Steam Deck OLEDは、Valveが開発した携帯型ゲーミングPC「Steam Deck」の最新モデルです。従来のLCDモデルからディスプレイが有機ELに進化し、より鮮やかな色彩と高いコントラスト比を実現しました。本記事では、Steam Deck OLEDのベンチマーク結果を詳細に分析し、LCDモデルとの比較、そしてライバル機種との比較を通して、その実力を徹底的に検証します。
Steam Deck OLED の進化ポイント
Steam Deck OLEDは、LCDモデルから以下の点が進化しました。
- ディスプレイ: 有機ELディスプレイを採用し、より鮮やかな色彩、深みのある黒色、優れたコントラストを実現しました。 1TBモデルでは、プレミアムアンチグレアエッチングガラスを採用しています。1
- APU: 処理能力は従来モデルと大きな差はありませんが、製造プロセスが7nmから6nmに微細化され、電力効率が向上しています。2
- バッテリー: バッテリー駆動時間が30~50%向上しました。 バッテリー容量が増加した一方で、OLEDディスプレイの消費電力を抑えることで実現しています。2 ただし、充電時間はLCDモデルよりも22%長くなっています。3
- ストレージ: 512GBと1TBのNVMe SSDを選択できます。2
- Wi-Fi: Wi-Fi 6Eに対応し、ダウンロード速度が最大3倍に向上しました。
- 冷却システム: ファンを大型化し、排熱性能を向上させました。
- 重量: LCDモデルよりも約30グラム軽量化されました。
- タッチスクリーン: タッチスクリーンの応答性と精度が大幅に向上しました。1
- ハプティクス: ハプティクスの精度と一貫性が向上しました。1
- Bluetooth: 複数のBluetoothコントローラー接続を改善するために、専用のアンテナが追加されました。1
- キャリングケース: 新しいキャリングケースが付属します。特に1TBモデルには、内側が取り外し可能な限定ケースが付属します。1
- 修理と改造: 構造の完全性を損なうことなく、分解・再組み立てが容易になりました。1
これらの改良点により、Steam Deck OLEDは、より快適なゲーム体験を提供することが期待されます。
ベンチマーク結果
Steam Deck OLEDのパフォーマンスを評価するために、様々なベンチマーク結果を分析しました。
CPUベンチマーク
Geekbench 6を用いたCPUベンチマーク結果は以下の通りです。4
項目 | スコア |
Single-Core Score | 1331 |
Multi-Core Score | 4352 |
この結果から、Steam Deck OLEDは、携帯型ゲーミングPCとして十分なCPU性能を備えていることが分かります。
ゲームベンチマーク
Gamers Nexusによるゲームベンチマークでは、以下のゲームがテストされました。3 解像度は1280×720で、HDRは無効に設定されています。
- Red Dead Redemption 2: 720p Vulkan、パフォーマンス重視プリセット
- Dying Light 2 Stay Human: 720p、低プリセット、FSR品質
- F1 22: 720p、高プリセット、VRS無効
- Cyberpunk 2077 v2.02: 720p、低プリセット、FSR 2.1品質
- Resident Evil 4 (2023): 720p、グラフィック優先プリセット
- Baldur’s Gate 3: 720p DX11、低プリセット、FSR 2.2バランス
- Hollow Knight: 720pウィンドウモード、すべてのフレームレートキャップを無効、VSyncオフ、パーティクルエフェクトとブラー品質はデフォルト値のノーマルとミディアム
- Dying Light 2: 720p、低プリセット、FSR 2.1品質
これらのテストでは、Steam Deck OLEDは概ね良好なパフォーマンスを示しました。 特にCyberpunk 2077では、720p低プリセット、FSR 2.1品質設定で平均44.6fpsを記録し、LCDモデルの平均44fpsをわずかに上回っています。3
Dune Awakeningでは、フレーム生成を使用しなくても良好なパフォーマンスで動作するという報告があります。5 フレーム生成は、低いフレームレートを人工的に向上させる技術ですが、入力遅延や画質の低下を引き起こす可能性があります。5 Dune Awakeningのように、Steam Deck OLEDで快適に動作するゲームでは、フレーム生成は必ずしも必要ではないと言えるでしょう。
Apex Legendsでは、デフォルト設定で、リフレッシュレート90Hz、フレームレート85~90fpsでスムーズに動作しました。6 この結果から、Steam Deck OLEDは、Apex Legendsのような対戦FPSゲームでも快適にプレイできることが分かります。
ベンチマークテストの方法
Gamers Nexusのベンチマークテストでは、各デバイスでネイティブにサポートされているハードウェアの設定に基づいてパフォーマンスを判断しています。3 解像度は1280×720で、HDRは無効に設定されています。3 また、ゲームプレイ中の特定のシーンを表示させてフレームレートやCPU/GPU温度を測定することで、パフォーマンスを評価しています。7
LCDモデルとの比較
Feature | Steam Deck OLED | Steam Deck LCD |
ディスプレイ | 有機ELディスプレイ | オプティカルボンディングLCDディスプレイ 8 |
バッテリー駆動時間 | 3~12時間 2 | 2~8時間 8 |
重量 | 約632g 9 | 約676g 9 |
Wi-Fi | Wi-Fi 6E | Wi-Fi 5 |
全体的には、Steam Deck OLEDとLCDモデルのゲームパフォーマンスに大きな差は見られません。10 これは、CPUやGPUのアーキテクチャが同じであるためと考えられます。10 しかし、OLEDモデルではメモリーのデータレートが向上しており、一部のゲームではわずかに高いフレームレートが出ています。10 また、OLEDモデルはCPU/GPU温度がLCDモデルよりも低いという報告もあります。7 これは、長時間のゲームプレイ時の安定性やデバイスの寿命に良い影響を与える可能性があります。
ただし、一部のOLEDモデルではヘッドホンジャックに問題があるという報告もあります。3 購入を検討する際は、この点に注意する必要があるでしょう。
ライバル機種との比較
ASUS ROG Allyは、Steam Deck OLEDのライバル機種と言える携帯型ゲーミングPCです。ROG Allyは、Zen4アーキテクチャを採用したCPUとRDNA3アーキテクチャを採用したGPUを搭載しており、Steam Deck OLEDよりも高い処理性能を備えています。3 ベンチマーク結果でも、多くのゲームでROG AllyがSteam Deck OLEDを上回っています。3
しかし、ROG AllyとSteam Deck OLEDは、バッテリー容量がどちらも40Whで同じです。3 また、Steam Deck OLEDは、価格と携帯性のバランスに優れており、ROG Allyよりも安価に入手できます。
プレイ可能なゲーム
Steam Deck OLEDでは、Steamの膨大なライブラリから多くのゲームをプレイすることができます。11 Steam Deck Verifiedプログラムにより、対応状況を確認することができます。11
特に、以下のようなゲームが高い評価を得ています。
- Elden Ring: オープンワールドのアクションRPG。Steam Deckのコントローラー操作と相性が良く、高難度ながらやりごたえのあるゲームです。12
- Forza Horizon 5: オープンワールドのレースゲーム。美しいグラフィックと豊富な車種、イベントが魅力です。12
- Hi-Fi RUSH: スタイリッシュアクションと音ゲーを融合させた作品。Steam Deckでも60fpsで動作し、快適にプレイできます。12
- Cyberpunk 2077: 近未来のオープンワールドRPG。Steam Deck専用グラフィック設定が用意されており、スムーズにプレイできます。12
- Ghost of Tsushima: オープンワールドのアクションアドベンチャー。美しいグラフィックがSteam Deck OLEDの有機ELディスプレイで映えます。13
- Horizon Zero Dawn: オープンワールドのアクションRPG。PS4タイトルの中でも比較的重いゲームですが、Steam Deck OLEDでプレイ可能です。フレームレートは安定しない場合もありますが、設定を調整することで快適にプレイできる可能性があります。12
結論
Steam Deck OLEDは、有機ELディスプレイの採用により、LCDモデルから画質とバッテリー駆動時間が向上した魅力的な携帯型ゲーミングPCです。CPUやGPUの性能はLCDモデルと大きな差はありませんが、多くのPCゲームを快適にプレイすることができます。ライバル機種と比較すると処理性能では劣る部分もありますが、価格と携帯性のバランスに優れており、幅広いユーザーにおすすめできるデバイスです。
Steam Deck OLEDの登場は、携帯型ゲーミングPC市場に新たな風を吹き込む可能性を秘めています。高画質、長時間プレイ、快適な操作性を実現したSteam Deck OLEDは、今後の携帯型ゲーム機市場を牽引していく存在となるかもしれません。
引用文献
1. Steam Deck OLED登場, 3月 1, 2025にアクセス、 https://www.steamdeck.com/ja/oled
2. Steam Deck – KOMODO, 3月 1, 2025にアクセス、 https://steamdeck.komodo.jp/
3. Valve Goes Hard: Steam Deck OLED Review & Benchmarks vs …, 3月 1, 2025にアクセス、 https://gamersnexus.net/handheld-pcs/valve-goes-hard-steam-deck-oled-review-benchmarks-vs-asus-rog-ally-z1-extreme-deck-lcd
4. OLED Steam Deck – Geekbench, 3月 1, 2025にアクセス、 https://browser.geekbench.com/v6/cpu/3703505
5. Dune Awakening Benchmark test on Steam Deck OLED 512GB : r …, 3月 1, 2025にアクセス、 https://www.reddit.com/r/SteamDeck/comments/1iu2n9o/dune_awakening_benchmark_test_on_steam_deck_oled/
6. Steam公式携帯ゲームPC「Steam Deck OLED」の有機ELディスプレイやバッテリーの性能を検証してみた – GIGAZINE, 3月 1, 2025にアクセス、 https://gigazine.net/news/20240117-steam-deck-oled-review/
7. ASCII.jp:新型Steam Deckはここがすごい 初代と比較(動画あり), 3月 1, 2025にアクセス、 https://ascii.jp/elem/000/004/169/4169077/
8. Steam Deck OLED登場, 3月 1, 2025にアクセス、 https://www.steamdeck.com/ja/
9. 有機ELディスプレイを搭載して40gの軽量化も果たした携帯型ゲーミングPC「Steam Deck OLED」外観レビュー – GIGAZINE, 3月 1, 2025にアクセス、 https://gigazine.net/news/20240116-steam-deck-oled-unboxing/
10. ASCII.jp:Steam Deck OLEDはHDR10対応のOLED搭載!従来機 …, 3月 1, 2025にアクセス、 https://ascii.jp/elem/000/004/168/4168272/4/
11. Steam Deckで最もプレイされたゲームトップ100!, 3月 1, 2025にアクセス、 https://store.steampowered.com/sale/decktop100?l=japanese
12. Steam Deck:おすすめゲーム 10本 | PC 対応 | レッドブル – Red Bull, 3月 1, 2025にアクセス、 https://www.redbull.com/jp-ja/die-besten-steam-deck-spiele
13. What are the most impressive looking games on the OLED? : r/SteamDeck – Reddit, 3月 1, 2025にアクセス、 https://www.reddit.com/r/SteamDeck/comments/1fu0jcc/what_are_the_most_impressive_looking_games_on_the/
14. Steam Deck OLED色々|takahasu – note, 3月 1, 2025にアクセス、 https://note.com/tkhsx/n/na0d9a6168bfb