Snapdragon 695 5G ベンチマークまとめ

cpu_microsoft CPU・SoC
  1. 1. Snapdragon 695 5G の概要
    1. 1.1 主要スペック
      1. 出典: Qualcomm Official Website, Qualcomm PDF Product Brief 3, Garumax 2, benchmarks.ul.com
    2. 1.2 技術的特徴 (深掘り)
      1. 出典: Qualcomm Official Website, Qualcomm PDF Product Brief 3, Garumax 2
    3. 1.3 主な搭載スマートフォン例 (日本市場モデル中心)
      1. Snapdragon 695搭載 主要日本市場スマートフォン スペック比較表
  2. 2. 主要ベンチマークスコア
    1. 2.1 AnTuTu Benchmark スコア
      1. 2.1.1 スコア一覧 (複数サイトからの収集結果)
    2. 2.2 Geekbench スコア
      1. 2.2.1 CPUスコア (Single-Core / Multi-Core)
        1. 2.2.2 GPU Compute スコア (利用可能な場合)
        2. 出典: nanoreview.net
      2. 2.2.3 スコア分析
    3. 2.3 3DMark スコア
      1. 2.3.1 Wild Life / Wild Life Extreme スコア
        1. 2.3.2 スコア分析
      2. Snapdragon 695 ベンチマークスコア集計
  3. 3. CPUおよびGPU性能評価
    1. 3.1 CPU性能分析 (ベンチマークに基づく評価、レビューサイト解説)
      1. 3.2 GPU性能分析 (ベンチマークに基づく評価、レビューサイト解説)
      2. 4. 競合SoCとの性能比較
    2. 4.1 同世代Snapdragonシリーズとの比較 (例: 480, 690, 6 Gen 1, 765G, 7s Gen 2)
      1. 出典: Garumax 2, Qualcomm, orefolder.jp 13, hypergadget.jp, nicosuma.com
    3. 4.2 MediaTek Dimensityシリーズとの比較 (例: Dimensity 700, 800U, 7020, 7025, 7050)
      1. Snapdragon 695 vs 競合SoC ベンチマーク比較
  4. 5. 実使用感レビュー
    1. 5.1 日常操作・マルチタスク性能
    2. 5.2 ゲームプレイ性能 (タイトル別評価)
    3. 5.3 バッテリー効率・発熱
  5. 6. 総合評価とまとめ
      1. 引用文献

1. Snapdragon 695 5G の概要

Snapdragon 695 5Gは、Qualcommが開発したスマートフォン向けSystem on a Chip (SoC)であり、特に2022年から2023年にかけて日本のミドルレンジスマートフォン市場で広く採用されました 1。2021年後半にSnapdragon 690 5Gの後継として発表され 2、性能と電力効率のバランスを重視した設計が特徴です。本セクションでは、その基本的な仕様、技術的特徴、および搭載された代表的なスマートフォンについて解説します。

1.1 主要スペック

Snapdragon 695 5Gの主要な技術仕様は以下の通りです。

  • プロセスノード: 6nm 3。旧世代のSnapdragon 690が採用していた8nmプロセス と比較して微細化されており、一般的に電力効率の向上や、より高いトランジスタ密度による性能向上が期待されます。これはミドルレンジスマートフォンのバッテリー持続時間に寄与する重要な要素です。
  • CPU: Qualcomm® Kryo™ 660 オクタコアCPU、最大クロック周波数 2.2GHz 3。構成は、高性能コア(Cortex-A78ベースのKryo 660 Gold)x2 @ 2.2GHz と高効率コア(Cortex-A55ベースのKryo 660 Silver)x6 @ 1.7GHz または 1.8GHz と推測されます 3。この構成は、要求の厳しいタスク用のパフォーマンスコアと、バックグラウンド処理用の効率コアを組み合わせる、ミドルレンジSoCの典型的な構成です。2.2GHz というクロック周波数は、前世代690の 2.0GHz からの着実な向上を示しています。Qualcommは、690と比較してCPU性能が15%向上したと主張しています 2
  • GPU: Qualcomm® Adreno™ 619 3。ミドルレンジに位置づけられるGPUであり、QualcommはSnapdragon 690のAdreno 619Lと比較して最大30%高速なグラフィックスレンダリング性能を持つと主張しています 2。対応APIはOpenGL® ES 3.2, OpenCL™ 2.0, Vulkan® 1.1などです 3
  • AIエンジン: Qualcomm® AI Engine(Hexagon™ 686 Processor搭載)3。AI関連タスク(計算写真処理、音声処理、センサーフュージョンなど)をメインCPU/GPUよりも効率的に処理します。
  • モデム: Snapdragon™ X51 5G Modem-RF System 3。5G(Sub-6 GHzおよびミリ波)に対応します。ミリ波対応は、ミリ波非対応だった690からの重要な追加機能です 2。理論上の最大通信速度は下り最大 2.5Gbps (5G) / 上り最大 1.5Gbps (5G) です 2。LTE、WCDMAなどもサポートします 3。ミリ波への対応は、当時の6シリーズチップとしては注目すべき点でした。
  • メモリサポート: LPDDR4x @ 2133MHz 3
  • ストレージサポート: UFS 2.2, eMMC 5.1 3。UFS 2.2はeMMCよりも高速な読み書き速度を提供し、アプリの起動やファイル転送の高速化に貢献します。これはミドルレンジデバイスにおいて体感性能の向上につながる要素です。
  • ディスプレイサポート: FHD+ (1080×2520) @ 120Hz 3。ミドルレンジスマートフォンで一般的になった高リフレッシュレートディスプレイでの滑らかなスクロールや表示を可能にします 1
  • カメラISP: Qualcomm Spectra™ 346T(トリプル 12-bit ISP)3。最大108MPの写真撮影、特定のマルチカメラ構成(例:13MPトリプル @ 30fps ZSL)、HEIC/HEVCキャプチャなどをサポートします 3
  • Wi-Fi/Bluetooth: FastConnect™ 6200 system、Wi-Fi 5 (802.11ac Wave 2)、Bluetooth 5.2 3。Wi-Fi 6/6Eに非対応である点は、ミドルレンジで早期にWi-Fi 6を採用した競合製品に対してやや見劣りする可能性があります(Snapdragon 6 Gen 1でWi-Fi 6Eが追加されたことが言及されています)。
  • 位置情報: デュアル周波数GNSS (L1+L5)、GPS, GLONASS, BeiDou, Galileo, NavIC, QZSSをサポート 3
  • 充電: Quick Charge 4+ technology 3
  • NFC: 対応 3。日本市場における「おサイフケータイ」機能の実現に不可欠です 1

出典: Qualcomm Official Website, Qualcomm PDF Product Brief 3, Garumax 2, benchmarks.ul.com

1.2 技術的特徴 (深掘り)

Snapdragon 695 5Gの技術的特徴をさらに詳しく見ていきます。

  • 6nmプロセス: 前世代のSnapdragon 690が採用した8nmプロセス と比較して、6nmプロセスは電力効率の向上に貢献します。これにより、同容量のバッテリーを搭載したデバイスでより長いバッテリー持続時間を実現したり、より薄型のデザインを可能にしたりする潜在力があります。この効率性は、実際のレビューでもしばしば高く評価されています 1
  • CPUアーキテクチャ (Kryo 660): ARM Cortex-A78(Goldコア)およびA55(Silverコア)のデザインに基づいています。690のA77ベースのKryo 560 Goldからの移行が、公称15%の性能向上 2 に寄与しています。発表時点での最新コアではありませんでしたが、6シリーズにとっては堅実なアップグレードでした。
  • GPUアップグレード (Adreno 619): 公称で最大30%の性能向上 2 はミドルレンジチップとしては重要であり、カジュアルゲームやUIの滑らかさの向上を目指したものですが、後述するベンチマーク結果が示すように、要求の高いタイトルでは依然としてボトルネックとなる傾向があります。
  • ミリ波5G対応: Snapdragon 690にはなかったミリ波への対応 2 は、重要な差別化要因でした。ミリ波の展開エリアは限定的であるものの、対応していることで、より高速な通信が可能なエリアでの利便性が向上し、6シリーズを5G機能の面で上位製品に近づけるものでした。
  • 動画撮影制限 (最大1080p): これは注目すべき制限事項です。ISP自体は高解像度の静止画(最大108MP 3)をサポートしているにも関わらず、動画撮影が最大1080p/60fpsに制限されています 3。同時代の多くのミドルレンジSoC(旧型のSnapdragon 765Gを含む)や、後発のエントリークラスSoCの一部が4K撮影に対応していたことを考えると、これは顕著な機能差です。この制限は、Qualcommの製品ラインナップにおける6シリーズと上位の7シリーズとの意図的な差別化、あるいはAdreno 619 GPUと組み合わせた際の性能や熱設計上の制約、コスト削減といった要因が複合的に作用した結果と考えられます。高解像度での動画撮影を重視するユーザーにとっては、この点が競合製品や上位チップセットを検討する理由となる可能性があります。この制限は、高い静止画解像度のサポートとは対照的です。
  • AI機能: AIエンジン(Hexagon 686)は搭載されていますが 3、上位のSnapdragonチップに搭載されているプロセッサと比較すると性能は控えめです。その効果は主に、音声起動、基本的なAIカメラ機能(シーン認識、ノイズリダクション)、センサー処理といったバックグラウンドタスクにおいて発揮され、複雑なオンデバイスAIモデルの実行には限界があります。

出典: Qualcomm Official Website, Qualcomm PDF Product Brief 3, Garumax 2

1.3 主な搭載スマートフォン例 (日本市場モデル中心)

Snapdragon 695は、2022年から2023年にかけて日本で発売された多くのミドルレンジスマートフォンに採用されました 1。これらのモデルの多くは、おサイフケータイ(FeliCa/NFC)対応や、様々なレベルの防水・防塵性能(IP等級)といった日本市場で重視される機能を搭載していました 1

以下に代表的な搭載モデルを挙げます。

  • OPPO Reno7 A 1
  • OPPO Reno9 A(Snapdragon 695を継続採用し、RAM等を強化)1
  • Xiaomi Redmi Note 11 Pro 5G 1
  • Motorola moto g52j 5G 1
  • Sony Xperia 10 IV
  • Sony Xperia 10 V 5
  • Sharp AQUOS wish2 1
  • Sharp AQUOS sense6s
  • Sharp AQUOS sense7 / sense7 plus 1
  • HTC Desire 22 pro
  • その他(日本市場以外も含む可能性あり): OPPO K11x, OPPO F23 5G, OPPO A1 Pro, OnePlus Nord N20, OnePlus Nord CE 2 Lite, POCO X5 5G 9

チップの継続採用について: OPPOが2023年半ばに発売したReno9 Aで、主にRAMとデザインを更新しつつもSnapdragon 695を引き続き採用したという事実は 1、特定のミドルレンジ市場セグメントにおいては、695の性能がターゲットユーザーにとって十分であると判断されたか、あるいはコストやサプライチェーンの安定性が、Snapdragon 6 Gen 1 のような新しいチップを採用するよりも優先された可能性を示唆しています。これは、主流ユーザーにとっての体感性能向上ニーズとコストのバランスが、ある程度の水準で飽和しつつある可能性を示しています。

市場における差別化: 同じSoCを搭載したデバイスが多数存在するため 1、製品間の差別化は、カメラ性能、ディスプレイの種類(有機EL vs 液晶)、バッテリー容量や充電速度 1、デザイン、ソフトウェア機能、そして価格 1 といった他の要素に大きく依存することになります。これらのデバイス群において、SoC自体は基本的な性能ラインを示すものとなり、決定的なセールスポイントとはなりにくくなっています。

Snapdragon 695搭載 主要日本市場スマートフォン スペック比較表

モデル名発売時期(目安)RAM/ストレージディスプレイ (サイズ, タイプ, リフレッシュレート)バッテリー (容量, 充電速度)メインカメラ (広角)おサイフケータイ防水防塵重量価格帯(発売時目安)出典例
OPPO Reno7 A2022年6月6GB/128GB6.4インチ, 有機EL, 最大90Hz4500mAh, 最大18W48MP (F1.7)対応IP68約175g44,800円1
OPPO Reno9 A2023年6月8GB/128GB6.4インチ, 有機EL, 最大90Hz4500mAh, 最大18W48MP (F1.7)対応IP68約183g46,800円1
Xiaomi Redmi Note 11 Pro 5G2022年5月6GB/128GB6.67インチ, 有機EL, 最大120Hz5000mAh, 最大67W108MP (F1.9)対応IP53約202g44,800円1
Motorola moto g52j 5G2022年6月6GB/128GB6.8インチ, 液晶, 最大120Hz5000mAh, 最大15W50MP (F1.8)対応IP68約206g39,800円1
Sony Xperia 10 IV2022年7月6GB/128GB6.0インチ, 有機EL, (60Hz)5000mAh, (PD対応)12MP (F1.8)対応IP68約161g6万円台~
Sony Xperia 10 V2023年7月6GB/128GB6.1インチ, 有機EL, (60Hz)5000mAh, (PD対応)48MP (F1.8)対応IP68約159g6万円台~5
Sharp AQUOS wish22022年6月4GB/64GB5.7インチ, 液晶, (約60Hz)3730mAh, (PD対応)13MP (F2.0)対応IP67約162g2万円台~ (キャリア)1
Sharp AQUOS sense6s2022年7月4GB/64GB6.1インチ, IGZO OLED, (60Hz)4570mAh, (PD対応)48MP (F1.8)対応IP68約156g
Sharp AQUOS sense72022年11月6GB/128GB6.1インチ, IGZO OLED, (60Hz, 可変)4570mAh, (PD対応)50.3MP (F1.9)対応IP68約158g5万円台前半1
Sharp AQUOS sense7 plus(SoftBank専売)6GB/128GB6.4インチ, IGZO OLED, 120Hz (240Hz相当)5050mAh, (PD対応)50.3MP (F1.9)対応IP68約172g69,840円6
HTC Desire 22 pro2022年10月8GB/128GB6.6インチ, 液晶, 120Hz4520mAh, 最大18W64MP (F1.79)対応IP67約205.5g6万円台~10

(注: 価格は発売当初や参考価格であり変動します。スペック詳細はモデルや販売キャリアにより異なる場合があります。)

2. 主要ベンチマークスコア

本セクションでは、主要なベンチマークソフト(AnTuTu Benchmark, Geekbench, 3DMark)におけるSnapdragon 695 5Gのスコアを、日本語のレビューサイトやブログから収集したデータに基づき提示します。ベンチマークスコアは、SoCの基本的な処理能力を数値化し比較するための指標となりますが、実使用感を完全に反映するものではない点に留意が必要です。また、特にAnTuTuやGeekbenchはバージョンによってスコア体系が大きく異なるため、バージョン情報を併記します。

2.1 AnTuTu Benchmark スコア

AnTuTu Benchmarkは、CPU、GPU、メモリ(MEM)、ユーザーエクスペリエンス(UX)の性能を総合的に評価するベンチマークアプリです。

2.1.1 スコア一覧 (複数サイトからの収集結果)

以下に、収集したAnTuTuベンチマークスコアをバージョン別に示します。

  • AnTuTu v10:
  • AQUOS sense7 plus: 約440,000 (Total), 約149k (CPU), 約83k (GPU), 約94k (MEM), 約113k (UX) 8
  • moto g52j 5G (6GB): 438,502 (Total), 82,946 (GPU) 11
  • POCO X5 5G: 461,310 (Total), 97,059 (GPU) 9
  • OPPO Reno9 A: 451,304 10
  • AQUOS sense7: 442,463 10
  • HTC Desire 22 Pro: 445,324 10
  • Xperia 10 IV: 439,848 10
  • Galaxy Tab A9+: 437,161 10
  • moto g52j 5G Ⅱ: 462,027 10
  • Redmi Note 11 Pro 5G: 441,045 10
  • OPPO Reno7 A: 431,660 10
  • AQUOS wish2: 417,826 10
  • 一般的なv10スコア範囲 (nemunote.com): 435,607 12
  • 一般的なv10スコア範囲 (AnTuTu公式データ – 2025年3月): 約44.8万 (Total), 約12.4万 (CPU), 約10.1万 (GPU) (注: 公式サイトの集計方法は個別のレビューサイトと異なる可能性があります)
  • 一般的なv10スコア範囲 (mysmartprice.com): 約46.5万, 約46.2万 (OnePlus Nord CE 3 Lite 5G)
  • 一般的なv10スコア範囲 (91mobiles.com): 約40.1万
  • AnTuTu v9:
  • moto g52j 5G (6GB): 386,723 (Total), 99,625 (GPU) 11
  • Redmi Note 11 Pro 5G (6GB): 390,910 13
  • OPPO Reno7 A (6GB): 385,177 13
  • AQUOS wish2 (4GB): 347,206 13
  • AQUOS sense7 plus: 392,276 6
  • Xperia 10 V: 約390,000 (Total), 約98,000 (GPU) 5
  • 一般的なv9スコア範囲 (hypergadget.jp): moto g52j 5G 約39.4万
  • 一般的なv9スコア範囲 (mobile-com.ne.jp): Redmi Note 11 Pro 5G 約39.4万
  • 一般的なv9スコア範囲 (ascii.jp): 3モデル(AQUOS sense7, Reno7 A, Redmi Note 11 Pro 5G)のスコアは記載なし、ただし「ほぼ互角」と評価 7
  • 2.1.2 スコア分析 (平均、ばらつき、バージョン差)

収集したデータに基づくと、AnTuTu v10のスコアは概ね43万点~46万点の範囲に集中しています 8。一方、AnTuTu v9のスコアはこれより低く、RAM 6GBモデルでは通常38万点~40万点程度です 11

同じSoCを搭載していても、デバイス間でスコアにはある程度のばらつきが見られます。これは、RAM容量(例: 4GB RAMのAQUOS wish2はスコアが低い 10)、冷却性能、ソフトウェアの最適化、テスト実行時のバックグラウンドプロセスなどの要因によるものと考えられます。POCO X5 5Gやmoto g52j 5G IIがやや高いv10スコア(約46万点 9)を示しているのは、最適化や冷却が進んでいる可能性があります。

AnTuTuベンチマークのスコアを比較する際には、テストバージョンの違いに特に注意が必要です。例えば、moto g52j 5Gでは、v9で約38.7万点だったスコアが、v10では約43.9万点に上昇しています 11。これは、AnTuTuがテスト内容やスコアリングの重み付けを、進化するハードウェア能力やソフトウェア利用パターンを反映するために定期的に更新するためです。したがって、異なるメジャーバージョン間でのスコアの直接比較は適切ではありません。性能評価を行う際は、可能な限り同一バージョンのスコアを用いることが重要です。

GPUスコアに注目すると、v10では約8.3万点~9.7万点 8、v9では約9.9万点 11 前後となっています。レビューサイト「ガルマックス」が提示する目安 5 によると、このGPUスコア範囲(5万点~15万点)は「必要最低限」から「軽いゲームくらいなら」という性能レベルに該当し、これは後述する実際のゲームプレイ評価とも一致しています(セクション5.2参照)。

2.2 Geekbench スコア

Geekbenchは、主にCPUのシングルコア性能とマルチコア性能を測定するベンチマークです。オプションでGPUの演算性能(Compute)も測定できます。

2.2.1 CPUスコア (Single-Core / Multi-Core)

  • Geekbench 6:
  • Single-Core: 概ね 900~910 点前後 8。例: AQUOS sense7 plus 約904~911点 8。汎用SD695 約908点。
  • Multi-Core: 概ね 2100~2170 点前後 8。例: AQUOS sense7 plus 約2133~2166点 8。汎用SD695 約2134点。
  • Geekbench 5:
  • Single-Core: 概ね 650~690 点前後 6。例: Redmi Note 11 Pro 5G 約691点 13。OPPO Reno7 A 約684点 13。AQUOS wish2 約673点 13。AQUOS sense7 plus 約652点 6
  • Multi-Core: 概ね 1800~2100 点前後 6。例: Redmi Note 11 Pro 5G 約2074点 13。OPPO Reno7 A 約1991点 13。AQUOS wish2 約1805点 13。AQUOS sense7 plus 約1873点 6
  • Geekbench Browser データ (スコアからv6と推定):
  • OnePlus Nord N20: Single 約892点
  • 汎用SD695平均: Single 約892点
  • OnePlus Nord CE 2 Lite: Single 約888点
2.2.2 GPU Compute スコア (利用可能な場合)
  • Geekbench 6 Compute (Vulkan/OpenCL):
  • Vulkan Score (Adreno 619): 約1223点 (nanoreview.netのデータ)
  • (注: Geekbench Computeスコアは、一般的なレビューではCPUスコアやAnTuTu/3DMarkスコアほど頻繁には報告されません。)
出典: nanoreview.net

2.2.3 スコア分析

Geekbenchのスコアは、AnTuTuと比較して異なるデバイス間での一貫性が高い傾向が見られます。これは、Geekbenchが短時間でのCPU(およびオプションのGPU Compute)性能に焦点を当てているためと考えられます。

シングルコアスコア(Geekbench 6で約900点)は、日常的なアプリで一般的なシングルスレッドタスクに対して、まずまずの性能を提供することを示しています。マルチコアスコア(Geekbench 6で約2100点)は、そのクラスとしてはマルチタスクや中程度の負荷のアプリケーションを処理できる能力を反映しています。

AnTuTuと同様に、Geekbenchもバージョン間でスコアが大きく異なります。Geekbench 6のスコアは、同じハードウェアであってもGeekbench 5よりも大幅に高くなります(例: Single: GB5 約670点 -> GB6 約900点; Multi: GB5 約1900点 -> GB6 約2100点)。これはGeekbench 6でテスト内容が更新されたためであり、バージョン間での直接比較はできません。

GPU ComputeのVulkanスコア約1223点 は、GPUの演算能力を示すもう一つのデータポイントですが、他のGPUとの比較文脈があって初めてその意味が明確になります。一般的に、上位のAdreno GPUのスコアよりは低い値です。

2.3 3DMark スコア

3DMarkは、特に3DグラフィックスレンダリングにおけるGPU性能を測定するためのベンチマークです。Wild LifeおよびWild Life Extremeテストがモバイルデバイスでよく使用されます。

2.3.1 Wild Life / Wild Life Extreme スコア

  • Wild Life (Standard):
  • スコアは概ね 1200~1220 点前後に集中しています 7
  • Redmi Note 11 Pro 5G: 1206点 13
  • OPPO Reno7 A: 1210点 13
  • AQUOS wish2: 1219点 13
  • AQUOS sense7 plus: Sling Shot Extreme 2885点 6 (注: これは異なるテストであり、古いAPIを使用)
  • Xperia 10 V: スコアの明示的な記載なし、ただしテストは実施。ascii.jpは3モデルでWild Lifeテストを実施したが、スコアではなく温度のみを記載 7
  • Wild Life Extreme:
  • スコアは約 350~360 点前後 13
  • Redmi Note 11 Pro 5G: 358点 13
  • AQUOS sense7 plus: 353点 6
  • その他の3DMarkテスト (参考):
  • Steel Nomad Light: (Snapdragon 695のスコアは見つからず。ハイエンドチップ比較で使用例あり)
  • Manhattan 3.1 (GFXBench – 3DMarkと並行して比較されることがある): 約2421フレーム
2.3.2 スコア分析

比較的低いWild Lifeスコア(約1200点)および特に低いWild Life Extremeスコア(約360点)は、AnTuTuのGPUスコアや実際のゲームレビューが示唆するように、Adreno 619 GPUが要求の高い3Dグラフィックス処理における主要な性能ボトルネックであることを裏付けています。

Geekbenchと同様に、3DMarkのスコアも異なるSnapdragon 695搭載デバイス間で非常に一貫性があるように見えます 13。これは、GPU性能がハードウェア自体によってほぼ決定され、この特定のテストにおいては冷却や最適化による大きな差が生じにくいことを示唆しています。

これらのスコアは、ハイエンドSoC(例: Snapdragon 8 Gen 1はWild LifeでMaxed Outまたは約8800点以上)や、アッパーミドルレンジのチップ(例: Snapdragon 778G/780GはWild Lifeで通常2500~3000点以上)と比較して大幅に低いです。これにより、Snapdragon 695はカジュアルゲーム向けであり、高画質設定でのゲーム体験には適していないことが明確に位置づけられます。

ascii.jpは3DMarkのスコアを記載していませんが、Wild Life Stress Test中の温度測定結果を報告しています 7。AQUOS sense7、Reno7 A、Redmi Note 11 Pro 5Gで、テスト中に前面が約37~38℃、背面が約35~37℃に達したとされています。これらの温度は比較的穏やかであり、このベンチマーク中にチップが極端な熱的限界に達していない可能性を示唆しています。これは、控えめな電力管理、あるいはこの負荷下での6nmプロセスの固有の効率性を示している可能性があります。ただし、長時間のゲームプレイでは異なる結果になる可能性があります。

Snapdragon 695 ベンチマークスコア集計

ベンチマーク (バージョン)指標スコア範囲/平均 (目安)搭載機種例出典例
AnTuTu (v10)Total430,000 – 460,000AQUOS sense7+, moto g52j 5G, POCO X5 5G, Reno9 A8
AnTuTu (v10)CPU124,000 – 149,000AQUOS sense7+, (AnTuTu公式)8
AnTuTu (v10)GPU83,000 – 101,000AQUOS sense7+, moto g52j 5G, POCO X5 5G8
AnTuTu (v9)Total380,000 – 400,000 (6GB RAM)Redmi Note 11 Pro 5G, Reno7 A, moto g52j 5G11
AnTuTu (v9)GPU98,000 – 100,000Xperia 10 V, moto g52j 5G11
Geekbench (v6)Single-Core900 – 910AQUOS sense7+8
Geekbench (v6)Multi-Core2100 – 2170AQUOS sense7+8
Geekbench (v5)Single-Core650 – 690Redmi Note 11 Pro 5G, Reno7 A, AQUOS wish26
Geekbench (v5)Multi-Core1800 – 2100Redmi Note 11 Pro 5G, Reno7 A, AQUOS wish26
3DMarkWild Life1200 – 1220Redmi Note 11 Pro 5G, Reno7 A, AQUOS wish213
3DMarkWild Life Extreme350 – 360Redmi Note 11 Pro 5G, AQUOS sense7+6

(注: スコアは測定環境や個体差により変動します。バージョン情報が重要です。)

3. CPUおよびGPU性能評価

ベンチマークスコアは性能の指標ですが、それが実際のCPUやGPUの能力としてどのように評価されるのか、レビューサイトの解説を交えて分析します。

3.1 CPU性能分析 (ベンチマークに基づく評価、レビューサイト解説)

Geekbenchスコア(GB6 Single 約900点、Multi 約2100点 8)やAnTuTu CPUスコア(v10で約12.4万~14.9万点 8)に基づくと、Snapdragon 695に搭載されているKryo 660 CPUは、堅実なミドルレンジの性能を提供します。Qualcommが主張する前世代Snapdragon 690からの15%の性能向上 2 は、これらのスコアからも妥当と考えられます。

Webブラウジング、SNS、動画視聴、一般的なUI操作といった日常的なタスクにおいては、性能は十分、あるいは「快適」であると一般的に評価されています 4。CPUスコアはこの評価を裏付けており、一般的なアプリケーションに対する応答性を示しています。

同世代の上位CPU(Snapdragon 7シリーズなど)やフラッグシップチップと比較すると性能差は明確ですが、旧世代のミドルレンジやエントリーレベルのチップ(Snapdragon 480など)からは大幅な改善が見られます。

レビューでは、要求の少ないユーザーにとっては十分にスムーズな操作感が得られると述べられています 9。ハイエンドではないものの、UIの応答性は良好であるとのコメントもあります。Hypergadgetは、CPUスコアがUX(アプリの動作速度)に重要であり、Snapdragon 695のCPU/UXスコアは、総合スコアが異なっていてもDimensity 7025に近い場合があると指摘しており 14、SoC内でのCPUの相対的な強さを示唆しています。

このチップの特性として、CPU性能(Kryo 660、A78/A55ベース)は、同クラスのGPU性能(Adreno 619)と比較して相対的に強力であると言えます。これは、チップが一般的な生産性タスクやマルチタスクには適している一方で、グラフィックス負荷の高いアプリケーションにはあまり向いていないことを意味します。このバランスは、メニューやアプリ操作では応答性が良く感じられるものの、要求の高いゲームでは遅延を感じるという、全体的なユーザーエクスペリエンスに影響を与えます。

3.2 GPU性能分析 (ベンチマークに基づく評価、レビューサイト解説)

ベンチマークスコア(AnTuTu GPU 約8~10万点 8、3DMark Wild Life 約1200点 13、Wild Life Extreme 約360点 6)は、Adreno 619 GPUのグラフィックス性能がローワーミドルレンジに位置することを示しています。前世代からの公称30%の性能向上 2 はベースラインを引き上げましたが、要求の厳しい最新ゲームを高設定で快適にプレイするには至っていません。

ゲームプレイ体験は以下の通りです。

  • 軽いゲーム: カジュアルゲームや2Dゲームには適しており、スムーズに動作します 9
  • 要求の高いゲーム (PUBG Mobile): 設定を下げる必要があり(スムーズ+ウルトラ、HD+高が上限 9)、体験はしばしば「イマイチ・妥協が必要」と評価され、カクつきが発生する可能性があります 9
  • 要求の高いゲーム (原神): 最低設定でも動作が重く、「モッサリ・カクカク」であると広く報告されています 9。快適にプレイできるレベルではないとの評価が一般的です。このタイトルはGPUの負荷が高く、Snapdragon 695が苦戦する様子を明確に示しています。
  • 動画再生: 標準的な動画再生は問題なく処理します。AQUOS sense7 plusのように、SoCの基本性能を超えて動画の滑らかさを向上させる専用チップを搭載するデバイスもあります 6

GPUはゲーム性能における主要なボトルネックであり(セクション2.3.2で確立)、1080pという動画撮影の制限も、GPUのエンコード能力や持続負荷時の熱的余裕に関連している可能性があります(セクション1.2からの考察)。

レビューでは、特に「原神」のようなタイトルにおけるゲーム性能の限界が一貫して指摘されています 9。ヘビーなゲームプレイが優先事項である場合、Snapdragon 695搭載機は推奨できないという意見もあります。性能は非ゲーマーにとっては十分ですが、人気のある要求の高いタイトルでスムーズなプレイを期待するユーザーにとっては期待外れとなる可能性があります。

多くのSnapdragon 695搭載スマートフォンは、高リフレッシュレート(90Hzや120Hz)のディスプレイを採用しています 1。しかし、Adreno 619 GPUは、要求の高いゲームにおいて、これらのディスプレイの能力を十分に活用できるほどの高いフレームレートを維持できないことがよくあります。高リフレッシュレートはUIの滑らかさ(スクロール、アニメーション)には貢献しますが、ゲーム体験は低いFPSのために依然として途切れがちに感じられる可能性があります。これは、ディスプレイのスペックと実際のゲーム性能との間に乖離があることを示唆しており、これらの機種で高リフレッシュレートを強調するマーケティングは、ゲーム性能に関して非現実的な期待を生む可能性があります。

4. 競合SoCとの性能比較

Snapdragon 695の性能を相対的に評価するため、ミドルレンジ市場における競合SoCとの比較を行います。可能な限り日本語の比較サイトからのベンチマークスコアを用い、その市場での位置づけを明らかにします。

4.1 同世代Snapdragonシリーズとの比較 (例: 480, 690, 6 Gen 1, 765G, 7s Gen 2)

  • vs. Snapdragon 690 5G (前世代): Snapdragon 695は、CPU性能で約15%、GPU性能で約30%向上し 2、ミリ波5Gに対応、より効率的な6nmプロセスを採用(690は8nm)していますが、LTEの下り速度は低下しています(800Mbps vs 1.2Gbps 2)。全体としては堅実な世代交代と言えます。
  • vs. Snapdragon 480 5G (下位): Snapdragon 695は大幅に高速です。Snapdragon 480のAnTuTu v9スコアは約28.5万~29.7万点 であり、695の約38万点以上 13 と比較して低いです。Geekbench 5のスコアも同様に、480(Single 約500点 / Multi 約1500~1600点)は695(Single 約670点 / Multi 約1900点 13)を下回ります。NicosumaはSnapdragon 480を「ゲームにはあまり向かないが、幅広いシーンで快適に動作」と位置付けており、695も同様の傾向ですが、性能は一段上です。
  • vs. Snapdragon 765G (旧世代ミドルハイ): 一部のベンチマークでは、新しいCPUコアを持つ695が有利な場合もあり、性能は驚くほど近いですが、765Gは若干優れたGPU(Adreno 620)を持ち、重要な点として4K動画撮影に対応しています。AnTuTu v9スコアは、765Gが約36.8万~38.4万点 で、695(約38.5万点 13)と非常に似ています。Geekbench 5スコアは、765G(Single 約600点 / Multi 約1500~1750点)が695(Single 約680点 / Multi 約1990点 13)より若干低いです。しかし、3DMark Wild Lifeスコアは765G(約1670~1680点)が695(約1210点 13)より明らかに高いです。この比較から、695はCPU効率とクロックで優位に立つものの、765GはGPU性能(一部テスト)と動画機能で利点を保持していることがわかります。どちらを選択するかは、CPU負荷の高いタスクとGPU/動画機能のどちらを優先するかによって異なります。
  • vs. Snapdragon 6 Gen 1 (後継): Snapdragon 6 Gen 1は大幅な性能向上を実現しています。Qualcommは最大40%のCPU、35%のGPU性能向上を主張しており、AnTuTu v10スコアもこれを裏付けています(6 Gen 1: 約54.7万~56.6万点 10 vs 695: 約44万点 10)。3DMark Wild Life Extremeでも約2倍の向上を示しています。また、Wi-Fi 6Eにも対応します。6 Gen 1は、695が690に対して行った改善よりも、特にGPU性能において、はるかに大きな飛躍を遂げており、695の主要な弱点に対処しています。
  • vs. Snapdragon 7s Gen 2 (上位ミドルレンジ): 6 Gen 1の上に位置づけられ、AnTuTu v10で約60万~61.6万点 10 を記録し、695を明確に上回ります。

出典: Garumax 2, Qualcomm, orefolder.jp 13, hypergadget.jp, nicosuma.com

4.2 MediaTek Dimensityシリーズとの比較 (例: Dimensity 700, 800U, 7020, 7025, 7050)

  • vs. Dimensity 700 (ローワーミドルレンジ): Snapdragon 695は概ねDimensity 700を上回ります。Dimensity 700のAnTuTu v10スコアは約35万~38万点 10 で、695の約44万点より低いです。AnTuTu v9スコアでも、Dimensity 700(約36.3万点)は695(約38.5万点 13)より若干低いです。
  • vs. Dimensity 800U (同等クラス): 性能は非常に近いです。AnTuTu v10スコアでは、Snapdragon 695が約43.6万点、Dimensity 800Uが約43.1万点 12 であり、総合性能において直接的な競合相手であることを示唆しています。
  • vs. Dimensity 7020 (同等クラス, Dimensity 930のリブランドと推定): AnTuTu v10スコアは同等です。Snapdragon 695搭載機(OnePlus Nord CE 3 Lite)が約46.2万点、Dimensity 7020搭載機(Infinix Note 40 Pro 5G)が約46.2万点 であり、性能的に同等と考えられます。
  • vs. Dimensity 7025 (同等クラス, 7020/930のオーバークロック版と推定): Dimensity 7025はAnTuTu v10の総合スコアでSnapdragon 695(約44万点 14)をわずかに上回り、約50万点以上を記録しています 14。Hypergadgetは、Dimensity 7025はGPU性能は同等ながらCPU性能が695より優れていると指摘しています 14。nanoreview.netのデータでもDimensity 7025(約47.4万点)がSnapdragon 695(約44.2万点)をわずかにリードしています。
  • vs. Dimensity 7050 (上位ミドルレンジ, Dimensity 1080のリブランドと推定): Dimensity 7050は大幅に高性能です。AnTuTu v10スコアは約53万~61.5万点 10 の範囲にあり、Snapdragon 695を明確に上回ります。Geekbench 6 Multi-CoreスコアもDimensity 7050(約2440点)がSnapdragon 695(約2134点)より高いです。

競合環境について: Snapdragon 695は、MediaTekのDimensity 800U、7020、7025といったチップと性能的に近接して競合しています。下位のDimensity 700よりは高性能ですが、Dimensity 7050以上のクラスには及びません。MediaTekはしばしば価格競争力のある製品を提供するため、同価格帯のDimensity搭載スマートフォンは強力な代替選択肢となります。同等クラスのチップ間での選択は、ベンチマークでのわずかな性能差よりも、特定のデバイス機能、最適化、あるいはブランドの好みによって左右されることが多いでしょう。

Snapdragon 695 vs 競合SoC ベンチマーク比較

SoC名プロセスAnTuTu v10 (目安)Geekbench 6 Single (目安)Geekbench 6 Multi (目安)3DMark Wild Life (目安)主な違い (例)出典例
Snapdragon 6956nm440k900210012001080p動画, Wi-Fi 58
Snapdragon 6908nm(v9: ~350k)(GB5: ~600)(GB5: ~1750)(v9: ~830)mmWave非対応, 4K動画(?)2
Snapdragon 4808nm(v9: ~290k)(GB5: ~500)(GB5: ~1600)(v9: ~980)性能低い
Snapdragon 6 Gen 14nm560k性能向上, Wi-Fi 6E10
Snapdragon 765G7nm(v9: ~380k)(GB5: ~600)(GB5: ~1600)16804K動画, GPU若干優位
Dimensity 7007nm370k(v9: ~1100)性能低い10
Dimensity 800U7nm430k性能同等12
Dimensity 7020/70256nm460k – 500k+性能同等~若干優位14
Dimensity 70506nm570k2440性能優位10

(注: スコアは目安であり、テストバージョンやデバイスによって変動します。’-‘はデータ不足を示します。)

5. 実使用感レビュー

ベンチマークスコアは数値的な指標ですが、実際の使用感は日常操作や特定のアプリケーションにおける体験を反映します。本セクションでは、日本のレビューサイトから収集した、日常操作、ゲームプレイ、バッテリー効率や発熱に関する定性的なフィードバックをまとめます。

5.1 日常操作・マルチタスク性能

多くのレビューで、Snapdragon 695はWebブラウジング、SNS、メール、メッセージングといった一般的な日常利用において、快適で十分な応答性を提供すると評価されています 4。旧世代のエントリーレベルやローワーミドルレンジのスマートフォンから乗り換えたユーザーは、性能向上を体感できる可能性が高いでしょう。

UIの操作感は、「サクサク」あるいは「普通に使えるレベル」と表現されることが多く 9、軽いアプリの動作はスムーズです。多くのSnapdragon 695搭載機が採用する高リフレッシュレートディスプレイも、OSレベルでの体感的な滑らかさに貢献しています 6

Snapdragon 695には一般的に6GBまたは8GBのRAMが組み合わされることが多く 1、これにより一般的なアプリ間のマルチタスクは概ね良好に処理されます。オクタコアCPU 3 は、複数のバックグラウンドプロセスの管理に役立ちます。

ただし、負荷の高いアプリや複雑なWebページを開いた際には、時折わずかな引っかかりや遅延が指摘されることもありますが 6、通常の使用においてフラストレーションを感じるほどではないとされています。あるレビューでは、Snapdragon 695を搭載したUMIDIGI製スマートフォンのストレスフリーな動作が、同ブランドの旧機種のイメージとは対照的であると述べられています。

特定のアプリに関して、YouTubeの再生はスムーズですが、120Hzディスプレイ搭載機でもアプリ側が60Hzに固定される場合があるようです 9。ピクチャーインピクチャー(PiP)モードでは高リフレッシュレートが活用される可能性も示唆されています 9。また、AQUOS sense7 plusのように、動画補間用の専用チップを搭載することで、SoCの基本性能を超えた特定の体験を提供するデバイスも存在します 6

5.2 ゲームプレイ性能 (タイトル別評価)

ゲームプレイは、Snapdragon 695の限界が最も顕著に現れる分野です。多くのゲームを実行できますが、要求の高いタイトルではグラフィック設定の大幅な妥協が必要であり、それでもスムーズな動作が得られない場合があります 9

  • カジュアルゲーム (2D, ミニゲームなど): 良好に動作し、「サクサク」と評価されています 9
  • PUBG Mobile: プレイ可能ですが、設定を下げる必要があり(スムーズ+ウルトラ、またはHD+高が上限)、パフォーマンスは「イマイチ・妥協が必要」とされ、カクつきが発生する可能性があります 9。競技性の高いプレイには最適とは言えません。
  • 原神: パフォーマンスが低いと広く報告されています。最低設定でも「モッサリ・カクカク」と表現され 9、「遊べたもんじゃない」、あるいは低いフレームレートへのかなりの忍耐が必要 といった評価が見られます。このゲームはAdreno 619 GPUの弱点を一貫して露呈させます。
  • その他のゲーム: パフォーマンスはゲームの最適化度合いやグラフィック負荷によって異なります。比較的負荷の低い3Dゲームであれば、低~中設定で許容範囲内の動作が期待できるかもしれません。

レビューにおける共通認識として、要求の高いタイトルでスムーズなゲームプレイを最優先する場合、Snapdragon 695は一般的に推奨されません。その強みは他の側面にあります。

5.3 バッテリー効率・発熱

  • バッテリー持続時間: 6nmプロセス 3 は良好な電力効率に貢献します。Snapdragon 695搭載スマートフォンの多くはバッテリー持続時間が評価されており、特にこれらのモデルで一般的な大容量バッテリー(4500mAh~5000mAh 1)と組み合わせることで、通常の使用で1日以上持つことが多いと報告されています。AQUOS sense7の省電力IGZO有機ELディスプレイ 1 や、Xperia 10 IVのバッテリー持続時間重視の設計、バッテリー持ちに関する全般的な好意的なコメント 4 などが例として挙げられます。Xperiaの「いたわり充電」機能は、バッテリーの長寿命化を目指しています。
  • 発熱: 通常の使用や中程度のベンチマーク実行中には、Snapdragon 695が過度に発熱する傾向は低いようです(3DMark実行中の温度は約35~38℃ 7)。レビューでは、日常的なタスクでの発熱はほとんどない(「普段使いの発熱はもうほぼない」)と示唆されています。長時間のヘビーなゲームプレイでは顕著な発熱が生じる可能性はありますが、同時代のハイエンドチップの一部で見られたような、過度の発熱によるスロットリングが広範囲で大きな問題として報告されているわけではありません。

効率性の重要性: ゲーム性能が弱点である一方、電力効率はSnapdragon 695の相対的な強みであると言えます。これは、6nmプロセスとバランスの取れたCPU/GPU構成によるものと考えられます。この特性により、ピーク性能よりもバッテリー持続時間を優先するユーザー(ミドルレンジセグメントでは一般的な要求)にとって、Snapdragon 695は適した選択肢となります。穏やかな発熱も、効率的な電力管理の結果である可能性があります。効率性は、性能とのトレードオフではありますが、ターゲットユーザー層にとっては肯定的なユーザーエクスペリエンスに貢献する重要な要素です。

6. 総合評価とまとめ

Snapdragon 695 5Gは、登場時期(2022年~2023年)において堅実なミドルレンジ性能を提供したSoCです。特にCPU処理能力と日常的な応答性に優れており、6nmプロセスによる優れた電力効率も大きな特徴です。

強み:

  • 日常的なタスクやマルチタスクにおける良好なCPU性能。
  • 優れた電力効率による長いバッテリー持続時間。
  • 日本市場での広範な採用実績があり、おサイフケータイやIP等級対応など、多様な機能を備えたデバイスの選択肢が豊富 1
  • ミリ波を含む信頼性の高い5G接続性 2
  • 高リフレッシュレートディスプレイ(最大120Hz FHD+)への対応 3

弱み:

  • GPU(Adreno 619)の性能が低く、要求の高い3Dゲームでは力不足 9
  • 動画撮影が1080p/60fpsに制限され、4K撮影に非対応 3
  • Wi-Fi 6に非対応(Wi-Fi 5を採用)3

市場での位置づけ: MediaTek Dimensity 800U/7020/7025といったチップと効果的に競合しましたが 12、後継のSnapdragon 6 Gen 1 10 や上位のミドルレンジチップ(Snapdragon 7シリーズ、Dimensity 7050以上 10)には明確に性能で劣ります。2023年モデルでの継続採用 は、コストとのバランスを考慮した上で、主流市場にとってその性能が十分であると認識されていたことを示唆しています。

ターゲットユーザー: バッテリー持続時間、日常的なアプリ(SNS、ブラウジング、動画視聴など)の応答性、そしてミドルレンジデバイスにおける5G接続性を重視するユーザーにとって理想的な選択肢です。一方で、ハイエンドなモバイルゲームや4K動画撮影を優先するユーザーには適していません。

結論: Snapdragon 695は、日本のスマートフォン市場で広く普及した、有能で効率的なミドルレンジSoCでした。GPU性能や動画機能には明確な限界がありましたが、電力効率と日常的なパフォーマンスにおける強みが、ターゲット市場において成功を収める要因となりました。

引用文献

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  4. 色々選べるスナドラ695搭載スマホ!シャオミ 、OPPO、モトローラ …, 4月 19, 2025にアクセス、 https://hypergadget.jp/snapdragon6955g_select/
  5. Xperia 10 Vのスペックまとめ!SoCは変わらずSnapdragon 695で …, 4月 19, 2025にアクセス、 https://garumax.com/xperia-10-v-spec-band
  6. スナドラ695なのに限界突破!ハイエンドを超越する「AQUOS …, 4月 19, 2025にアクセス、 https://smhn.info/202210-aquos-sense7-plus-review
  7. ASCII.jp:今人気のFeliCa入りミドルクラススマホ3機種徹底比較 …, 4月 19, 2025にアクセス、 https://ascii.jp/elem/000/004/130/4130588/
  8. Snapdragon 695 5G 搭載 AQUOS sense7 plus AnTuTu Benchmark …, 4月 19, 2025にアクセス、 https://hello-mobile-world.jp/snapdragon-695-5g-aquos-sense7-plus-antutu-geekbench/
  9. POCO X5 5Gの実機レビュー!Snapdragon 695搭載コスパモデルを …, 4月 19, 2025にアクセス、 https://garumax.com/poco-x5-5g-review
  10. スマホの実機AnTuTuベンチマークスコアまとめ – ガルマックス, 4月 19, 2025にアクセス、 https://garumax.com/antutu-benchmark-score
  11. moto g52j 5G/メモリ6GB(Snapdragon 695)の実機AnTuTu …, 4月 19, 2025にアクセス、 https://garumax.com/moto-g52j-5g-ram6gb-antutu-benchmark
  12. ベンチマーク性能比較 | ねむNote, 4月 19, 2025にアクセス、 https://nemunote.com/gadget/benchmark/
  13. ベンチマーク結果まとめ – OREFOLDER, 4月 19, 2025にアクセス、 https://orefolder.jp/benchmark/
  14. OPPO Reno11 A、moto g64 5Gに見る『MediaTek』の功績。日本 …, 4月 19, 2025にアクセス、 https://hypergadget.jp/mediatek_2024_japan_smartphone/
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