 740の強力で、おそらくより持続可能なGPU性能を示唆している。AnTuTuの結果は混在しており 12、ベンチマークの複合的な性質とデバイスチューニングへの感度を反映している。これは、どちらのチップも全ての合成テストで決定的な「勝利」を収めているわけではなく、性能リーダーシップは特定のワークロードに依存することを示している。
表 6.1: Dimensity 9200+ vs. Snapdragon 8 Gen 2 ベンチマーク比較スコア
ベンチマーク | Dimensity 9200+ スコア (代表値) | Snapdragon 8 Gen 2 スコア (代表値) | 出典例 (比較データ) |
AnTuTu v10 総合 | ~1,490,000 – 1,520,000 | ~1,550,000 (標準) | 12 |
Geekbench 6 シングルコア | ~2090 – 2120 | ~1990 (標準) | 8 |
Geekbench 6 マルチコア | ~5530 – 5650 | ~5300 (標準) | 8 |
3DMark Wild Life (推定) スコア | ~11,021 (?) | ~13,003 (標準) | 21 |
(注: スコアは平均値やピーク値であり、デバイスやテスト条件で変動します。SD 8 Gen 2 “for Galaxy”版はより高いスコアを示す可能性があります。)
6.2. アーキテクチャと機能の違い
- CPU: 両者ともCortex-X3プライムコアを使用するが、SD 8 Gen 2は独自の1+2+2+3構成(1x X3, 2x A715, 2x A710, 3x A510)を採用するのに対し、D9200+は1+3+4構成(1x X3, 3x A715, 4x A510)。SD 8 Gen 2標準版のX3クロックはわずかに低い(3.2GHz)が、「for Galaxy」版は高い(3.36GHz)D9200+の3.35GHzと比較して 19。
- GPU: Immortalis-G715 MP11 (D9200+) vs Adreno 740 (SD 8 Gen 2)。異なるアーキテクチャだが、両者ともVulkan 1.3のような先進機能をサポート。Adreno GPUは歴史的に性能と開発者サポート/最適化において強みを持つ 12。
- 接続性: 両者ともWi-Fi 7とBT 5.3をサポート。SD 8 Gen 2(X70モデム)はより高いピーク5Gダウンリンク速度を主張(10Gbps vs 7-7.9Gbps)20。
- AI: MediaTek APU vs Qualcomm Hexagon Processor。両者とも重要なAIアクセラレーション能力を提供する 12。
- 製造: 両者ともTSMC 4nmプロセスを使用 12。
異なるCPUコア構成(特にSD 8 Gen 2におけるA715/A710の混在 vs D9200+のA715のみ)は、異なるスレッド数にわたる性能と効率のバランスを取るための、明確に異なる設計哲学を表している。QualcommがSD 8 Gen 2に古いA710コアを新しいA715コアと共に含めたこと 19 は、中程度の負荷に対する面積、電力、性能のトレードオフに基づいた選択であった可能性が高い。一方、MediaTekは、より新しいA715パフォーマンスコアのみを使用する、見た目上はよりシンプルな構造を選択した 17。これが実際のマルチタスキングや効率にどのように影響するかは、生のベンチマークスコアと比較して複雑であり、OSスケジューラに大きく依存する。
6.3. パフォーマンスの位置づけと分析
Dimensity 9200+は直接的な競合製品であり、特にCPUタスクにおいて、Snapdragon 8 Gen 2と同等、あるいは時にはそれを上回るピーク性能を提供する 5。どちらを選択するかは、特定の優先順位によって決まる可能性がある:D9200+は潜在的により高いピークCPU性能、SD 8 Gen 2は潜在的により一貫性のある、またはより最適化されたGPU性能を持つ可能性がある [6.1のベンチマーク統合に基づく]。
ベンチマーク以外の要素、例えば特定のデバイス実装(冷却、ソフトウェア)、長期的なソフトウェアサポート、特定の機能最適化(例: GcamサポートはSnapdragonの方が良いことが多い 38)などが、エンドユーザー体験に影響を与える可能性がある。
MediaTekの「+」戦略(クロックを引き上げたミッドサイクルリフレッシュ版のリリース)は、Qualcommのフラッグシップ製品に対して年間を通じて競争力を維持することを可能にし、場合によっては競合チップの初期バージョンを一部の指標で追い越すことさえ可能にする。Dimensity 9200は2022年後半にSD 8 Gen 2と競合するために発売された 11。9200+は2023年中頃に、より高いクロックで発売された 1。このタイミングにより、MediaTekはプロセスの成熟度やビンニングを活用して性能を向上させ、特定のベンチマークでSD 8 Gen 2の性能に直接挑戦するか、それを超えることができた 7。これにより、次のフル世代チップ(Dimensity 9300など 31)が登場するまで、プレミアムティアでの自社製品の関連性を維持することができた。
7. 実使用評価
本セクションでは、合成ベンチマークを超えて、Dimensity 9200+が日常的なタスクやゲーミングでどのように動作するかを分析し、レビュー結果に基づいて熱やバッテリー寿命などの要因を考察する。
7.1. ゲーミング性能
強力でオーバークロックされたImmortalis-G715 GPUにより、要求の厳しいゲームを高設定・高フレームレートで実行する能力がある 1。ハードウェアレイトレーシングは、対応タイトルにおいて視覚的な忠実度を向上させる可能性を提供する 14。MediaTekのゲーミング技術(HyperEngine 6.0, MAGT, FRS 2.0)は、滑らかさ(ジッター低減)を改善し、ゲームプレイ中の電力消費を削減することを目指している 1。MOBA/FPSゲームで10-12%の省電力、競合比60%のジッター削減などが主張されている 1。
持続的な性能と安定性を検証するには、実際のゲーミングテスト(nanoreviewがSD 8 Gen 2向けにリストしているゲームFPS 21 のようなもの、ただしD9200+向けは示されていない)が必要である。
ピークゲーミング性能は優れているはずだが、長時間のゲーミングセッション中の持続性能は、潜在的なスロットリングのため、スマートフォンの冷却システムに依存する可能性が高い。高いGPUクロック 1 は高いピークFPSを可能にする。しかし、ゲーミングは持続的な重負荷である。ストレステストで見られたスロットリング 12 は、チップが熱くなるにつれて時間とともに性能が低下する可能性を示唆しており、デバイスに非常に効果的な冷却ソリューションがない限り、長時間のセッションでは平均FPSの低下やジッターの増加につながる可能性がある。MediaTekのFRS 2.0 1 はジッターを軽減することを目指しているが、大幅なスロットリングは依然として体験に影響を与える可能性がある。
7.2. アプリケーション性能とマルチタスク
高いシングルコアCPU性能 7 は、高速なアプリ読み込みと応答性の良いUIナビゲーションにつながるはずである。強力なマルチコア性能 7 は、高速なLPDDR5X RAM 15 およびUFS 4.0ストレージ 15 と組み合わさり、スムーズなマルチタスクと要求の厳しい生産性アプリの処理を可能にするはずである。PCMarkスコア(11,856 13)は、典型的な生産性ワークロードにおいてまずまずの性能を示唆しているが、これは一つのデータポイントに過ぎない。
7.3. 熱管理と性能スロットリング
前述の通り(3.4.1, 4.1, 7.1.1)、スロットリングは、最大性能の46~69%への性能低下を示すストレステストに基づくと、重要な要因であるように見える 12。これは、チップが非常に高速に到達できる一方で、デバイスメーカーがピークに近いレベルの性能を長期間維持するためには、堅牢な熱対策ソリューション(ベイパーチャンバー、グラファイトシートなど)が必要であることを示している。
負荷時の実際の温度(例:37 のDimensity 9200デバイスで40-41°C)は重要な指標だが、9200+デバイスに関する具体的なデータは提供された断片情報には限られている。
報告されている大幅なスロットリングは、向上したクロック速度/ピーク性能というマーケティング上の強調点と、熱的に制約のあるスマートフォン本体で達成可能な持続性能との間に、潜在的な乖離があることを示唆している。MediaTekは高いクロック 1 とベンチマークでの勝利 5 を宣伝している。しかし、独立したテストでは大幅なスロットリングが明らかになっている 12。これは、高いクロックによって可能になるピーク性能は短時間のバーストでのみ利用可能であり、時間経過に伴う平均性能は、デバイスのサーマルリミットによって管理されるレベルに向かって大幅に低下する可能性があることを意味する。一貫したピーク性能を期待するユーザーは、デバイスが激しくスロットリングする場合、失望する可能性がある。
7.4. 電力効率とバッテリー寿命への影響
MediaTekは、クロック向上にもかかわらず、電力効率の改善または維持を明確に主張している 1。
- 主張には、人気アプリ(メッセージング35%、Wi-Fiホットスポット36%)、ゲーム(10-21%)、ディスプレイ電力(EnergySmart Screen 2.0経由で10%)における「競合代替品」に対する具体的な節約が含まれる 1。
- ゲーム特有の節約も主張されている:MOBA/FPSタイトルで10-12% 1。
- AI関連の省電力も強調されている(例:AISRで第5世代APU比45%低電力)1。
実際のバッテリー寿命は、デバイス(バッテリーサイズ、ディスプレイ、最適化)と使用パターンに大きく依存する。PCMarkバッテリー寿命テストの結果(14時間36分 13)は一つのデータポイントを提供するが、比較コンテキストが必要である。一部のユーザーディスカッションでは、DimensityとSnapdragon相当品の間でバッテリー寿命は同等であるが、発熱に関する懸念はDimensityチップの方がより一般的かもしれないと示唆されている 38。
MediaTekが様々なコンポーネント(CPU, GPU, AI, ディスプレイ, 接続性)1 にわたる電力効率向上を大きく強調していることは、高性能が必ずしもバッテリー寿命の悪化を意味するという認識に対抗し、Qualcommの伝統的な効率性の強みと競争するための戦略的な努力を示唆している。MediaTekは、様々なユースケースでの具体的な節約率 1 を繰り返し強調し、UltraSave 3.0 1 やEnergySmart Screen 1 のような技術を宣伝している。製品ページやプレスリリース全体でのこの一貫したメッセージングは、潜在的な購入者やメーカーに対し、向上したクロックの電力コストが管理されていることを保証するために、性能と並んで効率性を主要なセールスポイントとして意図的に焦点を当てていることを示している。しかし、その検証には独立した、デバイス固有のバッテリーテストが必要である。
8. AI性能評価
APU 680/690の能力をMediaTekの主張に基づいて評価する 1。主張には、第5世代APUと比較して最大35%の性能向上と45%の低電力(AISR)が含まれる 1。AITuTuやETH AI BenchmarkのようなAIベンチマークの結果は要求されたが、Dimensity 9200+に関する具体的な結果は提供された断片情報には存在しない。(注: D9200のAPU 690は、第5世代と比較してETHZ5.0スコアが35%高速であることを示した 11)。
AIは様々な機能に活用されている:
- イメージング: AI-NR, AI-PQ+, AIセマンティックセグメンテーション, AIモーションアンブラー 1。
- ディスプレイ: AI SDR/HDR変換, 適応輝度制御 1。
- 省電力: 接続性(5Gモデム)および視覚タスク(AI-SR)におけるAI駆動最適化 1。
- ゲーミング: AI-VRS 16。
MediaTekはまた、オンデバイス生成AI機能も探求しており、将来のAPUを活用する可能性がある(Llama 2を使用したDimensity 9300開発の文脈で言及)39。
9200+に関する具体的なAIベンチマークスコアは断片情報には欠けているが、MediaTekがプラットフォーム全体でAI駆動機能を一貫して強調していることは、単なるCPU/GPUパワーを超えてユーザーエクスペリエンスを向上させる上でAPUの重要性が増していることを裏付けている。イメージング 1、ディスプレイ 1、省電力 1、さらにはゲーミング 16 におけるAI活用機能の広範なリストは、APUが単なるベンチマークのためだけでなく、カメラ品質、視覚体験、効率性の向上といった、宣伝されている多くの改善を提供するために不可欠であることを示している。この傾向は、AI処理がモバイルSoC差別化の中核的な柱になりつつあることを示唆している。
9. 結論
本レポートの主要な調査結果を要約する。Dimensity 9200+は、Dimensity 9200と比較してCPUおよびGPUのクロック速度を向上させることにより、顕著な性能を提供する強力なフラッグシップSoCである 1。ベンチマーク性能は非常に競争力があり、ピークCPUテストでは標準のSnapdragon 8 Gen 2に匹敵するか、しばしばそれを上回り、GPUも非常に高いポテンシャルを示している 7。
実使用性能は強力であるが、要求の厳しい持続的なワークロードではサーマルスロットリングによって制限される可能性があり、デバイス実装の重要性を浮き彫りにしている 12。MediaTekは、電力効率の向上と、Wi-Fi 7、ハードウェアレイトレーシング、プラットフォーム全体にわたる広範なAI統合といった先進機能を強調している 1。
総合的な位置づけとして、Dimensity 9200+はMediaTekのプレミアムティアにおける地位を固め、Qualcommのフラッグシップ製品に対する魅力的な代替案を提供する。特に、ピークCPU性能と先進的な接続機能を優先し、かつデバイスが効果的に熱を管理できる場合に、その価値を発揮する。
引用文献
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