Steam Deckは、Valve Corporationによって開発された革新的な携帯型ゲーム機です。パワフルなハードウェアと洗練されたSteamOSを搭載し、PCゲームを外出先でも楽しむことができます。Steam Deckには、LCDとOLEDの2種類のディスプレイモデルがあり、それぞれに異なる特徴があります。本稿では、Steam Deck LCDモデルのベンチマーク結果に焦点を当て、その性能、長所・短所、そして他の携帯型ゲーミングPCとの比較などを詳細に解説していきます。
Steam Deck LCDのスペック
Steam Deck LCDモデルを理解する上で、まずはそのスペックを確認しておきましょう。1
- APU: AMD Aerith (TSMC 7nmプロセス)
- CPU: AMD Zen 2 (4コア, 8スレッド), 2.4 – 3.5GHz
- GPU: AMD RDNA 2 (8 CU), 1.6GHz
- RAM: 16GB LPDDR5-5500
- ディスプレイ: 7インチLCD, 1280 x 800, 60Hz
- ストレージ: 64GB eMMC, 256GB NVMe SSD, 512GB NVMe SSD
- バッテリー: 40Wh
- 重量: 669g
ベンチマーク結果の概要
Steam Deck LCDモデルのベンチマーク結果は、様々なウェブサイトやYouTubeチャンネルで公開されており、総合的に見ると、多くのAAAゲームを快適にプレイできる性能を備えていることがわかります。
Cyberpunk 2077のような demanding なゲームでも、低設定であれば1280×800の解像度で平均46.87 FPSを記録しています。2 このフレームレートは、設定を調整することで、スムーズで快適なゲームプレイを実現できるレベルと言えるでしょう。一方、F1 22では、低設定で平均93 FPSを記録しており、非常にスムーズなゲームプレイが可能です。2
しかし、最新のAAAゲームを高設定でプレイする場合には、フレームレートが低下する可能性があります。Red Dead Redemption 2のようなゲームでは、高設定で30 FPSを安定して維持するのが難しい場合もあります。3 FSR (FidelityFX Super Resolution) を活用することで、画質を大きく落とすことなく、パフォーマンスを向上させることができます。3 FSRは、低い解像度でレンダリングした画像をアップスケールすることで、高いフレームレートと画質の両立を実現する技術です。
Steam Deck LCDモデルとOLEDモデルを比較すると、OLEDモデルでは、Horizon Zero Dawnで60fpsを達成し、Elden Ringではオープンワールドでも30fpsを上回るなど、わずかながらパフォーマンスの向上が見られます。4 これは、OLEDモデルに搭載されている、より高速なRAMと、より効率的な6nmプロセスAPUによる効果と考えられます。
ドッキング時の性能
Steam Deckは、ドッキングステーションに接続することで、外部ディスプレイに出力してプレイすることができます。3 ドッキング時には、1080pの解像度で出力することができ、多くのゲームで快適なプレイが可能です。
ただし、最新のAAAゲームを1080pの高設定でプレイする場合には、フレームレートが低下する可能性があります。3 ゲームによっては、設定を調整することで、60 FPSを維持することも可能です。例えば、GTA 5は、PS4相当の設定で1080p 30fpsで動作します。3 一方、Spider-Man Remasteredは、最低設定で1080p 30fpsで動作します。3
他の携帯型ゲーミングPCとの比較
Steam Deck LCDは、Asus ROG AllyやLenovo Legion GoなどのWindows 11ベースの携帯型ゲーミングPCと比較すると、ハードウェアのスペックでは劣っています。5 特に、CPUとGPUの性能差は顕著です。
しかし、Steam Deckは、SteamOSの高いリソース効率と、ProtonやWineによるWindowsアプリケーションの互換性により、限られたハードウェアリソースを最大限に活用することができます。5 そのため、スペックの差ほどゲーム体験に大きな違いが出ない場合もあります。
Steam Deckは、バッテリー寿命、温度管理、操作性などの面で優れています。5 特に、バッテリー寿命は、OLEDモデルではさらに向上しており、長時間のゲームプレイが可能です。4 また、冷却システムも改良されており、4 静音性と冷却性能の両立を実現しています。
操作性
Steam Deckは、ゲームプレイに最適化された操作性を備えています。左右のトラックパッド、ジョイスティック、ボタンなど、様々な入力方法に対応しており、あらゆるジャンルのゲームを快適にプレイすることができます。
また、Steam Deckには、独自のオンスクリーンキーボードが搭載されています。5 このキーボードは、左右のトラックパッドで操作することができ、タッチスクリーンにも対応しています。直感的な操作で、素早くテキスト入力を行うことができます。
メンテナンスと耐久性
Steam Deckは、スティックドリフトが発生した場合でも、修理が容易な設計となっています。6 5 ファン、バッテリー、ストレージ、ハウジングパーツ、入力デバイスなど、多くの部品がiFixitなどで入手可能です。また、ホール効果センサーに交換するなどのカスタマイズも可能です。
Steam Deck LCDの長所と短所
長所 | 短所 |
比較的安価である | 最新のAAAゲームを高設定でプレイするには性能が不足する場合がある |
多くのPCゲームをプレイできる | ディスプレイの解像度が低い |
SteamOSによる高い互換性と安定性 | OLEDモデルと比較して、画面の品質が劣る |
優れたバッテリー寿命 (40Wh) | Wi-Fi 5 (Wi-Fi 6E非対応) |
高速なSDカードリーダー (最大100 MB/s) | |
温度管理に優れている | |
操作性に優れている |
Steam Deck LCDは、価格と性能のバランスに優れたモデルです。多くのPCゲームを快適にプレイすることができ、SteamOSの高い互換性と安定性、優れたバッテリー寿命、温度管理、操作性など、多くの魅力があります。
しかし、最新のAAAゲームを高設定でプレイしたい場合や、より高画質なディスプレイを求める場合は、OLEDモデルや、より強力なハードウェアを搭載したWindows 11ベースの携帯型ゲーミングPCを検討する必要があるかもしれません。
各ベンチマーク結果の詳細
様々なベンチマーク結果から、Steam Deck LCDの性能をより深く理解することができます。
- OpenBenchmarking.org: Cyberpunk 2077、F1 22、Unigine Valleyなど、様々なベンチマークソフトを使用したSteam Deck LCDのベンチマーク結果が公開されています。2 これらの結果から、Steam Deck LCDが、幅広いゲームに対応できる性能を備えていることがわかります。
- Notebookcheck.net: Steam Deck OLEDのレビュー記事の中で、Steam Deck LCDとの性能差について言及しています。5 OLEDモデルは、LCDモデルと比較して、わずかながらパフォーマンスが向上していることがわかります。
- ETA PRIME (YouTube): Steam Deck LCD、OLED、Asus ROG Allyの3機種を比較したベンチマーク動画が公開されています。7 他の携帯型ゲーミングPCとの性能差を視覚的に確認することができます。
- Digital Foundry (YouTube): Steam Deck OLEDのレビュー動画の中で、Steam Deck LCDとの性能差について分析しています。8 ハードウェアの進化によるパフォーマンス向上について詳しく解説されています。
- GamersNexus (ブログ): Steam Deck OLEDとAsus ROG Ally Z1 Extremeの比較レビューの中で、Steam Deck LCDのベンチマーク結果についても触れています。9
- Steam Community (フォーラム): Steam Deck LCDでCiv 7をプレイした際の性能について議論されています。10 実際のゲームプレイに基づいた情報を得ることができます。
- Reddit: RedditのSteam Deckサブレディットでは、Steam Deck LCDとOLEDの性能差について議論されています。6 ユーザーからの様々な意見や感想を見ることができます。
- Twitter: Twitterでは、Steam Deck LCDでMonster Hunter Wildsをプレイした際の性能についてツイートしている人がいます。11
結論
Steam Deck LCDは、PCゲームを手軽に楽しめる携帯型ゲーム機です。多くのAAAゲームを快適にプレイできる性能を備えており、SteamOSの高い互換性と安定性、優れたバッテリー寿命、温度管理、操作性など、多くの魅力があります。
最新のAAAゲームを高設定でプレイしたい場合は、OLEDモデルや、より強力なWindows 11ベースの携帯型ゲーミングPCを検討する必要があるかもしれませんが、価格と性能のバランスを重視するなら、Steam Deck LCDは依然として魅力的な選択肢と言えるでしょう。
特に、Steamの膨大なゲームライブラリにアクセスできる点は、Steam Deck LCDの大きな強みです。インディーゲームからAAAゲームまで、様々なゲームをプレイすることができます。また、SteamOSのアップデートにより、今後も性能向上や新機能の追加が期待されます。
Steam Deck LCDは、PCゲームを外出先でも楽しみたいゲーマーにとって、最適な選択肢の一つと言えるでしょう。
引用文献
1. Steam Deck OLED vs Steam Deck LCD: what’s inside – PC Gamer, 3月 1, 2025にアクセス、 https://www.pcgamer.com/steam-deck-oled-vs-steam-deck-lcd-internal-comparison/
2. Steam Deck LCD Benchmarks – OpenBenchmarking.org, 3月 1, 2025にアクセス、 https://openbenchmarking.org/result/2311270-NE-STEAMDECK02
3. Has anyone thoroughly benchmarked Steam Deck performance at 1080p? – Reddit, 3月 1, 2025にアクセス、 https://www.reddit.com/r/SteamDeck/comments/xz7ybc/has_anyone_thoroughly_benchmarked_steam_deck/
4. The Steam Deck OLED makes the original model obsolete – Digital Trends, 3月 1, 2025にアクセス、 https://www.digitaltrends.com/computing/steam-deck-oled-vs-steam-deck/
5. Steam Deck 1 TB OLED review: Minimalist performance, maximum …, 3月 1, 2025にアクセス、 https://www.notebookcheck.net/Steam-Deck-1-TB-OLED-review-Minimalist-performance-maximum-gaming-fun.802764.0.html
6. OLED vs LCD performance worth it? : r/SteamDeck – Reddit, 3月 1, 2025にアクセス、 https://www.reddit.com/r/SteamDeck/comments/1gweyrh/oled_vs_lcd_performance_worth_it/
7. Steam Deck LCD vs OLED vs Ally | Ultimate Performance Test! – YouTube, 3月 1, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=q5OPIXJGJwo
8. Steam Deck OLED vs Steam Deck LCD Benchmarks! – YouTube, 3月 1, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=FOABQXCV6yI
9. Valve Goes Hard: Steam Deck OLED Review & Benchmarks vs …, 3月 1, 2025にアクセス、 https://gamersnexus.net/handheld-pcs/valve-goes-hard-steam-deck-oled-review-benchmarks-vs-asus-rog-ally-z1-extreme-deck-lcd
10. Steam Deck LCD Performance :: SWORN General Discussions, 3月 1, 2025にアクセス、 https://steamcommunity.com/app/1763250/discussions/0/591762818429103769/
11. Monster Hunter Wilds Steam Deck players experiencing abysmal performance, 3月 1, 2025にアクセス、 https://www.notebookcheck.net/Monster-Hunter-Wilds-Steam-Deck-players-experiencing-abysmal-performance.970351.0.html