NVIDIA Quadro RTX 5000 ベンチマークまとめ

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1. はじめに

NVIDIA Quadro RTX 5000の概要とターゲット市場

NVIDIA Quadro RTX 5000は、プロフェッショナルなワークステーション向けに設計されたハイエンドグラフィックスカードです 1。このカードは、3Dデザイン、CAD(コンピュータ支援設計)、デジタルコンテンツ制作、ディープラーニングといった、高度なグラフィック処理能力を要求される分野のプロフェッショナルユーザーを主なターゲットとしています 1。Quadro RTX 5000は、NVIDIAのTuringアーキテクチャを基盤としており、リアルタイムレイトレーシングとAI(人工知能)によるアクセラレーション機能を備えている点が大きな特徴です 5。これらの先進的な機能により、複雑なモデルやシーンのレンダリング、高度なシミュレーション、そしてAIを活用したワークフローの高速化が期待されます。

レポートの目的と範囲

本レポートは、NVIDIA Quadro RTX 5000の様々なベンチマーク結果を詳細に分析し、その性能特性、強み、そして潜在的な弱点を明らかにすることを目的としています。この分析を通じて、Quadro RTX 5000がプロフェッショナルな用途においてどのようなパフォーマンスを発揮するのかを深く理解することを目指します。レポートの範囲は、一般的な性能概要から始まり、レンダリング、CAD、ディープラーニングといった主要な用途における個別のベンチマーク結果、競合する他のプロフェッショナル向けGPUとの性能比較、ベンチマークテストに使用されたソフトウェアやシステム構成の詳細、オーバークロックによる性能向上に関するデータ、そして最終的な総合的な性能分析と結論を含みます。

2. 一般的なベンチマーク結果と性能概要

PassMark G3D Markなどの総合的なベンチマークスコア

グラフィックカードの総合的な性能を測る指標の一つであるPassMark G3D Markにおいて、NVIDIA Quadro RTX 5000は15,656というスコアを記録しています 2。このスコアを競合製品と比較すると、例えばNVIDIAのよりハイエンドなプロフェッショナルGPUであるRTX A4000(19,583)、TITAN RTX(20,221)、RTX A6000(22,746)よりも低い結果となっています。一方で、同じQuadroシリーズのQuadro RTX 4000(15,225)やQuadro P6000(15,516)とはほぼ同等のスコアを示しています 2。これらの結果から、Quadro RTX 5000はPassMarkの総合スコアで見た場合、NVIDIAのハイエンドプロフェッショナルGPUラインナップの中では中位に位置づけられると考えられます。このことは、Quadro RTX 5000が特定のアプリケーションやワークロードに特化して高い性能を発揮する可能性や、PassMark G3D Markがプロフェッショナル用途のすべての側面を完全に捉えきれていない可能性を示唆しています。

モバイル版との比較

NVIDIA Quadro RTX 5000には、デスクトップ版に加えて、ノートPCやモバイルワークステーション向けのモバイル版も存在します 1。モバイル版は、デスクトップ版と同じTU104チップをベースとしていますが、電力効率や冷却機構の制約から、一般的にクロック速度が低く設定されており、搭載されているシェーダー数も異なる場合があります 1。さらに、モバイル版の中にも、110W、150W、そしてより低消費電力で薄型軽量のノートPC向けに設計されたMax-Qといった、異なる電力構成のバージョンが存在し、これらの違いがそれぞれの性能に影響を与えます 1。デスクトップ版と比較して、モバイル版は電力と冷却の制約を受けるため、性能差が生じるのは自然な傾向と言えるでしょう。特にMax-Q版は、薄型軽量化のために効率を重視した設計となっているため、デスクトップ版や標準的なモバイル版と比較して、性能がさらに低下する可能性があります。

消費電力、メモリ仕様などの基本情報

NVIDIA Quadro RTX 5000の基本的な仕様として、デスクトップ版の最大消費電力(TDP)は230Wです 2。一方、モバイル版のTDPは、バージョンによって110Wまたは150W、そしてMax-Q版では80Wから90Wとなっています 1。メモリに関しては、デスクトップ版、モバイル版ともに16GBのGDDR6メモリを搭載しており、メモリバス幅は256ビット、最大メモリ帯域幅は448 GB/sに達します 1。また、CUDAコア数は3072基、Tensorコア数は384基、そしてリアルタイムレイトレーシング処理を担うRTコア数は48基となっています 1。これらの仕様から、Quadro RTX 5000は、高い処理能力と大容量の高速メモリを必要とするプロフェッショナルアプリケーションに適していることがわかります。ただし、230Wというデスクトップ版の消費電力の高さは、適切な冷却機構と十分な電源容量を持つシステムが必要であることを意味します。

3. 用途別ベンチマーク結果

3.1 レンダリング

  – Blender Benchmark
    – オープンソースの3DモデリングソフトウェアであるBlenderのレンダリング性能を測るBlender BenchmarkにおけるQuadro RTX 5000の具体的なスコアは、提供された情報からは直接得られませんでした。しかし、RTX A6000との比較において、RTX A6000が5301.36というスコアを示していることが報告されています [10]。このことから、Quadro RTX 5000のBlenderにおける相対的な性能は、他のGPUとの比較を通じて間接的に評価する必要があります。BlenderはGPUレンダリングを強力にサポートしており、NVIDIAのCUDAやOptiXといったAPIを活用することで高速なレンダリングが可能です。Quadro RTX 5000もこれらのAPIに対応しているため、Blenderにおいても高い性能を発揮することが期待されます。
  – V-Ray Benchmark
    – プロフェッショナルなレンダリングソフトウェアとして広く利用されているV-Rayの性能を評価するV-Ray Benchmarkにおいても、Quadro RTX 5000の直接的なスコアは提供されていません。しかし、RTX A6000との比較では、CUDAレンダリングで2599ポイントという結果が示されています [10]。また、より新しい世代のGPUであるRTX 5000 AdaとRTX A5000の比較では、GPU RTXレンダリングにおいてRTX 5000 AdaがRTX A5000の1.56倍から1.76倍の性能を示すというデータがあります [11]。V-Rayはプロフェッショナルなレンダリングワークフローにおいて非常に重要なツールであり、Quadro RTX 5000のV-Rayにおける性能は、多くのユーザーにとって関心のあるポイントです。RTX機能の利用状況によって性能向上の度合いが異なる可能性があるため、具体的なワークフローや設定に応じたベンチマーク結果の確認が重要となります。
  – OctaneBench
    – GPUベースの高速レンダラーであるOctaneRenderの性能を測るOctaneBenchに関しても、Quadro RTX 5000の具体的なスコアは直接的には見当たりませんでした。しかし、RTX A6000との比較において、RTXレンダリングで644ポイントという結果が報告されています [10]。さらに、RTX 5000 AdaとRTX A5000の比較では、RTXレンダリングを使用した場合、RTX 5000 Adaのオフラインレンダリング性能がRTX A5000の1.38倍、RTXレンダリングを使用しない場合でも1.60倍の性能を示すというデータがあります [11]。OctaneRenderはGPUの性能を最大限に活用するレンダラーであり、Quadro RTX 5000の持つCUDAコアとRTコアの性能が、そのパフォーマンスに大きく影響します。RTXの利用はレンダリング時間の短縮に大きく貢献しますが、非RTX環境においてもQuadro RTX 5000は高い性能を発揮することが期待されます。
  – SPECviewperf
    – プロフェッショナルなグラフィックアプリケーションの性能を測る業界標準のベンチマークであるSPECviewperfには、様々なアプリケーション(SolidWorks、Siemens NX、Maya、3ds Maxなど)におけるQuadro RTX 5000のベンチマーク結果が存在します [1]。SPECviewperf 12および13のテスト結果によると、Quadro RTX 5000はこれらのプロフェッショナルなレンダリングシナリオにおいて全般的に良好な性能を示しています。特に、SPECviewperf 2020 v3のテスト結果では、RTX 5000 AdaがRTX A5000と比較してグラフィックスインタラクション性能が大幅に向上しており、特にSiemens NX(SNX)のテストでは2.06倍という顕著な性能差が見られました [11]。また、Mayaと3ds Maxのテストでは、Quadro RTX 5000はコンシューマー向けのゲーミングGPUと比較しても良好な性能を示し、場合によっては旧世代のプロフェッショナルGPUであるQuadro P6000を上回る結果も報告されています [12]。SPECviewperfは、プロフェッショナルアプリケーションの実際のワークロードを模倣したベンチマークであるため、Quadro RTX 5000がプロフェッショナル用途においてどの程度の性能を発揮できるかの重要な指標となります。ただし、アプリケーションによって最適化の度合いが異なるため、実際の利用用途に合わせてベンチマーク結果を詳細に確認することが重要です。
  – その他のレンダリングソフトウェアにおけるベンチマーク
    – Leadtekによるレビューでは、SuperPositionベンチマークにおいて、DirectXを使用したテストでQuadro RTX 5000がQuadro P5000よりも約45%、OpenGLを使用したテストでは約50%高速であるという結果が示されています [5]。また、OC Renderer(OctaneRenderである可能性が高い)のテストでは、Quadro RTX 5000はQuadro P5000の2.2倍の速度で画像を処理できると報告されています [5]。これらの結果は、Quadro RTX 5000が様々なレンダリングエンジンにおいて、旧世代のプロフェッショナルGPUから大幅な性能向上を実現していることを示唆しています。Turingアーキテクチャの導入により、リアルタイムレイトレーシングだけでなく、従来のレンダリング性能も着実に向上していると考えられます。

3.2 CAD

  – AutoCADにおける性能
    – NVIDIA Quadro RTX 5000は、AutoCADのようなプロフェッショナルアプリケーション向けに特別に設計されており、複雑な3Dモデルやレンダリングタスクにおいて優れた性能を発揮します [3, 4]。このグラフィックカードは、16GBの高速GDDR6メモリと3072基のCUDAコアを搭載しており、これにより、AutoCAD環境において非常にスムーズな操作性とリアルタイムレンダリングを実現します [3, 4]。さらに、Quadro RTX 5000はAutodeskによる認証を受けており、AutoCADとの高い互換性と安定性が保証されています [3]。この認証は、プロフェッショナルな環境での信頼性を重視するユーザーにとって非常に重要な要素となります。AutoCADユーザーにとって、Quadro RTX 5000は高いパフォーマンスと信頼性を提供する強力な選択肢と言えるでしょう。特に、大規模なプロジェクトや非常に複雑なモデルを扱う際には、Quadro RTX 5000の大容量メモリが大きなアドバンテージとなります。
  – SPECviewperfのCAD関連ベンチマーク
    – SPECviewperfには、CATIAやCreoといった主要なCADソフトウェアに関連するベンチマークが含まれており、Quadro RTX 5000はこれらのテストにおいて良好な結果を示しています [1, 12]。特に、CATIAのテストでは、プロフェッショナルレベルのGPUがその性能を最大限に発揮する傾向があり、Quadro RTX 5000も例外ではありません [12]。これらの結果は、Quadro RTX 5000が実際のCADワークフローにおいても高いパフォーマンスを発揮できる可能性を示唆しています。SPECviewperfのCAD関連ベンチマークは、Quadro RTX 5000が実際のCAD作業においてどの程度の性能を発揮できるかの重要な指標となります。特定のCADソフトウェアに最適化されたプロフェッショナルドライバの存在は、GPUの性能に大きく影響を与える可能性があり [1, 13]、Quadroシリーズはその点においても強みを持つと考えられます。
  – その他のCADソフトウェアにおける性能
    – Siemens NXのような一部の高度なCADソフトウェアでは、コンシューマー向けのGeForceカードではなく、Quadroのようなプロフェッショナルワークステーション向けのGPUの使用が推奨、あるいは必須となる場合があります [13]。これは、これらのソフトウェアが特定のドライバやハードウェアとの最適化を要求するためです [1, 13]。このような場合、QuadroシリーズのGPUが持つプロフェッショナルドライバやソフトウェアベンダーからの認定が、単なるハードウェアの性能以上の重要な要素となります。したがって、使用するCADソフトウェアの推奨GPUを確認し、Quadro RTX 5000が適切であるか検討することが重要です。

3.3 ディープラーニング

  – ResNet-50などのディープラーニングモデルにおけるベンチマーク
    – 画像認識分野で広く用いられるディープラーニングモデルであるResNet-50を用いた推論(TensorRT使用、Tensorコア活用)のベンチマークでは、Quadro RTX 5000はコンシューマー向けの高性能GPUであるGeForce RTX 2080 Tiを上回る性能を示しています [14]。また、ResNet-50のトレーニング(TensorFlow使用)に関するベンチマークでも、Quadro RTX 5000に搭載された大容量の16GBメモリが活かされ、大きなバッチサイズでのトレーニングが可能となり、結果として高い性能を発揮しています [14]。一方、ResNet50 (FP16)の1GPU環境での性能をRTX A6000(1424ポイント)やRTX 4090(1720ポイント)と比較したデータはありますが [10]、Quadro RTX 5000の直接的なデータは見当たりませんでした。これらのことから、Quadro RTX 5000は、Tensorコアを活用することで、ディープラーニングの推論処理において高い性能を発揮し、さらに大容量のVRAMが大規模なモデルやバッチサイズでのトレーニングにおいて重要な利点となることが示唆されます。
  – TensorRT、TensorFlow、OpenSeq2Seqなどのフレームワークにおける性能
    – NVIDIAが提供する高速推論プラットフォームであるTensorRTや、広く利用されているディープラーニングフレームワークであるTensorFlowに加え、自然言語処理モデルのトレーニングに用いられるOpenSeq2Seq(GNMT)といったフレームワークにおけるQuadro RTX 5000の性能も評価されています [14]。OpenSeq2Seqトレーニングのベンチマークでは、Quadro RTX 5000の16GBという大容量メモリのおかげで、8GBメモリしか搭載しないRTX 2080では実行できなかったテストを完了することができました [14]。さらに、FP16(半精度浮動小数点数)混合精度を使用することで、ディープラーニングのトレーニング時間を大幅に短縮できることも示されています [15]。これらの結果は、Quadro RTX 5000が様々なディープラーニングフレームワークにおいて、その豊富なメモリ容量を活かした高い性能を発揮することを示しています。また、ソフトウェアレベルでの最適化(混合精度など)も、ディープラーニングの性能向上に大きく貢献することがわかります。
  – マルチGPU構成における性能
    – ディープラーニングの性能は、複数のGPUを並列で使用するマルチGPU構成によって良好にスケールすることが示されています。研究によれば、最大4つのGPUまで、追加するごとに性能向上が期待できるとのことです [15]。場合によっては、2つの比較的性能の高いGPUを組み合わせた構成が、より強力な単一のGPUモデルよりも、価格対性能の面で優れることもあります [15]。このことは、Quadro RTX 5000を複数枚使用することで、ディープラーニングのトレーニング時間を大幅に短縮できる可能性があることを示唆しています。予算や性能要件に応じて、シングルGPU構成とマルチGPU構成のどちらが最適かを検討する必要があるでしょう。

4. 競合製品との比較

NVIDIA RTX A4000、TITAN RTXなどとの性能比較

PassMark G3D Markの比較では、NVIDIA Quadro RTX 5000は、より新しいAmpereアーキテクチャを採用するRTX A4000や、コンシューマー向けながらプロフェッショナル用途でも高い性能を発揮するTITAN RTXよりもスコアが低いという結果が出ています 2。RTX A4000は、Quadro RTX 5000よりも新しい世代のGPUであり、そのアーキテクチャの進化が性能差に現れている可能性があります。一方、TITAN RTXは、より多くのCUDAコアやメモリ帯域幅を持つため、総合的なベンチマークスコアで上回っていると考えられます。これらの比較から、Quadro RTX 5000は、NVIDIAの現行のプロフェッショナルGPUラインナップの中では、ハイエンドに位置するものの、最上位ではないことがわかります。競合製品との比較においては、PassMarkのような総合スコアだけでなく、実際のアプリケーションにおける性能差を考慮することが重要です。

GeForce RTXシリーズとの比較

NVIDIA Quadro RTX 5000(モバイル版)は、コンシューマー向けのGeForce RTX 2080(モバイル版)と比較して、より多くのシェーダーユニットを搭載しており、一部のプロフェッショナルアプリケーションにおいては、GeForce RTX 2080よりも高い性能を発揮することがあります 1。特に、大容量のVRAMを必要とするようなワークフローにおいては、Quadro RTX 5000がGeForce RTX 2080を明確に上回るケースも見られます 1。また、GeForce RTX 3080は、AutoCADなどのアプリケーションにおいて優れた性能を発揮しますが、Autodeskによる公式な認証は得られていません 3。これらの点から、Quadroシリーズは、プロフェッショナルな用途に特化したドライバや最適化が施されており、特定のアプリケーションにおいてはGeForceシリーズよりも安定した高い性能を発揮する可能性があると考えられます 1。しかしながら、GeForceシリーズは一般的に価格対性能に優れる場合があるため、用途によっては魅力的な選択肢となることもあります。

AMD Radeon Proシリーズとの比較

AMDのプロフェッショナルGPUであるRadeon Pro WX 7100は、AutoCADにおいてNVIDIA Quadro RTX 5000の代替となる選択肢の一つとして挙げられています 4。SPECviewperfのCATIAテストでは、NVIDIAのプロフェッショナルGPUとAMDのプロフェッショナルGPUの間で性能差が見られることが報告されています 12。また、3Dコンテンツ制作ソフトウェアであるMayaにおいては、NVIDIA Quadro RTX 5000とAMD Radeon Pro WX 9100が、どちらも高い性能とMayaの高度な機能との互換性を持つ推奨グラフィックスカードとして挙げられています 16。これらの情報から、プロフェッショナルGPUの分野では、NVIDIAとAMDが競合しており、ユーザーは自身の用途や予算に応じて適切な製品を選択する必要があることがわかります。GPUの選択においては、特定のソフトウェアとの相性やドライバの安定性も非常に重要な要素となります。

5. ベンチマーク環境の詳細

CPU、メモリなどのシステム構成

NotebookcheckによるQuadro RTX 5000(モバイル版)のベンチマークテストでは、主にAcer ConceptD 9 ProとAsus StudioBook Pro X W730G5Tという2種類のノートPCが使用されています 1。Acer ConceptD 9 Proは、Intel Core i9-9980HKプロセッサと16GBまたは32GBのRAMを搭載しています。一方、Asus StudioBook Pro X W730G5Tは、Intel Xeon E-2276Mプロセッサと16GBまたは64GBのRAMを搭載しています 1。これらの情報から、ベンチマーク結果はテストに使用されたシステムの構成、特にCPUやメモリのスペックによって影響を受けることがわかります。GPUの性能を最大限に引き出すためには、CPUとのバランスが重要であり、CPUの性能が低い場合、GPUがボトルネックとなり、本来の性能を発揮できない可能性があります。したがって、ベンチマーク結果を評価する際には、テストに使用されたシステム構成の詳細を考慮に入れる必要があります。

使用されたソフトウェアとドライババージョン

Lambda Labsが実施したディープラーニングのベンチマークテストでは、特定のバージョンのソフトウェア環境が使用されています。具体的には、NGCのPyTorch 22.10 dockerイメージ、Ubuntu 20.04オペレーティングシステム、PyTorch 1.13.0a0+d0d6b1f、CUDA 11.8.0、cuDNN 8.6.0.163、そしてNVIDIAドライバ 520.61.05が用いられています 17。このように、使用されたソフトウェアやドライバのバージョンによって、GPUの性能が変動する可能性があるため、ベンチマーク結果を比較する際には注意が必要です。一般的に、最新のドライバやソフトウェアを使用することで、パフォーマンスが向上する可能性がありますが、場合によっては特定のバージョンとの相性が問題となることもあります。したがって、ベンチマーク結果を参照する際には、テスト環境の詳細を確認することが重要です。

ベンチマーク方法

Blender Benchmarkのようなツールでは、独自のテストに加えて、OctaneBench、V-Ray Benchmark、Blender Benchmarkといった他の主要なベンチマークソフトウェアの公開データも活用して性能評価を行っています 18。このように、様々なソースからのデータを組み合わせることで、より包括的で信頼性の高い性能評価が可能となります。ベンチマークの実施方法やデータ収集方法を理解することは、その結果の信頼性を評価する上で重要です。異なるベンチマークツールは、異なる種類のワークロードやテストシナリオを使用するため、それぞれの特性を理解した上で結果を解釈する必要があります。

6. オーバークロックによる性能向上

オーバークロックに関するベンチマークデータ

NVIDIA Quadro RTX 5000のオーバークロック設定に関する具体的なベンチマークデータは、提供された情報からは限定的です。しかし、一部の情報源では、グラフィックメモリのオーバークロックがゲームのFPS(フレーム毎秒)の向上に寄与する可能性が示唆されています 19。また、仮想通貨のマイニングにおいては、Quadro RTX 5000のオーバークロック設定が公開されている例があります 20。これらの情報から、Quadro RTX 5000はオーバークロックによって性能向上が期待できる可能性がありますが、その効果や安定性については、具体的なテスト環境や設定に大きく依存すると考えられます。

消費電力と温度への影響

グラフィックカードをオーバークロックすると、一般的に消費電力が増加し、GPUの温度が上昇する可能性があります 12。これは、より高いクロック周波数で動作させるために、より多くの電力を供給する必要があるためです。温度上昇は、GPUの安定動作に悪影響を及ぼす可能性があり、最悪の場合、寿命を縮める原因にもなりかねません。したがって、オーバークロックを行う際には、適切な冷却対策が不可欠となります。特に、プロフェッショナル用途においては、システムの安定性が最も重要であるため、オーバークロックによる性能向上を追求する際には、消費電力と温度への影響を十分に考慮し、慎重な設定と検証が求められます。

7. 性能分析と結論

Quadro RTX 5000の強みと弱み

強み: NVIDIA Quadro RTX 5000の最大の強みは、プロフェッショナルアプリケーションにおける高い性能です。特に、レンダリング、CAD、ディープラーニングといった分野でその能力を発揮します。また、16GBという大容量の高速GDDR6メモリを搭載している点も、大規模なデータセットや複雑なモデルを扱う際に有利に働きます。リアルタイムレイトレーシングとAIアクセラレーションのサポートは、最新のワークフローにおいて重要な機能であり、Quadro RTX 5000はこれらの技術を効果的に活用できます。さらに、特定のCADソフトウェアにおいては、Autodeskなどのベンダーによる認証と、安定した動作を保証するプロフェッショナルドライバの提供も強みと言えるでしょう。

弱み: 一方、弱点としては、競合するより新しい世代のプロフェッショナルGPUと比較して、総合的なベンチマークスコアがやや低い場合があることが挙げられます。また、230Wという比較的高い消費電力も、システム構築や運用において考慮すべき点です。モバイル版においては、デスクトップ版と比較して性能が制限されること、特にMax-Q版は効率重視のため性能がさらに低下する可能性があることも留意すべき点です。

特定の用途における推奨度

レンダリング: V-RayやOctaneRenderなどのGPUレンダリングを多用するユーザー、特に大容量メモリを必要とする複雑なシーンを扱うユーザーにとって、Quadro RTX 5000は非常に推奨できる選択肢です。リアルタイムレイトレーシングを活用したインタラクティブなレンダリングも可能です。

CAD: AutoCADやCATIAなどのプロフェッショナルCADソフトウェアを使用するユーザーにも、Quadro RTX 5000は強く推奨されます。特に、安定性とソフトウェアとの互換性を重視するユーザーに適しています。大容量メモリは、大規模なアセンブリやBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)などのプロジェクトにおいて大きなメリットとなります。

ディープラーニング: 中規模から大規模なディープラーニングモデルのトレーニングや推論を行うユーザーにも、Quadro RTX 5000は適しています。特に、メモリ容量がボトルネックとなりやすいワークロードにおいて、その16GBのVRAMは大きなアドバンテージとなります。マルチGPU構成も検討することで、さらなる高速化が期待できます。

今後の展望

NVIDIAは、より新しい世代のプロフェッショナルGPU(例えばRTX AシリーズやRTX 5000 Adaなど)を既に市場に投入しており、Quadro RTX 5000は徐々に旧世代の製品となりつつあります。新しい世代のGPUは、より高い性能と最新の機能を備えているため、新規にシステムを構築する場合は、これらの最新GPUも検討に入れるべきでしょう。しかしながら、Quadro RTX 5000は依然として多くのプロフェッショナルユーザーにとって、十分な性能と信頼性を提供する製品であり、既存のシステムへの導入や、コストパフォーマンスを重視する場合には、依然として魅力的な選択肢となり得ます。

引用文献

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