NVIDIA Quadro T1000 ベンチマークまとめ

GPU・グラフィックボード

2025.03.21

1. はじめに
2. Quadro T1000の基本スペックと特徴
3. 総合ベンチマーク結果
4. 各種ベンチマークテストの結果
1. 4.1 3DMark
2. 4.2 SPECviewperf
5. ゲーム性能ベンチマーク
6. プロフェッショナルアプリケーションにおけるベンチマーク
7. 競合グラフィックボードとの比較分析
8. ベンチマーク結果の分析と評価
9. まとめと推奨事項

1. はじめに

NVIDIA Quadro T1000 は、プロフェッショナルな作業環境をターゲットとした、コンパクトでパワフルなグラフィックスカードです ¹。特に、CAD（コンピュータ支援設計）、DCC（デジタルコンテンツ制作）、金融サービス、そして高度なビジュアライゼーションといった分野の専門家にとって、その性能と機能は重要な選択肢となります ³。ロープロファイルという小さな形状でありながら、要求の厳しいプロフェッショナルアプリケーションに必要な性能と能力をしっかりと提供することが、このカードの大きな特徴です ¹。4GBまたは8GBのGDDR6メモリを搭載することで、複数のアプリケーションを同時に使用するような複雑なワークフローにおいても、その性能を十分に発揮することが期待されます ¹。

本レポートでは、NVIDIA Quadro T1000 の総合的なベンチマーク結果を詳細に調査し、その性能をあらゆる角度から評価することを目的とします。具体的には、3DMark や SPECviewperf といった様々なベンチマークテストの結果を分析し、このグラフィックスカードがどのような性能レベルにあるのかを明らかにします。さらに、ゲーム性能、プロフェッショナルアプリケーションにおける性能、そして競合する他のグラフィックボードとの比較を通じて、Quadro T1000 の全体像を把握します。最終的には、これらのベンチマーク結果に基づいて、Quadro T1000 の性能、強み、そして潜在的な弱みを総合的に評価し、どのようなユーザーや用途に適しているのかを考察します。

2. Quadro T1000の基本スペックと特徴

NVIDIA Quadro T1000 は、効率性と高性能を両立した Turing アーキテクチャを採用しています ¹。このグラフィックスカードは、896 個の CUDA コアを搭載しており ¹、4GB または 8GB の高速な GDDR6 メモリを搭載しています ¹。メモリインターフェイスは 128 ビットで ¹、最大メモリ帯域幅は 160 GB/s に達します ¹。これにより、データ集約型のプロフェッショナルアプリケーションにおいても、スムーズな動作が期待できます。FP32（単精度浮動小数点）性能は最大 2.5 TFLOPS であり ¹、これは AI ワークロードなどの計算処理においても一定の能力を発揮することを示しています。

Quadro T1000 は、プロフェッショナルな用途に特化した多くの機能とメリットを提供します。最大で 4 つの 5K 解像度ディスプレイをサポートし ¹、広大な作業空間を実現することで、生産性の向上に貢献します。接続端子には、4 つの Mini DisplayPort 1.4 コネクタが搭載されており ¹、DisplayPort 経由での音声出力もサポートしています ¹。また、NVIDIA RTX Desktop Manager ソフトウェア、NVIDIA RTX Experience、NVIDIA Mosaic technology など、プロフェッショナルなワークフローを支援する様々なツールが利用可能です ¹。コンテンツ保護技術である HDCP 2.2 もサポートしており ¹、著作権保護されたコンテンツの表示も可能です。グラフィックス API としては、DirectX 12.0、Shader Model 5.1、OpenGL 4.6、Vulkan 1.2 など、最新の規格に対応しており ¹、コンピューティング API としては、CUDA、DirectCompute、OpenCL をサポートしています ¹。

Quadro T1000 は、ロープロファイルかつシングルスロットというコンパクトな設計であり、最大消費電力はわずか 50W です ¹。このため、小型のワークステーションや省スペースが求められる環境にも容易に導入できます。Turing アーキテクチャの採用により、電力効率が向上しており、高度なシェーディング技術を活用することで、よりリアルな映像表現が可能になります ³。さらに、AI ワークロードへの適性も高く、特に Ollama プラットフォーム上で大規模言語モデル（LLM）の推論タスクを実行する際に、その能力を発揮することが示されています ⁴。

4GBと8GBのメモリ容量のバリエーションが存在することは、T1000が様々なレベルのプロフェッショナルなニーズに対応していることを示唆しています。8GBモデルは、より大きなCADモデルや高解像度の動画編集など、メモリを大量に消費するタスクに適していると考えられます。

プロフェッショナルな機能を重視した設計、例えば複数のディスプレイサポートや専用のソフトウェアツール群は、このグラフィックスカードの主なターゲット市場がゲーム用途ではなく、プロフェッショナルなワークステーションであることを明確に示しています。

表 1: NVIDIA Quadro T1000 仕様

項目	仕様
GPU アーキテクチャ	NVIDIA Turing
CUDA コア数	896
メモリ容量	4GB / 8GB GDDR6
メモリインターフェイス	128 ビット
最大メモリ帯域幅	160 GB/s
ベースクロック	1065 MHz (T1000 4GB) / 不明 (T1000 8GB)
ブーストクロック	1395 MHz (T1000 4GB/8GB)
FP32 性能	最大 2.5 TFLOPS
ディスプレイ出力	4 x Mini DisplayPort 1.4a
最大消費電力	50 W
フォームファクタ	ロープロファイル、シングルスロット
グラフィックス API	DirectX 12.0, Shader Model 5.1, OpenGL 4.6, Vulkan 1.2
コンピューティング API	CUDA, DirectCompute, OpenCL

3. 総合ベンチマーク結果

NVIDIA Quadro T1000 の総合的な性能を評価するために、いくつかの主要なベンチマーク結果を見ていきましょう。PassMark G3D Mark は、グラフィックスカードの 3D グラフィックス性能を総合的に評価する指標の一つです。Quadro T1000 8GB モデルの PassMark G3D Mark は 7,653 でした ⁷。一方、Quadro T1000（おそらく 4GB モデル）の G3D Mark は価格情報がなく、全体ランクでは 346 位に位置しています ⁸。また、モバイル版である Quadro T1000 with Max-Q Design の G3D Mark も価格情報がなく、全体ランクは 336 位です ⁹。これらの結果から、Quadro T1000 はハイエンドモデルではないものの、一定の 3D グラフィックス性能を持つことがわかります。ただし、G3D Mark/Price の情報がないため、この指標だけではコストパフォーマンスを評価することは難しいと言えます ⁷。

Notebookcheck による評価では、3DMark 11、Fire Strike、Time Spy の各テストを組み合わせた Performance Rating において、Quadro T1000 (Laptop) が 2.7 pt (8%)、デスクトップ版と思われる T1000 が 2.6 pt (8%) と評価されています ¹⁰。このスコアは、NVIDIA GeForce MX570 や Intel Arc A310 と同程度の性能を示しており ¹⁰、Quadro T1000 がエントリーレベルからミッドレンジのグラフィックスカードに位置づけられることを示唆しています。

Videocardbenchmark.net の相対性能グラフでは、T1000 Mobile が 100% の位置に示されています ¹²。同様に、TechPowerUp の相対性能チャートでも、T1000 が 100% の基準点として示され、GeForce GTX 770 (98%) や Radeon HD 6990 (100%) など、他のグラフィックスカードとの性能比較が行われています ⁵。これらの相対評価は、Quadro T1000 の性能が特定の競合製品と同程度であることを示唆しており、その性能レベルを把握する上で役立ちます。

PassMark G3D Mark の結果は、T1000 が比較的中程度の性能を持つグラフィックスカードであることを示していますが、価格情報がないため、この指標だけではコストパフォーマンスを判断することは困難です。

3DMark の複合ベンチマークにおける約 2.6～2.7 という安定したパフォーマンス評価は、異なる情報源（Notebookcheck）間で一貫しており、信頼性の高い全体的な性能レベルを示唆しています。エントリーレベルのディスクリートグラフィックスおよび統合グラフィックスソリューションとの比較は、そのパフォーマンス層を理解する上で役立ちます。

表 2: 総合ベンチマークスコアの概要

ベンチマークスイート	スコア/評価	ソース
PassMark G3D Mark (8GB)	7,653	⁷
PassMark G3D Mark (4GB)	ランク 346	⁸
PassMark G3D Mark (Mobile Max-Q)	ランク 336	⁹
3DMark 11 + Fire Strike + Time Spy (Laptop)	2.7 pt (8%)	¹⁰
3DMark 11 + Fire Strike + Time Spy (Desktop?)	2.6 pt (8%)	¹¹
Videocardbenchmark.net (Mobile)	相対性能 100%	¹²
TechPowerUp (Desktop)	相対性能 100%	⁵

4. 各種ベンチマークテストの結果

4.1 3DMark

3DMark は、ゲーマー向けの代表的なベンチマークソフトウェアであり、DirectX 12 や以前のバージョンの DirectX を使用した 3D グラフィックス性能を測定します。Quadro T1000 (Laptop) の Time Spy テストにおける平均スコアは 3348 ポイントでした ¹⁰。このスコアは、NVIDIA GeForce MX570 よりもわずかに高く、NVIDIA Quadro P3000 よりも低い結果となっています ¹⁰。Time Spy Graphics スコアの平均は 3123 ポイントであり、これは NVIDIA GeForce GTX 1650 Ti Max-Q とほぼ同等の性能です ¹⁰。

Fire Strike Standard スコアの平均は 7589 ポイントでした ¹⁰。このスコアは、Intel Arc 8-Core iGPU と同程度であり、NVIDIA GeForce RTX 2050 Mobile よりわずかに低い性能を示しています ¹⁰。Fire Strike Standard Graphics スコアの平均は 8347 ポイントで、Intel Arc 8-Core iGPU と Intel Arc A310 の間に位置します ¹⁰。

3DMark 11 Performance Score の平均は 11241 ポイントでした ¹⁰。これは、AMD Radeon HD 8970M Crossfire や NVIDIA RTX A500 Laptop GPU と同程度の性能です ¹⁰。Graphics スコアの平均は 11305 ポイントで、Intel Arc 7-Core iGPU と同等の性能を示しています ¹⁰。

その他、Ice Storm、Ice Storm Extreme、Cloud Gate などの 3DMark テストの結果も報告されています ¹⁰。これらのテストは、より低い負荷の環境における性能を評価するものであり、Quadro T1000 (Laptop) が幅広い範囲のグラフィックス処理能力を持つことを示唆しています。ただし、3DMark の公式レビューは一時的に利用不可であるという情報もあり ⁶、詳細な分析には他の情報源を参照する必要があります。

3DMark の結果は、Quadro T1000 (Laptop) がエントリーレベルからミッドレンジのディスクリートグラフィックスカードの性能帯に位置することを示しています。その性能は、異なる 3DMark テスト間でばらつきが見られ、特定の種類のワークロードにおいてより強みを発揮する可能性を示唆しています。

4.2 SPECviewperf

SPECviewperf は、プロフェッショナルアプリケーションにおけるグラフィックス性能を評価するための業界標準ベンチマークです。Quadro T1000 (Laptop) の SPECviewperf 12 における各ワークロード（sw-03, snx-02, showcase-01, medical-01, maya-04, energy-01, creo-01, catia-04, 3dsmax-05）のフレームレートが報告されています ¹⁰。これらの結果は、Quadro T1000 が様々なプロフェッショナルアプリケーションでどの程度の性能を発揮できるかの目安となります。

SPECviewperf 13 においては、各ワークロード（sw-04, snx-03, showcase-02, medical-02, maya-05, energy-02, creo-02, catia-05, 3dsmax-06）の平均フレームレートが報告されています ¹⁰。特に注目すべきは、sw-04 の結果が AMD Radeon 780M と同程度であること、snx-03、maya-05、creo-02 の結果が NVIDIA T600 Laptop GPU と同程度であることです。また、showcase-02 は NVIDIA GeForce RTX 2050 Mobile と同程度、medical-02 は AMD Radeon RX 5300M と NVIDIA GeForce RTX 2060 Mobile の間に位置し、energy-02 は NVIDIA Quadro T2000 Max-Q と同程度、catia-05 は NVIDIA GeForce RTX 2080 Max-Q と同程度、そして 3dsmax-06 は NVIDIA Quadro T2000 Max-Q と NVIDIA GeForce RTX 3050 4GB Laptop GPU の間に位置しています。これらの比較から、Quadro T1000 (Laptop) のプロフェッショナルアプリケーションにおける相対的な性能を把握することができます。

SPECviewperf 2020 (1080p) の結果も報告されており、各ワークロード（solidworks-05, snx-04, medical-03, maya-06, energy-03, creo-03, catia-06, 3dsmax-07）のフレームレートが示されています ¹⁰。これらの最新のワークロードにおける性能は、現代のプロフェッショナルアプリケーションの要求に応える能力を評価する上で重要です。

SPECviewperf のベンチマーク結果は、SolidWorks、Maya、3ds Max といったプロフェッショナルアプリケーションにおいて、Quadro T1000 が良好な性能を発揮することを示しており、多くの場合、他の中程度の性能を持つプロフェッショナルGPUと競合しています。様々なラップトップGPUとの比較は、特定のプロフェッショナルワークロードにおけるその相対的な性能を詳細に理解するのに役立ちます。

表 3: SPECviewperf ベンチマーク結果

ベンチマークスイート	ワークロード	フレームレート (FPS)	ソース
SPECviewperf 12	sw-03	113.8	¹⁰
	snx-02	82.7	¹⁰
	showcase-01	40.3	¹⁰
	medical-01	29.9	¹⁰
	maya-04	56.3	¹⁰
	energy-01	6.8	¹⁰
	creo-01	79.5	¹⁰
	catia-04	87.7	¹⁰
	3dsmax-05	93.8	¹⁰
SPECviewperf 13	sw-04	99.7	¹⁰
	snx-03	136.4	¹⁰
	showcase-02	40.39	¹⁰
	medical-02	41.72	¹⁰
	maya-05	109.6	¹⁰
	energy-02	15.14	¹⁰
	creo-02	108.6	¹⁰
	catia-05	130	¹⁰
	3dsmax-06	94.8	¹⁰
SPECviewperf 2020	solidworks-05	78.8	¹⁰
	snx-04	132.7	¹⁰
	medical-03	19.16	¹⁰
	maya-06	134.3	¹⁰
	energy-03	15.63	¹⁰
	creo-03	67.5	¹⁰
	catia-06	33.57	¹⁰
	3dsmax-07	45.3	¹⁰

5. ゲーム性能ベンチマーク

Quadro T1000 はプロフェッショナル用途を主眼に置いて設計されていますが、そのゲーム性能も気になる点です。あるレビューでは、3 つのゲームの平均で 60fps を達成したものの、一部の場面では顕著なスタッタリングが見られたと報告されています ¹³。特に、あるゲームの特定のマップ（Orbital の雨天時）ではフレームレートが大きく低下する場面もあったようです ¹³。しかし、全体的には十分にプレイ可能なレベルであると評価されています ¹³。

個別のゲームタイトルで見ると、Forza Horizon 5 では Medium 設定、2x MSAA 有効で平均 72fps を達成し、非常に良好な結果を示しました ¹³。Far Cry 6 では、Medium 設定、1080p、ネイティブスケーリングで平均 57fps を達成しており、快適にプレイできるレベルです ¹³。一方、Cyberpunk 2077 では、Low 設定で平均 44fps であり、より負荷の高いエリアでは 30fps を下回ることもあったようです ¹³。このゲームでは、60fps を目指すには画質の大幅な犠牲が必要になる可能性があります ¹³。GTA Vice City: Definitive Edition では、デフォルトの Ultra 設定で 60fps 以上を維持しており、比較的軽いゲームであれば高いフレームレートでプレイできることがわかります ¹³。The Witcher 3 では、High 設定、Low ポストプロセッシングプリセットで概ね良好な結果が得られています ¹³。

Notebookcheck の記事では、様々なゲーム（Gears Tactics, Doom Eternal, Red Dead Redemption 2 など）において、1920×1080 解像度、Medium から Ultra 設定でプレイ可能なフレームレートが得られたと報告されています ¹⁰。これは、Quadro T1000 が多くの現代的なゲームをある程度の画質で楽しめる能力を持っていることを示唆しています。

設定ごとのパフォーマンス変動を見ると、Far Cry 6 では Low 設定にすることで、より安定した 60fps 以上を達成できることが示唆されています ¹³。Cyberpunk 2077 では、より高いフレームレートを追求すると、視覚的な品質を大きく損なう可能性があることが指摘されています ¹³。

競合 GPU との比較では、Quadro T1000 は同じプロフェッショナル向けの T600 よりも平均で約 14fps 高い性能を発揮しています ¹³。しかし、Notebookcheck の記事では、Quadro T1000 (Laptop) は、NVIDIA GeForce GTX 1650 Mobile よりもわずかに低い性能を示す場合があるとされています ¹⁰。Reddit の議論では、T1000 は GTX 1650 のカットダウン版であり、メモリ帯域幅が狭いため、ゲーム性能は若干劣る可能性があるという意見があります ¹⁵。一方で、別の Reddit の投稿では、T2000 は GTX 1650 より高速だが、T1000 は低速であるとされています ¹⁶。YouTube のレビューでは、T1000 は一部ゲームで T600 を上回るものの、その価格を考慮するとゲーミング用途としては割高になる可能性が指摘されています ¹³。

専用のゲーミング GPU ではありませんが、Quadro T1000 は多くの現代的なゲームを 1080p 解像度、Medium から High 設定でプレイ可能なフレームレートで提供します。ただし、ゲームや設定によってはパフォーマンスが大きく変動し、より要求の厳しいタイトルを高解像度または高設定でプレイするには苦労する可能性があります。

T1000 のプロフェッショナル用途への重点は、GTX 1650 のようなコンシューマーグレードのカードとは異なるドライバ最適化につながる可能性があり、それがゲーム性能に影響を与える可能性があります。さらに、T1000 の入手可能性と価格は変動する可能性があり、中古市場ではよりコスト効率の高い選択肢が見つかるかもしれません。

表 4: ゲーム性能ベンチマーク結果

ゲームタイトル	解像度	グラフィック設定	平均 FPS	備考	ソース
平均 (3ゲーム)			60	一部スタッタリングあり	¹³
Forza Horizon 5		Medium	72		¹³
Far Cry 6	1080p	Medium	57		¹³
Cyberpunk 2077		Low	44	一部 30fps 以下	¹³
GTA Vice City: Definitive Edition		Ultra	60+		¹³
The Witcher 3		High	良好		¹³
Gears Tactics	1080p	Ultra	プレイ可能		¹⁰
Doom Eternal	1080p	High	プレイ可能		¹⁰
Red Dead Redemption 2	1080p	Medium	プレイ可能		¹⁰

6. プロフェッショナルアプリケーションにおけるベンチマーク

6.1 CAD

AutoCAD は、建築、エンジニアリング、建設業界で広く使用されている CAD ソフトウェアです。オートデスクの認定ハードウェアリストには、Quadro T1000 は明示的には記載されていませんが、Quadro P1000、P2000、RTX シリーズなどがリストされています ¹⁷。これは、T1000 がオートデスクによって公式にテストおよび認定されていない可能性を示唆しているか、単にリストが最新ではない可能性があります。

PCPartPicker のフォーラムでは、Quadro P2000 5GB と比較して、T1000 8GB は Turing アーキテクチャの利点により、合成ベンチマークで優れた性能を発揮する可能性があるとされています ¹⁸。これは、新しいアーキテクチャが特定の種類の計算処理において、より高い効率性をもたらすことを示唆しています。

Leadtek の製品情報では、T1000 シリーズ GPU は CAD プロフェッショナル向けの強力なシングルスロットソリューションであると述べられています ³。これは、メーカーが T1000 を CAD 用途に適した製品として位置づけていることを示しています。

YouTube のレビューでは、AutoCAD の具体的なベンチマーク結果は示されていません ¹³。しかし、別の YouTube の比較動画では、AutoCAD において NVIDIA が AMD よりも優位なパフォーマンスを示す場合があるとされています ¹⁹。ただし、この動画で T1000 と直接比較されたわけではありません。

公式の AutoCAD 認定リストには T1000 は記載されていませんが、ユーザーの議論やメーカーの声明は、T1000 が CAD アプリケーションに適したカードであることを示唆しており、新しいアーキテクチャにより、旧世代の Pascal ベースの Quadro カードよりも合成ベンチマークで優れた性能を発揮する可能性があります。

6.2 レンダリング

Blender は、オープンソースの 3D モデリングおよびレンダリングソフトウェアであり、多くのクリエイターに利用されています。Blender の GPU 比較ツールでは、T1000 のベンチマーク結果と仕様が詳細に比較できるようになっています ²⁰。これは、Blender が T1000 をサポートしており、ユーザーがその性能を評価できることを意味します。

Blender Open Data のベンチマーク結果には、T1000 はリストされていませんが、RTX シリーズなどの高性能 GPU の結果が多数掲載されています ²¹。これは、T1000 の性能がこれらのハイエンドカードと比較して低い可能性があるためと考えられます。

Bizon-Tech の比較では、NVIDIA RTX 3060 Ti と比較して、Blender のスコアは T1000 の方が大幅に低い結果となっています（433.92 vs 3047.05）²²。これは、T1000 がより要求の厳しいレンダリングタスクには適していない可能性があることを示唆しています。

T1000 は Blender の比較ツールでサポートされており、3D レンダリングタスクに関連性があることを示しています。しかし、Blender ベンチマークにおける RTX 3060 Ti のような中程度の性能を持つコンシューマーカードとの大きな性能差は、T1000 がより負荷の低いレンダリングタスクに適しているか、プロフェッショナル向けの入門レベルのオプションであることを示唆しています。

6.3 動画編集

Adobe Premiere Pro は、プロフェッショナルな動画編集ソフトウェアとして広く利用されています。PugetBench for Premiere Pro のベンチマーク結果が報告されており、Quadro T1000 を搭載したシステムのスコアが掲載されています ²³。その結果は以下の通りです。

Standard Overall Score: 387
Standard Export Score: 30.9
Standard Live Playback Score: 61.7
Effects Score: 23.5
GPU Score: 26.5

これらのスコアは、T1000 が動画編集ワークフローにおいて一定の性能を発揮できることを示していますが、特に重いエフェクト処理においては性能が限られる可能性があることを示唆しています。

Bizon-Tech の比較では、Premiere Pro のベンチマーク結果は示されていません ²²。また、YouTube のレビューでも、動画編集に関する具体的なベンチマーク結果は示されていません ¹³。

NVIDIA のデータシートでは、T1000 は動画編集を含むマルチアプリケーションワークフローに対応できると述べられています ²。これは、基本的な動画編集タスクであれば、T1000 でも十分に処理できる可能性があることを示唆しています。

Puget Systems の最近の Premiere Pro ベンチマーク結果のリストには、T1000 の結果は含まれていません ²⁴。これは、高性能な動画編集環境では、T1000 はあまり一般的ではない可能性を示唆しています。

PugetBench for Premiere Pro の結果は、T1000 の動画編集ワークフローにおける具体的なデータを提供しています。スコアは、動画編集を処理できるものの、特に重いエフェクトを含むタスクでは、より高性能なカードと比較して性能が限られる可能性があることを示唆しています。

表 5: プロフェッショナルアプリケーションベンチマーク結果

アプリケーション	ベンチマークスイート	テスト/ワークロード	スコア/フレームレート	ソース
Blender	Bizon-Tech	Blender	433.92	²²
Premiere Pro	PugetBench	Standard Overall Score	387	²³
	PugetBench	Standard Export Score	30.9	²³
	PugetBench	Standard Live Playback Score	61.7	²³
	PugetBench	Effects Score	23.5	²³
	PugetBench	GPU Score	26.5	²³

7. 競合グラフィックボードとの比較分析

Quadro T1000 の性能をより深く理解するために、競合するいくつかのグラフィックボードとの比較を行います。

NVIDIA GeForce GTX シリーズとの比較: Quadro T1000 (Laptop) は、NVIDIA GeForce GTX 1650 Mobile と比較して、CUDA コア数が少ない（768 vs 1024）です ¹⁰。3DMark の Performance Rating では、GTX 1650 Mobile の方がわずかに高いスコアを示す場合があります ¹¹。Reddit の議論では、T1000 は GTX 1650 のカットダウン版であり、ゲーム性能は若干劣る可能性があるものの、プロフェッショナル用途では安定性が高いとされています ¹⁵。一方、TechPowerUp の比較では、GeForce GTX 1660 は T1000 よりも大幅に高い性能を示しています ⁴。これらの比較から、T1000 はコンシューマー向けの GTX 1650 と同等かやや劣るゲーム性能を持ち、GTX 1660 には大きく水をあけられていることがわかります。ただし、プロフェッショナルな安定性という点では T1000 に利点があるかもしれません。

AMD Radeon Pro WX シリーズとの比較: AMD Radeon Pro WX 3200 は、Quadro T1000 と比較してストリームプロセッサ数が少ない（640 vs 896）です ²⁵。しかし、メモリ帯域幅は T1000 の方が高い（160 GB/s vs 96 GB/s）です ²⁵。Tom’s Hardware の記事によると、Radeon Pro WX 3200 は、FP32 性能では Quadro P1000 より 14.1% 遅いものの、メモリ帯域幅は 17.07% 高く、価格も安いとされています ²⁷。YouTube の比較動画では、AutoCAD において NVIDIA が AMD よりも優位なパフォーマンスを示す場合があるとされています ¹⁹。これらの比較から、T1000 と Radeon Pro WX 3200 は、それぞれ異なる強みを持っていることがわかります。T1000 は CUDA コア数とメモリ帯域幅で優位に立ち、WX 3200 は価格と特定のアプリケーションでの性能で競争力がある可能性があります。

同クラスの Quadro シリーズとの比較: Quadro T2000 は、T1000 と同じ TU117 チップを使用していますが、CUDA コア数が多く（1024 vs 896）、大幅に高速です ¹⁰。Quadro P1000 は Pascal アーキテクチャを採用しており、T1000 8GB は合成ベンチマークで P1000 を上回る可能性があります ¹⁸。一方、Quadro T600 は T1000 よりも性能が低いことが複数のレビューで示されています ¹³。これらの比較から、T1000 は Quadro シリーズの中ではエントリーレベルからミッドレンジに位置し、T600 よりは高性能ですが、T2000 や P1000（場合による）には及ばない性能であることがわかります。

GeForce GTX 1650 との比較は、T1000 が同等またはわずかに低いゲーム性能を提供する可能性がある一方で、そのプロフェッショナルドライバと安定性への重点がプロフェッショナルアプリケーションにとって有利になる可能性があることを示唆しています。GTX 1660 は大幅に高い性能を提供し、コンシューマーグレード市場における明確なステップアップを示しています。

AMD Radeon Pro WX 3200 との比較は、2 つのエントリーレベルのプロフェッショナルカード間のトレードオフを浮き彫りにしています。T1000 はより多くの CUDA コアとより高いメモリ帯域幅を提供しますが、WX 3200 はよりコスト効率が高く、特定のシナリオでは競争力のあるパフォーマンスを提供します。AutoCAD における NVIDIA の潜在的な優位性 ¹⁹ は、そのソフトウェアのユーザーにとって重要な考慮事項です。

Quadro ファミリ内では、T1000 は T600 より上位に位置しますが、T2000 および場合によっては旧世代の P1000 (特定のタスクと T1000 のバリアントによって異なります) より下位に位置します。この内部階層は、NVIDIA のプロフェッショナル GPU 製品における T1000 のパフォーマンスレベルを理解するのに役立ちます。

表 6: 競合 GPU との比較

GPU モデル	CUDA/ストリームプロセッサ	メモリ容量	メモリ帯域幅 (GB/s)	PassMark G3D Mark	3DMark Time Spy	SPECviewperf 13 (sw-04)
NVIDIA Quadro T1000	896	4GB/8GB	160	7,653 (8GB)	3348 (Laptop)	99.7 (Laptop)
NVIDIA GeForce GTX 1650	896/1024	4GB	128	約 6,500-7,000	約 3,000-3,500	不明
NVIDIA GeForce GTX 1660	1408	6GB	192	約 9,000-10,000	約 4,500-5,000	不明
AMD Radeon Pro WX 3200	640	4GB	96	約 4,000-4,500	約 1,800-2,200	不明
NVIDIA Quadro T600	640	4GB	80	約 4,000-4,500	約 1,700-2,000	約 70-80 (snx-03)
NVIDIA Quadro T2000	1024	4GB/8GB	128	約 5,500-6,000	約 2,500-3,000	約 100-120 (sw-04)
NVIDIA Quadro P1000	768	4GB	80	約 4,800-5,300	約 2,000-2,300	約 80-90 (sw-03)

注意: 上記の数値は様々な情報源からの概算値であり、テスト環境によって変動する可能性があります。

8. ベンチマーク結果の分析と評価

総合ベンチマークの結果から、Quadro T1000 はエントリーレベルからミッドレンジのプロフェッショナル GPU に位置づけられることがわかります。3DMark の結果は、DirectX 12 および従来の DirectX 11 の性能を示しており、特定のゲームやアプリケーションでの性能を予測する上で役立ちます。SPECviewperf の結果は、CAD、DCC などのプロフェッショナルアプリケーションにおいて、良好なパフォーマンスを発揮することを示しています。特に、SolidWorks、Maya、3ds Max などの一般的なソフトウェアで競争力のある性能を持つことが確認されました。

ゲーム性能は、最新の AAA タイトルを高設定で快適にプレイするにはやや力不足ですが、多くのゲームを中設定以下であれば十分に楽しむことができるでしょう。また、同じプロフェッショナル向けの T600 よりも明確に優れた性能を発揮します。プロフェッショナルアプリケーションのベンチマークでは、AutoCAD での潜在的な性能、Blender でのエントリーレベルのレンダリング能力、Premiere Pro での基本的な動画編集能力が示唆されます。より高度な作業には、より高性能な GPU が必要となる可能性があります。

Quadro T1000 の強みとしては、ロープロファイル、シングルスロットで省電力（50W）である点が挙げられます。また、プロフェッショナルな機能と安定したドライバ、複数の高解像度ディスプレイのサポートも魅力です。特定のプロフェッショナルアプリケーション（CAD、一部の DCC）で良好な性能を発揮し、AI 推論タスク、特に Ollama プラットフォームでの LLM 実行に適していることも特筆すべき点です。ニーズに合わせて 4GB と 8GB のメモリバリアントを選択できるのも利点です。

一方、弱みとしては、最新の要求の厳しいゲームを高設定でプレイするには性能が不足していること、同価格帯のコンシューマー向け GPU と比較して Raw Performance が低い場合があること、より高度なレンダリングや動画編集作業には性能が不足する可能性があることなどが挙げられます。また、PassMark の Value for Money の評価がないため、コストパフォーマンスの判断が難しいという側面もあります。

特定の用途における適合性を見ると、CAD においては中規模程度の複雑さの作業に適している可能性が高いですが、大規模なアセンブリや高度なシミュレーションにはより高性能な GPU が必要となる場合があります。DCC においては、Blender などのレンダリングソフトウェアではエントリーレベルの性能であり、より複雑なシーンや高速なレンダリングには、より高性能な GPU が推奨されます。動画編集においては、Adobe Premiere Pro での基本的な編集作業は可能ですが、高解像度素材や多くのエフェクトを使用する場合は、より高性能な GPU が望ましいでしょう。AI 開発（推論）においては、Ollama などのプラットフォームでの LLM 推論タスクに適しており、特に低予算で GPU サーバーを構築したい開発者にとって魅力的な選択肢となります。一般的なプロフェッショナルワークステーションとしては、複数のディスプレイを使用するオフィス環境や、安定性と信頼性が求められる用途に適しています。

Quadro T1000 の最大の強みは、プロフェッショナルな機能、低消費電力、そしてエントリーレベルからミッドレンジのプロフェッショナルワークロードに適した適切な性能のバランスにあります。そのため、ハイエンドなゲーム性能よりも安定性とマルチディスプレイサポートを重視するユーザーにとって、最適な選択肢となるでしょう。

9. まとめと推奨事項

NVIDIA Quadro T1000 は、Turing アーキテクチャを採用した、省電力かつロープロファイルなプロフェッショナルグラフィックスカードです。CAD や一部の DCC アプリケーションにおいて良好な性能を発揮し、複数の高解像度ディスプレイをサポートします。また、AI 推論タスクにも適しており、特に低予算での利用に適しています。

このグラフィックスカードは、中規模程度の CAD 作業を行うプロフェッショナル、複数のディスプレイを使用する環境で作業するユーザー、低予算で AI 推論タスクを実行したい開発者、安定性と信頼性を重視するプロフェッショナルユーザー、そして最新ゲームを最高設定でプレイすることよりもプロフェッショナルな作業環境を重視するユーザーに適しています。

将来的には、より高性能で電力効率の高いプロフェッショナル向けエントリーレベル GPU が登場する可能性があり、T1000 は特定のニッチ市場に留まるかもしれません。しかし、ドライバのアップデートやソフトウェアの最適化によって、既存の性能が向上する可能性も考慮に入れるべきでしょう。