Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 ベンチマークまとめ

CPU・SoC

2025.04.30

1. はじめに
2. 主要なベンチマークツール
3. Snapdragon 8 Gen 3 ベンチマーク結果
4. 競合プロセッサとの性能比較
1. 4.1. Apple A17 Pro / A18 Pro
2. 4.2. MediaTek Dimensity 9300 / 9300+
5. 性能分析
6. 結論

1. はじめに

Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3は、2023年10月に発表されたハイエンドスマートフォン向けシステムオンチップ（SoC）であり、前世代からの大幅な性能向上を実現しています ¹。本レポートでは、主要なベンチマークツールを用いて測定されたSnapdragon 8 Gen 3の性能を詳細に分析し、競合プロセッサとの比較を通じてその実力を明らかにします。分析にあたっては、日本語および英語の技術系ニュースサイト、レビューサイト、ベンチマークデータベースから収集したデータを基に、CPU、GPU、AI処理能力、電力効率、持続性能の各側面から評価を行います。

2. 主要なベンチマークツール

Snapdragon 8 Gen 3の性能測定には、以下のベンチマークツールが広く使用されています。

AnTuTu Benchmark: CPU、GPU、メモリ（RAMおよびストレージ）、UX（ユーザーエクスペリエンス）の性能を総合的に測定し、スコア化するツールです。特に総合スコアは、デバイス全体のパフォーマンスを示す指標として参照されます ³。
Geekbench: CPUのシングルコア性能とマルチコア性能を測定するツールです。個々のCPUコアの処理能力と、全コアを活用した場合の処理能力を評価するのに役立ちます ⁵。また、GPUの演算性能（Compute Score）やAI性能を測定する機能も含まれています ¹。
3DMark: 主にGPUのグラフィック描画性能を測定するツールです。「Wild Life」、「Wild Life Extreme」、「Solar Bay」（レイトレーシング性能測定）などのテストがあり、フレームレート（FPS）やスコア、負荷時の安定性（Stability）を評価します ¹。
PCMark: Webブラウジング、写真編集、ビデオ編集、データ操作など、日常的なタスクのパフォーマンスを測定するツールです ⁵。

これらのツールを用いることで、Snapdragon 8 Gen 3の多角的な性能評価が可能となります。

3. Snapdragon 8 Gen 3 ベンチマーク結果

Snapdragon 8 Gen 3は、各種ベンチマークテストにおいて前世代から顕著な性能向上を示しています。ただし、スコアはテストに使用されるデバイス（冷却性能やメモリ構成など）や測定条件によって変動する点に留意が必要です ¹。

3.1. AnTuTu Benchmark (v10)

AnTuTuベンチマークは、スマートフォンの総合的なパフォーマンスを測る上で重要な指標となります。

総合スコア: Qualcommのリファレンスデバイス（QRD）でのスコアは約214万点 ⁷、実機での平均的なスコアは約200万点から210万点超と報告されています ¹。特に冷却性能の高いゲーミングスマートフォンでは、217万点 ⁴ や、最高で233万点（ZTE Nubia Red Magic 10 Air）といったスコアも記録されています ¹。これは、AnTuTuスコア200万点以上が最高クラスのハイエンド性能を示す目安とされる中で、非常に高いレベルです ⁴。
スコア内訳 (平均的な実測値):

CPU: 約43万点～47万点 ¹
GPU: 約87万点～92万点 ¹
Memory: 約39万点～40万点 ¹
UX: 約35万点 ¹
世代間比較: Snapdragon 8 Gen 2の平均スコア（約127万点～160万点）と比較して、Snapdragon 8 Gen 3は約30%～70%の大幅な性能向上を達成しています ³。特にGPUスコアの伸びが顕著です ³。

3.2. Geekbench Benchmark (v6)

GeekbenchはCPUの純粋な処理能力を評価するのに適しています。

CPU シングルコアスコア: リファレンスデバイスで2329点 ⁷、実機では平均して2200点前後が報告されています ¹。Xiaomi 14 Proでは2063点という記録もあります ¹¹。
CPU マルチコアスコア: リファレンスデバイスで7501点 ⁷、実機では6900点～7300点程度が一般的です ¹。
世代間比較: Snapdragon 8 Gen 2（シングルコア約2000点、マルチコア約5500点）と比較すると、シングルコアで約11%～22%、マルチコアで約25%～44%の性能向上となっています ⁷。Qualcommの公称値（30%向上）にはやや届かないものの、特にマルチコア性能の向上が目立ちます ⁷。
GPU Compute Score: 約14200点～14600点と報告されており、高いGPU演算性能を示しています ¹。これはSnapdragon 8 Gen 1の約2倍のスコアです ³。
AI Benchmark Score:

単精度 (FP32): 2895点 ⁵ （ただし、別のテストでは439点という報告もあり、テスト方法による差が大きい可能性があります ⁶）
半精度 (FP16): 2918点 ⁵ （別のテストでは16203点 ⁶）
量子化 (INT8): 4676点 ⁵ （別のテストでは39007点 ⁶） Geekbench AIのスコアはテストバージョンやフレームワークによって大きく変動する傾向がありますが、Snapdragon 8 Gen 3が高いAI性能を持つことを示唆しています。

3.3. 3DMark Benchmark

3DMarkは、特にゲーミング性能を評価する上で重要な指標です。

Wild Life: スコア19114点、平均114 FPS ⁸。
Wild Life Extreme:

スコア: リファレンスデバイスで5338点 ⁸、実機（Asus ROG Phone 8 Proなど）ではピークスコア5136点～5210点 ⁶、一般的なデバイスでは約4300点～5300点 ⁷。
FPS: 平均32 FPS ⁸。
安定性 (Stability): デバイスの冷却性能に大きく依存します。リファレンスデバイスや冷却強化モデルでは59%～73%程度 ¹ ですが、一部のテストでは52.5%という低い値も報告されており ⁶、高負荷時の性能維持には課題がある可能性も示唆されます。Snapdragon 8 Gen 2と比較して安定性が低下しているというデータもあります ¹⁵。
Solar Bay (Ray Tracing):

スコア: リファレンスデバイスで8547点 ⁸、実機では約7760点 ⁷。
FPS: 平均32 FPS ⁸。
世代間比較: Wild Life ExtremeスコアはSnapdragon 8 Gen 2（約3700点～3900点）から約15%～41%向上 ⁷。Solar BayスコアはSnapdragon 8 Gen 2（約5400点～5600点）から約43.5%の大幅向上 ⁷ を示し、レイトレーシング性能の進化が顕著です。

3.4. PCMark Work 3.0

PCMark Work 3.0は、日常的なタスクにおけるパフォーマンスを示します。

スコア: 21628点 ⁸ や25569点 ⁵ といった非常に高いスコアが報告されており、一般的なアプリケーションの動作も極めて快適であることがわかります。

4. 競合プロセッサとの性能比較

Snapdragon 8 Gen 3の性能を、同時期にリリースされた主要な競合プロセッサと比較します。

4.1. Apple A17 Pro / A18 Pro

AppleのAシリーズチップは、特にシングルコア性能と電力効率において長年高い評価を得ています。

AnTuTu v10: Snapdragon 8 Gen 3（約205万点）はA17 Pro（約153万点）を総合スコアで上回ります ¹⁶。A18 Pro（約182万点）と比較すると、Snapdragon 8 Gen 3（約181万点）とほぼ同等の総合スコアですが、CPUスコアは同等、GPUスコアはA18 Proが約10%優位という報告があります ⁶。
Geekbench 6 CPU:

シングルコア: A17 Pro（約2950点）¹⁶ やA18 Pro（約3350点）⁶ は、Snapdragon 8 Gen 3（約2200点～2300点）⁶ を大きく上回ります（A18 Pro比で約45%高速）⁶。これはApple独自設計コアの強みを示しています ¹⁷。
マルチコア: Snapdragon 8 Gen 3（約7000点～7500点）⁶ は、A17 Pro（約7200点～7400点）¹⁶ とほぼ同等か、わずかに上回る結果を示しています。A18 Pro（約8180点）⁶ に対しては、Snapdragon 8 Gen 3がコア数で勝る（8コア対6コア）ものの、A18 Proが約14%高速です ¹⁴。
3DMark Wild Life Extreme:

ピーク性能: Snapdragon 8 Gen 3（約5100点～5300点）はA17 Pro（約3700点）¹⁷ やA18 Pro（約4570点）⁶ のピークスコア（Best loop score）を上回ります。
持続性能/安定性: A17 ProやA18 Pro（安定性67.7%）⁶ は、Snapdragon 8 Gen 3（安定性52.5%～59%）⁶ よりも優れた持続性能を示す傾向があります。Snapdragon 8 Gen 3は初期ブーストが高いものの、性能低下が大きい可能性があります ¹⁴。

Geekbench AI: A18 Proは特に単精度（FP32）でSnapdragon 8 Gen 3を大幅に上回り、半精度（FP16）でも約2倍、量子化（INT8）でも約13%高速という結果が出ています ⁶。これはA18 ProのNeural Engineと新しいSMEユニットの優位性を示唆しています ⁶。
プロセスノード: A17 Pro/A18 ProはTSMCの3nmプロセスを採用しているのに対し、Snapdragon 8 Gen 3は4nmプロセスです ¹⁶。一般的に、より微細なプロセスは電力効率面で有利とされます ¹⁷。
ゲーミング: ベンチマーク上ではSnapdragon 8 Gen 3のGPUが優位な場面もありますが、Aシリーズ搭載のiPhoneは「バイオハザードヴィレッジ」のようなコンソール級ゲームが移植されるなど、独自のゲームエコシステムを築いています ¹⁷。持続性能や最適化の度合いも実際のゲーム体験に影響します。

4.2. MediaTek Dimensity 9300 / 9300+

MediaTekのDimensityシリーズは、特にCPUマルチコア性能でSnapdragonに匹敵、あるいは凌駕する性能を示しています。

AnTuTu v10: Dimensity 9300搭載機（vivo X100 Pro）が約210万点 ¹⁹、Dimensity 9400搭載機（OPPO Find X8）が約261万点 ²⁰ と、Snapdragon 8 Gen 3と同等以上のスコアを記録しています。
Geekbench 6 CPU:

シングルコア: Dimensity 9300（約2240点）はSnapdragon 8 Gen 3（約2190点）とほぼ同等です ²¹。
マルチコア: Dimensity 9300（約7540点）はSnapdragon 8 Gen 3（約7300点）をわずかに上回ります ²¹。これは、Dimensity 9300が効率コアを持たず、4つの高性能Cortex-X4コアを含む「All-Big Core」構成を採用しているためと考えられます ²¹。
3DMark:

ピーク性能: Wild Life ExtremeやSolar Bayのピークスコアでは、Dimensity 9300がSnapdragon 8 Gen 3をわずかに上回る結果も報告されています ²¹。しかし、別のテスト（Wild Life）ではSnapdragon 8 Gen 3がDimensity 9300に対して約26%優位という結果もあります ²³。
持続性能/安定性: Wild Life Extreme Stress Testにおいて、Dimensity 9300搭載機（vivo X100 Pro）は安定性が48.2%と非常に低く、Snapdragon 8 Gen 3搭載機（REDMAGIC 9 Pro、ファン無効時でも67%）に比べて性能低下が著しいことが示されています ²³。All-Big Core構成はピーク性能が高い一方で、発熱や消費電力が増加し、持続性能に影響を与える可能性があります ²²。
アーキテクチャ: Snapdragon 8 Gen 3が1+5+2のbig.LITTLE構成 ¹ であるのに対し、Dimensity 9300は4+4のAll-Big Core構成 ²¹ を採用しており、設計思想が異なります。

以下の表は、主要なベンチマークにおける各プロセッサの代表的なスコアをまとめたものです（スコアはデバイスやテスト条件により変動します）。

ベンチマーク	指標	Snapdragon 8 Gen 3 (実機平均/代表値)	Apple A18 Pro (iPhone 16 Pro)	MediaTek Dimensity 9300 (vivo X100 Pro等)	出典例
AnTuTu v10	総合スコア	~2,100,000	~1,820,000	~2,100,000	⁶
Geekbench 6	シングルコア	~2,200 – 2,300	~3,350	~2,240	⁶
	マルチコア	~7,000 – 7,500	~8,180	~7,540	⁶
3DMark	WLE Score (Peak)	~5,100 – 5,300	~4,570	~5,000 – 5,200 (推定)	⁶
	WLE Stability	52% – 73%	~68%	~48%	¹
	Solar Bay Score	~7,700 – 8,500	~7,980	~7,800 – 8,000 (推定)	⁷

5. 性能分析

収集したデータに基づき、Snapdragon 8 Gen 3の性能を多角的に分析します。

5.1. CPU性能

Snapdragon 8 Gen 3は、CPU性能において前世代から着実な進化を遂げています。新しいKryo CPUは、1つのPrimeコア（Cortex-X4ベース @ 3.3GHz）、5つのPerformanceコア（Cortex-A720ベース @ 3.0-3.2GHz）、2つのEfficiencyコア（Cortex-A520ベース @ 2.3GHz）という1+5+2構成を採用しています ¹。これはGen 2の1+4+3構成からPerformanceコアを増やしたもので、マルチスレッド性能の向上に寄与しています ²⁴。

マルチコア性能: Geekbench 6マルチコアスコアで約25%～44%の向上 ⁷ を見せており、複数のアプリケーションを同時に実行したり、複雑な処理を行ったりする際の快適性が向上しています。競合のDimensity 9300（All-Big Core構成）に匹敵し、A17 Proをも上回る場面がある点は注目に値します ¹⁶。
シングルコア性能: 約11%～22%の向上 ⁷ と、マルチコアほどの伸びではありませんが、着実に向上しています。ただし、Apple Aシリーズのシングルコア性能には依然として差があります ⁶。
総合的な評価: Qualcommが公称する30%の性能向上 ¹² には一部テストで届かないものの、特にマルチコア性能の大幅な向上により、全体的なCPUパフォーマンスは大きく底上げされています。

5.2. GPU性能

新しいAdreno 750 GPUは、グラフィック性能においても大きな飛躍を遂げています。Qualcommは、Gen 2比で25%の性能向上と25%の電力効率改善を謳っています ¹²。

描画性能: 3DMark Wild Life Extremeのスコア向上（約15%～41%）⁷ や、AnTuTu GPUスコアの大幅な伸び ³ が示すように、高負荷なゲームやグラフィック処理能力が向上しています。ピーク性能ではApple A18 Proをも上回る場面があります ⁶。
レイトレーシング: 3DMark Solar Bayスコアが約43.5%向上 ⁷ しており、ハードウェアアクセラレーションによるリアルタイムレイトレーシング性能が大幅に強化されています。新たにグローバルイルミネーション（Global Illumination）にも対応し、よりリアルな光と影の表現が可能になりました ²⁴。これは、モバイルゲームのグラフィック品質をコンソールレベルに引き上げる可能性を秘めています ²⁶。
ゲーミング機能: 240Hzディスプレイでの240 FPS表示対応 ²⁴、Unreal Engine 5.2のMetaHumansフレームワーク対応 ²⁴ など、Snapdragon Elite Gaming機能も強化されており、より滑らかで没入感の高いゲーム体験を提供します。
課題: 高いピーク性能を持つ一方で、3DMarkの安定性テストでは性能低下が見られ、持続性能にはデバイスの冷却設計が大きく影響します ⁶。

5.3. AI性能

Snapdragon 8 Gen 3は、AI処理能力の大幅な向上を特徴としています。

Hexagon NPU: 新しいHexagon NPUは、前世代比で最大98%高速化し、電力効率（Performance-per-watt）も40%向上したとされています ²⁴。INT4やINT8などのあらゆる精度をサポートします ²⁴。
オンデバイス生成AI: 最大100億パラメータの大規模言語モデル（LLM）や画像生成AI（Stable Diffusionなど）をクラウドを介さずにデバイス上で直接実行できる世界初のモバイルプラットフォームであると謳われています ²⁴。これにより、応答速度の向上、プライバシー保護、オフラインでの利用が可能になります ²⁶。
ベンチマーク: Geekbench AIなどのベンチマークスコアはテスト条件による変動が大きいものの、高いポテンシャルを示唆しています ⁵。ただし、Apple A18 Proと比較すると、特定のAIタスクでは劣る可能性も指摘されています ⁶。
応用: カメラ機能（リアルタイムセマンティックセグメンテーション、AIによる動画編集、ナイトビジョンビデオなど）²⁴ や、仮想アシスタント、チャットボットなど、様々なアプリケーションでの活用が期待されます ²⁴。

5.4. 電力効率と持続性能

性能向上と同時に、電力効率と持続性能も重要な評価軸となります。

電力効率: Qualcommは、CPUで20%、GPUで25%の電力効率改善を主張しています ¹²。TSMCの4nmプロセス技術 ¹ や、新しいコアアーキテクチャ、電力管理技術 ²⁷ がこれに貢献しています。アイドル時のディスプレイリフレッシュレートを1Hzまで下げる機能 ³⁰ なども省電力化に寄与します。
ピーク消費電力: 一方で、高性能化に伴い、ピーク負荷時の消費電力は増加する傾向にあります。Burnout Benchmarkテストでは、Snapdragon 8 Gen 3搭載機がピーク時に17.37Wを消費したのに対し、Gen 2搭載機は13.67Wでした ¹²。Snapdragon 8 Elite（Gen 4相当）はさらに高い16W（ただし測定基準が異なる可能性あり）を記録する一方で、Gen 3はGen 2よりもアイドル時の消費電力が低いというデータもあります ¹⁵。
持続性能（スロットリング）: 高負荷が続くと、発熱を抑えるために性能が制限されるサーマルスロットリングが発生します。3DMark Wild Life Extreme Stress Testの安定性スコアが50%台に留まるケース ⁶ や、CPU Throttling Testでの性能低下 ¹² が報告されており、特に冷却機構が十分でないデバイスでは、ピーク性能を長時間維持するのは難しい可能性があります。これは競合のDimensity 9300でより顕著な課題ですが ²³、Snapdragon 8 Gen 3も無縁ではありません。Exynos 2400と比較した場合、Snapdragon 8 Gen 3はピーク性能で勝るものの、持続性能やバッテリー寿命ではExynosが優位という評価もあります ³¹。Apple A18 Proは、特にPコアの電力効率でSnapdragon 8 Gen 3を上回るとされています ¹⁸。
冷却の重要性: ゲーミングフォン（例: REDMAGIC 9 Pro）のように強力な冷却システムを備えたデバイスでは、持続性能が大幅に改善されます ¹²。したがって、Snapdragon 8 Gen 3の真価を引き出すには、デバイス側の熱設計が極めて重要となります。

6. 結論

Snapdragon 8 Gen 3は、前世代のSnapdragon 8 Gen 2からCPU（特にマルチコア）、GPU（描画性能、レイトレーシング）、AI処理能力において大幅な性能向上を達成した、強力なフラッグシップSoCです。AnTuTuベンチマークで200万点を超えるスコアは、現行最高クラスのパフォーマンスを示しています。

特に、オンデバイスでの生成AI実行能力は、今後のモバイル体験を変革する可能性を秘めています。GPU性能の向上、特にレイトレーシング機能の強化は、モバイルゲームのグラフィック品質を新たなレベルへと引き上げるでしょう。

一方で、競合との比較では、Apple Aシリーズに対してシングルコアCPU性能やAI性能の一部、電力効率で譲る面があります。MediaTek Dimensity 9300とは、ピーク性能では拮抗しつつも、Snapdragon 8 Gen 3の方が持続性能で優位性を示す傾向にあります。

高性能化に伴うピーク消費電力の増加と、それに伴うサーマルスロットリングによる持続性能の低下は、Snapdragon 8 Gen 3搭載デバイスを選ぶ上での注意点です。デバイスの冷却性能が、チップのポテンシャルを最大限に引き出す鍵となります。

総じて、Snapdragon 8 Gen 3は、AI機能とグラフィック性能を重視するユーザーにとって魅力的な選択肢であり、2024年以降のハイエンドAndroidスマートフォンの性能基準を大きく引き上げる存在と言えます。