MSI SPATIUM M580 PCIe 5.0 NVMe M.2 2TB FROZR SSD ベンチマークまとめ

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1. はじめに

PCIe 5.0対応NVMe SSD市場は成熟期を迎え、初期の10GB/sクラスの製品から、12GB/sを超える第二世代、あるいは「5.5世代」とも呼べる高性能モデルが登場しています 1。この高速化競争の中で、MSIは最新フラッグシップモデルとして「SPATIUM M580 PCIe 5.0 NVMe M.2 FROZR」を投入しました。本製品は、PCIe 5.0インターフェースに最適化され、Phison社のハイエンドコントローラー「PS5026-E26」と、Micron社の最新232層3D TLC NANDフラッシュメモリ(2400 MT/s動作)を組み合わせています 2。これにより、2TBモデルでは公称スペックとしてシーケンシャルリード最大14,600MB/s、シーケンシャルライト最大12,700MB/sという、現行コンシューマ向けSSDで最高クラスの転送速度を実現しています 5

M580 FROZRの最大の特徴の一つは、その巨大なパッシブ冷却ヒートシンク「FROZR」です 6。このヒートシンクは、3本のコアパイプ(ヒートパイプ)と多数のアルミニウムフィンで構成され、ファンレスでありながら最大20℃の温度低下を実現し、高負荷時でもサーマルスロットリングを抑制して安定した性能を維持することを目指しています 2

本レポートでは、日本語および英語のテクノロジーレビューサイトやハードウェア情報サイトから収集した情報に基づき、MSI SPATIUM M580 FROZR 2TBモデルのベンチマークパフォーマンス、FROZRヒートシンクの冷却性能、実使用環境での挙動、そして主要な競合製品との比較分析を行い、その性能上の長所と短所、市場における位置づけを明らかにすることを目的とします。

2. ベンチマークパフォーマンス分析

2.1. シーケンシャル性能

MSI SPATIUM M580 FROZR 2TBは、公称値に近い、あるいはそれを上回る非常に高いシーケンシャル性能を示しています。

  • CrystalDiskMark: 大容量ファイル(SEQ1M Q8T1)のテストでは、リード約14,466MB/s、ライト約12,934MB/sという公称値に迫る結果が報告されています 5。別のテストでは、空き容量が多い状態(1%使用時)でリード約15GB/s、ライト約13GB/sを記録したとの報告もあります 12。Q1T1(単一キュー・単一スレッド)でもリード約8,856MB/s、ライト約10,306MB/sと高速です 5
  • ATTO Disk Benchmark: 2MB以上のファイルサイズでは、リード・ライト共に11GB/sから13GB/sの速度が確認されており、あらゆるファイルサイズでスムーズかつ安定した動作を示します 12。他のレビューでも、転送サイズに関わらず最高クラスの性能を発揮し、テストされたドライブの中で最速グループに入ると評価されています 6
  • SiSoft SANDRA: ファイルシステムテスト(シーケンシャル性能重視)において、M580 FROZRはテスト対象の中でトップの成績を収め、強力なシーケンシャル性能を裏付けています 6
  • HD Tune Pro: 240GBのファイル書き込みテストにおいて、平均書き込み速度9,658MB/s、平均読み込み速度11,279MB/sを記録しました 5

競合製品との比較では、M580 FROZRはシーケンシャル性能においてCrucial T700/T705やSeagate FireCuda 540などの他のPhison E26コントローラー搭載ハイエンドPCIe 5.0 SSDと同等か、それを上回る性能を示すことが多く、現行最速クラスの一角を占めています 2。特に、より高速な2400MT/s NANDを採用している点が、1600MT/sや2000MT/sのNANDを採用する初期のGen5 SSDに対するアドバンテージとなっています 2

2.2. ランダム性能

ランダムアクセス性能は、OSの起動やアプリケーションの応答性など、体感速度に大きく影響する指標です。

  • CrystalDiskMark: ランダム4KBアクセス(RND4K Q32T16)では、リード約5,308MB/s、ライト約3,991MB/sを記録しています 5。低キュー深度(RND4K Q1T1)では、リード約771MB/s、ライト約555MB/sでした 5
  • AS SSD Benchmark: 4Kランダムアクセスではリード79.50MB/s、ライト279.88MB/s、高キュー深度(4K-64Thrd)ではリード3,268.56MB/s、ライト4,825.07MB/sという結果が得られています 5。アクセス時間はリード0.015ms、ライト0.180msと非常に高速です 5。総合スコアは12,940点と高い値を示しました 5
  • IOMeter: ワークステーションパターンや4Kランダムアクセスパターンを用いたテストでは、他のPhison E26ベースのドライブと比較して、特に高キュー深度においてわずかに後れを取る場面が見られました 6。平均帯域幅やレイテンシに関しても、最上位グループには入るものの、常にトップというわけではありませんでした 6。ただし、低キュー深度の性能はコンシューマーワークロードにおいてより重要であり、その点では十分な性能を発揮しています 6。別のテスト(Iometer)では、負荷が高くなるにつれて競合に対してわずかな優位性を示す結果も報告されています 2

競合製品との比較では、ランダム性能、特に低キュー深度(Q1T1)における性能は、PCIe 4.0の最上位モデル(例:Kingston KC3000)と比較して飛躍的な向上とは言えない場合があります 6。これはPhison E26コントローラーと現行NANDの特性に起因する可能性があり、今後のファームウェアやNAND技術の成熟による改善が期待されます 2。MSIが公称ランダムIOPS値を明示していない点も指摘されています 2

2.3. 実使用想定パフォーマンス

ベンチマークスコアだけでなく、実際の使用感を反映するテストも重要です。

  • AS SSD Copy-Benchmark: Windowsのファイルコピーを模したテストでは、ISO(大容量ファイル2つ)で4,672.31MB/s (0.49秒)、Program(多数の小容量ファイル)で1,463.50MB/s (4.81秒)、Game(大小混合ファイル)で2,913.98MB/s (2.37秒)という転送速度/所要時間を記録しました 5
  • PCMark 10 Storage Benchmark: 実アプリケーションのトレースに基づいたテストでは、競合のハイエンドPCIe 5.0 SSD(例:Crucial T700/T705)とほぼ同等の高いスコア、帯域幅、低レイテンシを示す傾向があります 15。ただし、テスト環境やバージョンによっては、PCIe 4.0の高性能モデルとの差が、価格差ほど大きくない場合もあります 2。具体的なスコアは、参照した資料からは確認できませんでした 11
  • 3DMark Storage Benchmark: ゲーム関連のトレースに基づいたテストでも、PCMark 10と同様に、競合ハイエンドSSDと遜色ない性能が期待されます 15。具体的なスコアは確認できませんでした 11
  • ゲームロード時間: FFXIVベンチマークのロードタイムや、Horizon Forbidden Westの起動時間などが測定されていますが、具体的な数値データは限定的です 11。一般的に、現状のゲームにおいては、SATA SSDやPCIe 3.0/4.0 SSDと比較しても、PCIe 5.0 SSDによるロード時間短縮効果は限定的であると指摘されています 19。DirectStorageのような将来の技術が普及すれば、高帯域幅が活かされる可能性はあります 3
  • 大容量ファイル転送: 2TBモデルのSLCキャッシュサイズは約210GB~220GBと報告されています 2。キャッシュ枯渇後の持続書き込み速度は、レビューによって評価が分かれますが、あるテストではキャッシュ枯渇後に速度が3分の1に低下したものの、PCIe 4.0 SSDと比較すれば低下率は小さいとされています 12。別の4TBモデルのレビューでは、キャッシュ枯渇後の持続書き込み速度が約3.3GB/sと非常に高い値を示したと報告されています 16。この大容量SLCキャッシュと高い持続性能は、大容量ファイルのコピーや編集作業において有利です。
  • アプリケーション起動時間: OSの起動やアプリケーションの起動時間短縮において、SSDのアクセス時間が重要ですが、アクセス時間自体はSATA SSDの時代から大きく変わっていません 19。そのため、PCIe 3.0/4.0の高速SSDからの乗り換えでは、体感できるほどの劇的な差は感じにくい可能性があります 19

総じて、M580 FROZR 2TBは、特に大容量データのシーケンシャルアクセスや、将来的なゲーム技術(DirectStorage)を見据えた場合には非常に高性能ですが、現状の一般的なPC利用やゲームにおいては、その性能をフルに活かせる場面は限定的であり、PCIe 4.0のハイエンドSSDとの体感差は小さい可能性があります 12

3. FROZRヒートシンクの冷却性能評価

PCIe 5.0 SSDは、その高い性能と引き換えに発熱が大きいという課題があります。MSI SPATIUM M580 FROZRは、この課題に対応するため、大型のパッシブヒートシンク「FROZR」を標準搭載しています。

  • ヒートシンク構造: FROZRヒートシンクは、コントローラーやNANDフラッシュとの接触面積を最大化するように平坦化された3本の「コアパイプ」(ヒートパイプ)と、多数のアルミニウムフィンを組み合わせたタワー型構造を採用しています 2。この設計により、熱を効率的に拡散し、エアフローによる放熱を促進します 9
  • 冷却性能: MSIは、このヒートシンクによりSSDの動作温度を最大で20℃低下させることができると主張しています 3
  • 実測温度とサーマルスロットリング: 複数のレビューで、FROZRヒートシンクの優れた冷却性能が確認されています。CrystalDiskMarkを4~5回連続で実行しても、温度は50℃に達しなかったという報告があります 12。別のレビュー(4TBモデル)では、負荷の高いCDM x9シーケンシャルテストを3回連続実行した際の最大温度は57℃に抑えられ 4、さらに別の高負荷書き込みテスト中のヒートシンク表面温度は62℃と報告されています 28。これらのテストにおいて、サーマルスロットリングによる性能低下は観察されませんでした 2。適切なケース内エアフローがあれば、通常の使用でスロットリングが発生する可能性は低いと考えられます 2
  • パッシブ冷却の利点: ファンレスのパッシブ冷却であるため、動作音がなく静音性に優れています 3。また、ファン付きクーラーのように別途電源ケーブルを接続する必要がなく、配線がすっきりする利点もあります 3
  • 物理的制約: FROZRヒートシンクの最大の欠点はその大きさです。公称の高さは約71.7mm 8 から72mm 2 と非常に高く、他のPCパーツとの物理的な干渉が問題となる可能性があります。特に、CPUソケットに近いM.2スロットに搭載する場合、大型の空冷CPUクーラーと干渉したり 2、マザーボードによってはVRMヒートシンクなどを取り外す必要が生じる場合があります 12。隣接するPCIeスロットにグラフィックカードを搭載する場合、カード裏面のバックプレートの厚みが4.5mm以下でないと干渉する可能性があるため、注意が必要です 11。また、その高さ故にPlayStation 5への搭載は不可能です 2。マザーボード標準のM.2ヒートシンクは取り外す必要があります 6

FROZRヒートシンクは、PCIe 5.0 SSDの発熱を効果的に抑制し、性能を最大限に引き出す上で非常に有効なソリューションですが、導入前に自身のPC環境における物理的なクリアランスを十分に確認する必要があります。

4. 競合製品との比較

MSI SPATIUM M580 FROZR 2TBは、他のハイエンドPCIe 5.0 SSDと競合します。ここでは主要な競合製品との比較を行います。

4.1. Crucial T700/T705

Crucial T700およびその改良版であるT705は、M580 FROZRと同様にPhison E26コントローラーとMicron製232層NANDを採用しており、直接的な競合製品となります 13

  • 基本スペック: コントローラーとNANDが共通しているため、基本的な性能特性は類似しています 13。T705はT700からファームウェアの改良やより高速なNAND(T700の2000MT/sに対し、T705はM580と同じ2400MT/sの可能性)を採用し、さらなる性能向上を図っています 14
  • ベンチマーク比較: シーケンシャル性能では、M580 FROZRとT705は公称値でリード14.6GB/s vs 14.5GB/s、ライト12.7GB/s vs 12.7GB/sと拮抗しています 6。実際のベンチマークでも、両者は非常に近い性能を示すことが多いです 13。一部のテスト(例:SANDRA)ではT705がM580(またはM570 Pro)を上回る結果も見られますが 14、IOMeterなどではほぼ同等です 14。ランダム性能や実使用想定テストでも、両者の差は小さい傾向にあります 14
  • 冷却ソリューション: Crucial T700/T705もヒートシンク付きモデルを用意していますが、M580 FROZRのタワー型ヒートシンクほど巨大ではありません 21。M580 FROZRの冷却能力は非常に高いですが、その分、物理的な制約が大きくなります。一方、T700/T705のヒートシンクはより標準的なサイズですが、高負荷が長時間続くとM580 FROZRよりもスロットリングが発生しやすい可能性があります 22

4.2. Seagate FireCuda 540

Seagate FireCuda 540は、M580 FROZRよりも少し前に登場したPCIe 5.0 SSDで、同じPhison E26コントローラーとMicron 232層NANDを採用していますが、NANDの動作速度がM580よりも低い(1600MT/sまたは2000MT/s)初期世代の製品です 30

  • 基本スペック: 公称シーケンシャル速度はリード・ライト共に最大10,000MB/sであり、M580 FROZR(最大14,600MB/sリード、12,700MB/sライト)よりも低く設定されています 31
  • ベンチマーク比較: 各種ベンチマークにおいて、FireCuda 540はM580 FROZRやCrucial T700/T705に比べて低いスコアとなります 15。ただし、PCIe 4.0 SSDと比較すれば依然として高速です。
  • 耐久性と保証: FireCuda 540は、同容量のMSI Spatium M570(M580の前世代モデル)と比較して、より高いTBW(総書き込みバイト数)とMTBF(平均故障間隔)を持ち、さらに3年間のデータ復旧サービスが付帯する点が特徴です 15。M580 FROZRのTBW(2TBで1400TBW)も高いですが、データ復旧サービスはありません 2
  • 冷却ソリューション: FireCuda 540は通常、ヒートシンクなし(または薄型のヒートシールドのみ)で販売されており、ユーザーが別途冷却ソリューションを用意する必要があります 30。これは、強力な冷却機構を標準装備するM580 FROZRとの大きな違いです。

4.3. その他のPCIe 5.0 SSD

市場には他にもPhison E26コントローラーを搭載したPCIe 5.0 SSDが存在します(例:Corsair MP700シリーズ、Gigabyte Aorus Gen5など)6。これらの製品との性能差は、主に採用されているNANDの速度(1600/2000/2400 MT/s)とファームウェアのチューニング、そして冷却ソリューションに依存します 2。M580 FROZRは、現状最速クラスの2400 MT/s NANDと強力なパッシブ冷却を組み合わせることで、持続的な高性能を実現している点が特徴です。一部の競合製品は小型ファン付きのアクティブ冷却を採用していますが、これらは騒音や追加の電源ケーブル接続といったデメリットがあります 3

5. 性能上の長所と短所

これまでの分析に基づき、MSI SPATIUM M580 FROZR 2TBの性能上の長所と短所をまとめます。

5.1. 長所

  • クラス最高レベルのシーケンシャル性能: 最大リード14.6GB/s、最大ライト12.7GB/sという公称値に迫る、あるいはそれを超えるシーケンシャル性能は、大容量データの転送や処理において圧倒的な速度を提供します 2
  • 優れた冷却性能による持続的なパフォーマンス: 大型のFROZRヒートシンクは、高負荷時でも効果的に熱を排出し、サーマルスロットリングの発生を抑制します。これにより、長時間にわたって最高のパフォーマンスを維持できます 2
  • 大容量SLCキャッシュと高い持続書き込み性能: 約220GBのSLCキャッシュと、キャッシュ枯渇後も比較的高速な書き込み速度により、大容量ファイルの連続書き込みにも耐えられます 2
  • 高い耐久性と信頼性: 2TBモデルで1400TBWという高い書き込み耐性と、160万時間のMTBF、さらに5年間の長期保証が付帯しており、安心して使用できます 2。LPDC ECCやエンドツーエンドデータ保護機能も搭載されています 3
  • 静音性: パッシブ冷却方式のため、ファンによる騒音がなく、静かな動作環境を維持できます 3

5.2. 短所

  • 高価格: 最新世代のハイエンドSSDであり、高性能な冷却機構を備えているため、価格は非常に高価です。PCIe 4.0の高性能SSDと比較すると、コストパフォーマンスの点で劣ります 2
  • 一部ベンチマークでの不安定な挙動: Aida64などの特定のベンチマークテストにおいて、グラフに稀な落ち込みが見られるなど、挙動が不安定になる場合があるとの報告があります 12
  • ランダム性能の限界: シーケンシャル性能は飛躍的に向上していますが、ランダムアクセス性能、特にOSやアプリケーションの応答性に影響する低キュー深度での性能は、PCIe 4.0の最上位モデルからの劇的な向上とは言えない場合があります 2
  • 大型ヒートシンクによる物理的な互換性の問題: FROZRヒートシンクの高さ(約72mm)は、PCケース内のスペースや、大型CPUクーラー、隣接するグラフィックカードとの干渉を引き起こす可能性があります。購入前に十分な確認が必要です 2
  • 実使用環境での性能向上が限定的: 現状の多くのアプリケーションやゲームでは、M580 FROZRの持つポテンシャルを最大限に引き出すことは難しく、PCIe 4.0 SSDからの乗り換えで体感できる性能向上が限定的である可能性があります 2
  • 高い消費電力: 特に高負荷時には最大11.5W程度の電力を消費し、PCIe 4.0 SSDと比較して高めです 2。アイドル時の消費電力も比較的高めとの指摘もあります 15

6. 価格と市場での位置づけ

MSI SPATIUM M580 FROZR 2TBは、その高性能と先進性に見合ったプレミアム価格帯に位置づけられています。

  • 価格情報:
  • 日本: 発売当初(2024年5月末)の価格は、複数のオンラインストアで約50,110円から64,012円程度の範囲で販売されていました 8。Kakaku.comでは最安値が50,110円(税込)と記録されています 34。Amazon.co.jpでは、時期によって変動がありますが、61,131円からの出品が確認されています 35
  • 米国: NeweggやMSI公式ストア、Walmart(Newegg経由)などでは、329.99ドルで販売されています 6。Ebayでは389.39ドルでの出品も見られます 43
  • その他: ウクライナのレビューサイトでは、非公式価格として16,000フリヴニャ以上と記載されていました 12
  • 競合製品との価格比較: Crucial T705 2TB(ヒートシンク付き)が約320ドル前後 21、Corsair MP700 Pro 2TBが約230ドル 39、Samsung 9100 Pro 2TBが約300ドル 39 で販売されている例があり、M580 FROZR 2TB(約330ドル)は、これらの最上位クラスの競合製品と同等か、やや高めの価格設定となっています。一方で、PCIe 4.0の4TBモデルよりも高価であるとの指摘もあります 12
  • ターゲットユーザー: 本製品は、最高のパフォーマンスを求めるPCエンスージアスト、最新技術をいち早く導入したいユーザー、そして大容量データを高速に扱う必要のあるコンテンツクリエイターやプロフェッショナルを主なターゲットとしています 2
  • 費用対効果: M580 FROZRは現時点で最高クラスの性能を提供しますが、その価格は非常に高価です。現状の一般的なPC利用やゲーミングにおいて、その性能をフルに活用できる場面は限られており、PCIe 4.0のハイエンドSSDと比較した場合、費用対効果の観点からは疑問符が付く可能性があります 2。将来的なソフトウェアやプラットフォームの進化(DirectStorageなど)によって、その価値が高まる可能性はありますが、現時点では、価格に見合うだけの明確なメリットを全てのユーザーが享受できるわけではありません。

7. 結論

MSI SPATIUM M580 PCIe 5.0 NVMe M.2 2TB FROZRは、現行のコンシューマ向けSSD市場において、間違いなく最高峰の性能を持つ製品の一つです。Phison E26コントローラーと高速な2400 MT/s Micron 232層NANDの組み合わせにより、最大14GB/sを超える圧倒的なシーケンシャルリード/ライト性能を実現しています。さらに、大型のパッシブヒートシンク「FROZR」は、高負荷時でもサーマルスロットリングを効果的に抑制し、静音性を保ちながら持続的なハイパフォーマンスを可能にします。これは、特に長時間のデータ転送や高負荷作業を行うユーザーにとって大きな利点となります。

一方で、その卓越した性能にはいくつかのトレードオフが存在します。まず、価格が非常に高価であり、多くのユーザーにとってはオーバースペックとなる可能性があります。現状のPCエコシステムでは、特にゲームのロード時間や一般的なアプリケーションの応答性において、PCIe 4.0のハイエンドSSDとの体感差は限定的です。また、巨大なFROZRヒートシンクは、物理的な互換性の問題を引き起こす可能性があり、導入前の確認が不可欠です。ランダムアクセス性能に関しても、PCIe 4.0からの飛躍的な向上とは言えず、今後の改善が期待される領域です。

現時点において、PCIe 5.0 SSDの導入は、将来の技術(DirectStorageなど)への投資、あるいは純粋に最高のスペックを追求するエンスージアスト向けの選択と言えます。MSI SPATIUM M580 FROZR 2TBは、以下のようなユーザーに推奨されます。

  • 常に最新かつ最高のハードウェア性能を求めるPCエンスージアスト。
  • 大容量ファイルの転送や編集、レンダリングなど、ストレージ性能がボトルネックとなりうる高負荷な作業を日常的に行うコンテンツクリエイターやプロフェッショナル。
  • 冷却性能と静音性を重視し、サーマルスロットリングによる性能低下を避けたいユーザー(ただし、物理的な搭載スペースが確保できる場合に限る)。

一般的なゲーマーやPCユーザーにとっては、よりコストパフォーマンスに優れたPCIe 4.0 SSDが依然として合理的な選択肢となるでしょう。しかし、予算に制約がなく、妥協のない最高のストレージ性能と冷却ソリューションを求めるならば、MSI SPATIUM M580 FROZR 2TBは非常に魅力的な選択肢となります。

引用文献

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  2. MSI Spatium M580 Frozr 2TB SSD review: oh my goodness | Club386, 4月 28, 2025にアクセス、 https://www.club386.com/msi-spatium-m580-2tb-ssd-review-oh-my-goodness/
  3. Review: MSI Spatium M580 FROZR PCIe 5.0 NVMe SSD – 14GB/s – www.guru3d.com, 4月 28, 2025にアクセス、 https://www.guru3d.com/review/msi-spatium-m580-frozr-pcie-50-nvme-ssd-review-14gb-s/
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  5. TEST: MSI SPATIUM M580 FROZR 2TB – SSD-Tester, 4月 28, 2025にアクセス、 https://ssd-tester.com/msi_spatium_m580_2tb.html
  6. MSI Spatium M580 FROZR Review: Super-Fast SSD Tower Of Power | HotHardware, 4月 28, 2025にアクセス、 https://hothardware.com/reviews/msi-spatium-m580-frozr-ssd-review
  7. MSI、SPATIUMシリーズでPCIe Gen5対応のM.2 SSD「SPATIUM M580 PCIe 5.0 NVMe M.2 2TB FROZR」を発売 – PR TIMES, 4月 28, 2025にアクセス、 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000949.000053749.html
  8. MSI SPATIUM M580 PCIe 5.0 NVMe M.2 2TB FROZR|M580PCIE5.02TB – ジョーシン, 4月 28, 2025にアクセス、 https://joshinweb.jp/peripheral/53600/0824142355824.html
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  43. MSI SPATIUM M580 PCIe 5.0 NVMe M.2 2TB FROZR Solid State Drive (SSD) – | eBay, 4月 28, 2025にアクセス、 https://www.ebay.com/itm/266947426583
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